夢現マイリトルマミー ~お嬢様学校のひねくれお姉さんが美少女ミイラを再生する話~   作:みらぁまん

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1-12 ペナルティ

 

 私はつくづく最低な人間だと思う。芝だらけになった服を丁度脱いで芝を落とすところだった弥栄ちゃん……彼女がその状態まま催眠にかかり、肌も露わな姿で更衣室のベンチに横たわっている。色気のない子だと安心していた癖に、こうして見ると生唾が湧いてくるのを止められない。

 

(妙な気を起こすなよ湊ゆせ……これは私の平穏を守るため。捨子さんが玲愛ちゃんと機嫌よく付き合えて、私に火の粉が飛んで来ないようにするための処置なんだから)

 

 弥栄ちゃんの頭を少し持ち上げ、私の膝の上に乗せる。私の声と息遣いが一番よく届くポジションで、夢現の弥栄ちゃんにそっと語りかける。

 

「五郎丸弥栄さん……いいですか? あなたの記者としての情熱、私はいたく感服しました。でも、あなたが校内新聞で煽り立てようとしている内容は事実とは全く異なるし……私にとって本意でもありません」

 

 高圧的にならないよう、丁寧な語り口で徐々に同調を促すよう試みる。催眠術の心得なんてないから完全にアドリブだが、弥栄ちゃんの安らかな寝顔を見るにそう間違ってもいないのだろう。ついでに髪を梳くように頭を撫でてやると、弥栄ちゃんの口角が“にへらっ”と上がった。

 

「そこでです……五郎丸弥栄さん。私は代わりのニュースを用意しました。眠りから覚めたら、今から言うことを記事にするのです。後ほど、起きているあなたにも私からお伝えしますから……焦らず落ち着いて聞いてくださいね。では、言いますよ……」

 

 新聞部が発表しようとしている記事は、大方私と玲愛ちゃんとの対立関係を大々的に打ち出すものだろう。そんな記事が出れば私が悪者になるのは必定、おちおち居眠りもできなくなる。それを避けるため、弥栄ちゃんには私に都合がよく、それでいて派手な取材結果を持ち帰って貰う。即ち、玲愛ちゃんに対する私の全面降伏だ。

 

「あなたたちの見ていない所で……厳正な話し合いなり壮絶な決闘なり色々あったのです。そこは自由に考察してよろしい。とにかく……私はこの件から手を引くということを……よくよく宣伝しておくこと。わかりましたか? わかったら“はい”と答えて」

 

「……ふぁい」

 

 しばらくは周りに追及されるだろうが、これでいい。玲愛ちゃんに動き回られて場が過熱する前に、先んじて結論を出してしまえば噂の収束は時間の問題だろう。元々私の与り知らぬ問題、私から行動を起こすのは癪だったのだが……これきりで済むなら良い落としどころだ。

 

(さて……後はもう一度メダルを見せて覚醒させるだけか。うふふ……カミラには感謝しなきゃね。まさかこんな打開策を授けてくれるなんて。帰ったらたまには甘い物でもあげてみようかな)

 

 感慨に耽る私だったが、いざ弥栄ちゃんを起こそうとした時、ひとつの懸念が生まれた。彼女は一年生……よしんば中等部からの古株だったとしても新聞部においては末端に過ぎない。恐らくやり手揃いの先輩を相手に、弥栄ちゃんが自分の取材結果をそう簡単に押し通せるものだろうか。

 

(編集を納得させるには根気が必要……その可能性を考慮して、弥栄ちゃんの心に何か埋め込んでおく必要があるかもしれないわね。例えば……ペナルティとか)

 

 昼休みはまだ半ば。歓談し戯れるお嬢様方の声を遥か遠くに聞きながら、私は更衣室のドアに鍵をかけた。

 

「……弥栄ちゃん。私、今したお願いは絶対に聞いて欲しいの。もし約束が反故になるようなら……後でひどいからね?」

 

 気持ち良さそうにまどろんでいる弥栄ちゃんの傍らに再度腰掛け、私は彼女の全身を見た。年相応にかさぶたやニキビ跡の残る、活発さを絵に描いたような肢体。あばらの浮いた脇腹にそっと手を触れると、くすぐったそうな息遣いが聞こえた。

 

「頑張らないとどんな罰があるか、先に教えといてあげる。弥栄ちゃん自身の体で覚えて……頭では、どうか忘れて欲しい」

 

 私はベンチに上がると、弥栄ちゃんに覆い被さった。だらしなく開かれた彼女の脚の間に膝を進め、折り重なるようにして無垢な寝顔を見下ろす。スカートの中に手を入れ、ピンクのショーツに手をかける。

 

「気持ち悪いだろうけど……我慢してね」

 

 私の落とした影の中で、弥栄ちゃんが身をよじり、息を弾ませる。その光景を私は忘れることはないだろう。

 

 

 それから一両日が過ぎ、私と捨子さん、そして玲愛ちゃんの三角関係を特集した校内新聞が発行された。私からの敗北宣言を伝え聞いた玲愛ちゃんによる謙虚な談話も掲載され、何もわかってない捨子さんに対するグダグダな質疑応答もおまけ程度に載った。この発表をもって本件にまつわる熱狂はピークを迎え、後は沈静化の一途を辿って行くことになる。

 

 尤も私はあれから一週間学校を休んだので、事の顛末は後から聞いたのだが。

 

 桜の季節、花弁のように降り積む自己嫌悪を残し、私による醜聞火消し作戦は完了したのだった。

 

 

《END…?》

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