《友 side》
翌日──
渚から衝撃的な事を聞いた。
なんと、渚の母親が渚をE組から脱出させようとしているそうだ。
しかも、先生との三者面談を希望しているのだとか…。
杉野「渚の母ちゃんか…。1回家に遊び行った時見たけどさ。割とキツい反応されたよな…」
渚「殺せんせー任せとけって言うんだけど…」
新「いや…三者面談であの不審さが怪しまれないわけないだろ……」
イリーナ「じゃあ私が代わりにやってやる?担任役」
友「お、ビッチ先生か」
イリーナ「まず人間だし…あのタコとカラスマの次にあんたらの事知ってるわよ」
確かに…今この場で一番適任なのはビッチ先生だな。
片岡「じゃかちょっと予行練習してみようよ。私が渚のお母さん役で」
こうして片岡、渚、ビッチ先生による三者面談予行練習が始まった。
片岡「担任として最も大切にしている事は?」
イリーナ「そうですね…。あえて言うなら『一体感』ですわお母様」
お〜…それっぽい。
片岡「じゃあ、うちの渚にはどういった教育方針を?」
イリーナ「まず渚君には…キスで安易に舌を使わないよう指導しています」
は?
イリーナ「まず唇の力を抜いて数度合わせているうちに…相手の唇からも緊張感が消え柔らかくなります…。密着度が上がり、どちらがどちらの唇かも分からなくなってきた頃……『一体感』を崩さないようそっと舌を忍ばせるのです……」
思わず片岡が銃を持って立ち上がるが、なんとか渚が抑えている。
吉田「問題外だ…」
寺坂「訴えられるぞこんな痴女担任……」
速水「……ていうか、
不破「そっか……」
殺「…ヌルフフフ。むしろかんたんです。烏間先生に化ければいいんでしょう?」
殺せんせー…。あんたは正直不安しかないんだけど…。
新「いつものクオリティ低い変装じゃ誤魔化せないぞ?」
倉橋「すれ違うくらいならまだしも…面と向かってじっくり長く話すからね〜」
殺「心配無用。今回は完璧です!」
ふむ…。そこまで言うくらいならさぞかし再現度の高い変装をしてるんだろうな…。
殺「おうワイや。ワイが烏間や」
友・岡島(再現度ひっく!!!!)
何となくそんな気はしてたけど!
予想の遥か上を行く再現度の低さだった!!
前原「いつも通りの似せる気ゼロのコスプレじゃねーか!」
倉橋「烏間先生そんなダサいパンタロンはいてない〜!」
殺「い、いやでも眉間のシワとかそっくりやろ」
岡島「その前に口!鼻!耳も!」
新「なんで腕がソーセージみたいになってんだよ!」
殺「烏間先生のガチムチ筋肉を再現したんや」
木村「無駄なとこばっか凝るな!」
三村「あと何で関西弁なんだよ!!」
不破「うーん…。いつもはギャグのノリで誤魔化してたけど…真面目に人間に似せるって難しいね」
友「まずは口だな。うーん…人間の口に近いのは…
①
②
③
④
磯貝「④はそもそも烏間先生が絶対やらない口だな…」
矢田「じゃあ①②③しかやっちゃダメね」
岡野「あとサイズ!体も顔も大きすぎる!」
矢田「あ、じゃあさ。殺せんせーは座りっぱなしにするのはどう?常識的なサイズ分だけ上に出して…あと全部机の下に詰め込むの」
友「うーん……。気色悪いがそれしかないな」
男子数名で殺せんせーの体を無理やり机の下にぐいぐい詰め込んでいく。
殺「ちょ…!?そんな無理やり…!?」
中村「あとは眉毛と耳と鼻だね」
菅谷「おっけ。烏間先生そっくりなの作ってやるぜ」
渚「みんな楽しそうでなによりです…」
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そして放課後……ついに渚の母親がやってきた。
俺たちは窓の外から渚の母親に気付かれないように監視する。
原「あの人が渚のお母さん…?」
前原「結構美人だな…」
村松「けど確かにキツそーだ」
渚と渚の母親は教員室へと入っていく。
渚母「失礼します…」
殺「ようこそ。渚君のお母さん」
………うん。特に怪しまれてる様子はないな。
殺「まぁどうぞおかけ下さい。山の中まで大変だったでしょう。冷たい飲み物とお菓子でも」
渚母「まぁこんな豪華な!グァバジュース…私これ好きなんです」
殺「存じております。渚君のこのクラスでの成長ぶり…ここまで利発に育ててくれたお母さんへのお礼です。渚君に聞きましたが、体操の内脇選手のファンだそうで。この前の選手権大活躍してましたねぇ」
渚母「あら、先生もご覧になっていたんですか?」
殺「彼の頂点を目ざす真摯な姿勢は素晴らしい!」
渚母「そう!先生もわかりますか?」
殺「もちろん」
凄いな…。見事に渚の母親のツボを押さえて回してくれている。
これだけ打ち解けてくれたら上手くいくんじゃないか?
