転生オリ主ウマ娘が死んで周りを曇らせる話   作:丹羽にわか

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書き溜めなんかほとんど無いけど投稿じゃーい!!(前言を守れない作者の屑)

 いや忙しすぎてね……ただ、少しずつでも書いて投稿しないとエタりそうだから……(遠い目)


 壁(B70)にぶちあたったエルSideだけだしエルと沖野Tの解釈違いがあるかもだけどユルシテ...(予防線)


 トレーナー×ウマ娘の看取り・看取られ(MTR)短編が読みたい。特にゴルシ。「最高に面白い人生だった」って遺して死にたい。トレーナーが死んだ後に遺された呪いを抱えて生きる彼女たちが見たい(隙自語)



第16R コンドルは飛んでいく

 

 

 

 

 

 

Side:エルコンドルパサー

 

 

 

 

 

 

<サイレンススズカが逃げる! 逃げる!! 日本の、世界の、名だたる強豪達を置き去りにして今サイレンススズカが1着でゴールイン!!!! 逃げ切った!! 異次元の逃亡者が逃げ切りましたジャパンカップ!!!!>

 

 

 実況の叫びがスピーカーから鳴り響き、一着でゴール板を走り抜けたサイレンススズカに東京レース場二〇万強の観客の歓声が降り注ぐ。

 ペースをゆるゆると落とし立ち止まったスズカは歓声に今気付いたとばかりに肩と尻尾をビクッと跳ねさせると、クルクル左回りしてから観客席の方に身体を向けてぺこりとお辞儀をした。

 

 再度沸き上がる歓声と拍手。

 

 三着だったエアグルーヴや他のウマ娘達もそれぞれスズカに握手を求めたり肩を叩いたりハグする者もいたりと各々のやり方で彼女を祝福している。

 悔しいだろう。悲しいだろう。泣きたいだろう。けれどそれらを飲み込んで勝者を称えるその姿は見事なスポーツマンシップだった。

 

 

「…………ッ」

 

 

 そして、1人のウマ娘が観客席から抜け出した。

 トレセン学園の制服姿で、覆面レスラーが使うような目の周りを覆うマスクをしているのが特徴的だ。

 

 彼女はエルコンドルパサー。

 

 アメリカ生まれの帰国子女であり、グラスワンダー、キングヘイローらと並び来年のクラシック戦線での活躍が期待されているウマ娘である。

 

 

「(世界……最強……エルは……エルは……ッ!!)」

 

 

 エルコンドルパサーはそのまま東京レース場を飛び出した。

 会場が満員で入場できなかった人々が、中継映像をスマホで見ている横を走り抜ける。

 

 東京レース場とトレセン学園は同じ府中市内にある。ウマ娘の脚ならばすぐにたどり着き、会場に足を運ばなかった居残り組も寮や食堂でジャパンカップの観戦をしているであろう閑散とした校内を駆ける。

 

 そして、エルコンドルパサーが足を止めたのはグラウンドだった。

 隅っこにあるベンチに腰掛け荒れた息を整える。

 

 

「ハハ……何やってるんでしょうネ」

 

 

 乾いた声と自嘲の笑みが漏れる。

 

 ジャパンカップ。国内外の強豪が集う世界でも有数のG1レース。エルコンドルパサーにとっては『世界最強を証明する』為の過程の一つ。

 それに勝利した一つ上の先輩ウマ娘、サイレンススズカ。同期で友人のグラスワンダーと同じチームリギルに所属する彼女は『異次元の逃亡者』という呼び名通りに逃げ切って見せた。

 

 

「スズカ先輩は……速かったデス……強かったデス。誰よりも速く先頭を走って……勝つ」

 

 

 作戦だとか駆け引きだとか細々とした理屈は脇にどけて、誰も追い付けない、影も踏めない、ただシンプルに速くて強い。ウマ娘なら誰もが本能的に望む理想、いや夢のような勝ち方。

 

 それを見て、エルコンドルパサーは折れた。

 

 サイレンススズカの走りに憧れるでも、奮起するでもなく、恐れ戦き衝動的にレース場から逃げ出した。

 あの背中には追い付けないと思ってしまった。

 さらに、そんな彼女でも『絶対』ではない事実が更に絶望を深める。

 

 

「……最強は、エルじゃ……ない。エルじゃ……最強に……なれない……ヒック……グスッ……それならアタシは……私は……」

 

 

 涙と共に弱気な本音が漏れた。

 覆面レスラーの父から貰ったマスク。それをしている間は『最強無敵』のエルコンドルパサーだと決めていたのがひび割れ………。

 

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

 

 ぴとっ。

 

 

「……いい…ハァ……トモをして……ハァ……いるな」

「ひっ!?」

 

 

 スリスリ。フニフニ。ハァハァ。

 

 

「……世界最強を証明するっていうビッグマウスもこれなら頷ける。バネのように跳ね……いや、翔ぶようにターフを駆ける姿が目に浮かぶ。おハナさんのとこのグラスワンダーにだって負けちゃいない……が、かなり疲労が溜まってるみたいだな。色んなトレーナーからメニューを提供させてトレーニングしてるって噂は聞いていたが」

