単発で終わる予定だった話を、こうやってシリーズにした上に完走出来たのは皆さんのお陰です。
感想等を下さった皆さん、本当にありがとうございました。
『これは驚きです!テイエムオペラオー片目を負傷しているようです!』
パドックからの中継を見て、実況の赤坂は声を張り上げた。
オペラオーは普段しているように、『みんな、今日もボクの伝説を見届けてくれたまえ』などと言いながら笑顔で手を振っている。
しかし観客たちの反応イマイチ薄い。目の怪我が気になっているようだ。
『シンボリルドルフさん、これはどういう事でしょうか?』
『アクシデントであるのは事実でしょう。しかし、彼女も彼女のトレーナーもいけると判断し、出場しています。それは尊重したいですね』
『なるほど……オグリキャップさんはいかかでしょうか?』
赤坂がオグリキャップに話を向ける。
『……会長の言う通りだ。出場か棄権かの判断は陣営のものを、尊重すべきだ…ただ』
ゆっくりとオグリキャップは二の句をついだ。
『出走する以上、ケガだの病気だのは言い訳にならない。彼女たちは、分かりきっているだろうけど』
その言葉は不調や故障を抱えながら、過酷な連戦を戦い抜いた彼女だけに説得力があった。
『そうだな。勝負の場に立つという事はそういう事だ』
『な、何かお2人とも今日は、トゥインクル現役のころのような迫力ですね…』
レジェンドたちから発せられる真剣な気配に、赤坂は若干怯んでいた。
『ん?ああっ、すいません。テレビは明るく楽しくですよね。では先日私が思いついた新作のジョークを…』
その後シンボリルドルフの発した冗談に、赤坂は凍り付きオグリキャップは天然な返答をしたのだった。
そしてついにレースの時がやって来た。
本日の最終レースであるグランプリ・有馬記念。スタンドも盛り上がり見せている。
「ねーねー、キングちゃんまだかな?」
「もうすぐゲートにやってきますよ」
「キング、勝てるかなぁ」
スタンドの一角に陣取ったのは、スペシャルウィークを始めとした黄金世代の面々とハルウララ。
ラストランとなる、キングヘイローの応援の為にやって来たのだろう。
和気あいあいとした彼女らと対照的に、チームアンタレスの一団は雰囲気が暗かった。
ボトルをぶつけてしまった後輩は死にそうな顔をしているし、他の後輩も今にも泣きだしそうだ。
肝心のトレーナーも、不安の色が濃い表情でターフを見つめている。
(オペラオー……)
心は決めた筈だった。覚悟もしている筈だった。それでも湧いてくる悪い想像。
情けなかった。教え子は不利も不安も故障すら飲み込み、ファンの為走ろうとしている。
それなのに、自分はこのままでいいのか。いや、いいはずがない。
(…いい加減にしろ!このドアホ)
トレーナーは顔を上げた。そして、チームのウマ娘の一人に声をかける。
「……なあ、俺にビンタしてくれへんか?」
「え?」
そのウマ娘は、一瞬トレーナーが何を言っているのか分からなかった。
「このままじゃアカンのや。オペラオーは走ろうとしている。それなのに、俺やお前たちチームメイトがこんな調子でどうする!?」
熱のこもった言葉。俯いていた後輩たちが彼を見上げた。
「気合を入れてくれ。不安なんか逃げ出してしまうようなヤツを一発頼む」
真剣な目で、トレーナーはその娘に頼み込む。
それでも戸惑っていたが、やがてその娘も彼の言葉の意味を理解した。
まるでレース前のような表情で、トレーナーの正面に立つ。
「……分かりました。いきますよ」
「おうっ、こいや!」
言葉が終わるとほぼ同時に、スタンドに破裂音が響いた。
ビンタを食らったトレーナーは、頬を押さえてよろける。
その周囲の観客たちは、突然何が起こったのかとポカンとしている。
「だ、大丈夫ですか?」
「へ、平気や。いい一発やったで。めっちゃ気合入ったわ」
親指を立てて笑うトレーナー。
「よっしゃ!気合入れて応援すっぞ!」
「はいっ!」
発した号令に全員が気持ちよく答える。そこにはそれまでの陰鬱とした雰囲気はなかった。
「まったく…若いというかアホというか…あれがリギル流なのか?」
一部始終を少し離れた所から見ていた、スピカのトレーナーが隣の東条に問う。
「断じて違う……だが彼らしくていいんじゃないか。それに彼だって、ウマ娘にプロレス技をかけられている奴には言われたくないだろう」
そう言う東条の表情は、どこか嬉しそうにも見えた。
ターフへと向かう地下バ道。
そこでオペラオーはメイショウドトウに声をかけられた。
「やあ、ドトウどうしたんだい」
にこやかに声をかけるが、ドトウの顔は笑っていない。
その螺旋を描く瞳は、強い闘志の炎を湛えている。
「……事情は知っています。不幸な怪我だとは思いますけど、ここに立っている以上全力で戦います」
ドトウから向けられる刃物ような気迫。殺気にも似たそれはオペラオーをひりつかせる。
「当然だろう。出場するという事は、万全だという事さ」
「それもそうですね。当たり前の事を言ってすいません」
ドトウはそう言い残してターフへと向かった。
(…ライス先輩に標的にされた、マックイーン先輩もこんな気分だったのかな?)
