転生オリ主ウマ娘が死んで周りを曇らせる話   作:丹羽にわか

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最近執筆がスランプ気味なので駄文です許して……

デイカスの走りの秘密(という名のトンデモ理論)がありますが阿寒湖のように広い心で受け入れてください



第28R 曇りのち晴れの夏合宿2

 

 

 

 これは、夏合宿前の一幕。

 

 

 

 

「えっ? 夏合宿をスズカさん達とですか!?」

 

 

 マチカネフクキタルは自身の専属トレーナーから告げられた言葉に目を丸くした。

 

 

「ああ。リギルの東条トレーナーからお声がかかったんだ。フクキタルはどう思う?」

 

 

 トレーナーが訊ねると、彼女は思案顔になり「むむむ」と唸る。

 

 

「……この話って、あの宝塚記念が理由ですよね」

「そうだね。あちらから明言はされていないけど、合同トレーニングをするならチーム同士でやるのが普通だし、リギルにはサイレンススズカとトゥデイグッドデイが所属してる。サイレンススズカの様子がおかしいって話を前にしてたよね?」

「はい。ちょっと元気が無くて、トゥデイさんとも私とも距離を取っているみたいで……同じチームのタイキさんに話を聞こうにもフランス遠征に行ってしまいましたし……」

「十中八九、東条トレーナーはそれをどうにかしたいんだろう。あの宝塚を勝ったフクキタル、負けたサイレンススズカ、そして渦中のトゥデイグッドデイの3人で」

「…………」

 

 

 先日の宝塚記念。トゥデイグッドデイの吐血と救急搬送には心臓が止まりそうなほどに驚いたし心配もした。けれど、それに振り回されて脚が鈍るような事は無かったとフクキタルは断言出来る。弔い合戦という訳ではないが、彼女の分もという思いで走った。それはサイレンススズカ達も同様だ。そして、勝ったのはマチカネフクキタルだった。

 3着のキンイロリョテイとは5バ身差をつけるマッチレース。クビ差の大接戦。二人共レースレコードという激走。

 しかし、一番人気のサイレンススズカが負けたのはトゥデイグッドデイの起こしたトラブルが原因であり、それが無ければ勝ったのは……という意見が一部から噴出。SNSなどでは賛否両論大論争となり盛大に炎上。ニュースやワイドショー、新聞に週刊誌なども騒がす事態となる。

 

 レース後、表彰式の待ち時間でSNSをチェックしていた際にはスマートフォンを落としてしまうほどの衝撃を受けていた。

 

 

『なん、ですか、これ。トゥデイさんは悪くない!! 関係ない!! スズカさんも、私も、皆さんも、全力で、限界で走ってッ!! なんで、なんでなんですかぁッ!!??』

 

 

 自分の勝利が貶められる事への怒りより友人への理不尽を気にするマチカネフクキタルの優しさにトレーナーは感じ入るが、次に彼女の口から漏れた言葉は看過できないものだった。

 

 

『……私が、私が勝ったから……だから、そのせいでトゥデイさんが』

『フクキタル』

『だって、トレーナーさnみぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?? あだだだだだだっ!?』

 

 

 トレーナーはマチカネフクキタルの正面に立つと、彼女の側頭部の両側に拳を当ててグリグリと力を込めた。俗に言う梅干しである。

 マチカネフクキタルが陥りかけた『自分が勝ったせいで』という自虐的な思考を半ば強引に断ち切り、涙目になる彼女の両頬を手の平で包み込んで大きく透き通った琥珀色の瞳をじっと覗き込む。

 

 

『フクキタル』

『えっ、ちょっ、こんな時に……えっ? えっ?』

『勝ったのは君だ。勝ったのはマチカネフクキタルだ。勝ったのは俺の愛バだ。その否定は誰にも、君自身だとしても絶対にさせない』

『っ!! トレーナーさん…………うう……はい…………』

 

 

 真っ直ぐに見つめられてそう言われてしまってはマチカネフクキタルは頷くしかない。

 胸があたたかい。頬が焼けるように熱い。

 

 

『………あの………近いですよぅ』

『あっ、ごめん』

 

 

 と、そんなやり取りがあり彼女自身は一応はマイナス方向の思考に嵌まることは避けられたが、それでも友人であるサイレンススズカらの様子に引きずられるように調子は今一つ。

 

 

「どうする? 断ることもできるけど」

「……私は、参加したいです。この胸のモヤモヤを……何より、友達が困っているときに立ち上がらないなんて、シラオキ様にもお姉ちゃんにも顔向け出来ません」

「そうか……分かった。東条トレーナーには参加希望で返答しておく」

 

 

 マチカネフクキタルの真摯な思いにトレーナーは頬を緩める。

 

