にとり連れられて、何やら工房のような場所に来た。
「はい、まずこれね」
と、渡されたのはさっき使った火縄銃の中心部分を上に少し伸ばした感じの銃。
特殊火縄銃3型。2段式のオリジナル火縄銃で、火縄を直接薬室にぶち込む狂気の産物だ。
「お、これは随分ゴツいな」
「ユキから言われた部分を改良したらそうなったね。でもゴツいだけあって使用感は完璧! 威力もバッチリだね。
基本的な構造は1型と一緒だよ。変更部分は主に火蓋部分とライフリングだね。
火蓋はトリガーと連動して動くようになってて、火縄が薬室に入った段階で閉まるように調整したよ。
でもそれだけじゃトリガーが硬くなり過ぎるし、蓋を締めきれないから、補助で薬室と銃身の間に板を設けて、その板と火蓋を連動するようにして薬室からの圧力で火蓋が閉まるようになってるね。
1型は火蓋開きっぱなしだったからねー、撃ったら顔が真っ黒だよ。まあそれで2型は点火薬を挟んだんだけどね。
あと火挟みも改良してて、完全に薬室を締め切るために形を四角形に、それでここがちょっと問題なんだけど、そこの関係で火縄を出しておける長さがだいぶ短くなっちゃうんだよね。だから今回は火縄を調整し易いように、レバーで固定を出来るようにしたよ。
それと、この燃焼時間が長いピコファイバーを火縄用に用意しといたよ。
いや、月の技術は凄いねー
で、ライフリングなんだけど今回は手彫りじゃなくて工作機械を使って仕上げてるから、精度がちょっと良くなってるね。
操作部に特に変更はないけど、蓋を閉めて保持出来るように機関部右側面に火蓋操作用のハンドルを追加したよ。
一番前に持っていくと、火蓋全開。一番右に持ってて上げると全閉。ある程度右に持ってって下げると射撃体制だよ。
威力は2型はもちろん、1型よりも高くなってるよ。
薬室の分離と拡張で装薬量も増やせたし、弾丸も改良したからね。火蓋の改良で圧力も逃げにくくなったし、初速はかなり早いよ、大体350m/sは超えるかな?
弾丸は前と同じ前尖型の75口径だね。
で、これが新型の合金弾。前の鉛弾だと霊力とかが込めにくかったからね。今回は銀とかを使ってそこら辺の性能も高めてるよ。
あ、でもまだ霊力を込めるだとか博麗の加護を付けるとかはやってないよ。私じゃ出来ないからね」
「パーフェクトだ、ニトリー」
「感謝の極み」
にとりとふざけていると不思議そうに椛が
「そういえばユキさん、なんで鉄砲なんて使うんですか?」
そんなの使わない方が強いのに、という感じで聞いてきた。違う、私は人外じゃない。呪術とか使えない。銃使った方が強い。
「それはn「それはね椛、...カッコイイだろう!!」
「そ、そうだな...」
色々と説明しようと思ったら、にとりがもの凄い勢いで割り込んで来た。
思わず椛が素の口調になる。銃は確かにカッコイイが。
まあ、そういう事にしておこう。
「で、こっちが今日の本題。はいこれ、頼まれてたジェットパックだよ」
デカいリュックサックような物を背負う。
「結構デカイな」
「それでも結構小型化したんだけどね」
大きさはにとりがいつも背負っているリュックサックより2周り小さいくらいだ。
「燃料は妖力で、タンク式。バックパック外にタンクケースを設けて、燃料切れの時はすぐ付け替えられるようにしたよ。ちなみに妖力は安定性が高いから、他の燃料みたく衝撃や引火なんかで誘爆って事は無いから安心していいよ。
構造は簡単で、妖力を推進力に変換してるだけ。
変換はバックに組み込んだ術式回路で勝手に行うから特に気にしなくても大丈夫だね。
操作はこの有線コントローラで出来るよ。
出力部仰角は、垂直で0°〜100°、水平は60°ずつ、それ以上は安全面と機器の干渉で厳しいから、姿勢制御で補う事になるかな。でも、ホバリングは自動制御で可能だよ。
コントローラ背面のここを押せば勝手になってくれるね。
それと出力部は2系統に別れてて、独立制御も可能。でもそれぞれで燃料タンクが必要だよ。航続時間は通常出力で16時間。フル出力で1時間半、アフターバーナーありで20分だね。
万が一燃料切れや燃料タンク破損の時は内蔵の燃料タンクがあるからそこから妖力が供給されるね。
で、この燃料はシステムの維持にも使うから、一定期間、大体2、3年に1回は補充しに来てね。
