僕「キュアコーラルさん可愛すぎる」さんご「///」   作:HOTDOG

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4. 好きと、命

「ヤラネーダ――」

 

「――…………え?」

 

昼下がりの公園。

何の前触れもなく本当に唐突に、その化け物は現れた。

周囲には自分と同じく、清掃ボランティア活動に参加している少人数の老若男女。

過去に一度襲われている経験から――周囲より一瞬早く、この状況を理解した僕の口から大声が出る。

 

「みんな、逃げて――!!」

 

「ヤラネーダ――」

 

化け物が蠢き、何かを始める。

近くで腰を抜かしていた男の子を立ち上がらせ、背中を押して走らせる。

同時に反転。

化け物が『何をするかわかっていた』僕は、少しでも気を引くために近くの小石を全力で、化け物目掛けて投げつける。

 

一瞬、動きを止める化け物。

が、その間も僅か。取るに足らないと感じたのか、化け物は僕含めた周囲の人間を見下して、

 

「ヤラネーダ――!!」

 

眼を真紅に染めて、雄たけびを上げた。

知っている。

僕と、そして化け物の能力の効果範囲に入ってしまった逃げ切れなかった人たちから、生気のような何かが光となって抜け落ち、化け物の身体へと吸収される。

 

(……さ、寒いっ!)

 

二度と体験したくないと思った、この感覚。

何もかも、生きていることさえどうでも良いと思ってしまう、体力も思考力も奪われ棒人間と化す感覚。

身体を支えきれなくなり、前のめりに倒れ込む。

 

化け物が背中を向け、この場にはもう用はないと歩き出す。

命までは取らないのか――それでも、この状態で生きていくことなど可能なのか。

 

(……キュアコーラルさん)

 

彼女の姿を待ち受けにした、僕のスマホ。

それをお守りのように握りしめる。

化け物をこのまま返したら、僕も、周囲の人も、まともに生きることができなくなる。

プリキュアの誰かが来るまで足止めを。

一秒でも、“今”僕にできることを考えろ。

 

「……ま、待て」

 

力が何も入らない。

それでも、キュアコーラルさんを想えば、口先、指先は動かせる。

 

「……ま、待て」

 

顔をあげて、前を見る。

敵を睨んで、心の中にいるキュアコーラルさんにエールを貰い、這いずるように腕を出す。

 

「……ま」

「――――待って!!」

 

幼さの残る、可愛くも凛とした響く声。

僕の頭上を飛び越し、怪物の背中に飛び蹴りを入れる、可憐で綺麗なその姿。

 

「ヤラネーダ! 皆のやる気パワーは、持っていかせない!」

 

紫色のドレス。

綺麗で長い髪の毛は二つに結び、大きなリボンで可愛く装飾。

ちょこんと被った水平帽が、2割増しに衣装を可愛く見せている。

 

「……コーラル、さん」

 

キュアコーラルさんっ!!

 

 

 

僕「キュアコーラルさん可愛すぎる」さんご「///」

第4話 好きと、命

 

 

 

「――くうぅ!」

 

「ヤラネーダ!」

 

(キュアコーラルさんっ……!)

 

戦いはキュアコーラルさん優勢……とは言えなかった。

化け物の攻撃を防ぎながら、彼女は何度かの反撃を入れている。

ただキュアコーラルさんの戦い方を見るに、彼女の戦闘能力は防御寄りで支援型だ。

仲間と一緒に戦うことで、キュアコーラルさんの力が発揮できる。

 

(他のプリキュアさんたちは……まだなのか!?)

