僕「キュアコーラルさん可愛すぎる」さんご「///」   作:HOTDOG

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7. 告白

「星郎くん、小説とか読む?」

 

「う、うん、国語の勉強にもなるし、結構読んでる。キュアコーラルさんは?」

 

「私はその、たまに読むくらい。

 でも先輩がすごく本好きで、物知りで……私ももっと色々と読んでみようかなって思っているところなの」

 

「そ、そうなんだ! ……えっと、例えばこのシリーズとかどうかな? シンデレラをモチーフにした感じで、長編だけど読書慣れしてない人でも読みやすいって評判で」

 

「あ、ちょっと気になるな、それ。星郎くんももう読んだの?」

 

「う、うん! うちの学校の図書館にシリーズ全部あるんだ。すごく面白いよ」

 

レンタルビデオ店に併設されている書籍コーナーで、流行の小説や漫画を見ながら雑談を交わす。

伝説の戦士・プリキュアの一人であるキュアコーラルさんだけど、私生活は僕らと同じで、会話が噛み合わないなんて心配はいらなかった。

お気に入りの漫画や映画、気になる雑誌を手に取っては、二人で会話に花を咲かせる。

 

大好きな女の子と二人きりで緊張して、たまに話が途切れて沈黙もしてしまうけど。

それでも、僕自身も驚くくらい自然体でキュアコーラルさんと話せていた。

 

 

 

 

 

「クレープ1つ、ミックストロピカルスペシャル、ください」

 

「えっと、僕はチョコバナナで……キュアコーラルさん、すごいの頼むね」

 

「ふふ、この間ね、友達がすっごく美味しかったって言ってたから。どんな味がするんだろうって、ずっと思ってたの」

 

「まぁ、確かに想像できないよね。というか、その友達もすごいね」

 

路上販売しているクレープ店で、甘味を堪能しながら、楽しそうに友達の話をするキュアコーラルさん。

とにかく好奇心が強い友達らしい。まるで夏海さんみたいだと思った。

 

「――ん、すごく美味しい! ほら、星郎くんも食べてみる?」

 

「エッッッッ!?」

 

「……? ……――あ! その、やっぱり無し! ご、ごめんね、美味しかったからつい。よ、良くないよね、こういうの」

 

友人や両親にするように自然と差し出されたクレープに固まる僕。

キュアコーラルさんも一瞬間をおいて気付き、すぐに撤回した。

クレープで口元を隠して頬を上気させるキュアコーラルさん……優しあざと天然可愛い。

僕の手元には半分以上クレープが残っているが、既に甘さ可愛さでお腹一杯である。

 

 

 

 

 

「あ、ここカラオケもあるんだ。入ってみる、星郎くん?」

 

「え! カ、カラオケかぁ……その、キュアコーラルさん、良く行くの?」

 

「うーん、そんなに頻繁じゃないけど、私も友達も、歌うのは好きだから」

 

「そ、そうか……僕、行ったことないんだよね……」

 

お店の入り口から少し離れたところで、戸惑う僕は足を止める。

同世代なら皆経験がありそうな遊びでも、僕は一周遅れていて、キュアコーラルさんに格好悪いところを見せてしまう。

 

キュアコーラルさんの歌声はすごい聞きたいし、彼女から誘ってくれたのだから普通なら断る理由はない。

しかし人前で歌ったことのない僕が、しかも好きな女の子と行く場所としてはハードルが高すぎて、思わず二の足を踏んでしまった。

 

「あ、ごめんね。別にどうしても行きたいわけじゃなくてね、ちょうど目に入ったから、どうかなーって。うん、それだけだから気にしないで?」

 

カラオケはいつでも行けるし、星郎くんも楽しめるところに行こう――そうキュアコーラルさんがフォローしてくれて、僕も内心でホッとしてしまう。

二人でお店を通り過ぎ、また周囲のお店を見ながら、目的のお店へ向かっていく。

 

(……でも、キュアコーラルさんとは“いつでも行ける”わけじゃないんだ)

 

むしろ、通りゆく全てのお店やそこでの会話、体験が。

“今日限り”だと、そう気付いて、やっぱり入っておけばよかったと遅れて深く後悔した。

 

 

 

 

 

「よかった。星郎くんが気に入るデザインのカバン、見つかって」

 

「うん! 本当にありがとう、キュアコーラルさん。

 ……すごい、すごい大事に使うから」

 

彼女から貰ったプレゼントが入った袋を、感極まり抱きしめながら、何度もお礼を口にした。

夢のような、大好きなキュアコーラルさんからの贈り物。

女の子からのプレゼント自体、僕にとっては初めての経験で、それがキュアコーラルさんからなのだから、言葉にできないほど嬉しかった。

 

(あぁ、これで終わりなんだ……)

 

同時に、ロウソクの火が消えるように、僕の心に影が差す。

キュアコーラルさんとの時間はこれで終わり。

本来、一般人の僕とプリキュアの戦士であるキュアコーラルさんが一緒にいること自体、奇跡みたいなもので、非日常だ。

 

あんなに楽しかった筈なのに、あんなにはしゃいでいた筈なのに。

泣きそうな、情けない顔に変わっていくのを、必死にこらえる。

鏡をみる勇気はないけど、キュアコーラルさんと別れるまでちゃんと楽しそうに笑っていたいと、そう思う。

 

「……キュ、キュアコーラルさん!