あと、本当にヤバかったら脱出装置が着いてるからそれを使ってね、パラシュート付きだから高高度でも問題無く使えるよ」
思ったよりスペックが良い。これなら全然使えそうだ。
「で、問題の冷却機構なんだけど依頼の通り、一切着けてなけど本当に大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
「それって、ダメなやつじゃないんですか...?」
後ろで椛がぼそっと呟く
「まあ、冷却の事はともかく、それのせいで試験が出来てないんだよね。そこがちょっと問題で」
「という訳で、今から試験、というか試運転をしてもらいたいんだけど、大丈夫かな?」
「もちろん」
というわけで外の小さな湖(滝壺?)にやって来た。
「なんか仰々しい装備ですね...」
「まあな」
生身で飛ぶのは普通の人間には無理だ。
ということでパイロットスーツを着てきた。
凄く昔に使っていたものだが、あんま使っていないのもあってかまだ使えそう、という事で持ってきた。
「操作手順はさっき言った通りだよ、そっちの準備は大丈夫そう?」
「バッチリだ、こういった形で能力を使うのは久しぶりだが」
このジェットパックは小型、軽量化のために一切冷却能力を設けてない。
そこで私の能力「寒くする程度の能力」を使う。
最近この能力を使うのは自家製冷蔵庫に氷を補充する時くらいなので、少し不安だ。
「もしヤバかった時はバックパック上のイジェクトスイッチを押してね、脱出装置が作動するから」
「了解」
という訳でコントローラーの点火スイッチを押す。そうするとジェットパックが使用可能状態になる。
「お、起動はOKだね、そしたらコントローラーのスティックを下に倒してから、出力を上げて」
スティックを倒すとエンジン出力部が下に向く。そして出力を上げる。
「おー、飛びましたね!」
「我ながらいい出来だね」
うーん、これは気持ちいい。と、そろそろエンジンが熱くなってきたので、冷却を行う。
...全然問題ない、さすがにとり。
「通常出力での運用は問題なさそうだね。じゃあ次は出力最大で行ってみて」
さらに出力を上げる。段々楽しくなってきた。
冷却も問題ない。
「だいぶ速いですね、ついて行くのが大変です」
「まだまだ全然。さらに早くなるよ!」
ちなみに2人は飛べるので、普通についてきている。
「じゃあ最後!AB全開で!」
にとりのテンションがスゴい。しかし、こんな速いとは思わなかった。そのせいか私もテンションが上がってきた気がする。
ある程度高度をとったところで、エンジンの角度を少し上げ、自身の体勢を少しずつ横に傾けてく、地面と大体水平になったところで、エンジンの角度を下げ、アフターバーナーを全開にする。
ちなみに、こいつは名前こそアフターバーナーだが、構造は全然違う。どちらかといえばブースターだ。
「おーっ!!!すごいねぇ!」
「うわぁー、あれ文さんレベルですよ...大丈夫ですか?」
かーぜーにーなーるー かーぜーにーなーるー
いや、めちゃくちゃ速い。冷却は、まあ間に合う。
しかし、制御がだいぶヤバい、ちょっとエンジンの角度をずらすだけで制御を失いそうだ。
これは補助機構を設定してもらった方がいいかもしれない。
操縦に四苦八苦していると、前方に何やら人影が。
その正体は先程の射命丸氏。何故か立ち(浮き)止まっている。
いや、それはいい。いいのだが、彼女がいるのは進行方向一直線上。つまり
「どけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
私、ピンチ
何とか避けようとするも制御を失い、
「あ、ユキが!」
「うわぁ...」
私、錐揉み回転中。
これ以上はどうしようもないのでバックパックの放棄を決行。
確かバックパック上にイジェクトスイッチがあったような...あ、あった。
<自爆スイッチの作動を検知しました>
ん?
<あと30秒で、本機は自爆します>
何故か聞こえる機械音声。ジェットパックにスピーカー付きとは、河童の技術力には驚かされる。
そしてもうひとつ驚くのは、謎の自爆機能。
そんなのきいてないんですけど
「にとりぃぃぃぃ!!!!!」
夕暮れの沢に悲しい叫びが響いた。