自分に勝つ事しか、考えていない敵に付け狙われる危うさ。
勿論それに怯むオペラオーではなかったが、これまでのレースのようにはいかない、苦戦の気配を感じていた。
「あら、どうしたのこんな所に立ち止まって」
「……ん、ヘイロー先輩」
声をかけられ、オペラオーはそちらを見やる。
声の主はキングヘイローだった。
「もしかして、プレッシャーに押しつぶされそうなのかしら?だとしたら一流失格よ。重圧に負けないのが一流なんだから」
普段『私を差し置いて覇王なんて生意気よ』と良く突っかかってくる先輩。
今日がラストランだと、知っていたが感心するぐらい普段通りだ。
「先輩はいつも通りですね。引退試合だからって、見たところ気負いも何もない」
「当然よ。一流のウマ娘たるもの、デビュー戦もラストランも同じ心持で走るものなのよ」
日頃張り合っている一つ上の先輩の言葉が、今は不思議なほど腑に落ちた。
「どうしたの?急に黙っちゃって」
「…初めてヘイロー先輩の言う事に、感銘を受けてるんです」
「はぁ!?ふざけてるの?貴方と出会って3年ほどになるけど、私の言う事に初めて感心したですって?」
怒った様子で、キングヘイローは出口へと歩き始め、オペラオーも追うように向かう。
やがて2人は地下道を抜けターフへと出てきた。
「悪い意味じゃないんですよ」
「じゃあ一体、どういう意味よ?最後まで生意気な人ね!1着は私がいただくから覚悟しなさい!」
ふくれっつらで、キングヘイローは自分のゲートの方向へと移動していく。
「怒らせてしまったか。つい本音を言ってしまったからなぁ」
などとボヤキながら、自分もゲートに行こうとしていた時、急にオペラオーは足を止めた。
(……この感覚は…!)
既に自分以外の全員が、ゲート周辺に集まっていた。
オペラオーに視線を送る者。目を合わせない者。体をほぐしている者。
皆それぞれだったが、キングヘイロー以外の全員が同じような思いを持っているのが彼女には分かった。
ちょうど先程ドトウから向けられたものと、似たような気迫を皆が自分に向けている。
(なるほど、14対1という訳か)
『しかし、憶えておくと良いですわ。勝ち続ければそれだけ敵は増えていきます。全てのウマ娘が敵に回る展開もあるかもしれません』
かつてメジロマックイーンが、言っていた言葉を思い出す。
普通ならそんな状況を嘆くものだが、オペラオーは14人から敵意を向けられてもたじろぐ事はない。
(……面白い。そうこなくちゃ)
オペラオーはそう思いながら、苦闘とライバルたちが待ち受けるゲートへと向かった。
ファンファーレが鳴り終わるとゲートが開き、ウマ娘たちが勢いよく飛び出していく。
『スタートしました。ほぼ揃って飛び出しました。ダイワテキサスがまずは好スタートを見せました』
まず先頭に立ったのは、そのダイワテキサスをかわして逃げバのジョービッグバンだった。
それに僅差で付いていくのがゴーイングスズカ。オペラオーは中位に位置していた。
そして最初のコーナーに差し掛かった時、オペラオーの身体が横に揺れた。
『さてテイエムオペラオーは、ちょうど中段です。おっと弾かれたかオペラオー!』
接触をして弾かれる格好になったオペラオー。トレーナーが血相を変えている。
しかし彼女はすぐに態勢を立て直し走り続けていた。
『やはり片目で距離感が掴めないのだろう。しかしそれに怯まないのは流石だ』
『……いや、それだけじゃない』
合わせるように、オグリキャップがやや力を込めて発言した。
『おや、珍しいな、君が解説で話を振られずに話すとは』
『…自分のレースを思い出した』
『ラストラン――あの奇跡の有馬ですか?』
赤坂が興奮気味に尋ねるが、オグリキャップは首を横に振った。
『違う。まだはっきりとは言えないが、似ているんだ私が走ったレースと』
オグリキャップのどこか謎めいた言葉。それは赤坂やシンボリルドルフ、果てはテレビを見ている視聴者にもこのレースが一筋縄で終わらない事を予感させた。
走っている当人はと言うと。
(少し普段より出遅れたか……まあいいさ、片目での走りも掴んできた)
最後方にいても、さほど焦ってはいなかった。
距離感も走りながらようやく慣れてきた。
十分巻き返すことも可能だと、オペラオーは思っていたが、すぐに顔色を変える事となる。
『―――それにしても、ペースが上がらないな』
その時放送席で、シンボリルドルフが言葉を漏らした。
『ええ、いささかスローな展開ですね』
シンボリルドルフが指摘したような、スローな展開で大分ウマ娘たちが固まっている。
(………なにか変だ。いつも違う……まさか…!)
