不思議な女医―八意永琳が俺に妹紅のことを語ってくれてから早数日。
俺は、自分の中に渦巻く悩みを解決できず鬱屈とした日々を送っていた。
妹紅が明るく笑っていられる理由、俺が起きた後、慧音がいなかったこと・・・
そして、八意がなぜ、俺の名前を知っていたのか。
記憶を思い起こしてみても彼女に会ったことは一度もないように思えてしまう。
彼女のような特徴的な服装なら一度見ただけで脳裏に鮮明に焼付く。
たとえ、あの服装でなかったとしても・・・銀色の髪を持った人などこの世界の歴史をさかのぼってもただ一人の例外を除いて存在し得ないだろう。
緑であったり、桃色の髪を持ったものは嫌というほど見かけたが・・・
なぜ、俺の名前を知ったのか。
誰かが情報を提供したのか。それとも何かを落とし、そこから情報を得たのか・・・。
俺は思案したが、後者の考えはすぐに切り捨てた。
幻想郷に来るときは着の身のままで来て・・・服以外には何も持ち合わせていなかったからだ。
と、なると・・・誰から情報を得たかということだ。
俺の名前を知るのは3人。
八雲紫と上白沢慧音、藤原妹紅だ。
妹紅は八意の話を聞く限りは白だろう。
残るは二人なのだが・・・どちらも理由としてあげられるものがない。
そうなると、物を落としたのが理由になるのだが、これは矛盾してしまう。
理由を考えているうちに堂々巡りになってしまうのを恐れた俺は、近くに置かれていた新聞を手に取った。
新聞の名前は『文々。新聞』と書かれていた。
手に持った新聞をめくる。
そこに書かれていたものは、ほとんど幻想郷で起こった取留めのないことではあったが頭の中を整理させるには十分なものだった。
夢中になった俺は、新聞の内容に目を通していく。
新聞の中程まで目を通したとき・・・
俺の手は不意に止まった。
そこに書かれていた見出しは・・・
『人里に外界からの人間現る!?』
と、あった。
その中身は・・・先日、人里に見慣れぬ人がいるという情報が妖怪の賢者を通じて入ってきた。
詳細は不明だが・・・近いうちにその人物に直接あたろうと思う。
と書かれていた。それを見て・・・
「アイツの仕業かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
と叫んだ。
これは後に聞いたことなのだが・・・このとき、俺は寺子屋の奥にある母屋の縁側にいたが、その声は寺子屋を揺るがすほど大きなものだったらしい。
「あややや・・・大きな声の持ち主ですねぇ・・・」
新聞に夢中になっていたせいか目の前に来ていた少女の存在に気づくことができなかった。
「君は?」
「私は文々。新聞の筆者であり、記者で鴉天狗の射命丸文と言います♪
気軽にあややとでも呼んでください♪」
「ふ~ん・・・それで射命丸は何をしに来たんだい?」
「あ・・・呼び方のほうはスルーですか・・・」
「いくら、呼んでも良いと言われても・・・礼儀としては宜しくないものに当たるからね。」
「そうでしたか。興味が湧いてきましたね~!」
「それで・・・要件は?」
今思えば、射命丸文という人物に対してはこの発言は最も避けておくべきものだったのかもしれない。
「なら・・・簡潔的に言わせてもらいますね。
貴方を取材させていただけないでしょうか?」
「ふむ・・・」
「ここで、幻想郷一の情報網を持つ私と伝手を持っていて損はありませんよ?」
渋る俺に射命丸は畳み掛けるようにしかけてくる。
「受けたらどうだ、吉直?」
「慧音・・・」
「文の書く記事は脚色が加えられて事実から離れてしまうときもあるが
彼女が嘘偽りを書いたことは一切ないからな。」
「あやややや・・・」
そこに慧音が現れて助け船を出してくれた。
もちろん射命丸へ釘をさすことも忘れていない。
「酷い言い草ですね、慧音さん」
「でも、脚色を加えているのは事実だろう?」
「否定はしませんが・・・」
「分かった。」
「え・・・?」
「射命丸、取材の依頼・・・受諾させてもらうよ。」
俺が了承の意を伝えたら、彼女―射命丸文―は意外そうな顔をしていた。
そんなに意外なことなのだろうか?
「あ・・・」
「あ?」
「ありがとうございます!!」
射命丸は俺の両手を掴んで勢いよく上下に振り回した。
妖怪と人だと当然妖怪の方が力は強いわけで・・・
俺は何度も宙を舞うこととなった。
皆様、お久しぶりです。 八意です。
前回から約2か月。
テストと自動車学校の教習で書こうにも書けませんでした。
心より深くお詫びを申し上げます。
この話も3日前から書き始めたのですが・・・
葛藤と苦悩を重ねるあまり遅々として筆が進みませんでした。
こんな作品でも読んでくださる方々がいるのは幸せというものです。
ありがとうございます。
さて、次回はなるべく早くあげたいですがもう一つの作品と並行するので時間がかかるかもしれませんのでご了承いただけると幸いです。