 最後に一つ、行きたいところがあるんだけど……いいかな?」

 

キュアコーラルさんより前に一歩出て振り向き、彼女を見る。

彼女は少し驚いたように瞳を開いて、でも、すぐに微笑みながら頷いてくれた。

その返事に安心して、僕も少し笑顔になる。

 

遊ぶ場所じゃないし、キュアコーラルさんが楽しめる場所ではないけれど。

でも僕にとっての大事な用事。

それにどんな口実でも、一秒でも長くキュアコーラルさんといれることが嬉しかった。

 

 

 

僕「キュアコーラルさん可愛すぎる」さんご「///」

第7話 告白

 

 

 

「あれ、ここって……」

 

「うん、アクセサリーショップ。女の子に人気って口コミがあって……ご、ごめんね、遊ぶところじゃなくて」

 

店頭に並べられたショーケースの中でキラキラ光る指輪や首飾りに、興味深そうに目を輝かせながら。

このお店に足を運んだ意図がわからず、キュアコーラルさんはちょこんと首を傾げながら聞いてくる。

 

「その……いつもすごくお世話になってる子がいて、何かお礼をしたいって、前から思ってたんだ。

 ……涼村さんごさんって女の子、多分、キュアコーラルさんも知ってるよね?」

 

「え!? う、うん、知ってるけど……お礼?」

 

クラスメイトの名前を口にする。

途端、キュアコーラルさんの体がビクリと震えた。

 

「うん、相談にのってくれたり、介抱してくれたり、他にも色々と。

 たくさん迷惑も掛けちゃったし、何か、僕にできることないかなぁって思って」

 

「そ、そんな大層なことしてないし、お礼なんて気にしなくてもいいよ?」

 

「……?」

 

まるで遠慮するように言うキュアコーラルさん。

何だろう、話が微妙に噛み合っていない。

 

「えっと……涼村さんにお礼をしたいから、キュアコーラルさんに選ぶの手伝ってほしいって話なんだけど……?」

 

「あっ、あぁ! そ、そうだよね、へ、変なこと言っちゃったね、私。

 うん、さんごへのお礼だよね、わかったよ!」

 

ハッとして、キュアコーラルさんは慌てたように頷いた。

可愛い顔で、なぜか申し訳なさそうに眉尻を下げて頬をかく。

栗色の可愛い瞳を揺らして挙動不審になったキュアコーラルさんに引っ掛かるものを感じながらも、気を取り直して、店の中で輝くショーケースに視線を移す。

 

「調べたんだけど……ここのお店って指輪やネックレス以外にも、髪留めやキーホルダーも品揃え良いらしくて。

 涼村さん、たまに髪留めを変えておしゃれしてるから……髪留め、プレゼントしたら喜んでくれるかなって」

 

「わぁ、星郎くん、その、よく気付いたね?」

 

「う、うん、まぁ……」

 

目を丸くするキュアコーラルさん。

これは褒めてくれているのだろうか? だとしたらすごい嬉しい。

でも別に、僕は些細なことに気付ける男子というわけではない。何なら、クラスの他の女子なら髪形が変わったって気付きはしない。

 

単純に、教室の中で涼村さんが視界に入ることが多いから。

ただ、それを口にするのは何となく気恥ずかしくて、言葉を濁して返事を避けた。

 

「あ、これ見て、キュアコーラルさん! 売上1位だって。確かに女の子が好きなデザインな感じがするし……贈り物としてどうかな?」

 

「わぁ、可愛い……ん~、でも、私――じゃ、じゃなくて、さんごの髪の色だと合わせにくいかも。あと、ちょっと大きくて他の髪留めとのバランスも難しいし……」

 

「なるほど……ありがとう、参考になるよ」

 

店内のPOPに目を引かれて買おうとするが、キュアコーラルさんのアドバイスに納得して、手に取っていた髪留めを棚に戻す。

危ない。あまりにも女子のオシャレに疎いため、安易に決めてしまうところだったと反省する。

同時に、やっぱりキュアコーラルさんと一緒にきて良かったと、涼村さんへの贈り物のアドバイザーとしてとても頼りになる彼女の存在に安堵した。

 

その後も、いくつか僕が選んで手にとっては、キュアコーラルさんから抜かりない指摘が飛んできて、僕は再び他の髪留めを吟味する。

オシャレについては人一倍詳しいと思える、キュアコーラルさん。

こんなに知識、着眼点があるのならキュアコーラルさんが選んだ方が早いと思うのだが、彼女は僕の一歩後ろで機嫌よさそうに微笑んだまま、決して自分からは髪留めを選ぶことはしなかった。

 