オペラオーが片目のせいばかりとは言えない違和感の正体に、気が付いたのか塞がれていない方の目を見開いた。
この展開オグリさんのラストランの時みたいですね。と赤坂が声をかけた時、オグリキャップは声を上げた。
『………思い出した!確か会長と似たような名前の、先輩と初めて走ったレース!あのレースと展開が似ているんだ』
『ど、どうしたいきなり……私と似た名前の先輩…シリウスの事か?……君とシリウスの初対決は、確か毎日王冠ではなかったか』
脅威的な記憶力。すぐに該当するレースを導き出す。
『そうだ、毎日王冠だ。この展開はあの時と似ている』
『あの時の毎日王冠……なるほど、そういう事か!』
今度はシンボリルドルフが声を上げた。
シリウスシンボリと、オグリキャップの戦った毎日王冠と言えば一つの事が浮かぶ。
「………ブロックや。間違いないありゃ完全に囲んどる」
戦況を見守っていたアンタレスのトレーナーが、絞り出すようにもらした。
それは実力が突出している、ウマ娘に対して行われる作戦だ。
オグリキャップも毎日王冠で、他のウマ娘たちにマークされ包囲された。
だがしかし今回の包囲とブロックは、その時よりも厳しい物だった。
「ひ、ひどい!」
「聞いた事はあるっスけど、さすがにあれは、やり過ぎじゃないっスか!?」
口々に声を上げるアンタレスの後輩たち。
トレーナーは、苦々しさが滲み出た表情で首を横に振る。
「…審議マークは出てへん。つまり反則やないんや」
「そんな…!」
後輩たちが絶句する。まさか憧れのG1でそんな戦法があるとは、思っていなかったのだろう。
ウマ娘テイエムオペラオーという存在は、大きくなりすぎていた。
大言壮語をマスコミの前で吹いて、最も強く美しいウマ娘と言って憚らない。
しかも誰も反論できない程の、素晴らしい結果を伴って。
それこそ彼女自身が言うように、太陽のように誰も彼もが注目せざるを得ない。
妬むもの、尊敬するもの、憎むもの、憧れるもの、抱く感情はそれぞれだが目を離す事はできない。
その結果がこれだった。まるで牢のようにオペラオーをブロックする状態。
(……クソが!俺はなんて無能なんや!勝ちまくったら、こうなる可能性がある事ぐらい、分かるやろ!少なくとも東条先輩なら分かってた筈や!)
思わず血が出そうなくらい思いきり自分の腕の肉を掴むトレーナー。
そもそも東条がトレーナーならば、その威光と実績でここまで露骨なブロックは出来なかっただろう。
アンタレスが結成したばかりの、後ろ盾のないチームであることもこの事態を招いた一因だった。
(そしたら、対策を練る事も出来た……ホンマのアホや!)
そんな彼に先輩トレーナーたちは誰も目を合わせようとしない。
だが決して包囲しているウマ娘たち及び、彼女らのトレーナーたちが結託してオペラオーを潰そうとしている訳ではなかった。
しかしそれ故に始末が悪いとも言えた。
「オペラオーをマークするんだ」
「いいか、オペラオーさえ抑えれば、勝つのはお前だ」
「シニアG1、全部持っていかれてたまるか!俺の担当を引退させる気かよ!?」
それが覇王を抑え込む道だと信じて、自分の愛する教え子を勝たせるためと信じて。
それぞれのトレーナーたちが、指示を出した結果オペラオーにとっては最悪の事態になってしまった。
(露骨ねぇ……ある意味、正しいやり方なのかもしれないけど…)
その囲まれているオペラオーよりも、さらに後方に控えたキングヘイローは苦闘する後輩の背中を見つめていた。
『勝ち筋を一つ発見した』
などと言って彼女のトレーナーが話した事が現実になっていた。
『オペラオーがブロックされてバ群に沈む展開。そうなったらチャンスがあるかも』
『なによそれ。そうなったら、私にも包囲に加われって事?』
阿吽の呼吸のような返事。トレーナーは肯定も否定もしない。
『……判断は任せるさ。ヘイローの勝負勘にね』
その場では、無責任ねぇと言ってキングヘイローは呆れたように笑った。
まさか本当にそんな状況になるとは思っていなかった。
キングヘイローは少しだけオペラオーに同情する。怪我をおして出場した、五冠がかかったレース。
だが徹底的にマークされ、勝ちへの道は消えたかのようだった。
(……どうするのよオペラオー。ここからじゃ顔は見えないけど、どんな顔をしてるのよ?)
