紫曰く「このままでは科学が妖怪を消滅させる。だから私達はそれに対抗しなければいけない。だけど私達はもう後手、だから出来るだけ穏便にね」との事。
だからここに結界を張る。
幻想郷をこの世界から隔てるための結界。
前から紫が言っていた「人間と妖怪が共存出来る楽園」を作るための最終ステップ。
それが、博麗大結界。
「という訳で、私は何をすればいいと思う?」
「知るか」
そう言って眉間にシワを寄せるのは私の友人で寺子屋の先生こと上白沢慧音。今日は休日らしく、甘味処で団子を食べているのを発見したので、最近の悩みを聞いて貰うことにしたのだが、
「何故それを私に聞くんだ」
どうにも非協力的である。教師がそれでいいのか。
そう言うと慧音は、授業料を取るぞ、と言ってきた。
今現在マタギと無職の狭間に立っている私にそんな金はない。
「いやだってなぁ」
そう言って団子を何とも言えない顔で食べる慧音。
ちなみに最近の悩みというのは...
「「博麗大結界を張る手伝いって何をすればいいんだ?」って聞かれてもなぁ」
あの後、何となくで紫にOKを出してしまった私は結構困っていた。単に手伝いと言っても今回は下手に動けないのだ。
紫は「じゃあ、任せたわよ」とか言って即効で帰ってしまうし、最初は一緒に結界の構成を考えるのかなとか考えていたが、私は生憎そういうのに疎いし、あっちもそれを知ってるから、多分違う。
では私は何をすればいいのだろうか...?
とか何とか考えているうちに甘味処に到着し、今に至る。
「まあ、話から察するに八雲紫がお前に頼みたいのは広報とかそっちだろう。彼女はお前と違って立場が重い。それに、反感を持つ者も多い。そんな中、結界を張りますよ〜 なんてやったら暴動必至だろ?」
確かに紫は敵が多い。山やら月やら、やたら敵に回す。
多分あの胡散臭さがウケない原因だろう。
それに今回実行しようとしている事は、事情を知らない者からすれば、住んでいる町がいきなり壁で覆われる様なもの。
反発はとてもじゃないが避けられない。そして、それを紫が言い回ったとすれば、反発はより大きくなるだろう。
それで紫の作業に支障が出るのも確かだ。
「確かに、そうだな。」
一人納得していると追加の団子が届いたので食べてみる。
なかなかイける。このピンクの団子なんて1回力尽きても無かったことになりそうな感じがする。
「しかし...広報か」
広報をやる事は全く問題ない。こう見えても交友関係は変に広い。というか変なのが多いのが私の特徴だ。
しかし、ここ人里では私は有名人でも無ければ特に信頼されている訳でもない。困った。
「どうした?問題でもあるのか?」
「いやー あ、そうだ」
そんな中、1つアイディアが浮かんだ。慧音にやってもらえばいい。名案だ。
「出来れば人里の人間にこの事を伝えるのを慧音にお願いしたい。私じゃ上手く伝えられなさそうだからな」
「私か?...うーん」
慧音なら顔が広く、慕われているみたいだし、ちょうど良いんじゃないかと思ったのだが。
あまりこの計画をよく思って無いのだろうか?
「ちなみに慧音は結界についてどう思う?」
「私個人としては、有りだと思う。私も半分は妖怪だしな。それに、私は今の里が結構好きなんだ」
少し嬉しそうにそう言う慧音。彼女は半妖なので、やはり迫害を受ける事は多かった。だからこそ、この幻想郷が気に入っているのだろう。もう少し彼女らしくお堅い回答が帰ってくると思ったので少し驚いた。
しかし少し間を置いた後、慧音は表情を硬くし、
「だが、人里の代表として言わせてもらえば、正直決めかねる。現状、妖怪絡みの事件は多い。
妖怪を恨む人間も多くいる。そういった点を考えるとな...」
妖怪なんて居ない方が彼らにとって良いのでは無いか。
そう彼女は言外に滲ませた。
やはり立場的に彼女では厳しいか。と考えたが
「まあ、さっきも言ったが私個人としては協力したいと思っているんだ」
「じゃあ、」
「だから人里は任せろ。上手い事やっておくさ」
彼女には助けられてばかりだ、昔から。
「...すまない、助かる」
「いいさ、お前には世話になったからな」
そう言うと彼女は立ち上がり、会計を済まして暖簾に手をかけた。
「じゃあ、人里は頼んだ。」
「任しておけ、ユキ」
その後、ゆっくり団子を食べ、会計したら慧音の分が私にツケられていた。店員曰く「授業料」だそうだ。
だからって40銭はちょっと高くないか...?