「とまぁ、ここまでが初めのルートだ。どうだ?オレにしては中々いい具合だと思わないか?」
暗い空間、1人のサンズらしき人物はチェス盤を前にして耳を傾けていた。
駒が動く。彼が指せば独りでに相手の駒が動き、再び彼のターンが来る。
「……随分と悲劇を詰め込むのだな」
「もちろんだ。大抵のAUは悲劇を経験させるほど比例して強さを増す。『楽園』を守るのであれば相応の破壊者であるべきだ」
「……破壊者に守護者としての役目。矛盾しているが、守れるだけの力を考えれば納得はいく。だが、随分と歪だな」
「上限だ。これ以上オレが踏み込んでしまえば、あれはまず形をとることすらできない。穴に飲まれて、『楽園』まで崩壊したら元も子もないだろう?どうせアレが来ればどのみち壊滅してしまうだろうからな」
「フン……」
彼は無表情のまま、物静かに思考する。チェスを指している相手は生半可では無い。しかし頭であれば確実に彼に分がある。
ナイトの駒を相手のキングの横に付ければ、包囲網は完成した。対し、相手はキング自身を動かしナイトを取ることで包囲網に穴を開ける。
「それに、『楽園』にはアイツがいる。自分で目覚めるまでは、平和の中でそっとしておいてやりたいのさ。兄弟だからな。そのために守護者には条件を満たした場合にのみ、オレへの干渉権を与えたよ」
「……大胆な」
「まあな。ただの延命なのはわかってるさ。チェスも、『楽園』もな」
相手のキングへと、彼のクイーンが狙いを定める。相手は自分のコマの後ろに退避させるが、そこは彼のもう一つのナイトの進路上であった。
「あー、そこにナイトを置いてたのか。話の方にソースの7割を割いてたから見れてなかったか」
「終わりだ」
「……思った通りだが、やっぱりオレには向かないな。チェスも、世界の作成も」
「初めてにしては上出来だ。所々に拙い部分や粗さが目立つものもあるが、まだマシとだけ言っておこう。だが……わかっているんだろう?」
「ああ。俺は無知無能の権化。全知全能の王たるお前みたいにはいかないだろうさ。おまけに俺の命を狙うアレも迫りつつある……『楽園』は受け皿、それをわかってさえいれば、俺もお前も飲み込まれることは無いだろうぜ」
「……ならばいい」
彼はチェス盤をしまうとさっさとこの空間を出ていってしまう。相手もまた、この場を去ったのだろう。暗い空間はゆっくりと崩壊していき、やがてコードの塵となって掻き消えたのだった。
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