とキングヘイローが思った時、オペラオーの顔は歪んでいた。
(――苦しい)
このような苦しいレースは初めてだった。
先程の接触のせいか、止まったはずの鼻血も昨晩ほどではないがまた滲んできている。
精神的な苦しさと相まって、実際に鼻呼吸がし難く息も苦しい。
呼吸が乱れると視界も乱れる。元々片側は塞がっているのだから猶更だ。
(まるで、身体に重りを着けられて、おまけに鼻栓と目隠しをされて走ってる気分だね……)
その上周囲を、ブロックされてしまっている。賢いレース巧者であるオペラオーには、自分の現況の最悪さがはっきりと分かっていた。
(情けないな14対1が、面白いとか思っておきながら………所詮、ボクは覇王モドキの道化だったのか……?)
諦めという心地よい泥濘。その底なしに沼に全てを預けたくなる。
そうすれば楽だっただろう。そう出来ればどれほど楽だっただろう。
だがオペラオーの心を黒い物が包みそうなったその時、ふと脳内によぎる光景があった。
昨年の4月、ここ中山で皐月賞を制した時。メイントレーナーの東条よりも早く飛び出し、自分を抱き上げた当時のリギルのサブトレーナー。
その瞳には光る物があった。彼の悔し涙は陰ながら何度も見ていたが、嬉し涙はあの時だけだった。
(………ここから勝ったら、また泣いちゃうかな?彼は涙腺が脆いからなぁ……)
「オペラオー!!走るんや!約束破る気か!」
(約…束?)
ふとそんな考えを抱いた時、トレーナーの声が聞こえた気がした。
この大歓声、しかもオペラオーの包囲のせいか、怒号のような物まで飛んでいる中で聞こえる筈はない。
「先輩ー!諦めないで、頑張って!!」
「世紀末覇王伝説を、一番間近で見せてくれるんじゃなかったんですか!」
「私たち、ここで先輩が負けたらもう走れないっスよ!!」
しかしトレーナーと後輩たちが叫んでいるのは事実だ。いや叫ぶというよりは絶叫と表する方が近い。
もはや出来る事はそれしかないと、声を枯らして声援を送っている。
(俺はアホで無能や……けど、それは諦めていい理由にはならん!アイツを奮い立たせる事が出来るなら、喉が潰れてもええ!)
奇跡か妄想か。それとも呼吸の乱れと疲労による幻聴か。
ともかくオペラオーはその叫びを“感じた”。
真偽はどうでも良かった。その事実だけが消えかけた炎の燃料になった。
(………そうさ、諦める?何を甘い事を……諦めていい段階はとっくに終わっている。ローマを目にして逃げるカエサルがいるものか!)
覇道を歩む者に諦める事は許されない。負けるとしても、全力を出し尽くし最後まであがききって敗れねば。
紫の瞳に決意と覚悟の色がありありと浮かぶと同時に、一人のウマ娘の背中に標準を合わせる。
今の状態で勝利を得る道は、一つしかないと確信していた。
(ボクの最大のライバル……君を信じる。君にさえ勝てればレースにも勝てる!)
オペラオーはぼやける視界の中、かつて自分だけを見ていたドトウの背中だけをしっかりと見据えていた。
『さぁ、テイエムオペラオーはどうするんだ!テイエムはどうする!残りはもう、310mしかありません!』
赤坂が熱のこもった声を張りあげている。オペラオーはまだ後方にとどまっていた。
『いかに彼女と言っても、これでは苦しいか?』
シンボリルドルフが苦い顔で告げる。彼女の経験上中山の短い直線で、ここから差すのは厳しい。
ましてやオペラオーは、未だに包囲の中にいるのだから。
『……いや、まだだ。まだオペラオーの目は死んでいない』
『しかし現実問題どうするのだ?毎日王冠の君のように、大外から一気に抜くというのか?』
オグリキャップが口ごもる。その戦法を彼女は得意としていたが、オペラオーのスタイルではない。
『でも、上手くは言えないがこのままでは終わらない。これで終わるようなウマ娘が、ここまで全勝は無理だ』
論理的とは言えない。だがその言葉には強い説得力がある、多彩なライバルたちと激闘の数々を繰り広げてきた彼女ならではの。
『…根拠には乏しいが、他ならぬ君が言うと、そう思えてくるから不思議だ』
『ついに残り200を切った!残り200を切りました!テイエムは来ないのか!』
最後の直線。だが飛び出したのはメイショウドトウだった。
(勝つ……絶対に勝つ!)
