転生オリ主ウマ娘が死んで周りを曇らせる話   作:丹羽にわか

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書き貯め出来なかったよ。。。短くてすまない。。。

6/7 本文最後のやり取りを直しました。菊花賞の展開が変わったので。


第8R

Side:グラスワンダー

 

 

「~~♪ ~~~♪」

 

 

 リギルのトレーニングが無いとある日の放課後。

 トレセン学園近くの国立病院の廊下を鼻歌交じりに歩くのはグラスワンダー。

 チームリギルにて先輩であるトゥデイグッドデイを強く慕っている彼女はトゥデイの骨折の報を受けて落ち込んでいたが、先日のオグリキャップによる叱咤で調子を取り戻し、怪我で気落ちしているであろうトゥデイを見舞おうと彼女の入院する病院を訪れていた。

 なお、お見舞いの品は宇治抹茶大福。グラス自身お茶を飲む時に茶請けとして選ぶ事もあるお気に入りの逸品である。

 

 

「あら? あの人…」

 

 

 角を曲がった廊下の先に見えたのはリギルの先輩でトゥデイのライバルであるウマ娘、サイレンススズカ。どうやら一足先にお見舞いに来ていたらしい。

 

 

「…………」

 

 

 トゥデイの病室の前で立ち止まるグラス。

 ちなみに彼女の病室は個室であり、中にいるのはトゥデイとスズカの二人だけ。

 しかし親しき仲にも礼儀あり。ノックしようと握り拳を作り、

 

 

「あっ……スズカ……」

「トゥデイ……」

 

 

「!?」

 

 

 艶っぽい声がした。

 

 

「(……えっ???? お二人ってまさか……いやいやいや、私はわかります。これは深夜のジャパニメーションなどでありがちな“実はマッサージしていた”パターンですね。ふふっ、そんなベタな勘違い私には通用しません。甘いですよ。この宇治抹茶大福より甘々です)」

 

 

 と、内心得意げになりながらも、ノックをやめて息をひそめるグラス。

 なお、その宇治抹茶大福は甘さ控えめである。

 

 

「(ま、まあでも、お取込み中の所に入るのも悪いですし、ちょっと様子を見ましょうか。ええ、これは迷惑にならないようにする為です、ほんとです)」

 

 

 何処かに向けて言い訳をしながら扉に耳ピトする。

 

 

「や、やめっ、すずかぁ」

「はぁ、はぁ……だいじょうぶ、だいじょうぶだから」

 

 

 何が大丈夫なのだろうか。

 

 

「(ま、マッサージオチ、ですよね? こういうのはお約束なんですよね?)」

 

 

 言い聞かせながらもグラスの顔は真っ赤である。

 

 

「天井のシミを数えていれば終わるから」

「わけわかんないよぉ」

 

 

「(いやこれはマッサージでもアウトでは????? 中でいったい何が……)」

 

 

 我慢の限界に達したグラスは取っ手に手をかけてゆっくりと扉を開ける。鍵はかかっていないようで音を立てずにゆっくりと開いていく。

 

 そして。

 

 

「はぁ、はぁ……ほら、手を離して」

「ダ、ダメっ」

 

 

 トゥデイの病院着に手をかけて脱がそうとするスズカ。息が荒いし目が血走っている。

 それに涙目で弱弱しく抵抗するトゥデイ。はだけて覗く鎖骨や小さく細い肩が眩しいし、顔を赤くしながら涙目になっている様子はグラスに深々と刺さる。

 

 

「ハッ!? アウト!! アウトです!! 何してるんですかスズカさん!?」

「え? ……トゥデイの服を脱がしてる」

「それは見ればわかります!!」

「???? あ、トゥデイの身体を拭こうと」

 

 

 言われてみれば、ベッド脇の台にはお湯の張られた洗面器とタオルが置かれている。

 

 

「え? あれで!?」

 

 

 音声的にも映像的にも、スズカがトゥデイを襲っているとしか判断できなかった。

 

 

「ちょっと興奮……しちゃって」

「えっと……私はそれにどう反応すれば……」

「??? 笑えばいいと……思うわ」

「ロードショー見たんでしょうけど使いどころ違いますし、キャラ的にはスズカさんが言われる側では……」

 

 

 日本文化好きが高じてジャパニメーションもそれなりに嗜んでいるグラスである。

 