あくまでお礼の品は僕自身が選ぶべきで、彼女自身は選んだものにアドバイスする立場と決めているのか。

確かに、キュアコーラルさんが決めて涼村さんに贈るのは、僕もちょっと違う気がする。

これは僕が涼村さんにお礼をするもので、そこには、ちゃんと僕自身の意志とか感謝の気持ちを入れるべきだ。

とても時間が掛かってしまうのが難点だけど……僕の気持ちを尊重してくれるキュアコーラルさんに、心の中で感謝した。

 

(……でもなんか、キュアコーラルさんからすごいプレッシャーを感じるような)

 

急かされている感じではないけれど。

どんな髪留めを選ぶのかすごく興味深そうに、それでいて期待されているような、そんな視線が、さっきから背中に注がれている。

 

キュアコーラルさんに見つめられるのは大歓迎だけど、今は真剣になる時で、思考を蕩けさせている場合ではない。

頭を振って、涼村さんの髪色や飾られた髪留めを脳裏に映す。

自分なりに精一杯、涼村さんに似合うものを選んでみよう。

 

「ぐぐぐ、な、悩む……」

 

「――ふ、ふふっ」

 

全国模試の時以上に頭を回転させて、目の前に陳列されたどれもオシャレな髪留めを睨んでいたところ。

可愛い忍び笑いが耳に届き、振り返った。

振り返った先には、抑えきれなくなったように笑い声を漏らすキュアコーラルさん。すご可愛い。

艶のある唇が可愛いのに色っぽくて、ドキリとする。

 

「え、な、何かおかしかった、僕?」

 

「うぅん、そうじゃないの。ただ、星郎くんがあまりにも真剣に選んでいて……その姿が、すごい真面目だなーって思っちゃって」

 

決して悪い意味で笑ったわけではないと、キュアコーラルさんは柔らかな表情でそう言った。

すごい真面目なのが、キュアコーラルさんにとっては何か面白かったのだろうか?

イマイチ、彼女の意図を掴めず首を傾げる。

そんな僕に、キュアコーラルさんは覗き込むようにして視線を絡めた。

少し悪戯を思い付いたかのように、彼女の口元がスッと上がる。

 

「だって……その、星郎くん、私とのお出掛けをすごい楽しみにしてるって聞いてたから」

 

「え゛!?」

 

キュアコーラルさんの発言に、鋭いボディブローを入れられたような、そんな声が口から漏れた。

え、なんか凄い恥ずかしいことを言われたんだけど。

聞いていたというのは、十中八九、今日のお出掛けをセッティングしてくれた涼村さんからだろうけれど……。

 

(す、涼村さん、どこまで伝えてるの!?)

 

その伝え方では、まるで僕がキュアコーラルさんに気があるように思われてしまうのでは?

いや、全然当たっているのだけれど、それは僕と涼村さんの秘密であって、キュアコーラルさん本人に知られるのは死ぬほど恥ずかしい。

物凄く動揺している僕の心境は知らないまま、キュアコーラルさんは言葉を続ける。

 

「だから、本当はこの時間も私――『キュアコーラル』と遊んだりお喋りした方が、星郎くんにとってはずっと楽しい筈と思うの。

 でも、星郎くんはさんごへのお礼をすごく真剣に、時間を掛けて選んでて……真面目というか、優しいなって思ったの」

 

「……っ///」

 

その問いに、すぐに答えられずに言葉が詰まった。

キュアコーラルさんの言う通りで、日はまだ沈んでいないし、学生同士のお出掛けで解散する時間としてはまだ早い。

別に涼村さんのプレゼント選びを口実にしなくても、優しいキュアコーラルさんなら、僕の希望をおそらく叶えてくれただろう。

でも、僕はキュアコーラルさんに涼村さんのプレゼント選びを手伝ってほしかった。

それはつまり――

 

「……や、優しいなんて……僕だけだと、上手く選べる自信がなかったし、実際、キュアコーラルさんにたくさんアドバイスを貰って、すごい助かってるし」

 

「でも、多分だけど、さんごなら何でも喜んで受け取ってくれると思うよ?」

 

「う、うん、涼村さんは優しいから、僕もそれはわかってるんだ。

 ……単に、僕が本当に、僕の自己満足だけじゃなくて涼村さんもちゃんと喜んでくれるものでお礼したい……そう思ったからで」

 

「……さんご、そんなに感謝されること、星郎くんにしたかな?」

 

キュアコーラルさんからの予想外の問い掛けに、少し、目を丸くする。

その言い方はまるで、涼村さんを疑うような内容で。

ただそこに悪意があるわけじゃなく、純粋に、以前から不思議に思っていた――そんな風な、問い掛けだった。

キュアコーラルさんは、涼村さんからどこまで聞いているのだろうか?

