今朝の騒動から時は経ち、今は学校へ歩いて向かっている。
そして、その一歩後ろで唯が付いてくるのがいつものスタイルだ。
一度だけ前を歩くことを提案したことがあったが、今朝のような雰囲気で否定された。なんでも、いつでも俺を視界に入れていたいんだとか。
「やあ、優。おはよう、今日も暑いね。青葉さんもおはよう」
俺が唯について考えていると、突如横から声を掛けられる。
そこには俺の小学校からの親友の男、藤原由乃(ふじわらよしの)が手でパタパタと扇ぎながらこっちに向かってきていた。
「おう、おはよ由乃。もう五月の半ばだからな。そりゃ暑いわ」
「おはよう、藤原君」
俺と唯が挨拶を返すと、由乃は唯の一歩隣に離れたところを歩く。
しばらく三人で喋りながら歩いているときにふと二人を見て思う。
唯は風にサラサラと揺れる長い黒髪と年齢不相応な胸を持つ美少女だ。
由乃は中性的な顔と黒茶色の髪を後ろで束ねた美青年だ。
なんとも二人が並んでいると絵になるもんである。今まで何度も見てきたが、毎回こんな事を考えているような気がする。
「そういえば、今日は部活やるの?」
由乃のいう部活とは俺達三人とあと二人の計五人で活動している「自由活動部」だ。
自由活動部は名前の通り特定の活動をするのではなく、部員で決めた活動をしてグダグダやっている自由な部活だ。
ちなみに創設者兼部長は俺。
「まあ今日も暇だしな。部室に行ってダラダラ何かやるよ」
「優が行くなら僕も行こうかな」
「私もユウちゃんが行くなら行くよ」
「そうか、それじゃあ今日は何すっかなー」
俺達は今日の活動内容を話しながら学校に向かった。
場所は移って教室、唯とは別のクラスのため俺達二人で教室に入る。
すると俺達に気づいた一人の女生徒が近づいてくる。
「おはよー優君。藤原君もおはよー」
女生徒、篠原杏(しのはらあん)は間延びした声で挨拶する。
「よーおはよ。相変わらず眠たくなるような声だな、杏」
「篠原さん、おはようございます」
杏は小柄な体型とふわっとしたボリュームのある白髪の可愛い系の美少女だ。
俺達と同じ部活に所属していて、色々とあり中学生の時からの知り合いでもある。
「あそうそう、今日部活やるけど杏は来るか?」
「お~今日はやるんだー。それじゃあ私も行くよー」
杏はニコニコしながら話す。
「杏は今日何かやりたいことあるか?」
「ん~私は優君がやりたいことがやりたいなー」
「…はぁ~。なんというか杏に限らず由乃も唯も毎回俺のやり事がやりたいって言うよな。それが一番困るんだが」
「でも、それが僕の本当にしたいことだからね」
「右に同じくー」
「あーわかったわかった。放課後までに考えとくよ」
それから俺達は他愛ない話をしながらホームルームまで時間を潰すのだった。