 

孤軍奮闘するキュアコーラルさんを見て、一人焦る。

他のプリキュアさんたちは事情があって来れていないのか、それともキュアコーラルさんだけがたまたま近くにいて、化け物の発生に気付いたのか。

 

(違う……仲間のプリキュアさんを責める前に、僕のすべきことを考えろ……っ)

 

心の中で奮起するが、生気を抜かれた身体は何も反応を示さない。

あんなにキュアコーラルさんのことが大好きだと言っていた筈なのに。

彼女が目の前でピンチになっているのに、助けよう、動こうとするやる気が全くもって出てこない。

 

――自分の『好き』の気持ちが、信じられなくなってくる。

一般人の僕に、どうせできることなど何もない。

やる気も取られたし、傍観者でいても仕方がない。

 

(違う、それは違う……っ)

 

堕落する思考に引きずられないよう、うつ伏せのまま、地面に頭を打って活を入れる。

やれる事はたくさんある。

仲間のプリキュアさんを探しにいく。僕が大声で叫べば、気付くのが少しでも早くなるかもしれない。

ここで僕らが倒れているのもキュアコーラルさんが戦う邪魔になる。倒れている人を遠ざけるだけでも、彼女の負担は減る筈だ。

 

「キュアコーラルさんが好きだ……キュアコーラルさんが大好きだ……っ!」

 

何とか頭は回っても肝心の身体が、まるで糸が切れた人形のように、自分の意志で動かせない。

不甲斐なさに、心が揺れる。

呪詛のように、大好きな彼女の名前を口にして、身体を動かそうと必死にもがく。

 

(ここで動けなかったら……僕の『好き』は、嘘になる)

 

身体を襲う寒さに対して、もう恐怖はなかった。

それよりも彼女の力になれないこと。

そして動かない身体が “お前の『好き』は上辺だけの偽物だ”と、そう証明されてしまうことが怖かった。

 

「――――大丈夫、コーラルっ!!」

 

「サ、サマー!」

 

ふと、遠くからキュアコーラルさんを呼ぶ声が。

振り向けないが、おそらくは仲間のプリキュアさんが駆けつけたのだろう。

キュアコーラルさんは敵の攻撃を紫のシールドで必死に防ぎながらも、間に合った味方に安心したように笑みを浮かべた。

 

僕も、結局何もできなかった自分に情けなく思うも、キュアコーラルさんの劣勢が転じることに、安堵した。

――ふと、不吉な呟きが耳に届いた、その時までは。

 

「…………もう援軍かよ、面倒くせぇ」

 

怠惰な、静かに愚痴を吐いたのは、蟹の化け物。

先ほどまでは空に浮いて傍観していた筈が、今は明確な敵意をキュアコーラルさんに向けていた。

 

「先に一人、潰しておくか……」

 

気怠そうな口調のまま、ハサミの切っ先を、まるで銃口のように向ける。

狙いを付けた先には――今現在、他の化け物の攻撃を防いでいるキュアコーラルさんの後ろ姿。

敵の攻撃で手一杯なのか、戦闘経験の未熟さなのか、キュアコーラルさんはその殺気に気付かない。

 

(――マズイ!)

 

本気で不味いと、安堵から一転、頭に一瞬で電流が走る。

遠くから駆けつける仲間、安堵したキュアコーラルさん、優勢にはさせないと彼女の背中を狙う二人目の化け物。

 

(女の子相手に二対一とか――っ!?)

 

卑怯だと批判したところで、それが今何になるのか。

目に映る景色がスローに見える。

動かない身体の代わりに、頭が高速で回転する。

 

(――イメージしろ……っ!)

 

キュアコーラルさんを好きだと叫んでも、この体は動かない。

化け物に根こそぎやる気を奪われたこの体は、生易しい恋心などでは動かない。

だけど、実際に身体が欠損しているわけじゃない。

手もあり、足もある。

だったら――この体が動かない訳はありえない。

 

(――心のどこかで、僕はまだ驕っているんじゃないか? 僕が動かなくても変わらない。キュアコーラルさんも大怪我なんてする筈ないと)

 

視線の先の、蟹の化け物。

その手の切っ先から、巨大な岩石が出現する。

人の身体と同等以上の質量をもつそれは、冗談ではなく、人を肉片に変えることができる攻撃だ。

 

恋心でもこの体は動かない。

だけど、僕はキュアコーラルさんを好きだと、本当に好きになった筈だと信じたい。

本当に彼女のことを想っているなら動く筈。

いや、『今動かなければ、キュアコーラルさんを好きという資格はない』。

 