恋愛相談とまでは言っていないと思うから、悩み事を聞いてくれた、そんな形だろうか。

キュアコーラルさんと涼村さんのやり取りを想像しながら、キュアコーラルさんに分かって貰えるような言葉を探す。

 

「……うん、僕の相談を聞いてくれた。もしかしたら、キュアコーラルさんや涼村さんからしたら全然大袈裟じゃなくて、普通のことかもしれない」

 

恋愛相談。

それ自体は有り触れた話。どこにでもある話題の1つに過ぎない。

 

「でも、僕には違ったんだ。

 ……あの頃の僕は、ずっと踏み出せなくて――違うか、留まっていたことすら気付いてなかった」

 

涼村さんから見れば、何気ない日常の一コマの、クラスメイトから相談ごとだろう。

でも、僕にとっては心が変わるほどの大きな、大切な出来事で。

 

変わる切っ掛けをくれたのは、今目の前にいるキュアコーラルさんだ。

だけど、僕に勇気を、背中を押してくれたのは涼村さんだと、彼女の優しい笑顔を脳裏に浮かべながら、キュアコーラルさんにそう伝える。

聞いたキュアコーラルさんは、照れたように、申し訳なさそうに僕から視線を逸らした。

そう言ってくれるのは嬉しいけど、それは過大評価だと、そう言いたげに。

 

「うぅん、星郎くんは元々、踏み出す勇気を持ってたと思う。

 相談は切っ掛けで……きっと誰に相談しても、星郎くんはちゃんと自分の心と向き合えていたと思うよ」

 

そういうキュアコーラルさんは、少し物憂げな面持ちだった。

その表情の真意はわからない。

でも、誰でも変わらなかったと、それをキュアコーラルさんが寂しそうに思っているのは、僕にも分かった。

だけど、それはちゃんと否定できる。

他ならない僕自身が、涼村さんじゃなきゃダメだったと、確信を持ってそう言える。

 

「……それは違うよ、キュアコーラルさん。僕の勇気は、そんな万能なものじゃない。

 例えば、やる気が溢れるような言葉を貰っても、あの時の僕にはわからなかったし。

 例えば、多くの知識で適切な答えを言われても、心は動かなかったと思うし。

例えば、男らしくしろなんて勢いよく背中を蹴り飛ばされても、多分転ぶだけだったし」

 

人によって相談の聞き方、解決への導き方は違ってくる。

色々な形を想像しては、一つずつ僕は否定していく。

 

「優しく寄り添うように心の内を聞いてくれて、でも大事なことだけはちゃんと教えてくれて……。

 涼村さんだからこそ、僕は変わろうとする勇気を持てたと、そう思ってる」

 

「――っ」

 

心の内を吐露する。

相談ごと1つで大袈裟と思われてしまうし、何より恥ずかしいから、涼村さん本人に言うことはないけれど。

取りあえず、これでキュアコーラルさんの質問に応えられたかなと彼女の様子を伺うと、

 

「ふ、ふーん、そ、そうなんだ……///」

 

「……?」

 

なんでか、ソワソワと落ち着かない感じのキュアコーラルさん。

口元を緩めて、心なしか顔が赤い。

伏し目がちにこちらを見て、数秒迷った後に、再び僕へと問い掛けた。

 

「ち、ちなみにさ……星郎くんはその子……さんごのこと、どう思ってるの?」

 

「え?」

 

「あ、べ、別に深い意味はないんだけどね!? その、どうなのかなぁって……」

 

深い意味はない、と言いながらも、キュアコーラルさんの瞳は僕を捉えたまま。

質問を撤回する感じはなくて、僕の答えを興味深そうにじっと待っている、そんな雰囲気。

 

(え? え? な、なにこれ……い、いわゆる恋バナってやつ?)

 

いや、キュアコーラルさんは別に恋愛と限定していないから、友バナというのかもしれないが。

どちらにしても、なぜ、いきなりの質問である。

僕が涼村さんのことを語ったから、彼女の友達として、僕と涼村さんの関係が気になったのだろうか。

 

涼村さんのことをどう思っているのか。

非常に難しい質問だと思った。

だけど『キュアコーラルさんをどう思っているか』と聞かれるよりは良かったかもしれない。反射的に大好きと答えてしまうだろうことは、最早想像に難くない。

 

涼村さんは――ただのクラスメイト……そんな回答では足りないし、僕もそれは違うと思う。

でも友人という枠でもなくて、そんな彼女をどう思っているかなんて質問に、自分でも迷いながら、自信なく言葉を口にする。

 

「えっと……すごい優しい子だと思う、けど」

 

「ふぅん、でも、優しい子は他にもいるよ? クラスの〇〇ちゃんや△△ちゃんは、他のクラスでも優しくて親切だって評判だし」

 

僕の回答にキュアコーラルさんは首を傾げて、不満そうに返してくる。

はい、仰る通りですけど、僕としては話したことない女子なので噂を聞く程度である。というか、キュアコーラルさんうちのクラス事情に詳しいですね。

今の答えではキュアコーラルさんが納得した様子はないし、何より、僕自身もしっくり来た感じはなかった。

涼村さんは優しい女の子だと思っているけど、その感情が全てかというと、おそらく違う。

 

「えっと……か、可愛い女の子だと思う、けど」

 

「ふぅん/// で、でもほら、まなつも可愛いよ?」

 

「あー、うん、それはそうだけど……」

 

「………………ふぅん」

 

なんで急に不機嫌になるんですかね?

