浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー 作:門矢心夜
遥はそう言い残し、急いで部屋をあとにした。
他の面子も敵の正体について考えてみると言い残し出て行き、美咲のみが残って、一号の帰りを待つ。
「……」
「ただいま」
仕事から帰った一号が、部屋に入ってから扉を閉める。
「おかえりですの」
「俺に用があると聞いた。用件はなんだ?」
「実は……」
美咲は一号に、成音達が真実に近付きつつある事と、黒いボマーの話をした。
「そうか」
「黒いボマーのドライバーが遥さんの最高傑作で、今の私達に到底敵わないのであれば、遥さんにだけでも、真実を伝えた方が良いと思いますわ」
「……確かにそうかも知れないな」
一号は俯きながらもそう告げる。
「でもその場合、貴方の存在をどう認めてもらうかですわね」
「いや、俺はあくまでお前個人の仲間という事にしておいた方が……」
「それでは、もし私が倒された時に貴方が疑われてしまいますわ」
「……」
「貴方が皆に受け入れて貰えない事を心配しているのは分かりますが、どうしても私達と行動する以上、お互いの信頼は必要ですわ」
「信頼……」
一号は静かに呟く。
「それに、貴方が犯した罪は……貴方自身が全て悪いわけではありませんの。その罪と向き合うと決めたなら、きっと遥さんも貴方の力になってくれると思いますわ」
「……」
「大丈夫ですの。私が何とか説得出来るように頑張りますわ!」
そう意気込む美咲。
※※※
というわけで、美咲は遥を家へと呼び出す。
「私だけを呼ぶとは……珍しい事もあるものだな」
「あー、実は貴女に話す事が二つ程あるんですの」
「私に話す事?」
遥が眉を潜めた。
「実は私、遥さんを狙う人の正体を掴みましたの。というより、もう話して戦いましたわ」
「……! それは誰なんだ!」
冷静さを失った遥が、美咲に迫りながら問いかける。
「昨日成音さんが推理していた内容は正しかったんですの。貴女の幼馴染や裕太さんを殺すように指示したのは、戸間菫先生……」
「……そう、なのか」
遥はショックを受けたような顔をしてから、そう答えた。
恐らく彼女自身は、それを一番否定したかったのだろう。
「ある人から聞いて、私はその真実に辿り着いて戦いましたが、私は負けましたわ」
美咲はまだ痛む傷を押さえる。
「……」
「もう一つの要件は、そのある人を貴方に紹介する事ですわ」
美咲が真剣な顔でそう告げてから、扉の外で待っている筈の一号に入るように言う。
「……」
静かに一号が、美咲の部屋へと入って来た。
「お前……」
遥が一号を睨みつけるが、一号は粛々と両目を閉じて座る。
「一号さんが、私に教えてくれたんですの」
「……こいつを連れてきて、どうするつもりだ?」
「私達と共に戦いますの。成音さんや優香さん、ヴィーダさんを危険な目に遭わせずに戦う為にはこれしかありませんの」
「話にならないな。よりによって、そいつを仲間にしようなど」
そう言って立ち上がる遥。
「気持ちは分かりますの。ですが今の彼は……」
「もう良い」
一号が止める。
「一号さん……」
「狩野遥」
「……」
一号が遥の名を呼ぶ。
「俺は決して、自分が許されるべき存在でない事は分かっているつもりだ。せめてもの償いとして、菫は俺達が止める。だから……」
遥が一号に近付いて、腹に拳を叩きつける。
「……」
「殺す事を指示したのが菫なのは分かった。決して……それを認めたくはないがな。だが、私は何よりお前が許せない。お前のせいで、私の大切なものが壊されたんだからな!」
遥は涙を流しながら、ロードドライバーを取り出す。
『ROAD DRIVE READY?』
「変身」
『COMPLETE』
端末を取り付け、遥は指揮官怪人へと変身する。