戦鬼のような表情で、ドトウは先頭に立って走っていた。
速さだけではなく、その走りには名前のように怒涛の勢いと力があった。
「ドトウそのままだ!そのまま行けば、勝てるぞ!」
彼女のトレーナーが熱っぽく叫ぶ。ついに、ついに念願の対オペラオー勝利が叶う。
そう彼女のファンたちも、思ったその瞬間だった。
ドトウが抜けだした。それとゴールが近づき、意識がそちらに向いた。
そのような事象が重なった結果、オペラオーのガードがほんの少しだけ開いた。
本来ならば隙ともいえないような、僅かな包囲の綻び。
だがオペラオーにはそれで十分だった。彼女の瞳に映るのはもはやドトウのみ。
「うおおおおおあああっー!!」
オペラオーの咆哮と共に、彼女の片目を覆っていた眼帯が吹き飛んだ。
そして全身に力を込め、最後のスパートをかけた。
『テイエムきたっ!テイエム来たっ!! 抜け出すか!メイショウドトウと!テイエム!!』
「ひ、ひいっ!」
「うわわっ!」
オペラオーから発される、余りの迫力とプレッシャーに圧倒されるウマ娘たち。
(あの背中……あの背中さえ抜けばいい!)
既に周囲のウマ娘たちは意識の外だった。
爆弾が爆ぜるように、オペラオーはドトウ目掛け道を切り開いていく。
衝突ギリギリの狭い道を、こじ開け広げ突き進む。
(う、噓だろ!バケモンか!)
(強引すぎる…けれどそれを成立させる“強さ”がある!)
もはやオペラオーを止めるには、体当たりでもするしか無かったが、今の鬼気迫る彼女にそれが出来る者はいない。
一人、また一人と瘡蓋を剝ぐように、躱しながらドトウへと共に伸びていくオペラオー。
そしてその横で、同じように加速する緑の影。
『いけぇー!ヘイロー!勝つのはお前だー!』
担当トレーナーが叫ぶ。包囲網に加わらず、後方にいたキングヘイローも大外から仕掛けたのだ。
残しておいた脚を使い、最後の勝利を飾るべく全力で駆ける。
(……やっぱり来たわね!予想通りよ)
そう、キングヘイローは分かっていた。
オペラオーが、最後にはブロックを突破して上がって来る事を。
(勝てないなら囲めばいい?………それでどうにかなるなら、私たちは苦労しなかったわ)
慌てふためきながら、突破されていく包囲網を横目で見ながら、キングヘイローは鼻で笑っていた。
挑戦する度にキングヘイローを、返り討ちにしてきた同期の“化け物”たち。
彼女たちのように、オペラオーもどう包囲されようが最後は伸びてくると確信していた。
(それが“一流”よ……ねぇ皆!)
この走りに、スタンドから同期たちとハルウララも声援を送る。
「いけぇー!キングちゃん!あと少しだよぉー!!」
「キングちゃーん!頑張れぇ!」
「踏ん張るデース!キング」
「キングちゃん、まだ行けますよ!」
「こんなもんじゃないでしょ!キング」
その声援に応えるように、キングヘイローはオペラオーに併走するように先頭を伺う。
これまでの4年間を、ぶつけるような素晴らしい走り。それはオペラオーに勝るとも劣らない。
ドトウとオペラオーの争いに、割って入るかと場内の誰もが思った。
「うおおおおおっ!」
「くぅっ!」
だが競っていたのはほんの少しの間だった。勝負はいつも残酷なものだ。
オペラオーの爆発的な末脚は、並んでいたキングヘイローを追い越しさらにその先も捉えようとしている。
精神力はともかくそれを追っていく底力は、残念ながら今の彼女の脚にはなかった。
(これが、私の限界?)
オペラオーが離れていく際、キングヘイローはまるでレースを司る何者かから、お前はここまでだと言われている気分になった。
しかし意外と悔しさはなかった。それを悔しいと思わない事が、トゥインクルを引退するという事なのだろうと理解する。
(…どこまでも行きなさい…世紀末覇王)
キングヘイローは微かに笑ってみせた。
(来ましたね!)
メイショウドトウも、オペラオーがやって来ることは理解していた。
と言うよりもそれ以外の顛末は考えていなかった。
死にたい程憧れ、自分に敗北の味を何度も味合わせた、あのテイエムオペラオーがバ群に埋もれたまま終わる訳がない。
だからこの展開になる事は分かり切っていた。その上で勝つ事が彼女にとって重要なのだった。
必勝の覚悟を持って覇王を屠る。それが叶えば引退をしてもいいほどの思いがあった。
「“領域”か。あの競り合いは、まるで君とタマモクロスの有馬のようだな」
「……決まる!」
唸るシンボリルドルフに、右手を思いきり握りしめるオグリキャップ。
確かに決着の時が訪れようとしている。
(ドトウ……ドトウ!)
(…オペラオーさん!)