 

女の子に可愛いというのは恥ずかしくて、それでも勇気を出して口にしたら、誘導尋問に引っ掛かったような。

涼村さんを可愛いと言えば頬を染めて、夏海さんの可愛さに同意したらジト目になるキュアコーラルさん。イミフ……イミフ可愛い。

国語の授業で女心は秋の空と習ったけど、こういうことなのかと理解できないまでも実感した。

 

(……だけど……うん、こ、困った)

 

キュアコーラルさんが涼村さんだけでなく夏海さんやクラスメイトまで知っていることとか。

恥ずかしそうにしながらも、僕の気持ちを探っているような感じとか。

キュアコーラルさんが、ここまで僕と涼村さんの関係とか気持ちに、興味を持っているとか。

 

頭の中で様々な疑問が浮かんでいたが、ひと際、大きく占めている自身への問い掛け。

――僕が涼村さんをどう思っているか。

 

人間関係や人の気持ちは、全部が全部、言語化できるわけではないけれど。

でも、だからといって言葉にできなくてもいいという免罪符にはなりはしない。

現に、キュアコーラルさんの疑問に答えられていないし、僕自身も、お礼を渡す相手のことを曖昧に考えていたままである。

 

「僕は、涼村さんを……」

 

素敵な女の子だと、そう口にしようとして、止めた。

これでは、表現を変えただけで先の答えと中身はさして変わらない。

 

もちろん、涼村さんはとても素敵な女の子だと思う。

彼女と接する中で、クラスメイトから一歩踏み出した関係になったことで、外見だけではわからない涼村さんの魅力をたくさん見つけた。

 

言葉の拙いこんな僕の相談でも、隣で静かに、柔らかく微笑みながらじっと待ってくれていた。

偏屈な価値観を変えらない僕で、勝手に怪我して、そんな僕を本気で心配して泣いてくれた。怒ってくれた。

 

だけど、その言い方では足りないと思った。

涼村さん以外にも素敵な人はたくさんいる。

 

夏海さんはいつもやる気溢れて、何事にも挑戦している。その姿勢は、すごい素敵で羨ましいと思う。

話したことないクラスの男子も、運動神経抜群で複数の部活の助っ人をしている子や、クラスメイトだけでなく上級生や先生とも仲良くなれる子がいる。

僕から見たら、みんな素敵な人だと思う。

 

(夏海さんより、涼村さんの方が素敵だ――)

 

思考の途中で、被りを振った。

この言い方はどこか違う。

素敵さを感じるのは人それぞれだろう。

でも、クラスメイトに優劣をつけるのはおかしいと思った。

 

(夏海さんより、涼村さんの方が魅力的だ――)

 

いや、これも違う。

みんな違う魅力を持っていて、そこに優劣はやっぱりない。

 

嵌って、思考の海に入ってしまう。

キュアコーラルさんの質問に、言葉を返さないまま、彼女からも意識を外して物思いにふけってしまう。

だけど目の前のキュアコーラルさんは、急かすことも不満に口を尖らせることもなく、悩む僕をじっと見守ったまま――まるで涼村さんと相談した時と同じだと、頭の片隅でそう感じた。

 

優しい、可愛い、素敵、魅力的。

僕が涼村さんをどう思っているのか、それを言語化しようと必死に頭を回転させる。

今まで、友情や恋愛、人と接することを避けていたからこそ、僕は今、こんな簡単なことにもがき苦しんでいるのだろう。

だからこそ、これから変わっていくためにも、逃げずにちゃんと自分の気持ちに向き合うべきだと思った。

 

涼村さんや夏海さん、クラスのみんなの姿を頭に浮かべる。

みんな個性があって、素敵で、友達になりたい――そんな皆に優劣はない。

優劣はないけど、僕の気持ちは確かにここにある。

その気持ちを、優劣ではなく別の言葉で表すのならば――

 

 

「――――好き、なんだ」

 

「え……?」

 

長い沈黙を破る。

深い水の底からようやく水面にあがってきた、そんな呟き。

 

「夏海さんよりも……僕は、涼村さんの方が好き、なんだ」

 

「――――っっっ///!!?」

 

答えを得た僕。

真っ赤になってウサギのように跳び上がるキュアコーラルさん。

まるで彼女自身が告白されたかのように、恥ずかしさに顔を隠しながら、両手の隙間から僕を見る。

 

「……ク、クラスの子の中では?」

 

「クラスの中で一番素敵……じゃない。一番、涼村さんが好き」

 

「////////////////////////!!?」

 

僕の返事に、大きな瞳を揺らして、頭から湯気が出てると錯覚するくらい頬を染めるキュアコーラルさん。

……はて、僕は一体、何を言わされているのだろうか?