 

 

 

 

 なお、揉めているうちにこっそりトゥデイがナースコールをし、駆け付けた看護師に叱られた二人は摘まみ出されたのであった。

 

 

 

 

 

「追い出されちゃいましたね」

「……不覚ね」

「食べます? 宇治抹茶大福」

「……頂くわ……はむ」

「……スズカさんってトゥデイさんのこと」

「はむむ?」

「……いえ、なんでもありません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

Side:東条ハナ

 

 

 

 東条ハナは一人、夜のトレーナー室にいた。

 

 

「……」

 

 

 カタカタとパソコンのキーボードをたたく音が響いていたが、止まった。

 マウスを操作しとある動画データを再生する。

 

 

<さあゲートイン完了。出走の準備が整いました>

<ダービートライアル、G2青葉賞、今スタートです!!>

<ややばらついたスタートになりました。1番、4番、二人が競い合うようにハナを行きます>

<しかし逃げる先頭二人と三番手との差は僅か2バ身。ハナからシンガリまで8バ身に収まっています。最後尾は1バ身離れて13番トゥデイグッドデイ。どうでしょうこの展開>

<位置取りが熾烈になりそうです。躱して抜け出すのも容易ではないでしょう>

 

 

 先月行われた青葉賞のレース映像だった。

 トゥデイは6番人気。弥生賞で入着したものの、差しウマとしては最終直線での伸びやバ群を突き破るパワーが不足していると見られていた。

 

 

<大ケヤキを越えて第4コーナー。ややバ群は縦に伸びつつ最終ちょk…ぁッ!? 先頭変わった!! 変わっている!! 先頭トゥデイグッドデイ!! トゥデイグッドデイ先頭!!>

<速い速い!! あっという間に後続を引き離していく!! 信じられません!! なんて末脚だ!!>

<まさに黒い稲妻!! トゥデイグッドデイ今1着でゴールイン!!>

<青葉賞を制したのはトゥデイグッドデイ!! 圧巻の走りだ!! ダービーが彼女を待っている!!>

 

 

 東条はもう何度も観た動画だ。

 トゥデイは最終コーナーで走法を変え、爆発的な加速と圧倒的なスピードで後方からごぼう抜き。勝利を収めた。

 それは、かなり前傾して低い体勢から一歩一歩前へ跳ぶように進む変則的なストライド走法。大柄なウマ娘、特にスピカのゴールドシップのような手脚の長さを持っていないが故の走り方。

 己の体重や踏み込み時の反発が着地したつま先辺りに大きな負担をかけてしまう為、勝利と引き換えにトゥデイの骨折の原因になった諸刃の剣。

 

 

「…………」

 

 

 青葉賞を勝利したトゥデイ。ゴール後の彼女の歩きに違和感を感じ、後のウイニングライブで確信に変わった時、東条ハナの頭にまず浮かんだのは「やっぱり」というどこか諦めを込めた言葉だった。

 勿論驚いたし、彼女の将来を思うと悲しみや自分に対しての怒りも覚えた。同じように故障に気付いたシンボリルドルフと共にライブ後の控室に突撃し、有無を言わさず病院に連行したのは真に彼女を心配したからだ。

 

 しかし。

 

 

 東条はトゥデイグッドデイを踏み台にして、サイレンススズカを高みへと押し上げた。

 『皇帝』シンボリルドルフに続く、無敗のクラシック三冠の為に。

 

 

 結果だけを見るとそうなってしまうだろう。

 現に、二人のライバル関係を知るトレセン学園のトレーナーの一部から、そういった話が出ているのも風の噂で聞こえてくる。

 

 

 だが、違う。

 

 

「(あの二人がダービーで競い合う姿を見たかった。その結果がこれなのね)」

 

 

 東条はウマ娘が大好きだ。素直な思いを表に中々出せない不器用な女性だが、その想いを感じ、その指導の先に確かな未来があると信じているからこそ、チームリギルのウマ娘達は彼女の管理主義的なやり方を受け入れてくれている。

 スズカの場合、レースにおいて彼女の適性に合わせた『逃げ』をさせてはいるが、それはトゥデイと共に東条の課す厳しいトレーニングをこなしているからこそ。それが無ければ何度かの負けに繋がったとしても抑えた走りをさせていた。