オペラオーとドトウ。お互いにとって、ここには2人しか存在していなかった。
残り直線ほんのわずかな距離。時間がゆっくりと流れているような錯覚。
これで今年4度目の、一着を巡る争い。果たしてこの2人を分かつものは、一体何だったのだろうか?。
スタミナか?スピードか?力強さか?精神力か?はたまた持って生まれた“運”だったのだろうか。
『もはや、この勝負に言葉はいらないのかもな』
シンボリルドルフが短く呟く。
或いはその全てがほんの少し、本当に微差ずつオペラオーに届いていなかったのかもしれない。
『テイエムかっ!?テイエムかー!!僅かにテイエムかーー!?』
赤坂の絶叫が木霊した時、2人は凄まじい速度でゴールを駆け抜けていた。
(勝った……のか?ボクは)
ドトウしか見ていなかった。その背中に追いつき並び、殆ど同時にゴールした。
オペラオーにとって、手ごたえは五分五分。
当然のように結果を求めて、掲示板の方向を向いた。
しかし彼女の全精力は、既に使い果たしていた。
「……あ…あ?」
そんな状態で首を回したのが良くなかった。レースが終わり気も抜けていたのだろう。
普段なら何でもない行為なのだが、この時は違っていた。
「オペラオー!?」
アンタレスのトレーナーが、顔面蒼白で叫んだ。
彼女はバランスを崩していた。頭から倒れこむような姿勢で、足が半分浮いている。
「あ、アカン!」
トレーナーの脳内に最悪の想像が広がる。
このままでは、オペラオーは頭からコースに叩きつけられる。
体力を使い果たし、気を抜いている時に、そんな事になればどうなるか。
しかし彼が助けに行くには遠すぎる。だがそれでもトレーナーは手を伸ばさずにはいられなかった。
だが次の瞬間、オペラオーの頭は叩きつけられる事はなかった。
むしろ頭からは、まるで座布団の上に乗せられているような柔らかさしか伝わってこない。
(なんだ……この心地よさは?……もしかして天国)
「………しっかりしてください。私に勝ったんですから」
オペラオーは、背後から聞こえるその声に聞き覚えがあった。
「ド……ドトウ!あ、ありがとう……!」
脱力しその場にへたり込むアンタレスのトレーナー。
そう倒れかけたオペラオーを、すぐ近くを走っていたドトウが受け止めたのだ。
腕で彼女の上半身を抱え、頭は胸の上に乗っている。
「……天使かと思ったらドトウか…しかし、まだ勝負の結果は…」
「見えませんか?」
オペラオーが電光掲示板を見ると、そこには自分の番号が一番上へと記されていた。
どうやらドトウ自身はそれを見るまでもなく、敗北を確信していたようだが。
「…また、負けちゃいましたね。けど全力を出し切ったから悔いは……………あります。死ぬほど悔しいです」
正直に気持ちを吐露するドトウ。うるんだ瞳、表情には確かに悔しさが滲んでいる。
「……それなのに、ボクを助けてくれたのかい?」
「それとコレとは別です。“友達”を助けるのは当たり前です」
オペラオーの顔を見おろしながら、今度はドトウは微笑んでみせた。
「……嗚呼、君が輝いて見えるよ。友であり最大のライバルである、君こそがボクの覇道に最も必要なピースなんだったんだね」
「褒めすぎですよ。逆の立場でもオペラオーさんは私を助けてくれるでしょう?」
「どうだろう。負けた時の事はあまり考えたくないかな」
ええ~酷い~救いはないんですかぁ~と笑うドトウ。釣られたようにオペラオーも笑った。
オペラオーがドトウに助けられていた時、トップロードは離れた場所からそれを見ていた。
膝に両手をつけ、流れる汗を拭こうともせず顔を引きつらせながら。
(また……また…負けた……オペラオーどころか、ドトウにもまるで敵わない…!)
やがて2人を見る事すら辛くなり、トップロードは頭を下げた。
ターフにしたたり落ちる水滴は、果たして汗だけだろうか。
彼女のトレーナーが何やら言っているが、その耳には届いていない。
俯き続けるトップロード。だがその肩に誰かが触れた。冬の寒さのせいか、とてもそれは暖かく感じた。
「顔を上げなさい。トレーナーさんが呼んでるわ。それにあなたを支持して、声援を送ってくれたファンに申し訳ないわよ」
一見厳しげだが温かみのある言葉。
「ヘイロー先輩……」
トップロードが顔を上げる。トゥインクル引退レースを4着で終えた、1つ上の先輩の表情はとても穏やかな物だった。
「あなたの気持ち、分かるつもりよ。……けどね“先輩”として言わせてもらうなら、その気持ちは決してあなたにとって、マイナスにはならない」
キングヘイローはその穏やかな、面持ちのままで言う。
同世代のトップクラスたちに挑み続け、跳ね返され続けても走り続けたキングヘイロー。
敗北の連続は時に、ウマ娘の心をいとも簡単に粉砕する。しかし彼女はレースには負けても、敗北には決して屈しなかった。
それは後に“不屈の塊”とまで言われた。
その彼女のこれまでの経歴を知っているトップロードからすると、その言葉にはとても深みを感じた。
「その気持ちを持ったまま、走り続けなさい。それがあなたの道になるんだから……って4着がカッコつけ過ぎよね」
「い、いえ!そんな事はありません!ありがとうございます」
生気を取り戻したような顔で、頭を下げるトップロード。
キングヘイローはそんな後輩に手を振り、スタンドの方向を向き直す。
その視線の先では泣きじゃくる2人の取り巻きと、これも涙目で立っている自分のトレーナーがいる。
「……なによ、キングの新たなる門出に涙は似合わないわよ?」
キングヘイローの背中を見つめながらトップロードは思った。
(私も……ヘイロー先輩のように、胸を張って引退したい……たとえ、オペラオーやドトウに届かなかったとしても…!)