それはそれとして、好きの一言でこんなにも初心な反応をするキュアコーラルさんが究極可愛い。

 

そもそも、僕が好きなのは目の前にいるキュアコーラルさんだ。

涼村さんのことは好きだけど、それはベクトルが違くて……多分、違くて……僕のボキャブラリーが少ないから、わかりにくい言葉になっているのだ。

 

「え、えっと……す、好きといっても、恋愛的な意味じゃない……と思うと、言うか」

 

「わ、わかってるよっ/// というか、そういう意味じゃなくても、星郎くんも簡単に好きって言っちゃ駄目だよ」

 

「で、でも夏海さんより涼村さんの方がずっと好きだし、クラスの中でも一番好きなのは本当で……」

 

「あぅ……///」

 

僕も自分が言った言葉に、後から羞恥心が湧いてきて、言い訳のように早口に言葉を繋げた。

キュアコーラルさんも僕の言いたいことはわかっていたようで、でも変な意味にも捉えてしまったらしくて、慌てたように、冷めない頬を押さえながら眉尻をあげて僕を怒った。可愛い。

 

失言ではないけど、気持ちを言葉にするのは本当に難しくて。

でも、少しずつだけど心を伝えることができるようになりたいと、そう思った。

恋愛も友情も今更始めるのは難しいし、クラスの女子の大多数とは、まだまともに話しすらしていない。

でもクラスの男子とは最近、少しだけ話すようになってきた。

これまで読んでいなかった週刊少年誌の類が意外と面白くて、それを切っ掛けに話すことが、時々できた。

 

(……少しは、前に進めたと思ってもいいのかな?)

 

憧れのキュアコーラルさんが、年頃の少女みたく顔を羞恥に染めているのが可愛くて、それを頑張って隠そうとしている姿が愛おしくて。

つい最近似たような反応をどこかで見たような既視感を覚えながらも、好きな人の意外な反応に、買い物中ということも忘れて僕も赤くなる頬を腕で覆った。

 

 

 

♧♧♧

 

 

 

「さんごへのプレゼント、ありがとうね、星郎くん」

 

「ん、なんでキュアコーラルさんがお礼?」

 

「ふふ、気にしなくていいよ。何となく私もお礼言いたい気分だったから」

 

「?」

 

買い物袋を大事に持って、アクセサリーショップを後にした。

月と星を形どった、宝石の欠片が散りばめられた綺麗な髪留め。

オシャレに疎い僕でも、美しくて、涼村さんの藍色の髪の毛に似合うと直感的に思って。

いい買い物ができて、自然と心が嬉しくなる。

隣をみると、キュアコーラルさんも上機嫌だった。微かに歌声が聞こえる。耳が幸せ可愛い。

 

「ありがとう、キュアコーラルさん。でもその、すっかり遅くなっちゃってごめん」

 

「うぅん、星郎くんが真剣に選んでくれたの、私も嬉しかったよ。

 ……あ、でも」

 

僕のお礼に、キュアコーラルさんも本心のように屈託ない笑顔で言葉を返す。それだけで、僕の心臓がドキリと跳ねる。一日一緒にいたのに、慣れる気配は結局なかった。

そんなキュアコーラルさんの口元が、ムムッっと不満を出すようにアヒル口に変わる。変化の仕方があざといと思った。

 

「その、す、好きって言葉にするのは気を付けた方がいいからね。

 さんごは大丈夫だけど、他の人が聞いたら変に勘違いしちゃうかもしれないから。星郎くん、優しいし頑張り屋だし……クラスの子と話す時は注意しないと。さんごはいいけど」

 

「え、えぇ……そ、そんな心配しなくても大丈夫だよ。そもそも、クラスの女子と話す機会、涼村さん以外にないし」

 

「……まなつは?」

 

「……夏海さんは、そもそも男女の恋愛とかに疎いというか、気付かなそうというか」

 

恋愛にトロピカっている夏海さんの姿は、申し訳ないがあまり想像できなかった。

キュアコーラルさんも頷いて一瞬同意しかけるも、それは甘いよと言いながら首を振った。

 

「人を気になる時って、少しの切っ掛けから始まると思うの。

 星郎くん、まなつにもお礼するんでしょ? まなつ、恋愛には興味なさそうだけど……プレゼントして変に意識されないか、ちょっと心配だよ」

 

「お礼……あ、あぁ!!?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「す、すっかり忘れてた! 涼村さんのことばかり考えてて、真夏さんのお礼、まだ手元に用意してなかった!」

 

「///」

 

キュアコーラルさんから出た言葉に、ポケットから慌てて手帳を取り出してページをめくる。

マジックで大きく花丸が書かれた今日の日にち。

涼村さんの髪留めを選ぶお店の名前をメモした下の欄に、はみ出さないよう、小さく夏海さんのプレゼント選びのことも書いてある。

涼村さんと違って夏海さんとは話した機会が少ないから、何を渡したらいいのか全く思い浮かばなかった。

それでも一昨日、夏海さんも涼村さんと一緒に僕を介抱してくれたわけで、ちゃんとお礼はしないとと考えていたのだ。

 