――涼村さんの顔が、脳裏に過ぎる。

今動かないと自分の心だけではなく、恋愛相談に乗ってくれた涼村さんとの時間も無意味なものにしてしまう気がして……それは、とても嫌なことだと思った。

 

「――ラル、さんっ……!」

 

一瞬先の世界をイメージした。

不意打ちの攻撃に気付かず、鋭利で巨大な岩石に背中から穿たられる、大好きな彼女の姿。

きめ細やかな肌は見る影もなく、ドレスは破けて噴水のように真っ赤な血を流し続ける彼女の姿。

鮮明にイメージした。

自慢じゃないけど頭の回転は早い方で、本もたくさん読んでいたから想像力も負けてない。

 

――だから、数秒先にある彼女の死に体を、僕は視た。

淡い恋心ではなく、死と恋心を繋いで、体の奥底から新たに動くための力を作り出す。

 

「キュアコーラルさん、危ないっ!!」

 

「――――――――え?」

 

岩石が射出されると同時に咄嗟――起き上がって、駆け出せた。

叫びながら飛び込んで――大好きな彼女を突き飛ばす。

いつもより俄然早く走れた足に、これが火事場の力というものかと感心した。

僕の手がちゃんと敵の脅威より先にキュアコーラルさんの身体に届いたことに、一瞬先に来る未来に恐怖を抱きながらも安堵する。

 

スローモーションに映る世界の中で、目の前で、突き飛ばされながら驚き、瞳を大きく見開いているキュアコーラルさんの姿。

キュアコーラルさんに触れたのも、こんなに近くで顔を見たのも初めてで……でも、不思議と『初めて』を感じなかった。そんな筈は、ないのだけれど。

 

(……可愛い)

 

でも思うことはやっぱり同じだと、心の中で苦笑する。

最後の抵抗として、飛び込んだ姿勢のまま、身体を捻り、背負っていたカバンの角度を調整する。せめてものクッションになればいいのだが。

――直後、背中にとてつもない衝撃が走り、容易に意識が刈り取られた。

 

「星郎くん!!?」

 

最後に感じたのは、落ち葉のように吹き飛ばされる感覚と、僕の名前を呼ぶ叫び声だった。

 

 

 

♧ ♧ ♧

 

 

 

「――……ぁ」

 

「っ! ほ、星郎くん、大丈夫!? 良かった、目が覚めて……!」

 

唐突に目の前の光景が変わる。

半覚醒の頭のせいか、ふわふわとした浮遊感が身体を襲っている。

そんな夢うつつの中、目を開けた先に見えたのは涼村さんだった。

 

「……えっと……」

 

「あ、動いちゃ駄目! 今、救急車を呼んでるから。そのままじっとしてて」

 

起き上がろうとしたと同時に、涼村さんに叱責される。

怒っている筈なのに、目元が赤く潤んでいる。

なんでここに涼村さんがいるのかはわからない。

でも、心配かけてしまったのだと、それだけはすぐにわかった。

 

「……」

 

「……」

 

言われた通りに動かず、黙る。

涼村さんは救急車の到着をまだかと、すごく焦った様子で待っている。

でも、落ち着かないのは僕も同じだ。

 

(……ひ、膝枕されてる///)

 

気絶した僕をベンチに運んでくれたのはいいが、そのまま寝かせるのは忍びなかったのだろうか。

でもそれにしたって、涼村さんの膝枕は……うん、言葉にできない程に心臓が高鳴って落ち着かない。

 

救急車を待ちながら、混濁した記憶を繋いでいく。

気絶というのは初めてしたが、まるでページが切り取られたように時間が跳ぶのだと、場違いにも感心する。

意識は飛んだが、前後の状況は理解できた。

キュアコーラルさんが不意打ちされそうになって、それを庇って、代わりに僕が攻撃を受けたのだ。

 

――驚くことは何もなかった。

覚悟して、実行して、その通りになったのだから。

ただ、それ以降はどうなったのか。

プリキュアさんたちは無事に化け物を倒せたのか、と疑問がわく。

 