ナリタトップロードは空を見上げる。そこには綺麗な青空があった。
『判定の結果が出ました!テイエムオペラオー!ついに、シニア中長距離グランドスラム達成!そして重賞8連勝、年間無敗も達成です!』
興奮冷めやらぬ観客席に負けない調子で、赤坂はオペラオーの偉業を伝える。
『素晴らしいレースだった。あれほどの強さ……テイエムオペラオーはシンボリルドルフを超えたと言われたとしても、反論できないかもしれない』
隣のシンボリルドルフが、感心しきったように言った。
その言葉はトゥインクルを、走るウマ娘にとって最大の誉め言葉だ。
彼女の持つG1七勝。それにオペラオーはシニア1年目であと一勝まで迫ってもいる。
『珍しいな。学園一の負けず嫌いなあなたが、そこまで言うなんて』
先日のからかいのお返しとばかりに、オグリキャップが笑顔で言う。
冷静沈着なイメージの彼女だが、トゥインクル現役時は時に狂気にも似たレースへの執着を見せる事もあった。
その事をオグリキャップは言っているのだろうが、当の本人は苦笑一つで返してみせる。
『流汗悟道、彼女は自身の力で険しい道を切り開き、覇道を成し新たなる伝説と夢を今見せてくれた。それを認められない程私は狭量ではないよ』
『…そうだな。私なんかとても敵わないだろう』
『おいおい、謙遜はやめてくれ。君は私だろうがブライアンだろうが、それこそオペラオーだろうが、ファンの期待さえあれば超えていくかもしれない…そんなスーパースターだろう』
今度はシンボリルドルフがからかう。
或いはそれは、彼女の本心なのかもしれないが。
『あなたにおだてられると、どうも身体がムズムズする。止めてくれないか』
『まあまあお2人とも、その続きは2週間後のWDTでお願いしますよ』
横から赤坂が仲裁を入れる。
『いや、これはすいません。後輩の偉業にどうも、はしゃいでしまいました。しかし、私は今日一つ楽しみが増えました』
『楽しみ?』
『近い将来、オペラオーとドリームリーグで走る事ですよ』
きっぱりとシンボリルドルフは言い放つ。その言葉には、言う通り歓喜の色が含まれている。
『ああっ、それは私も楽しみだ』
同意するオグリキャップ。そこで赤坂は気が付いた。2人のオペラオーを見つめる目が、後輩に向ける物から将来の好敵手のそれに変わっている事を。
競走ウマ娘は大概誰しも強い闘争心を持っているものだが、この2人の物は桁違いだった。
(やっぱり、レジェンド級の中でもトップクラスのウマ娘は違う……)
ある意味オペラオーにあてられた両名。新年のWDTはこの2人が本命だな。と赤坂は思いながら放送を締めた。
レースとウイニングライブが終わった後、病院での再度の検査がすむとチームアンタレスは解散した。
祝勝会兼忘年会をという声もあったが、それはまた日を改めてという事となった。
教え子たちと分かれてから、トレーナーが一人歩いているとスピカのトレーナーから呼び出された。
『おめでとう:祝ってやるから集合な』
言われるままに指定された店に赴くと、スピカのトレーナーだけではなく眼鏡にスーツ姿の女性も待っていた。
「せ……先輩?」
「遅かったじゃないか。なにはともあれ、シニア中長距離制覇おめでとう」
戸惑うトレーナーとは対照的に、東条は笑顔で盃を掲げた。
「俺が呼んだんだ。久しぶりに話させてやろうと思ってな」
「タダ酒が飲みたいだけじゃないのか?君は、こんなトレーナーになってはいかんぞ?」
東条がスピカのトレーナーを軽く睨みながら言った。
アンタレスのトレーナーは距離や壁を感じていた自分が、小さいだけだったのかなと思いながら席に着く。
「ありがとうございます。でも、俺の力なんてホンの少しです。やり遂げたのは殆どあいつ自身の力ですよ」
「そりゃそうだ」
「否定はしない」
淡々と言い放つ先輩2人。分かっていても少々キツい。
「……もしかしてお2人とも、結構お酒入ってませんか?」
「そんな事はどうでもいい。この一年黙っていたが、君の指導方法について、少々アドバイスしたい事がある」
そう言う東条の目は据わっているように見える。
「心して聞けよ。おハナさんから直接ダメだしされるなんて、金払ってでも出来ねえぞ?」
「お、お手柔らかに頼みます……」
嬉しいような厳しいような時間はすぐに過ぎた。
未だに盛り上がる先輩2人に礼を言い、トレーナーは店を後にする。
暮れの夜風はとても冷たい。頬を指すような寒さに身が縮こまる。
「さっぶ……はよ帰らな」
終電までまだ時間の余裕はある。酔い覚ましを兼ねてゆっくりと歩く。
そうして歩いていると、彼の携帯電話が鳴った。
画面を見ると、電話をしてきたのはオペラオーだった。
(ま、またなんかあったんか?)
