浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第九十三話

 

 美咲に頼まれ、福沢裕太の代わりに美咲の父親の店で勤務を終えてから、一号は美咲の家へ訪れた。

 彼女の部屋の扉を数回ノックしてから、ゆっくりと足を踏み入れる。

 

「……!」

 

 そこにいたのは、身体中に包帯を巻いていた美咲の姿が。

 

「あ、おかえりですわ」

 

 何事も無かったかのように、笑顔で一号を迎える彼女。

 

「……その姿は……」

「負けましたわ。手を汚す価値すらないと言われて、生き延びましたが……」

 

 悔しい感情を必死に押し殺して話す美咲。

 

「すまない……俺がそばにいてやらなかったせいで……」

「良いんですのよ。それにあの場にいては、貴方も危険でしたわ」

「だが……」

「大丈夫ですの。今回負けても、次勝てれば良いんですの。貴方は貴方の心配をすれば、それで良いんですの」

「……」

 

 美咲は痛みを堪えながら立ち上がる。

 

「貴方の言った通り、やはりあの人は危険ですわ」

「ああ……」

 

 本当なら、今すぐにでも彼女に戦いをやめて欲しい。

 しかしもう、取り返しのつかない事を彼女はした。

 彼女を守るなら、刺し違えてでも菫を止めるしか……。

 

「大丈夫ですの。私は絶対に死にませんわ」

「……」

「これまでどんな戦いでも生きて帰れた。だから、今度だって生きて帰れますわ。だから貴方は、今から菫さんを取り戻せた後の日々を楽しみにしていればそれで良いんですの」

 

 美咲は一号の頭に手を乗せて言う。

 まるで子供を撫でる母親のように。

 

「それに、諦めたくありませんもの」

 

 美咲はそう言って、窓の外を見る。

 

※※※

 

 夜十一時。

 二号は廃ビルの屋上の壁に身体を預け、月を見上げて笑みを浮かべていた。

 

「……」

 

 光のない赤い瞳に、月の光が反射する。

 丁度そのタイミングで、通信が入った。

 言わずもがな、菫からだ。

 

『僕だ』

「よう、何の用だ?」

『そろそろ君に、彼を処分して欲しい。でなければ、他の者に一号を倒させるよ』

「おいおい、まだこいつは目覚めてねえんだぞ」

 

 やれやれと笑いながらそう言うが、菫が重い声で言う。

 

『そうか……君もその程度』

 

 諦められた声に、二号は眉を上げて気丈に答える。

 

「そこまで言われちゃあ仕方ねえな。少し荒療治になるが、何とかこいつを起こしてやるよ」

『それでいい……。頼んだよ』

 

 通信が切れる。

 

「やれやれ、人使いが荒い奴だな……」

 

 二号はムラマサドライバーを装着した。

 

『ムラマサ!』

 

 端末を操作し、構える。

 

「変身」

 

 端末を取り付けた。

 

『御意! 出陣! 仮面ライダームラマサ!』

「さてと」

 

 二号と裕太の精神を半分融合した状態にしてから、二号はもう一度笑う。

 

 




次回予告

美咲「次回から物語が大きく動くらしいですわ」
初「え、これマジかよ」
美咲「何見てるんですの?」
初「悪いこの脚本一人用だからお前には見せられねえ」
美咲「意味が分かりませんわよ見せなさい!」

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