夢現マイリトルマミー ~お嬢様学校のひねくれお姉さんが美少女ミイラを再生する話~   作:みらぁまん

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1-11 追撃パパラッチ

 

「これで今年のミモリツァー賞はあたしがいただきって寸法よぉ~~!!」

 

 私と捨子さんのあられもない姿を盗撮した新聞部員が、喜び勇んで廊下をかけて行く。完全にしくじった。騒動を収めるための催眠実験をしていた筈が、これでは状況が更にややこしくなるだけだ。

 

「……はっ、待てこのっ!」

 

 何とか我に帰った私はパパラッチを追いかけようとしたが、催眠にかかった捨子さんは尚も私の靴にキスしようと足首を掴んで来る。切羽詰まった私は捨子さんの土手っ腹をローファーの爪先で蹴りつけた。

 

「おぶぇっ!?」

 

 ごめん捨子さん。後でたい焼きでも奢るから。撃沈した捨子さんを放置し、私は引き戸を押し退けて追跡を開始した。スカート丈を詰めてその下にジャージを穿いた特徴的な着こなし……あの子は確か、既に私に何度か取材を仕掛けて来ている新聞部の自称ニューホープだ。

 

「ふざけんじゃないわよ一年坊っ!」

 

 インコースを攻めて角を曲がると、目標はまだ十数m先をよちよち走っている。案外足が遅い。カメラを庇っている所為か。

 

「そのカメラを……寄越せーっ!」

 

「げえ~っ! ゆせ様足速っ! てやんでぇ、ここで捕まって堪るもんかい!」

 

 江戸っ子かお前は。いちいち癪に触る後輩を猛追し、私はいつしか校舎一階に下りていた。階段を出てすぐの角で、一瞬目標の姿が見えなくなる。私も続いてカーブすると、廊下の先に目標の姿はない。

 

(逃げられた?……いや、こっちか!)

 

 この廊下は中庭に面している。私は周りのお嬢様方がざわつくのも構わず窓を開け放ち、上履きで窓枠を乗り越えて中庭の土に降り立った。急ぎ辺りを見回すと、今まさに目標が百葉箱の中にカメラを隠そうとするのが目に入った。

 

「こん畜生そこを動くなーっ!」

 

「いいっ!? あわわ八方塞がり……!?」

 

 目論見が外れ狼狽した目標は瞬時にフリーズ。私は走り出した勢いそのままにタックルを繰り出し、にっくきパパラッチを芝生の上に押し倒した。

 

「ハァ……ハァ……こ、降参。あたしの負けですゆせ様……さあ煮るなり焼くなり好きにしやがれってんでい!!」

 

「ぜは……ぜは……ああもううるさい……わかったから、ちょっと顔貸してもらうわよ」

 

 久々の全力疾走で私の息も絶え絶えだ。体中に付いた芝を払うためにも、私たちは体育館にある小さな更衣室に向かい、そこで一息ついた。新聞部のホープこと五郎丸弥栄ちゃんは、素直に私の前でデジカメのデータを削除してくれた。

 

「いやぁ大変失礼しました。部のお姉様方の鼻を明かしたい一心でつい気が早っちまいまして。お二人の秘密の時間を邪魔するなんて野暮の極み!って奴でしたね」

 

 全然違うし、その軽い喋り方どうにかならないかな。気勢を削がれちゃうから。

 

「でも記事にしたかったな~。学年を超えて吹き荒れる恋の嵐、その狭間で営まれる二年生同士のイケナイ主従関係……大当たり間違いなしですって!」

 

 いや知らんて。しかしメダルのことを弥栄ちゃんに話す気にはなれず、事情を説明できない私に反論の術はなかった。

 

「捨子様はあの顔立ちですからね、元々一年生にもファンが居たんですが、今回のことでゆせ様に注目し始める人もチラホラって具合で! ブーム来てますぜゆせ様~」

 

「冗談やめてよ。……てかさ、他人の人間関係でよくそんなに盛り上がれるよね」

 

 かねてからの疑問をふと口にすると、弥栄ちゃんは芝だらけのジャージを下ろしながら「う~ん」と首を捻った。

 

「ゆせ様はそうでもないようですが、ここの華やかな気風に憧れて入学する人って結構居ましてね。幼稚舎から居るような生え抜きは上から伝え聞いて尚更……でも皆が皆メロドラマの主人公みたくなれるわけじゃない。人気者同士の惚れた腫れたを物語のように楽しむのが、大多数にとってのミモ女ライフでしょうねぇ」

 

「……それを支えるのが、あんたたち新聞部ってわけ?」

 

「ええ、その通りで。今回は潔く引き下がりますが、ゆせ様のことはこれからもマークさせて貰いますよ。あたしの性分ってのもありますが、記者の端くれとして矜持みたいなのもありますんで」

 

 制服の上を脱いで芝を振り落としながら、弥栄ちゃんはニカッと笑った。

 

「……そう」

 

 弥栄ちゃん、この子もきっとそう悪い子じゃないんだろう。明るくさっぱりしてて、決して人を威圧しない柔らかい子。でもごめん……私は既に決めてしまったんだ、メダルによる催眠術の使い道を。

 

「あのさ弥栄ちゃん、ちょっとこれ見て」

 

「はい、何でやんしょ……あ、れ…………?」

 

 メダルをかざし、弥栄ちゃんを眠りに落とした。更衣室のベンチに彼女を寝かせ、私は高ぶる息を整える。

 

「本当にごめんね。起きてる時はきっと謝れないと思うから、夢の中で聞いて欲しい。五郎丸弥栄さん……あなたにはひとつ、私のために働いて貰います」

 

 

《END…?》

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