涼村さん優先で考えてる癖があったので、忘れないようメモしておいたのに。

というか、待ち合わせでキュアコーラルさんに会った瞬間から大体、僕の頭のメモリーは飛んでいた。

キュアコーラルさんが可愛いのが原因で、可愛さが罪というのはこういうことなのだと、人生で初めて実感した。

 

明日涼村さんにお礼を渡すのに、夏海さんだけ後日というわけにもいかないだろう。

慌てて、今来た道を引き返そうとする。

 

「ど、どうしよう!? 夏海さんも髪留めでいいかな? さっきと同じもの、夏海さんにも似合うかもだし――」

 

「――っ!?」

 

無くなる前にと、急いで反転させた身体――が、ぐっと腕に力が掛かって止められる。

見ると、キュアコーラルさんに腕を掴まれていた。

 

「キュ、キュアコーラルさん?」

 

「え、あ、えっと……お、お菓子!」

 

「お菓子?」

 

「うん、ま、まなつはお菓子の方が喜ぶと思うよ! ちょうど学校の近くにまなつの好きな洋菓子店があってね、帰りに寄ればいいんじゃないかな?」

 

「な、なるほど……確かに、女の子って甘いもの好きって聞くし……あれ、もしかして、涼村さんもお菓子の方がよかったかな? か、髪留めとか実はいらなかったり……」

 

「そ、そんなことないから大丈夫だよ! さんごは髪留め、まなつはお菓子、うん、これで絶対大丈夫だよ!」

 

「そ、そう?」

 

手提げ袋に入った涼村さんへのお礼の品に自信がなくなってくる僕に、キュアコーラルさんは力説してくれる。

僕の主観は信用ならないけど、同じ女子のキュアコーラルさんがそこまで言うのなら、素直に安心していいんだろう。

夏海さんへのお礼も偶然だけど無事に決まり、ホッと胸をなでおろした。

……涼村さんへ贈る髪留めには一切口を出さなかったキュアコーラルさんだけど、夏海さんへ贈るものはなぜか一緒に考えてくれた、というか決めてくれた。アドバイスの基準が不明であった。

 

 

 

全ての用を終えてショッピングモールを後にする。

駅までの道のり。

隣を歩くキュアコーラルさんと話題を思い付けば話しかける。少なくない沈黙の中、歩を進める。

今日は本当に夢のように楽しかったという充足感が、今までにないくらい心を満たす。

次にいつ会えるかわからないし、こうやって会うのはこれが最後かもしれない。

悲しくないと言えば、嘘になる。

でも悲観にくれる前に、キュアコーラルさんと交わす言葉、気持ちはたくさんある。

 

女々しい顔になっていないことを、通り過ぎるショーウィンドウで確認して。

 

「キュアコーラルさん、ちょっといいかな?」

 

さきのアクセサリーショップで貰った買い物袋の中から、もう一つ、秘密に買ったものを取り出し、彼女に渡した。

 

「――え?」

 

「その……二度も僕を助けてくれてありがとう。

 写真も……えっと、僕の我儘なのに、ありがとう。

 今日一日、付き合ってくれてありがとう。バッグもすごい嬉しくて、一生使うくらい大事にしたくて――だからこれ、受け取ってくださいっ」

 

化粧箱に入れられた、お礼を渡す。

今日の初めに、思わず服を一式キュアコーラルさんに買いそうになって怒られたけど、このプレゼントならそれより値段は低いから怒られる可能性は少ないと思う。

何より、僕は涼村さんや夏海さんだけじゃなくて、キュアコーラルさんにもちゃんとお礼をしたかった。

キュアコーラルさん本人に言えないけど、キュアコーラルさんを好きになったことが、本当に僕の人生を変えてくれたと思っているから。

 

「あ、これって……」

 

キュアコーラルさんは渡された箱を開けて、中身を見て――目を開く。

 

「さんごと同じ髪留め……」

 

「う、うん、キュアコーラルさんと涼村さん、髪の色が近いし、雰囲気も似てるから……多分、いや絶対、キュアコーラルさんにも似合うと思って――」

 

「ふ、ふふ……くすくす……」

 

「え! あ、だ、駄目だった!?」

 

「ご、ごめんね、駄目とかじゃなくて……ふふ、ちょっとおかしくて」

 

僕からのお礼の品を受け取ったキュアコーラルさんは中身を見た途端、なぜか唐突に、声を抑えて笑い出した。

お礼を贈ったのを怒られるでもなく、中身にがっかりされたわけでもないから、取り敢えず無事に渡せたことには安堵したけど……なにか、おかしな点があったのだろうか。

 

ひとしきり静かな声で笑ったキュアコーラルさんは、悪戯っ子のような楽しそうな瞳で、僕のことをじっと見た。

端正で可愛さ抜群の彼女の顔が正面にあって、それだけでカアッと僕の顔に血が上る。

 

「……1つね、教えてあげる」

 

「え?」

 

