浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第九十一話

 

「仮面ライダーや怪人の姿に変われるのは、どうやら後付けらしいから、これが自然な姿の筈さ」

「少し油断しましたわね……」

「それが分かった所で……今度こそ戦うとしよう」

 

 菫が素早く移動し、ボマーもそれに追いつく。

 

「はあっ!」

 

 ボマーが最初に、菫へとバットを振るう。

 

「……こんなもの」

 

 しかしそう言って笑った菫に回し蹴りされ、折られてしまった。

 

「そんな……」

 

 折られたバットが再生するが、それを見て菫はもう一度笑う。

 

「流石に再生するか、しかし何度打ち込んだところで……それじゃあ無駄だって分かったよね?」

「それならこれですわ」

 

 ボマーはハイドロフォームカードを取り出す。

 

『SCAN DRIVE』

 

 端末でカードを読み取る。

 

『COMPLETE HYDRO DRIVE READY?』

 

 両腕を広げてから叫ぶ。

 

「超変身ですわ!」

 

 ハイドロボマーとなってから、端末を操作する。

 

『HYDRO ACCELERATOR DRIVE』

 

 目にも止まらぬ速さで加速し、菫にもう一度バットを振るう。

 

「はあッ!」

 

 今度は折れずに攻撃が命中する。

 が、ダメージは入っていない。

 

「少しはやるみたいだけど、その程度みたいだね」

 

 菫は左拳でハイドロボマーを吹き飛ばす。

 ハイドロボマーは地面へと叩きつけられた。

 

「さて、次は僕の番だ」

 

 菫の表情が変わる。

 立ち上がろうとしたボマーに蹴りを入れてからよろけさせ、そこに流れるように拳と蹴りを叩きいれていく。

 

「ああッ……」

「どうだ? 変身能力こそないが、遥の作ったものの比ではないだろう?」

「くっ……」

 

 ボマーは膝をつく。

 

「話す元気すらない、みたいだね。じゃあこれで終わりにしてやろう」

 

 端末を取り出し、ボタンを押す。

 

『FINAL DRIVE!』

 

 菫は笑みを浮かべ、宙に浮く。

 

「はあッ!」

 

 ボマーに右足を向けて、そのまま急降下。

 見事な飛び蹴りが、ボマーの身体へと突き刺さる。

 

「うわああッ!」

 

 ボマー……美咲は強制的に変身を解除してしまう。

 そのまま地面をごろごろ転がる。

 

「君の話は少し聞いたけどさ、頂点に立ちたいんだろ? なのにそんな無様を晒すのかい?」

「……ッ!」

 

 美咲は口元を歪めながら、拳を叩きつける。

 

「はあ……僕は遥を殺す為に、こんな奴で手を汚さなきゃいけないのか」

「こんな奴……」

「そう言われてもしょうがないよね。大口を叩く割に大した事なかったわけだし」

 

 菫は煽り続けた。

 

「悪いけど、今の君じゃあ僕が直接手を汚す価値はない。君はあとで蒲生や明人が殺すさ」

「……」

「ああ、言っておくけど多分警察に僕らの悪事を説明した所で無駄だよ。突然変異体というのは希少だ。ごく限られた人間しか、その存在に気付いていないんだから」

「そんな事しませんわ……貴女は私が……」

「……はあ」

 

 菫は飽きたと言わんばかりの表情を見せてから背を向けて、歩き出す。

 

「また学校で会おう。あと何回会えるのか分からないけど」

 

 その背中を見て美咲に出来たのは、痛みに抗い、拳を握りしめる事だけだった。

 

 


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