……が、涼村さんに問い掛けると心配されて怒られることは目に見えている。

幸い僕の身体で大きく痛むところはないから、今は大人しく、このゆったりとした時間に身を任せようと思った。

……枕代わりの太ももとスカートの生地の感触が、とても気持ちいいけれど、涼村さんのものだと思うと顔に血が上るのが止められない。

恥ずかしいので、腕でゆっくり顔を隠した。

 

 

――しばらくして、夏海さんに先導されるようにして数名の救急隊員が駆け付けた。

 

夏海さんもいたのかと、横たわったまま静かに驚く。

同時に、おそらく公園の手前で救急車が来るのを夏海さんはずっと待っていてくれていたのだろうと、申し訳なく思いながら感謝した。

 

「……あ、あの、涼村さん? 隊員の人も来たし……その、もう、ありがと」

 

「え……あ! う、うん」

 

膝枕のままでは涼村さんも恥ずかしいと思い、声を掛ける。

気付き、驚き、逡巡する涼村さん。

少し迷った様子だったが、僕の意識がはっきりしているのがわかったのか、頷いた。

彼女に手を貸してもらいながら、ゆっくりと身体を起こしてベンチに座った。

 

救急隊員による怪我の確認と処置、触診、質疑応答。

身体は結構擦りむいていたし、頭にたんこぶ2つ出来ていたが――大きな怪我はなかった。

脳震盪による軽い気絶。

一時的に気絶しており外傷もあるので希望があれば精密検査を受けられると、そう隊員の人は言ってくれたけど、

 

「……気絶したのも少しですし……一応、母さんが帰ってきたら話しておきます」

 

手当もありがとうございましたと、そうお礼を言って、帰ってもらった。

帰る間際に、夜間対応できる救急病院のリストを貰ったので再度お礼を言って頭を下げた。

まぁ、母さんは夜勤だから救急車かタクシーしか移動手段がないので、あまり使う気にはなれないけれど。

体調が悪ければ明日近くの病院を訪ねようと決めて、貰った用紙をポケットに入れた。

 

「星郎くん、本当に大丈夫?」

 

「もう、すごい危ないことしたんだよ、ほしろう君は! わかってるのかなー?」

 

遠巻きに見ていた涼村さんと夏海さん。

救急隊員の方が帰るのと入れ替えに、僕の方へと詰め寄った。

 

「うん……ごめん。それと、ありがとう。色々と助けて貰っちゃって」

 

「それは別にいいけどさ……わたしたちも星郎くんに助けて貰ったわけだし。ね、さんご」

 

「え!? う、うん、その、そうなの……かな?」

 

謝る僕に、夏海さんは頬を膨らませながらも、お互い様と言ってくる。

一体何がお互い様なのだろうか。そして涼村さんが挙動不審だ。

一通り治療も診療も済んだわけで、今なら聞けると、目覚めてからずっと聞きたかったことを口にする。

 

「そういえば二人とも、プリキュアさんたちがどうなったか、知ってる? その、無事に化け物を倒せたかとか、大怪我していなかったとか……」

 

特にキュアコーラルさんがと、滑りそうなった口を慌てて止める。

涼村さんはともかく、夏海さんは僕がキュアコーラルさんを好きなことは知らないのだ。

危うく、勘繰られる言い方をするところだったと、冷汗を拭った。

が、僕の言い方が引っ掛かったのか、怪訝な顔をする夏海さん。

 

「うん? ヤラネーダは無事に倒せたし、怪我もなかったよ?

 ――あぁ! そうか、ほしろう君は知らないんだねっ。実はわたしとさんごはプリ――」

 

「あ、ああああああああぁぁぁ!!?」

 

言い掛けた夏海さんの口を無理やり閉じながら、涼村さんが叫びだした。

なにこれ?