「きゃああああああああっ!!??」

「げふっ!?」

 

 

 足元にぬっと現れ脚を撫で回してコメントしてきた変態を反射的に蹴り飛ばす。

 

 

「な、なな、なんなんですかッ!? 変態さんですか!? 通報しますよ!? 覚悟の準備をしておいてください!!」

「…………」

「あ、あれ? あっ……」

 

 

 反応が返ってこず、自分の蹴りが相手の顔面を捉えていた事に気付いたエルコンドルパサーは焦りから冷や汗を垂らす。

 時速60キロ以上で走るウマ娘の蹴りをまともにくらって無事な筈が無い。落ち込んでる所に変態の襲来と泣きっ面に蜂だが、素直で健気な性根の彼女は少し腰を引きながら、一蹴されて大の字で倒れる変態に近寄る。

 

 

「その……大丈夫ですか? 生きてます……よね」

「う、うーん、久々だなぁ……いい蹴りだ。目が覚めるぜ」

「いや気絶してませんでした!?」

 

 

 変態は鼻血を拭いながらどこか清々しい表情で起き上がり、エルコンドルパサーはウマ娘の脚力を発揮して飛び退く。

 

 

「おいおい、そんな警戒しないでくれ」

「ムリです」

「ほらこれトレーナーバッジ。もう安心だろ?」

「それなら……いやいやいや、無断で触るのはトレーナーさんでもダメです!! 変態ですか!? 変態ですね!!」

「心外だなあ。トレーナーなら、いいトモを持つウマ娘を見掛けたらむしゃぶりつきたくなるもんだぞ」

「そんな人あなたしかいませんよ……」

 

 

 エルコンドルパサーはそう言ってため息を吐くと、キッと目を細めて男を睨む。

 

 

「それで、トレーナーさんが私なんかに何の用ですか」

「泣きそうな顔で走り出したウマ娘を追い掛けるのは男としても、トレーナーとしても当たり前だろ? 中継見てるからってタクシー拒否られたのは参ったが」

 

 

 そう言われ、目の前の男が息を荒くしていたのがレース場からここまで走って追い掛けてきたからだということに気付く。

 

 

「ジャパンカップ……見てた……ですよね」

「……ああ。凄いレースだったな。誰も追い付けない。影を踏ませず、並ぶことすら出来やしない。そんな走りだった。で? お前さんはどうする? トレーニングはやめとけよ? そろそろ休んだ方がいいからな」

「どうする? ……何を……するっていうんですか」

 

 

 棒付き飴を咥えたトレーナーの言葉に、胸の奥から熱い何かが溢れてくるのをどこか冷静な自分が感じた。

 

 

「私はスズカ先輩に追い付けない!! 最強じゃない!! そんな私が何をするっていうんですかッ!?」

 

 

 マスクをしている自分は最強最速無敵のウマ娘の筈なのに、涙は止めどなく溢れ叫びが人気の無いグラウンドに響く。

 

 世界最強を証明する。覆面レスラーの父親のように、最強無敵で人々を楽しませ幸せを与えるウマ娘になる。その為にアメリカから日本に渡り、このトレセン学園で学んでいる。

 弱気で泣き虫でいじけ虫な自分をマスクで覆い隠して。

 だが、現実を知ってしまった。自分よりも速く、強い、この手が、翼が届かないウマ娘は居るのだと。自分は最強なんかじゃないと。

 

 

「最強、最速、無敵のエルコンドルパサーは、どこにもいなかったんです」

 

 

 エルコンドルパサーは目元を覆うマスクに触れ、外した。

 俯いて、手の中にあるマスクに視線を向ける。

 

 

「……私は弱気で、泣き虫で、いじけ虫です。そんな自分を変えたくて、このマスクをつけている時だけは最強無敵、明るくて前向きな才能と自信溢れたウマ娘……そうやって周りに嘘をつき続けてきました。それなのに、私は……」

「その嘘ってのは、本当に嘘だったのか?」

「え?」

 

 

 エルコンドルパサーは男の言葉に顔を上げた。

 

 

「なるほど、素のお前さんはメンタルクソ雑魚ナメクジなポニーちゃんなんだろうさ」

「言い方ッ!!」

「なら、世界最強を証明するっていう宣言は嘘だったのか? その向こうにある夢も嘘なのか?」

「ッ……嘘じゃないッ!! 私はパパみたいに皆を楽しませる、最高のウマ娘に……でもッ!!」

 

 

 抱く想いに嘘はない。

 だが、その為には『最強のエルコンドルパサー』でなければならない。

 そして、その『最強』はサイレンススズカの走りを前に崩れ落ちた。

 だとしたら、最強じゃない自分がその夢を成せるのか?