「女の子へのプレゼントは、同じものを渡すと嫉妬しちゃう子、いるんだよ?」

 

「え、えぇぇ!?」

 

それを聞いて、手元の買い物袋に入った涼村さんへのプレゼントと、今キュアコーラルさんに渡したそれを交互に見る。

もちろん全く同じもの。

キュアコーラルさんに秘密裏に買って渡したことが、逆に裏目になってしまった。

 

「ふふ、星郎くん、まなつにも同じもの買おうとしてたし……もうちょっと乙女心っていうのかな? 勉強した方がいいかもね」

 

「ご、ごめん、キュアコーラルさん……」

 

「うぅん、意地悪いってごめんね? いきなりで驚いちゃったからその仕返し。

 ……そうだ、星郎くん。仕返しついでに、ちょっと耳貸してもらってもいい?」

 

「え、う、うん」

 

慣れないサプライズが失敗して意気消沈しながら、言われるまま、キュアコーラルさんに片耳を向ける。

キュアコーラルさんが近づくと同時に――どこかで嗅いだことのある、甘い香りが鼻をくすぐる。

 

どこだろうかと記憶を辿ろうとするのも束の間。

キュアコーラルさんの唇が耳元に――――僕の頬に、湿った感触が走った。

 

「え? ……え?」

 

「――プレゼントありがとうね、星郎くん。

 その……すっごい嬉しかった!」

 

トン、と一歩後ろに軽い足取りで下がったキュアコーラルさん。

綺麗な紫の髪の毛を左右に揺らしながら、純粋に僕のプレゼントに喜んで、満面の笑みを見せてくれた。

顔が真っ赤なのは、今の一瞬の行為のせいか。

頬に残る感触に幸福や嬉しさを感じると同時に、こんなに彼女に好意を貰える覚えはないと困惑する。

赤くなりながら混乱する僕。

それを見ながら、キュアコーラルさんは――まるで、ずっと用意していた言葉のように、戸惑いない言葉を向ける。

 

「ずっとね、星郎くんにお礼を言いたかったの。

 いつも、ヤラネーダが出た時に備えて見回りしてくれてありがとう。

 一昨日、命を掛けて私を庇ってくれて、ありがとう。

 今日もね、私、すっごい楽しかったよ。お礼したかったのにプレゼント貰っちゃって……意地悪言っちゃったけど、この髪留め、本当はとても嬉しかったから」

 

だからありがとうと、キュアコーラルさんは可愛く微笑みながら、頭を下げた。

お礼になるか分からないけどと、そう続けて、彼女は頬を染めたまま、自身の唇を恥ずかしそうにそっと撫でた。

 

サプライズしたのに、すごいサプライズを返されたとか。

頬に彼女の唇が触れた時の気持ちよさを思い出しては、心臓が壊れそうに跳ね上がるとか。

一方通行の想いやお礼だと思っていたけど、キュアコーラルさんもちゃんと僕のこと見ていてくれたんだとか。

 

様々な想いが胸中で混濁する。

そうして湧き上がってきたのは、1つの強烈な想いと欲望。

このままキュアコーラルさんと別れれば綺麗な思い出として残る筈が、それを壊してでも先に進みたいとする、そんな独り善がりな言葉が湧き上がる。

 

もう、止められなかった。

 

 

「――好きです、キュアコーラルさん」

 

「え……?」

 

二人の間に流れていた、静かながらもふわふわとした甘酸っぱい空気に一転、亀裂が入る。

僕の突然の告白に、キュアコーラルさんが固まって、呆けたような言葉を返す。

聞き逃してくれたのなら、今なら最後、引き返せる。

 

「僕は、キュアコーラルさんが大好きです」

 

「――っ!!」

 

構わず、二度目の告白を口にした。

でも、その後の言葉――付き合ってくださいとは、言えなかった。

心の器から溢れてしまった好きの気持ちを伝えるのが精一杯で、キュアコーラルさんとどうなりたいかも、付き合う覚悟も、何もできていない。

ただ、気持ちを伝えるだけの告白だった。

 

自分の情けなさに気付いて、そして衝動的に口走ってしまったことに後悔して、やはり撤回しようかと迷いが生じる。

でも何て言えばいいのかわからず、喉に言葉を詰まらせたまま、続く言葉が出てこない。

そうして何も言えないまま、目の前のキュアコーラルさんの顔を見て――視線がばっちりと絡まった。

 

 

――――目に映ったキュアコーラルさんの表情は、酷く困ったような、掛ける言葉が見つからないような、驚きと困惑、迷いが入り混じっていて、

 

「……っ、ご、ごめんなさいっ!!」

 

まるで僕から逃げるように、キュアコーラルさんがその場から大きく跳躍する。

常人を超えた身体能力で、とてもじゃないけど、人が追い付ける速度じゃない。

 

「あっ……」

 

喉元から掠れた声がようやく出る。

でも、もう何もかも遅かった。

キュアコーラルさんは――振り返ることなく、瞬く間に僕の視界から消えてしまった。

 

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