《不破 side》
……ここは。どこだろう。
…まさか……漫画の世界…?
………いや、保健室か。
そうだ…。私はあの後倒れて……。
中村「……ん?…起きた?不破ちゃん」
不破「中村さん……」
中村「はぁ……良かった…。無事で…」
不破「…友君は?」
中村「まだ起きてない…。結構うなされてるよ」
不破「そっか……。そう言えば、さっき…何があったの?」
中村「…シロとイトナ。あいつらが寺坂を操ってた。何とかカルマの作戦通りに追い払えて、寺坂も馴染んできてハッピーエンド……になるはずもなく、不破ちゃんがいないのに気付いて…で、しばらくしたら不破ちゃんと友が現れた…ってわけ」
不破「……そうなんだ…私がいない間に色々と…」
中村「不破ちゃんこそ、何があったの?」
不破「私は…水に流されて……友君が助けてくれたの。水苦手って言ってたのに…わざわざ川に飛び込んで…。なんとか殺せんせーのお陰で2人とも救出されたけど……友君は…目を…覚まさなくて……」
中村「……そっか…そっちも色々とあったんだね。……さてと、私は皆に不破ちゃんが起きたこと言ってくるから……友のこと、頼んだよ」
友君…ほんとだ。かなりうなされてる……。
友「う……父……さん……母…さん………なん……で…」
……苦しそうだ。
こんなに苦しそうな友君……見たことない。
いや、表情に見せなかっただけで……内心苦しかったのかもしれない……。
友「う…うーん……ん……不……破……?」
不破「……!友君…!起きたの!?」
友「……不破…無事…なのか……?」
不破「うん…。友君こそ…大丈夫?」
友「う…何とかな……。まさか、同じ月に保健室に2度も来るとはな……」
不破「良かった……無事で…ぐす……ひぐっ…」
友「ちょ…だから泣くなって……。まさか同じ月に同じやつの泣き顔を同じ場所で見るとは思わなかったよ……。ほらハンカチ貸すから拭いて」
殺「不破さん!おお!友君も起きましたか!」
友「殺せんせー…それに新も…。そーいやさっきの爆発って…」
殺「説明する時間は無いので『かくかくしかじか』で済ませますね。申し訳ないです」
友「『そんなんでわかるか!』って王道のツッコミで返したいけどそんな余裕無さそうだから理解しておくよ」
新「それは理解出来たのか…?」
殺「先生としたことがイトナ君達に気を取られ気付くのが遅れてしまった。なんとお詫びしたらいいか……」
友「ま、色々大変だったみたいだし、俺も不破も生きてるんだからさ。そんな謝んなくてもいいっすよ。な?不破」
殺せんせーと…新君も来たみたい…。
そうだ。友君に伝えないと。
私たちが…知りたいってこと。
不破「うん……。ねぇ…友君。私たち、友君の過去知りたいよ…。何があったの?なんで…水がトラウマになったの…?私たち仲間だよ…?助け合おうよ……」
友「うっ……涙目でそんなこと言うなよ…。反則だろ……」
新「……兄貴、そろそろ皆に話すべきだと思う。俺はE組に来て一番日が浅い。でもここの皆は、凄く優しいってのはわかってる…」
殺「友君、教室へ行きましょう。そこで…話しましょう。君の過去を…皆に…」
友「………うん」
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《友 side》
俺たちは教室へと向かった。
正確には体育着に着替えるため、先に不破に帰ってもらい、新と殺せんせーと一緒に。
教室のドアを開けると、不破を含め、全員席に座っていた。
新も、自分の席に座りに行く。
俺は、普段殺せんせーが立っている教卓の前に着いた。
磯貝「……話してくれるか?友の…過去を」
覚悟は決めた………。
思い出す覚悟を……。
友「ああ。話すよ。俺の…『真弓友』の過去を」
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5年前──
俺の家は…自分で言うのもあれだがかなりの金持ちだった。
幼い頃からゲームや漫画、玩具等を沢山与えられ、その分色んな習い事も受けてきた。
小一から小四までは国内の色んな所に転校したりとか……海外に旅行に行ったりもした。
義兄弟の新もそう。俺と共に色んな所をまわった。