 

「やっぱり、君は俺の一番の愛バだよ」

「フンギャー!? 髪をワシャワシャするのはやめてください〜〜〜〜」

 

 

 

 

 という経緯でマチカネフクキタルはチームリギルとの合同夏合宿に参加することになった。

 

 

 

 

 

 

 そして、夏合宿が始まると。

 

 

「キツいか? キツいな? ならよし!! ほら登れ登れ登れ!! スピカの意地を見せてやれお前ら!! 歩幅は小さくピッチは早く! モモ上げろ! 腕振れ! 口で呼吸するな! 鼻呼吸を意識しろ!! あと1キロだぞ!!」

 

 

 チームスピカのトレーナーである沖野の声が坂道を駆け上がるウマ娘たちの背中に叩きつけられる。

 

 

「ナンデコンナスパルタナノー!!」

「秋にはこの夏で大きく力をつけた上がりウマ娘が出てくるんだ。そいつ等に勝つにはそれ以上に成長するしかないからな。レースの前から負けてなんかいられねえぞ!!」

 

 

 沖野の発破にペースが落ち始めていたウマ娘達が歯を食いしばる。

 

 

「ほら新進気鋭の後輩たちが追い上げてくるぞ! 気合い入れろ!! 学園最強チーム、グランプリウマ娘の看板はそんなもんか!!」

「くっ…ふぅっ!」

「好き放題、言ってくれる……!!」

「ひぃぃスパルタです〜!!」

 

 

 今は沖野主導で行うトライアスロンを模したトレーニング中だ。参加メンバーはスピカの全員とエアグルーヴ、サイレンススズカ、トゥデイグッドデイ、グラスワンダー、テイエムオペラオー、マチカネフクキタルの6人というドリームトロフィーリーグに在籍していない面子。

 他の面々は東条の元で別メニューをこなし、フクキタルのトレーナーはその補佐をしていた。

 今回のトレーニングはまず砂浜から離島までの遠泳。そして島のウマ娘用コースを自転車、次いで己の脚で走り抜けるというもの。

 島の大きさ自体はそこそこだが、元が火山島なのか高低差のある地形で急勾配な坂道が多い。水泳や自転車の疲労はメイクデビュー前の娘は勿論、シニア級G1ウマ娘の3人ですら苦しめており、皆苦悶の表情で坂を登っている。

 

 

「よしよし、なんとかウチの連中も食らいついてるな。順調順調」

 

 

 そう言ってエアグルーヴ達シニア級、スペシャルウィーク達クラシック級、トウカイテイオー達ジュニア級以下と縦長になってきた隊列を注意深く眺めながら頷く沖野は原付である。荷台には飲み物などの詰め込まれたクーラーボックスが固定されていて、肩に掛けたカバンには転倒などの怪我に備えた救急セットも入っていた。 

 

 

「(しっかし、やっぱスタミナはトゥデイが抜けてやがるな。春天で2着のフクキタルですら苦しそうな顔してるってのに、呼吸も足取りも乱れがない)」

 

 

 沖野は平然とした様子で先頭集団を走るトゥデイグッドデイに畏敬の念すら感じていた。

 編入当初、本能的に触れてしまったトモから得た情報やその後の様子から相当な努力家であることは知っていたが、日夜どれだけ自らを追い込んだのか想像すら出来ず、それを壊れないようフォローし導いた東条の苦労を考えると今度の飲み会では自分が奢って労おうかと思うほど。

 

 

「(フクキタル以上の生粋のステイヤー、だと前は思ってたんだが違うんだよな。春天や阪神大賞典とかの長距離レースを避けてるのは、ライバルのスズカと走る事に固執してる以外にも理由が、それこそ走れないと判断するに至った何かがある)」

 

 

 それは十中八九、彼女のピッチ走法だろう。沖野は様々なデータを思い返す。

 

 

「(トゥデイは先行、差し、追込が出来る……というより作戦はレース展開に左右されている。全体のペースが速ければ後方に、遅ければ前に。本人は殆ど一定のペースで走っていて、ラップタイムは1ハロン12秒±コンマ1程度。ただ、テンの1ハロンは13秒台であのピッチにもって行くのに時間が必要だってのが分かる。そして、スパートではフォームを変えて加速するがそのピッチは若干落ちている。空論だが、2400程度なら常に全力で走れそうだ)」

 

 

 まるで超短距離のレースのように最初から最後までスパートをかけた状態で走り抜けている。走り抜けることが出来る。だが、トップスピードが不足している故に勝てない。前を塞がれたとか仕掛け所を間違えたとかのレース展開ではない。算数のようなラップタイムの積み重ねの話だ。

 

 