殺「まぁしかしお母さんお綺麗でいらっしゃる…。渚君も似たんでしょうかねぇ?」
その瞬間…渚の母親の眼から光が無くなった。
……あれ?殺せんせー地雷踏んだ?
渚母「この子ねぇ…女でさえあれば私の理想に出来たのに…」
殺「……貴方の理想…?」
渚母「ええ。この位の齢の女の子だったら長髪が一番似合うんですよ。私なんか子供の頃短髪しか許されなくて…3年生になって勝手に纏めた時は怒りましたが、これこれで似合うから見逃してやってます」
殺「………」
渚母「そうそう進路の話でしたわね。私の経験から申しますに…この子の齢で挫折させる訳には行きませんの。椚ヶ丘高校は蛍大合格者も都内有数ですし、中学までで放り出されたら大学も就職も悪影響ですわ。ですからどうか…この子がE組を出れるようにお力添えを」
殺「渚君とはちゃんと話し合いを?」
渚母「この子はまだ何にもわかってないんです。失敗を経験している親が道を造ってやるのは当然でしょう?」
渚「…母さん、僕は……」
渚母「渚、少し黙ってましょうね」
渚「…………」
殺「………何故渚君が今の彼になったのかを理解しました」
殺せんせーはそう言うと、頭に付けていた烏間先生の髪の毛に似せたヅラを勢いよく取った。
渚母「ヅ……!?」
殺「そう!私、烏間惟臣は…ヅラなんです!!」
大丈夫なのかこれ…。後で怒られても知らないぞ…。
殺「お母さん。髪型も高校も大学も、親が決めるものじゃない。渚君本人が決めることです。渚君の人生は渚君のものだ。貴方のコンプレックスを隠すための道具じゃない」
渚母「………!!」ピクピク
殺「この際ですから担任としてはっきり言います。渚君自身が望まぬ限り…E組から出ることは認めません」
殺せんせーがそう言うと、渚の母親は大きな声で怒鳴り始めた。声を張りすぎて最早何を言ってるのかすら分からないほどに怒鳴っている。
菅谷「お、おっかねぇ……」
竹林「大分キレてるね……」
渚母「渚!最近妙に逆らうと思ったら!この烏間ってヅラ担任にいらない事吹き込まれたのね!見てなさい!すぐにアンタの目覚まさせてやるから!!」
そう言うと、渚の母親は校舎を出ていってしまった。
渚「………殺せんせー」
殺「うーむ…つい強めに言ってしまった。しかし最も大事なのは…君自身が君の意志をはっきり言うことですよ」
渚「…でも今は…1人じゃ何にも出来ないうちは…母さんの2周目でいた方が…」
殺「何にもできないわけがない。殺す気があれば何でもできる。君の人生の1周目は…この教室から始まって居るんです」
渚(……僕の、1周目…!)
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翌日──
茅野「……渚、どうなっちゃうんだろう…」
新「かなりキレてたし…。無理やりにでもE組から出そうとしてくるんじゃ…」
渚はまだ登校して来ない。
このまま…渚が来なかったら……。
そう思った時、教室のドアが開いた。
渚「皆、おはよう……。って、どうしたの?」
茅野「渚!」
杉野「渚…!どうなったんだ?渚の母ちゃんの件」
渚「うん…。あの後何とか…殺せんせーのお陰で説得できたよ。これからもE組で皆と暗殺出来るよ」
磯貝「本当か!?」
前原「よっしゃあ!」
寺坂「ケッ。心配かけさせやがって」
渚「あはは…ごめんね」
何とか渚はこのままE組…暗室教室の一員でいれるようだ。
これで一件落着………。
…したのだが。
また新たな事件が起こってしまうようだ…。