 

 

「エルには、最強じゃない私には……ムリ、なんです」

 

 

 自分を信じること。

 自信。それが彼女には無かった。

 

 

「……そうだな。今のお前さんは最強とはとてもじゃないが言えない」

 

 

 男は「正直言うと」と頬を掻く。

 

 

「お前なら最強になれるぞ!! ってカッコ良く言いたかったんだけどな、サイレンススズカも、その世代も、グラスワンダー達お前さんの同期もかなりの粒揃い。『絶対』になれるなんて断言は無理だ」

「……カッコ悪いですね」

「うぐっ……でもな、エルコンドルパサー。お前はもっと強くなれる。もっと速くなれる。もっと……そう、高く、高く翔べる。あの壁を、サイレンススズカを、他の連中だって飛び越して世界に羽ばたける。俺はそう思う」

「…………」

「それに、エルコンドルパサーは最強じゃない。最強になれるかも分からない。だけど、お前の走りが、羽ばたきが、観客に与えるものは確かにある」

「……私が……最強じゃないエルが、皆に」

 

 

 そう呟いてエルコンドルパサーは男の顔を、そしてグラウンドに目を向けた。

 日が沈みつつある夕焼けの空。緑のターフに観客席。その景色に大舞台で歓声を浴びて走る自分を重ねる。

 

 だが、サイレンススズカが唯一抜きん出てゴール板を駆け抜けていた。

 

 

「負けたか」

「ッ!! ……はい」

 

 

 想像のレースの結果を男が言い当ててくる。

 いや、無意識に拳を強く強く握り締め、歯をギリッと食いしばっていた。

 悔しい。

 マスクを被った最強のエルコンドルパサーは関係無い。ただの一人のウマ娘として、彼女に負ける事が悔しい。

 

 

「なんだ、諦めてなんか全然ないじゃないか」

「……あ」

 

 

 男に言われて気付く。

 最強になれないと、夢を叶えることは無理だと絶望していた筈だ。いや、今だって想像の中ですら敗北したのだから、立ち直った訳ではないのだろう。

 しかし、もっと本能的な部分。目標だとか夢だとかそういったものを捨て去ったところで、彼女はサイレンススズカに負ける事を悔しいと思っていた。

 

 勝ちたいと、願っている。

 

 

「俺は沖野。スピカってチームのトレーナーをしてる。エルコンドルパサー、俺は君をスカウトしたい」

「沖野……トレーナー」

「色々言ったが、俺はウマ娘には『好きに』走って貰いたい。……お前さんはどうしたい?」

 

 

 男、沖野の瞳が真っ直ぐエルコンドルパサーを見据える。

 エルコンドルパサーは涙を拭いしっかり見つめ返す。

 

 

「私は……走りたい……勝ちたいです。スズカ先輩に、グラスに、他の皆に」

 

 

 手の中にあるマスクを握り締める。

 

 

「私は……最強でも最速でも無敵でもなんでもない……ただのエルコンドルパサーです」

「ああ」

「そして、このマスクを被った私は……」

 

 

 最強無敵のエルコンドルパサーはもう居ない。

 弱気で泣き虫でいじけ虫なエルコンドルパサーも居ない。

 ここに居るのは、

 

 

「目指すは日本! いや世界最強!! 不屈のチャレンジャーッ!! 覆面ウマ娘、エルコンドルパサーッ!! どんな壁だって飛び越えて、羽ばたく姿はコンドルの如しッッデースッッッッ!!!!」

 

 

 不撓不屈の挑戦者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスクしてる時は片言キャラなんだな」

「台無しデス!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




サブタイ、いいのが思い浮かばんかった。(センス×)


 グラスライバルとの激闘も応援してくれるファンの存在も無いデビュー前のエルは、折れても『最強無敵のエルコンドルパサー』を演じ続ける事は出来ないんじゃないかという作者の勝手な妄想により『挑戦者』にジョブチェンジ。
 だから毎日王冠や秋天に出るんですね(後付け設定)


 沖野Tはエルに対して「日本一のチームを作る」という夢を実現できると感じた訳では無く、壁(B70)にぶつかってもなお『夢』を目指し、故に『自分が最強でない事実』に絶望したエルコンドルパサーを支えたいと思ってスカウトしたという事で……勿論才能も見込んではいるんだけども……なんか拗らせてるなあ。

 壁(B70)が断崖絶壁過ぎるからやねつまりデイカスのせいやぞギルティ。

 まあ、沖野Tの本質的な部分は変わってないからスピカはスズカとエル以外はアニメ通りでいきます!!(鋼の意志) これ以上要素入れるとタヒぬ(本音)


 次はデイカス視点からでサクサク物語を進める予定。


 あ、感想は全部目を通してるので貰うとモチベが上がります(なお執筆速度)

 あとUAが50万、投票者が400人超えてた……やっぱ曇らせは叡智を封印された俺らの性癖に差さるんやなって。カサマツ√も好評みたいで嬉しい。かつてここまで死が望まれた主人公はいただろうか。(Nice boat.)


 ではまた次回!!

【再掲】完結後の秋天IFルートで一番読みたいのは?(好みの調査です。感想への誘導が規約違反だったので再掲)

  • 秋天逃げ切り勝利√
  • 秋天故障半身不随√
  • スズカ告白√
  • 一番いいのを頼む(↑上3つ混ぜ混ぜ)
  • その他(活動報告にどうぞ)
  • 答えだけ見たい方向け
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