慌てて電話に出ると、聞きなれた教え子の声が聞こえた。
『やぁ、こんな時間にゴメンね。もしかして寝てたのかい?』
「い、いや、大丈夫や。先輩たちと飲んでた帰りやからな」
『先輩って東条トレーナーかい』
「ああ、そうや。お前の話をしている時ホンマに嬉しそうやったで」
手元を離れたとはいえ、かつて自分が見出したウマ娘の歴史的快挙。嬉しくない筈がなかった。
酒が進んでいたのもまず間違いなくそのせいだろう。
『………ありがたいね』
「ほんで、どうしたんや。まさかどっか痛いんか?」
『違うよ。君が外にいるならちょうど良かった。月を見てくれ』
言われるがままにトレーナーは頭上を見上げる。
「おぉ……!」
そこには見事な満月が浮かんでいる。
『綺麗だろう。まるでボクのようじゃないか。ハッハッハ』
電話越しでもオペラオーが、上機嫌なのは伝わってきた。
「要件はそれか。ビックリさすなや。確かに綺麗な月やけど」
『ねえ、君満月の次はどうなるか知ってるかい?』
「なんや、妙な事言うな。満月の次言うたら、また欠けていくだけやろ?」
『そうだね……それもボクみたいだね』
急にオペラオーの声の調子が変わり、どこか湿っぽい感じで言った。
「……どういう意味や」
『そのまんまさ。満ちた物は欠けるだけ……ボクも今年以上のパフォーマンスは、厳しいだろうね。衰えから逃げられるウマ娘はいないし、覇王を討つ“勇者”が現れるかもしれない』
珍しく弱気な言葉を口にするオペラオー。
言う通り今が絶頂期だとするなら、後は下がっていくだけだ。
「お前らしくないやないか。似合わんぞ。大体お前は自分を太陽って言ってたやないか」
『いいだろ。ボクだって感傷的になる事もあるのさ』
しばしの沈黙。トレーナーは月を見上げたまま歩き続け、やがて足を止める。
「衰えやったら気にすんな。俺はこの一年、お前に勝たせてもらった。その埋め合わせや、来年お前が衰えたら俺が勝たせたる」
トレーナーの発した言葉には、しっかりとした思いが籠っていた。
『君……!』
「だから安心しろ。来年も覇王伝説は続くんや。そしてルドルフのG1七勝を塗り替える。お前はこの世で最も華麗で、この世で最も速い、世界の中心の勝利者なんやから」
オペラオーの持ち曲の、歌詞を引用するトレーナー。
おいおいと思わずオペラオーが、苦笑する声が聞こえる。
『……それぐらいにしてくれよ。君こそ、らしくないじゃないか』
「たまにはええやろ?お前が信じる俺を信じてみろ」
いつぞやオペラオーに言われた言葉を、そのまま本人へと返す。
教え子はそれを憶えていたらしい。トレーナーには分からないが、はにかんだような表情で返事をした。
『……君を選んだボクの目は確かだったようだね』
「せやろ?という訳で来年もよろしくな」
『ああ、来年も頼むよ……ありがとう』
電話が切れる。トレーナーはまだ夜空を見上げている。
「なにがありがとうや。そんなん、俺が何百回もお前に言わなアカンのに……」
空に向かって呟く。相変わらず満月が彼を見下ろしていた。
(この月をオペラオーも見てんのか)
思えば昨年の有馬記念から、まさに激動の一年だった。
数々の栄冠を手にしたが、それは電話で言ったようにオペラオーに貰った物だと感じていた。
(来年は俺があいつに、相応しいトレーナーになるんや!)
決意を新たにして歩き出すトレーナー。
後に伝説となった一年が終わろうとしていた。
青年は思った(アイツは最高のウマ娘や)―――と。
少女は思った(君は最高のトレーナーさ)―――と。