浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
その後、美咲達は遥と共に美咲宅へと向かう。
成音が蘇我高校から持ち出した資料を準備し、美咲達は全員で円を作って座り、遥が仕切り始める。
「では、今までの状況を整理するぞ」
次いで成音が、最初に言う。
「まずこの戦いが始まったキッカケは、遥さんの幼馴染が殺害された事よね?」
「ああ。司法解剖の結果でも、凶器が特定出来ず、自分で調べても現代兵器であの傷は到底生み出せないと思ったからな」
「それで……その犯人を探し出して罪を償わせる為に、遥さんは自分の技術を手に蘇我高校の教師になったわけね」
「そうだ」
少しばかり後悔の表情を浮かべる遥。
「次にだけど、会長はどんな経緯で仮面ライダーボマーになれたの?」
「あ、そう系そう系! ウチもよく知らない系」
「確かにちゃんと話した事ありませんわね。私は……」
一号の肉体に入っていた裕太からボマードライバーを受け取り、アーミードライバーを使用していた蘇我高校の生徒を倒した所から全てが始まったと話す。
「なんか凄くヒーローチックね……話盛ってないわよね?」
「盛ってませんわよ!」
「話を戻すぞ。そこで私は蘇我高校の科学部員にフレイムシャワードライバーを渡し、あの学校の生徒を利用するように頼んだ」
「それであたしに頼みに来たわけね」
成音が腕を組む。
「ああ、そういう事になるな」
「あの後、蘇我高校の生徒会長……足利明人が出て来たわよね」
「私はあの人に勝てませんでしたわ」
「ソードドライバーは旧式のドライバー故、ボマードライバー相手にあそこまで立ち回れるのは中々の実力と言える」
「この資料にもそう書かれてるわね。初期型だって」
「その後三年の前田が、ホースドライバーを持ち出し、六角美咲に戦いを挑むが失敗。予定通り、蘇我高校との決戦で美咲と成音組とヴィーダが戦う事になった」
美咲達はあの時の事を思い出す。
あれは蘇我高校との決着をつける為の戦いだったが、同時に遥達を狙う者がいる事を知るキッカケにもなった。
「ハイドロフォームとなったボマーのおかげで、私達はどうにかなったが、あそこで蘇我高校の生徒達は私のせいで怪人化し……」
「裕太さんの人格が一号さんから抜き取られて二号さんの所へ」
美咲が少し俯きながら言う。
「その後、一号や二号を動かしている者によって蒲生や明人を洗脳され、美咲達はそれと戦った。二号によって、福沢裕太本人はすでに死んでいる事を伝えられる」
「ここまでが今まで起きた全てね」
成音が呟く。
「遥さん、相手の正体に何か心当たりはないの?」
「そうだな。私と同じくヴィーダのような人工突然変異体を作れて、尚且つ人の脳波を操作する事によって洗脳やスワップも思うがままに出来る。恐らく科学者で、尚且つ突然変異体の研究に従事している者だな」
美咲がその言葉に対して質問した。
「突然変異体の研究は、世間でどの程度知られているものなんですの?」
「そもそもの話、突然変異体の存在は希少だ。ある程度は遺伝もあるのだが、全てが全てそうでもない」
「つまり……」
「突然変異体の数の少なさ故に、都市伝説レベルでしか世間で存在が知られていない。だからこの研究をしている者は百にも満たない」
「逆に言えば、その中に必ず犯人がいるって事になるわね」
成音が冷静に言う。
「その中にいるとして、あとは動機だな。私の幼馴染や私の発明品、そして私自身を殺さなければならない程の動機が何なのか。そこまで分かれば、大体犯人が絞れる」
「……」
美咲は遥の言葉を聞いて、菫と話した時の事を思い出す。
彼女は狩野遥が許せないから戦っていると言っていた。
詳しく聞く事は出来なかったが、もし遥に何か思う所があるとしたら。
「遥さん」
「なんだ?」
「遥さんの友人という説はありませんの?」
名前は出さずに、抽象的に問いかけてみる。
「私の友人?」
「ええ。決してあり得なくはありませんの」
「会長にしては中々鋭い質問ね」
感心しながら美咲を見る成音。
「ウチも理解するの難しい系……」
「ヴィーダモ……」
「二人に関しては外に出てても良いのよ……?」
会話についていけてない二人を見て呟く成音。
「友人で同じ研究をしている者なら心当たりがある」
「本当ですの?」
「ああ。高校時代からの友人、戸間菫だ」
次回予告はカットです