小五からは、『これ以上転校すると友達が出来ないんじゃないか』という親の考えにより、当時住んでいた椚ヶ丘の小学校に2年間通うことになった。
最初は友達が出来るか不安だったけれど…クラスメイトとも話すことは出来てたし、当時好きな子もいた。……もう友達も…好きだった子も……名前と顔覚えてないけどな。
ある日、数日の間親の仕事の関係で船に乗る事になった。
当初は両親と叔父だけで行く予定だったけど、俺が『船乗りたい』とねだったため、3人で行く事になった。
新は丁度高熱を出してしまい、行くことが出来なかった。
出掛けている間は祖父が看病してくれたそうだ。
椚ヶ丘に定住してから、旅行の回数が少なくなっていたためか、久々の船で凄くテンションが上がり、1人で色々な所を探索した。
だがその時……
大人達が凄く慌てている様子を見た。
『船に穴が開いた…!!』『このままじゃ沈んでしまう!急いで救助の手配を…!』
そんな言葉を聞いた気がする。
俺は急いで両親の元へ向かった。一緒に逃げるために。
俺達が泊まっていた部屋に着いて、扉を開ける。
すると中は……『紅』で染まっていた。
俺は何があったのか分からず…その場で立ちすくんでしまった。
父親も母親も全身真っ赤で…傷がある。
幸い、まだ息があるようで『お前だけでも逃げろ……』と言っているようだ。声が掠れてよく聞こえないが、恐らくそう言っている。
部屋の窓の方を見ると、そこには…1人の男が立っていた。
黒のコート……黒の帽子……そして、血塗られた日本刀。
俺はそいつを見た瞬間に気付いた。こいつが両親をこんな目に遭わせたのだと。
男は俺の方を見て不敵な笑みを浮かべて呟いた。
???『See You. また会える日を楽しみにしてるよ…』
そう言って男は窓の外へと消えた。
ふと床を見ると、水浸しになっている。
浸水して来たんだ。
俺は何とか両親を助けようとした。まだ息がある。ちゃんとした治療を受ければ何とかなる。
だが、俺の小さな体じゃ2人の大人は運べない。1人だけでも数m引きずるのが限界だ。
そこに叔父が入ってきた。
俺たちを探してくれていたんだ。
叔父は惨状を見て、絶句していた…。
父親は、最後の力を振り絞り、こう言った。
父『友を連れて逃げろ』
母親も続けて、
母『友、早く逃げなさい』
と言った。
これが、俺が聞いた両親の最後の言葉だ。
突然、部屋に大量の水が入ってきた。
このままじゃ流される……。
叔父は俺のことを抱え、水の流れに乗って外へと脱出した。
そのまま俺と叔父は救助隊に引き上げられ、一命は取り留めた。
だが俺は、水に無気力のまま流されていく両親の姿を見てしまった。
──これ以来、プールや海のような大量の水を見たり、船に乗ったりすると……その時の光景がフラッシュバックしてしまう。
それ以降も俺達、真弓家の不幸は続いた。
両親の一件があり、俺は心を塞ぎ込んでしまった。
あれ以来小学校にも行かず、自分で勉強した。
卒業式にも出なかった。卒業アルバムもすぐに捨てた。
小学校の時を思い出すと、両親の事も思い出してしまうと思ったから。
家も…。両親が使ってた部屋には出入りしなくなった。
叔父はあれからも俺らのことを気にかけてくれた。
叔父の勧めで剣術道場にも通った。
俺は、『強くなって仇を討つために』何度も道場に通った。
そして小学校卒業後、祖父が死んだ。
俺だけじゃなく、義理の孫である新にも優しくしてくれていた。
1人で部屋にこもり勉強をしていたからか成績が上がっていたため、中学は進学校に通うことにした。
勉強で、両親の事を何とか忘れようとした。
中学1年になって、勉強もそこそこついていけていたし、悠馬や陽斗、航輝と言った友達も出来た。
このまま何事も無く終わると思っていた。
だが、そんなことはなかった。
中学1年の夏、家が火事になった。
俺と新と、両親の思い出の家。
ほとんどの遺品が燃えてしまった。
両親が大切にしていた宝物。
両親に買ってもらった物。
両親と過ごした場所。
ほとんど全てが灰になった。
その後、叔父が住んでいる家に住むことになった。
同じ椚ヶ丘にあったから、学校生活に支障は出なかった。