 

 トゥデイが青葉賞に並々ならぬ思いで臨んでいる事は気付いていた。そして、その理由が皐月賞で勝利したスズカであることも。

 東条は嬉しかった。トゥデイが前を向いて、スズカの背中を目指して走っていることが。その二人がダービーで並ぶ、そんな『夢』が手の届くところにある事が。

 

 だから、トゥデイを走らせた。

 

 信じていた。祈っていた。この青葉賞で彼女が何事もなく勝利し、ライバルとダービーを走る『奇跡』を。

 

 けれど、女神は微笑まなかった。

 

 

「ほんと、女神様って残酷」

 

 

 奇跡は、なかった。

 

 

 トゥデイは勝利したものの骨折し、ダービー出走を断念。

 そのダービーではスズカがレコードタイムを叩き出して勝利を収めた。

 

 

 チーム総出で応援に行った。

 スズカは先頭を譲らなかった。誰よりも速くターフを駆け、最終直線で差そうと迫るマチカネフクキタルらを、更に加速して突き放した。

 そしてスズカが先頭でゴール板を駆け抜けた瞬間、念の為と車椅子に乗せられたトゥデイのたった一言。観客の大歓声に思わず耳を伏せていたウマ娘達にも聞こえていなかったであろうそれを、東条は聞いた。

 

 

『なんで』

 

 

 無意識に出たであろうその呟き。先を行くスズカへの嫉妬? 違う。怒りだ。

 きっとそれは、スズカと同じターフを駆けていないトゥデイ自身への。

 

 

 身体の事を考えれば、スズカのライバルとしてマイル~中距離を走ることは避けるべきだろう。そもそもがステイヤーとしての適性が高いのだから、長距離を走らせるべきだとトレーナーとしての東条が言う。

 

 しかし、しかしだ。

 

 ウマ娘としての二人の幸福は、勝利にあるのだろうか。

 あの二人は勝利を求めていない。スズカは『先頭の景色』の為に、トゥデイは『スズカを超える』為に走り、その結果が勝利として現れているだけだ。

 

 二人が競い合う先にこそ、彼女達の幸福はあるのではないか。

 

 

「はぁ……なんというか、手のかかる子達ね」

 

 

 東条はため息をつきながら出走予定を確認する。

 

 スズカはクラシック三冠をかけて菊花賞に。

 トゥデイはクラシックでの出走は見送り、シニアではスズカと共に宝塚記念や天皇賞(秋)を目標にする。

 

 

「その菊花賞で注意すべきなのは……」

 

 

 青葉賞とは別の動画を再生する。

 

 

<最終コーナートップはサイレンススズカ!!>

<それを後続のウマ娘たちが追う!!>

<あーっ!? マチカネフクキタルひとりバ群を抜けサイレンススズカを狙う!!>

<迫る! 迫る!! これは差すか!?>

<サイレンススズカここで加速!! 後続を一気に突き放す!!>

<1着サイレンススズカ!! 2着マチカネフクキタル!!>

 

 

 つい先日の日本ダービーで、唯一スズカに食らいついたウマ娘。

 

 

<私は、先頭を走るだけです。だから、追いついてきてね>

 

 

「スズカ……貴女を追いかけているのは、1人だけじゃないのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スズカさん。貴女の後ろに、誰が走っていましたか。誰と、走っていましたか」

 

 

 

 

 

 




ここのグラスはジャパニメーション見てる。
一期の耳ピトいいよね。。。「んんっ」ていう声もいい。

おハナさんは二人の幸せを考えている。その先にあるのは。。。

スズカ、デイカスの影響で基礎ステアップで逃げオンリーに。ガバ。

みなさんおマチカネのライバル追加。デイカスを菊花賞出そうと思ったけどまだ悲劇を貯めときたいので。。。
鬼が宿ったライスシャワーのエフェクト実装されないかなー
あと、G1以外のレースは体操服で走れるようになるオプション欲しい。

菊花賞はもう少しあと。
他のキャラと絡ませた話いれたい。

完結前に記念でトゥデイグッドデイの立ち絵ほしいな。何かでイラストの制作依頼出そうかね。

各話にタイトルいる?(第10Rなら『目醒めの朝/夢の重さ』とか)

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  • ┐(´ー∀ー`)┌レーダージュシン

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