多分初めて友くんが登場しない回です
《新 side》
夏休みっていうのは楽しい事もあるが、その分嫌なことも沢山ある。
椚ヶ丘は意外と人が多い。
夏休みじゃ、家族連れが電車に乗って外出しようと駅前に沢山人が密集する。
アイドルにとっては辛い現状だ。
俺は今外出している。
が、普通の格好ではない。
サングラスをかけ、マスクをつけて歩いている。
何でって?
そんなの決まってる。ファンの人にバレないためだ。
芸能人だと誰か一人にバレてみろ。
一瞬で騒ぎになる。
気付いてくれる人がいる=ファンがいるということにもなるが、騒ぎになると色々とめんどくさい。
このまま誰にもバレずに…。
倉橋「あれ?新君?おっは〜♪」
…………あ。
早速クラスメイトにバレたんですけど!?
新「ちょ、あんま大きい声出すな…!近くにファンがいたら騒ぎに……」
倉橋「あ、そっか。新君って芸能人だからね。ごめんごめん。ところで、何してたの〜?」
新「CDを予約してきたんだ…。尊敬する先輩のグループのニューシングルが出るからな」
倉橋「そうなんだ〜。この後空いてる?裏山行こうと思うんだけど〜」
新「いいけど…何するんだ?」
倉橋「じゃー早速裏山行ってみよ〜!」
新「ちょ!倉橋…!」
倉橋は話も聞かずに裏山の方へと走っていく。
仕方がないので追うことにした。
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裏山──
新「昆虫採集?」
倉橋「うん。この前罠仕掛けといたんだ〜。お小遣い稼ぎくらいにはなるよ?まぁ芸能人の新君からしたらはした金かもだけどね〜」
新「言い方が悪いな……。それにしても、俺が虫嫌いだったらどうしてたんだよ」
倉橋「それは無いと思ってたよ〜?この前E組の花壇でバッタさんと戯れてたからね〜」
新「ああ…。見てたんだあれ。まぁ、虫は俺も好きだからな…。兄貴は苦手だけど」
兄貴は大の虫嫌い。
部屋に蚊が入っただけで俺に助けを求めてくる程だ。
Gが出た時なんかは気絶しかけてた。
倉橋「よいしょっと!木の上から見る景色最高〜♪」
新「本当だな…。虫も沢山いそうだ」
倉橋「うん。って、あそこにいるの…前原君達じゃ?」
倉橋が指さす先には、前原、渚、杉野の3人がいた。
どうやら前原は金欲しさに虫を探しているらしい。
前原「──オオクワガタだっけ?あれウン万円とかするらしいじゃん?そいつをネトオクに出して大儲け!最低でも高級ディナー代とご休憩場所の予算までは確保するんだ!」
相変わらずだな…こいつは。
倉橋「だめだめ。オオクワはもう古いよ〜」
新「15歳の旅行プランじゃねーだろ……それ」
前原「倉橋と新…!」
倉橋「おは〜。皆もお小遣い稼ぎ来たんだね〜」
杉野「倉橋、オオクワガタが古いってどういうことだ?」
倉橋「んっとね〜」
そう言って倉橋は木から降りる。
俺もそれに続けて降りた。
倉橋「私達が生まれた頃は凄い値段だったらしいけどね。今は人工繁殖法が確立されちゃって、大量に出回り過ぎて値崩れしたんだってさ」
前原「ま、まさかのクワ大暴落か……。1クワガタ=1ちゃんねーぐらいの相場だと思ってたのに…」
倉橋「ないない。今はちゃんねーの方が高いと思うよ〜」
前原…ショックで顔が崩壊してるぞ…。
倉橋「そうだ!せっかくだしみんなで捕まえよ〜!多人数で数そろえるのが確実だよ〜!」
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倉橋が仕掛けたトラップを見ると、何匹か昆虫が付いていた。その中にはカブトムシもいる。
倉橋「お手製のトラップだよ〜。昨日の夜につけといたんだ。あと20ヶ所ぐらい仕掛けたから、上手くすれば1人1000円位稼げるよ〜」
杉野「おお!バイトとしちゃまずまずか!」
倉橋(探してたアレが来てるといいな〜)
すると、木の上から声が聞こえてきた。
岡島「…フッフッフッ。効率の悪いトラップだ。それでもお前らE組か…!」
前原・新・杉野「岡島!!」
なんでこんな所にこいつがいるんだ。
しかもエロ本読んでるし。
おい未成年。
岡島「せこせこ千円稼いでる場合かよ。俺のトラップで狙うのは…当然百億円だ!」
百億……!?
渚「ま、まさか……」
岡島「その通り。南の島で暗殺するって予定だから…あのタコもそれまでは暗殺も無いと油断するはず。そこが俺の狙い目だ。」
岡島が指さした先には……
地面いっぱいに散らばったエロ本と、その上でエロ本をニコニコしながら読むカブトムシに擬態した殺せんせー……。
いや情報量多っ!!
