跳梁跋扈の森を京ティメットとのんびり歩く。
さすがにヴォーパルバニーが出たら多少集中するが、それ以外はもはや雑魚。京ティメットにいたってはレベルカンストしてるからコイツもコイツで暇を持て余す。
雑談しながらの気楽な道中だ。
「サックサクだね。ま、サンラクにとってはここじゃこんなもんだろうけど。……ねえ、結局あのサバイバアルと仲良い理由って別ゲーで繋がりがあったからってこと?」
「まあそんな感じ。というかなんだその、あのサバイバアルって言い方は。アイツなに、シャンフロでもなんかやってるのか?」
「謂れは知らないけどタイマン無敵って呼ばれてたりするよ」
「ぶっほっ。っふ、ふふーん? そのへんもっと早く知ってたら本人に直接聞くとこだったな、くく。
……タイマン無敵ねえ。なるほどなあ」
分からないでもない。ステータス差を埋めたところで、よーいどん、でやり合ったならそうそう勝てない予感はある。
そもあの鯖癌で正面からアイツと渡り合えるやつは、さて何人いた事やら。俺が完全に不意を打っても3度に1度は
それこそ、今は亡き富嶽のじいさまとも案外いいとこまでやり合えそうなんじゃ、と考えてしまうくらいに。口にしようものなら京極がまるで限界オタクと化して面倒だから間違っても言わないが。
「ねえ。ところでいま、シャンフロ“でも”って言ってたけど、それについて話す気はないの?」
「あ、この道中もそうだが最初に言っとくけどボス戦でも絶対手え出すなよ。
元々そんな気はなかったが尚更だ。なにせアイツラがいるとわかった以上、1度でも介護されようものならこの先シャンフロやってる間、ずっと何言われるかわかったもんじゃねえからな」
「どーせ必要ないでしょっ。……なんだい、はぐらかしてさ。ふんっ」
拗ねたか。まあこればかりは、鯖癌についてはおいそれと話せない。
内容がちょっと、いくらか刺激が強いからなあ。
仕方ねえ。
「今度の道場が休みの日、あけとくよ。何にも予定入れないで。何がしたいか決まったら連絡くれ」
「……ふーん? ま、考えておくよ」
「おう。よろしく」
素っ気ねえ返事だけど、口元がニヤついてるあたりわかりやすいなお前ほんと。
よしよし──ぃよっっっっしっ!!
拗ねた京極は修羅と化した國綱さんを喚び、泣いた京極は羅刹へ変じた國綱さんを喚ぶ。道場の皆はこれを修羅綱、羅刹綱と呼んでいてなお極稀にその上が──
「──ボスか」
「ねえ。煽られるのは癪としてもバッサリやって次に行っちゃわない? 僕ヒマなんだけど」
「ヒマにするのは悪いとは思う。けどその時その時の俺が仕留めないと面白くないんだよ。
だけど安心しろ、退屈はさせねえさ。見逃すなよ京ティメット?」
「へえ。じゃ、期待してるよサンラク」
おうさ。
正面へと、その前へと進み出れば、プレイヤー1人容易く丸呑みにできそうな大口を開けて威嚇される。
が、だからどうした。
さあ貪食の大蛇さんよ。あそこに控えた俺の相棒が暇しないよう、なるたけ派手に踊ってもらおうか!
…………
くぁああああ──っ!!
「っ……た、確かに、退屈しなかっ、っぷくく……!」
「ええいなんだ糞攻撃って! 毒糞って!」
「ぷふふっ。く、クソゲーハンターらしくって、いいんじゃない?」
「そこを掛けるなっ」
クソゲーのクソはあくまで比喩だっ。
うええ気持ち悪っ。ってしまった俺回復アイテム、
「あ、はい。これ解毒薬とあと回復POT。どうせ用意してないでしょ。このくらいの手助けは構わないよね?」
ぐ。
いや。
でも。
………………たしかに?
しかし…………。
「…………、………………っ…………たすかる」
「葛藤しすぎでしょ。あ、待った近づかないで。ここ置いとくから」
「ゲームだぞ」
「身綺麗ならともかく、そんな有り様の君にはあんまり近付かれたくないよ。いくらゲーム内でもね」
へいへい。
「ちゃんと洗ってからならい……つだって」
「あん?」
なんだ口籠って。んー解毒薬のミント感よ。そういやライオットブラッド・アンデッドも確かこんな味だったか。今家にあったかな……。
「──とっととシャワーくらい浴びてくれないと汚くって仕方ないなって話だよっ」
「わかったわかった。ふーん、シャンフロってシャワーあんのか」
「ぇ……、──っ」
回復POTをパキンッと。おお一気に体力全快。これ、絶対後半の街で買う類のだ。贅沢なことしてんな俺。今後はちゃんと薬草とかも準備しねえと。
って、おお、よく見りゃレベル2つ上がってるな。ボスソロ討伐はやはり経験値がうまかった。ステータスポイント、……今は止めとくか。
まず京ティメットの言う通り宿屋にいって、セーブがてらゲーム内のシャワーでも浴びて落ち着いてからに──
「……ん?」
シャワー? とするとインナー着けたままになる訳だよな、倫理的に。
ただそれ、このリアリティで? 存在してる方がより現実的だが、プレイヤーが使えるとしたら逆にそういう制限のせいで違和感に繋がるような要素だな。
はて。
「なあ京ティメッ、てあれ? おおーいっ!」
京ティメットのやつ、いつの間にか随分と離れて森をほぼ抜けて吊橋手前にいやがる。
なんなんだ急にどうした?
ともかく急いで追い付くか、ってどうして俺が走り出したらおまえも走るんだよおいっ!
「スタミナもAGIも違いすぎてまるで追いつけんっ」
ただ俺を完全に置いてくつもりはないらしいな。チラチラと振り返っては距離を保ちつつ俺からギリギリ見える位置取り。
いやお前なにがしたい。置いてくなら置いてけ、そして止まるなら止まれ。追いかけっこなんぞ俺は望んじゃいねえぞ!
結局セカンディルの宿屋まで、付かず離れず、声が絶妙に届かない、そんな距離を維持されて。よくわからん追いかけっこをするハメになるとは……。
先に宿屋に入った京ティメットを追いかけるように俺も入り込むも、やはりというかヤツの姿はない。
ひとまず部屋を取って、セーブして、と。
……なんだったんだいったい京ティメットのやつ。
「あれ、ログアウトしてる?」
フレンドリストには暗く浮かぶ【京極】というプレイヤーネーム。
おいおい、ん? メールだ。
「急用思い出したから落ちます、ねえ。ふーん?」
……約束のこと忘れないで、ともある辺り。怒ってる訳じゃない、か?
ふーむ。まあいいか。
まだ始めたてのプレイヤーに付き合うのもそら暇にもなるだろ。気持ち早く、とっととレベル上げて進めるか。
それはそれとして自身の強化には素材も金も要る。
「採掘が素材と金策にちょうどいいんだったか」
ピッケル買って行ってみるか。
しかし……何か忘れてるような?
なんだっけ。まあ忘れてる位だし、いいか。
誕生日おめでとうございます京アルティメットさん!!
打てば響くタイプだよねえ楽しそう付き合うの。