浅井三姉妹のバカな日常外伝 仮面ライダーボマー   作:門矢心夜

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第九十八話

 

「……!」

 

 一号も、咄嗟にサックドライバーを取り出す。

 

『SMASH DRIVE READY?』

「変身」

『COMPLETE』

 

 その身体をサック怪人へと変えてから、窓を開けて外へと逃走。

 

「待て!」

 

 指揮官怪人も、窓から外へ。

 そのままどこかへと移動していく。

 

「変身ですわ!」

『COMPLETE』

 

 ボマーも、二人を追いかける。

 

※※※

 

 屋根と屋根を移動しながら、二人は戦いを続ける。

 ボマーは二人を追いかけていた。

 

「お前のせいだ。お前が殺したせいで、私は二度とあの子の顔を見られなくなったんだ!」

 

 指揮官怪人は兵を召喚して、サック怪人へと銃撃させる。

 それを何とか回避したサック怪人が、顔を歪めていう。

 

「ああ……俺のせいさ。だからこそ生きてその罪を償う。美咲もそれを望んでくれているから」

「生きて罪を償う? ふざけるな、そんな事をした所であの子は返ってこない。お前がするべき事は、私の為に今ここで死ぬ事だ!」

 

 間合いを詰めて、指揮官怪人はサック怪人へと剣を振り下ろす。

 何とか拳で剣を受け止める。

 

「……ッ!」

 

 サック怪人は反論すべき言葉を失う。

 彼女の怒りは尤もだ。

 サック怪人の願いなど、傍から見れば人殺しのわがままに過ぎない。

 美咲がいくら許しても、大切な人を殺された者がそう簡単に許してくれるはずがなかった。

 

「やめなさいな!」

 

 ボマーが間に入って、二人を弾く。

 

「私が諦めかけていた一号さんの願いを叶えると決めたんです。もし一号さんが生きる事を許さないというのなら、まず私を殺しなさいな」

「六角美咲……お前の考えは欲張り過ぎだ。私の願いとこいつの願いを両立するなど、どうすれば出来るというのだ!」

「それは私にも分かりませんの! けど絶対にやりたい……やらなくちゃいけないんですわ!」

 

 ボマーはバットを下ろして言う。

 

「私に敵も味方もありませんの。全力で何かの為に一生懸命生きる人なら、皆仲間で、ライバルですの。だから幼馴染の為に手を尽くす遥さんも、菫さんの近くで生きる為に菫さんの考えを変えたいと足掻く一号さんも、どっちもかけがえのない仲間ですの!」

 

 指揮官怪人が俯きながら、変身を解く。

 やるせない顔で、こう言った。

 

「もう良い」

 

 泣きそうなのを堪える遥。

 

「遥さん……」

「もう好きにすると良い。今の私じゃお前に勝てない。それにそいつを殺した所で、あいつは返ってこないしな」

「……」

「ボマー用のアイテムの開発に戻る。二度ともう、そいつを仲間にしようなどと言うんじゃないぞ」

 

 遥はそう告げて、その場から去っていく。

 

「……」

 

 美咲も変身を解く。

 その背後から、声が聞こえた。

 

「これで分かっただろ」

「……」

「皆が皆、お前のように強いわけじゃない。お前は確かに強いし、どんな困難が相手でも全力で立ち向かう事が出来る。俺はお前のそういう所に救われたが、大抵の奴にお前のような心はない。大切な者を殺した人を仲間として受け入れるなど、無理に決まっているんだ」

 

 美咲は俯く。

 

「ひとまず帰ろう。あまり外に長居するのは危険だ」

「ええ……」

 


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