岡島「ククク…かかってるかかってる。俺の仕掛けたエロ本トラップに!」
新「すげぇ…スピード自慢の殺せんせーが微動だにせず見入ってる……」
前原「余程好みのエロ本なのか……」
杉野「またなんだあのカブトムシのコスプレは!」
新「あれで擬態してるつもりか嘆かわしい!」
岡島「どの山にも存在するんだ。『エロ本廃棄スポット』がな。そこで夢を拾った子供が……大人になって本を買える齢になり……今度はそこに夢を置いていく。終わらない夢を見る場所なんだ……。丁度いい。手伝えよ!俺たちのエロの力で覚めない夢を見せてやろうぜ!」
パーティが致命的にゲスくなってしまった…。
岡島「随分研究したんだぜ?あいつの好みを。俺だって買えないから拾い集めてな」
渚「?殺せんせー、巨乳なら何でもいいんじゃ…?」
岡島「『現実』ではそうだけどな。エロ本は『夢』だ。人は誰しもそこに自分の理想を求める。写真も、漫画も、僅かな差で反応が全然違うんだ」
渚「…凄いよ岡島君。1ヶ月間本を入れ替えてつぶさに反応を観察してる!」
杉野「ていうか大の大人が1ヶ月連続で拾い読むなよ…」
新「嘆かわしい……」
岡島「お前のトラップと同じだよ倉橋。獲物が長時間夢中になるよう研究するだろ?」
倉橋「う…うん」
岡島「俺はエロいさ。蔑む奴はそれでも結構。だがな、誰よりエロい俺だから知っている。……『エロは、世界を救える』って」
な、なんかカッコイイ……!!
岡島「殺るぜ。エロ本の下に対先生弾を繋ぎ合わせたネットを仕込んだ。熱中してる今なら必ずかかる。誰かこのロープを切って発動させろ!俺が飛び出してトドメを刺す!」
どんなものでも研ぎ澄ませば刃になる。
岡島のエロの刃が、殺せんせーを貫くかもしれない。
…すると、突然殺せんせーの目がみよーんと伸びた。
岡島「デ、データに無いぞ!?あの顔はどんなエロを見た時だ!?」
殺「ヌルフフフ。見つけましたよ」
殺せんせーは触手を伸ばして、少し遠くの木から1匹の虫を取った。
殺「ミヤマクワガタ……。しかもこの目の色!」
殺せんせーの言葉を聞いた瞬間、倉橋の目の色が変わり、殺せんせーの元へ飛び出していった。
倉橋「白なの!?殺せんせー!!」
殺「おや倉橋さんビンゴですよ」
倉橋「すごーい!探してたやつだ!」
殺「ええ!この山にもいたんですねぇ」
岡島「あぁ…。あとちょっとだったのに……」
前原「なんで喜んでんのかさっぱりだが…」
新「巨大カブトと女子中学生がエロ本の上で飛び跳ねてんのは凄い光景だ」
どうやら殺せんせーは今更自分の行動が生徒に見られていたことに気付いたらしい。
俺らの方を向いてはっ!という顔をして、その後エロ本の山を見て、触手で顔を抑えた。
殺「ちょうはずかしい…ちょうはずかしい…」
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殺「面目ない…。教育者としてあるまじき姿を…。本の下に罠があるのは知ってましたが、どんどん先生好みになる本の誘惑に耐えきれず……!」
岡島「すんなりバレてた!?」
嘆かわしい……。
杉野「なぁ倉橋、それってミヤマクワガタだろ?ゲームとかじゃオオクワガタより全然安いぜ?」
倉橋「最近はミヤマの方が高い時が多いんだよ。まだ繁殖が難しいから…この子はサイズ大きいし、2万円はいくかもね〜」
前原・杉野「2万…!?」
殺「おまけによーく目を見て下さい。本来黒いはずの目が白いでしょう」
新「なるほど……アルビノ個体ってわけね」
前原「え?それって、ごくたまに全身真っ白で生まれてくるやつだろ?」
新「いや、クワガタのアルビノは目だけなんだ」
殺「その通り。『ホワイトアイ』と呼ばれ、天然ミヤマのホワイトアイはとんでもなく希少です。学術的な価値すらある。売れば恐らく数十万は下らない……」
渚・岡島・前原・杉野・新「すっ……!?」
数十万……俺でもそんなに稼げないぞ…。
倉橋「ゲスな皆〜。これ欲しい人手ー上げて♪」
渚・岡島・前原・杉野・新「欲しい!!!」
殺しにエロにいきものに……。
倉橋「どーしよっかな〜」
殺「ちょ!先生が見つけたんですよ!?」
前原「俺のだぁ!!」
杉野「落ち着け前原!」
岡島「うわぁぁぁ!」ドボーン
渚・新「岡島(君)ーー!」
夏休みの学校も発見がいっぱいだ。