「(しかも、その走りで身体にかかる負荷は相当だ。ヒトのマラソンランナーが終盤で足が痙攣して走れなくなる事があるが、3000メートル級のレースでそれに近いことが起きるのは想像に難くない)」

 

 

 もし、京都芝3200をあのピッチ走法で走り切れるのならトゥデイグッドデイは最強のステイヤーとして名を轟かせていただろう。今年の天皇賞春の覇者、メジロブライトを歯牙にもかけず。だが、そうならなかった。

 

 

「(才能と努力と運。そのどれもを持っていないと栄光は掴めない。努力だけで覆せるのには限界がある……か)」

 

 

 トレーナーとして何人ものウマ娘を指導してきて得た教訓は苦いものだった。綺羅びやかな夢を持っていても、どんなに努力しても、才能という壁を前に打ち砕かれる娘たちを何度も見てきた。

 

 

「(だけどな、その壁をぶち破る奴がいたっていいだろうさ。三女神サマよ)」

 

 

 

 

 

 

「はっ、はっ、はっ、くっ、うぅっ!」

 

 

 一方、スペシャルウィークは汗で貼り付く髪を指で退けながら前を行くトゥデイグッドデイ達の背中をぐっと眉間に力を込めて見つめる。

 

 

「(秋からはレースで一緒に走る事もあるんだよね。フクキタルさんにエアグルーヴさん。スズカさん、トゥデイさんも)」

 

 

 それは黄金世代と称される友人達や同世代だけのある意味守られた場から、歴戦の猛者達がしのぎを削る戦場へと移るということ。

 

 

「(背中が、遠い。こんなに)」

 

 

 彼女達との距離がそのままレースでの勝敗を表しているように感じる。

 

 

「(トゥデイ、さん)」

 

 

 スペシャルウィークにとってトゥデイグッドデイは憧れの存在だ。

 北海道で暮らしているときにテレビ中継されていた弥生賞で彼女の走りに釘付けになった。

 

 もっと速いウマ娘も強いウマ娘もいる。サイレンススズカやマチカネフクキタルといった同世代のG1ウマ娘と比べれば戦績も走りも一段見劣りする。けれど、彼女達の背を追って走り続けるその姿に、その瞳に、スペシャルウィークは魅せられ、憧れ、そんな走りをしたいと思った。

 

 日本一のウマ娘という二人の母親から託された夢とは別の、スペシャルウィーク自身の夢。グラスワンダーらに敗北し日本一への第一歩を踏み外したダービーの夜、それを思い出せていなかったらこの夏合宿は迷いから無駄な時間を過ごすことになっていただろう。

 

 スペシャルウィークは思う。

 

 

「(トゥデイさんが目指した背中は、もっと遠かった)」

 

 

 サイレンススズカとトゥデイグッドデイ。青葉賞で故障しても不断の努力で復帰し、遂にはG1の舞台を共に走るまでになった。

 同じチームのグラスワンダーから、チームに入ったばかりのトゥデイグッドデイはてんで駄目だったということを聞いている。シンボリルドルフら先輩ウマ娘との併走が成り立たないレベルであり当時のサイレンススズカとの差は明白。それでも彼女に追い付きたいと身体的ハンデも適性も努力で踏み越えたのだと。

 

 

「(トゥデイさんが出来たから、じゃない。トゥデイさんがそうしたなら、私だってそうなりたい。憧れてるんだ。あの人の目に。諦めない、前に進み続ける意志に)」

 

 

 息を吸って、吐く。

 思い描くのはトゥデイグッドデイの走り。

 

 ぐん、とスペシャルウィークの身体が前に出る。

 

 

「スペちゃんっ」

「負けてられないデスっ」

 

 

 それに釣られるようにグラスワンダーとエルコンドルパサーもペースを上げる。

 

 

「(!? スペにめっちゃ睨まれてる!?)」

 

 

 なお、気合で加速した三人はゴール直後に疲労からぶっ倒れた模様。

 

 

 

 

 

 






フクキタルはトレーナーから軽く折檻されてフンギャロしてるのが似合うという認識になってしまったのはようつべのウマ娘反応集のせい

サトちゃんは「ですので」で因果を捻じ曲げる能力者だし、ドーベルはどぼめじろうとかメガドボとかとるぽめぐろとか複数PN持ってるし、マヤは星谷ちゃんに色々と押し付ける(洗脳済)

【再掲】完結後の秋天IFルートで一番読みたいのは?(好みの調査です。感想への誘導が規約違反だったので再掲)

  • 秋天逃げ切り勝利√
  • 秋天故障半身不随√
  • スズカ告白√
  • 一番いいのを頼む(↑上3つ混ぜ混ぜ)
  • その他(活動報告にどうぞ)
  • 答えだけ見たい方向け
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