だが、その後すぐに叔父が持病で死んだ。
この頃から俺は…自分が『疫病神』なんじゃないかって思い始めた。
俺は火事以来…勉強のやる気が無くなっていった。
叔父の死からは……生きる気力すら無くなっていった。
その日から、剣術道場にも通わなくなっていった。
それに比べ、新はアイドル活動を始めた。
流石にいつまでも両親や祖父、叔父の遺産に頼る訳にはいかないから。
恐らく、俺を元気付けようという思いもあったんだろう。
そしてある日……E組行きが決定した。
折角手に入れた場所も、友人も、全てが水の泡になる。
いっその事死んだ方がマシなんじゃないか。
そう思い始めた。
そんな時、悠馬が声を掛けてくれた。
磯貝『友、お前もE組行きなんだって?俺もだよ。バイトしてるのがバレちゃってさ。まぁその…お互い大変だけど、頑張ろうな!』
陽斗も話しかけてきた。
前原『俺も成績不振でE組行きさ。あーやだやだ。旧校舎まで行くのだりーぜ』
航輝も近くに寄って来てくれた。
三村『自業自得じゃねーか。俺もE組行きなんだけどな…。ま、皆頑張ろうぜ!』
何気ない男子中学生の会話。
でも、俺はそれが普通に嬉しかった。
全て失ったと思っていた。
でも違った。俺にはまだ残っていた。
E組という劣悪な環境に落ちることが決まって…死ぬことすら考えた。
でもその日から、少しだけ生きる気力が戻ってきた。
『仇を討つ』だなんて思いもいつしか無くなっていった。
このままこんな風に笑いあえたら───。
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友「そして今─。
殺せんせーがやってきて、
不破や渚達のお陰で素晴らしい日々を送れている。
E組に落ちなければ、殺せんせーが来なければ、この中の誰か1人でも欠けていたら、
こんな気持ちにはなっていないだろう。
──鷹岡に『疫病神』と罵られた時、久しぶりにあの時の感情が戻ってきた。
また負けそうになった。
でも、皆がいるから、負の感情と戦えた。
これ以上…大切な人を死なせない。
そう誓った。
これ以上失いたくない。
そう強く思った。
例え、この命に変えても──」
俺は……いつの間にか涙を流していた。
皆は、真剣に話を聞いてくれている。
不破や渚達は勿論、寺坂達も。
殺せんせーも聞いてくれている。
少し離れたところで、烏間先生とビッチ先生も…。
ふと、不破が立ち上がった。
不破「友君……。今、言ったよね?『例え、命に変えても…』って。私を助けたのも…『自分は死んでもいいから助けたい』っていう…自己犠牲の気持ちがあったから?」
友「……ああ。俺は…もう失うのは嫌だから……」
不破「私だって友君を失いたくない!!」
不破が大声で叫んだ。
ここまで大声を出した不破は見たことがない。
不破「自己犠牲なんてやめてよ……。友君が死んで、私達が助かっても……!私達は喜ばないよ…!」
友「不破……」
カルマ「『皆を守るため強くなりたい』。友はそう言ったよね。でも、自分を犠牲にして守る奴…それって本当に強いのかな。俺には、そうは見えないけどね」
磯貝「カルマの言う通りだ。それに、お前はいつも俺達に相談なんてしなかった。大方、迷惑をかけるんじゃないかなんて考えてたんだろうけど、そんなこと無い!」
前原「お前は1人で悩みすぎだぜ?少しは頼ればいいんだよ。
友「カルマ…悠馬…陽斗…」
殺「皆さんの言う通りです。友君、自己犠牲の精神なんて捨ててしまいなさい。それで君は人を救えて『良かった』と思うかもしれない。でもね、助けて貰った人は『自分のせいで死んでしまった』と思い詰めてしまうかもしれません。それは、本当の意味で『助けた』とは言えませんよ。人に笑顔で…胸を張れる強さを持ちましょう。君なら……持てるはずですよ」
友「殺…せんせー……。うっ…う……うぁぁっ……」
無意識に涙が零れ落ちる。
俺は……泣き崩れてしまった。
新「……今日は幾らでも泣いていいよ。兄貴。今まで…背負わせてごめんな。これからは俺ら2人…いや、
テストが近いので15日(土曜日)と18日(火曜日)の投稿をお休みさせていただきます……。
申し訳ありません!!