夢現マイリトルマミー ~お嬢様学校のひねくれお姉さんが美少女ミイラを再生する話~ 作:みらぁまん
学校生活とは懲役期間のようなものだと私は思っている。私立ミモザ女学院……通称ミモ女においては尚のことだ。標高290mの学校から途中でフケるという選択肢はない。徒歩での下山を敢行するなら話は別だが、ふと居たたまれなくなった時に都合よく帰りのバスがあるなんてことはまずない。
その日、私はクラス中からの好奇の視線を浴び続けイライラが限界を迎えていたが、結局午後まで授業を受けて行儀よく下校した。足早にバス停へ急ぐ私に、数人の野次馬が併走して来る。
「湊さん、辛かったら辛いと言っていいのよ? 今夜は寮にいらっしゃらない?」
うるさい。いっぺん死んで来い。
「いいえ諦めてはいけないわ! 何としても羽生さんの心を取り戻すのよ! 私も微力ながら手助けしましてよ!」
何言ってんだ馬鹿。頭沸いてんのか。放課後までこんな調子だ。お前たちからすれば私なんて、いつも教室の隅で光合成している植木のようなクラスメイトじゃないのか。こんな時だけよくそんなに絡む気になれるものだ。それとも、同じミモ女の生徒だからお友達になろうと思えばいつでもなれるとでも思っているのか?
「ごきげんよう。さようなら」
泡立ちそうな喉の奥から乱暴にそれだけ絞り出し、私は脱出のバスに乗り込んだ。
(ごめん捨子さん。口で訂正するなんてやっぱ無理。ちょっと耐えられない)
もしこれが寮暮らしだったら、消灯時間まで安らぐ暇はなかっただろう。考えただけでゾッとする。
(捨子さんに言い寄った後輩ちゃんは寮生か……今頃大変だろうな。乙女の園での最初の春、運命の出会いを夢見てただけだろうにね。心から同情するわ)
生徒間の醜聞には事欠かないミモ女界隈……私と捨子さんの悲劇もニュースとしては遠からず賞味期限切れになるだろう。だが私は一日だって御免だ。そもそも脳天気な外野に週刊誌ネタの如くしゃぶり尽くされ、向こうの飽きたタイミングでポイと解放されるなんて屈辱的にも程がある。
「……ただいまお爺ちゃん。この家があって本当に良かったわ」
這う這うの体で帰宅した私は、祖父の肖像画に最敬礼。踵を返し納屋までザナの葉を取りに行った。もう一秒でも早くカミラを起こして触れたい。その一心で支度を済ませ、金庫室の扉も開けっ放しで棺にザナ茶をぶち込んだ。
「ふわぁ……おはよう、ゆせ。今日は何だか……はにゃっ!?」
身を起こしたカミラの脇に手を入れて勢いよく棺から引っこ抜き、あぐらをかいた脚の間にすっぽりと抱え込む。目を白黒させるカミラをよそに、私は彼女の纏った薄衣の肩紐をずらし、なだらかな稜線にむしゃぶりついた。
「んんぅ……どうしたのゆせ、今日はご機嫌斜めなの……? なんだか……あっ……首筋からピリピリする匂いがするわ……」
勝手に嗅ぐんじゃない。私は無視してカミラのデコルテ周りに顔を思うさま擦り付け、浮き出た鎖骨に唇を向かわせる。ニキビひとつないぷるぷるの肌……産毛の感触も頬に心地良い。たまらない。そうだこれがカミラだ。過剰なストレスの反動で、完全に我慢が利かなくなっている。
「いいわ……ゆせが欲しいなら全部あげる。だってゆせにはずっとここに居て欲しいもの。わたしも……ふふっ……わたしもゆせにいつも触って貰いたいもの」
私の首に腕を回し、カミラが吐息交じりに囁いて来る。それは全て私の望む言葉。まるで私が遠慮なく溺れられるよう、自制心を解く呪文を唱えているかのようだ。私はカミラの頭を両手で引っ掴み、彼女の唇に噛み付くような接吻を見舞った。
「んっ……んんんっ!……ふあぐ……っう……んちゅ……ぷあっ……ああ……ゆせ……んぐっ」
呼吸を奪うように口づけを繰り返し、温かい口腔に舌を差し入れて何度も蹂躙する。カミラの小さな鼻腔から苦しい息が漏れ、抱き寄せた薄い胸が激しく上下する。
「はっ!……はっ!……もっと……もっと頂戴? いっそ壊れるぐらいがいい……わたしのこと……壊して欲しいの!」
「くっ……言われなくても……っ」
いつしか私は着衣をはだけ、全身でカミラを味わわんとしていた。そして狂乱が過ぎ去った時、私は汗と涙で濡れそぼったカミラが生まれたままの姿で横たわっているのを、陶然として眺めていた。
やはり私にはこれが分相応なのだろう。無条件に私を求めてくれる無垢な恋人……うじうじと感傷に浸っているには、カミラの存在は魅力的に過ぎるのだ。
《END…?》