固まる僕と夏海さんをよそに、涼村さんは慌てたように口早に言葉を捲し立てる。

 

「ま、まなつはほら、今日忙しいって言ってたし用事あったよね!? あとは私が星郎くんを見とくから、早く帰った方がいいよ、ね!」

 

「え、別にそんな急ぎの用なんてあったかな? それよりも……さんご、顔赤いよ? 大丈夫? もしかしてさっき戦った疲れが――」

 

「わああ! だ、大丈夫だから! ロ、ローラも退屈しちゃうし早く帰った方がいいよ、ね!……ね!」

 

「そ、そうかな?」

 

「うん、そうだよ! まなつの今一番大事なことは、ここにはないから、ね!」

 

押し込み、押し出すようにして、夏海さんを帰らせる涼村さん。

すごい。いつもは大人しい涼村さんが、今は勢いで夏海さんを圧倒していた。

夏海さんは気付いてない様子だけど、涼村さんは僕に用があるのだろう。

それも、夏海さんに聞かせられない話だ。

……十中八九、キュアコーラルさんのことだと予想できる。

僕としても、夏海さんの耳には入ってほしくない話だから、この配慮は助かるけれど。

 

「……ふぅ、あ、危なかった」

 

胸を押さえて、涼村さんはほっと一息をつく。

そんな彼女の姿を見ながら、夏海さんを帰すにしてもちょっとリアクションがオーバーというか大袈裟と言うか、そんなに慌てることがあるのかと不思議に思った。

 

そんな余計な思考をしていたせいだろう。

くるりと振り返って僕をみた涼村さんは――うん、優しい顔つきだけど目が全く笑ってない。

今からたくさんお説教しますと、涼村さんの目が暗にそう伝えてきた。

 

「……星郎くん?」

 

「は、はい!?」

 

いつもと同じ声色なのに、雰囲気が違う。端的にいうと、怖い。

可愛いと怖いは両立するのだと、怒られている自分を余所に、感心して頷いた。

 

「私、すごい恥ずかしい思いして、星郎くんにキュアコーラルの写真、あげたよね?」

 

「う、うん、貰った……いえ、貰いました」

 

「そうだよね? それで、なんで写真をあげたか覚えてる?」

 

「う、うん、覚えてる……キュアコラールさんに近づいて戦いに巻き込まれることが、その、ないようにって――」

 

「だよね!?」

 

静かな口調から一転。

睫毛が長く、綺麗な青色の瞳が大きく開く。

あぁ、これは物凄く怒っている。

涼村さんには何も責任はない筈なのに、まるで自責の念に駆られるように、後悔や困惑の入り混じった顔つきを、涼村さんはしていた。

 

「星郎くん、あやうく死んじゃうところだったんだよ! 大怪我しなかったのは運がよかっただけなんだよ!?」

 

「うん……そうだよね、本当、運がよかった」

 

涼村さんから視線を外して、傍らに置かれたカバンを見る。

背負っていたそれは、見るも無残な姿に変わっていた。

敵が放った大きな岩石は、上手いこと背中のカバンに当たってくれた。

直接当たっていたらひとたまりもなかった筈。

もちろん衝撃はなくならずに吹き飛ばされたが……ここは緑が多い公園で、落ちた先は草木の茂った林帯だった。

おかげで、意識はともかく、体の方は所々の裂傷程度ですんだのだ。

 

「もし当たる角度が少しでも違ったら……飛ばされた先がコンクリートで身体を強く打っちゃったら……星郎くん、死んでたんだよ!?」

 

涼村さんの強い口調に、僕も、改めて自分の行為の危うさを理解する。

咄嗟の、ほんの数秒の出来事だったけれど。

今ここにキュアコーラルさんはいないけれど、代わりに僕のことを本当に心配して叱責する涼村さんを見て、現実に起きたことなのだと理解する。

 

二人しかいない公園。

涼村さんに言われた言葉と、僕の身体に巻かれた包帯、まだ少し醒めない頭。

そして記憶の中の、手を伸ばして突き飛ばしたキュアコーラルさんの姿を思い出す。

 

 

――――自然、込み上げてきた感情を……そっと呟いた。

 

「……あぁ、安心した」

 

「っ!?」

 

涼村さんの可愛い栗色の瞳が、再度、大きく見開いた。

 

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