走れテイオー   作:球磨猫

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公式の配布10連でウンス外したので。

いいもんデジたんカフェシャカールに賭けるもん。





走れスペシャルウィーク

「オグリキャップさぁぁん!!!!」

 

悲痛な叫びが静寂を裂いた。雪の上で動かなくなったウマ娘の身体に縋りつく一人のウマ娘。

その叫び声はやがて嗚咽へと変わっていき、ついにその声が枯れ果てた時には、少女の目は暗く濁っていた。

 

今ここに一人の鬼が生まれたのである

 

 

 

スペシャルウィークは激怒した。

 

 

 

必ずやかの邪知暴虐、悪鬼羅刹の生徒会長を打ち倒さねばならぬと。

我より先に散っていた同輩、オグリキャップ師匠の仇を討たねばならぬと。

スペシャルウィークには経営がわからぬ。スペシャルウィークはトレセンで2番のウマ娘である。トレセンで1番のオグリキャップ師匠と共に激しい闘いの日々を暮らしていた。けれども今回のことにだけは敏感であった。

 

 

きょう未明スペシャルウィークは寮を出発し、正門を越え横断歩道を越え、十里はなれた此のトレセンの市にやって来た。スペシャルウィークには父も、母も無い。女房も無い。優しくて大好きな、もう一人のお母ちゃんと二人暮しだ。

このお母ちゃんは、我が子同然のスペシャルウィークにたくさんの人参を、近々、トレセン学園に送る事になっていた。スペちゃんのレースも間近かなのである。

スペシャルウィークは、それゆえ、トレセン学園の寮を出てトレーニングの為に、はるばる市にやって来たのだ。

 

 

先ず、そのトレーニングを済ませ、それから都の大路をぶらぶら歩いた。

スペちゃんには心の師匠があった。葦毛の怪物、オグリキャップ師匠である。

 

今は此のトレセンの市で、尾具理一門を仕切っている。その師匠を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。

 

 

歩いているうちにスペシャルウィークは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。

もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。

 

のんきなスペちゃんも、だんだん不安になって来た。

路で逢った若いウオッカをつかまえて、何かあったのか、二日まえに此の市に来たときは、夜でも皆がライブを開いて、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若いウオッカは、首を振って答えなかった。

 

 

しばらく歩いてオグリキャップ師匠に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。オグリキャップ師匠は答えなかった。オグリキャップ師匠は両手でスペシャルウィークの肩を掴むと、「今、この街で頼れるのは……お前…だけだ…。後は……頼ん…だ・・・ぞ」

 

 

「オグリキャップさぁぁん!!!!」

 

 

 

悲痛な叫びが静寂を裂いた。雪の上で動かなくなったウマ娘の身体に縋りつく一人のウマ娘。

その叫び声はやがて嗚咽へと変わっていき、ついにその声が枯れ果てた時には、少女の目は暗く濁っていた。

 

今ここに一人の復讐鬼が生まれたのである

 

倒れ伏した彼女にスペシャルウィークはお母ちゃんお手製の人参ハンバーグを供え、先を進む。

後ろからは何かにがっつく音と、獣の唸り声の様な、腹から響く音が聞こえていた。

 

 

さらにしばらく歩いて今度は若いマルゼンスキーに出会い、こんどはもっと、勢いを強くして質問した。

「知りません!!」

「何が!?」

「わかりません!!」

「だから何がよ!?」

 

幾許かの門答の末、若いマルゼンスキーは、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

 

 

「皇帝様は、学園の食堂食べ放題を中止しました」

 

許せません!!

「ちょっと落ち着いて!?」

 

 

「フー…フー…なぜ中止させたんですか。」

「・・・食材が足りない、というのです。誰もそんな、食材を蓄えては居りませぬ。」

「そんな……誰か陳情しなかったのですか」

「はい、はじめはオグリキャップさまが。それから、彼女のトレーナーさまが。それから、タイキシャトルさまが。それから、グラスワンダーさまが。それから、巻き込まれたタマモクロスさまが。それから、賢さSSのゴールドシップ様がノリで。」

「驚きました。それでも変えないなどと。皇帝は乱心か。」

「いいえ、乱心ではございませぬ。出費を、抑える事が出来ぬ、というのです。このごろは、トレセン学園はブラックではないか?という噂が出回ることもあり、一部の者が余計に過敏になり、虚しく多めに残業をしている料理スタッフたちには、早急に有給を付けることを命じて居ります。御命令を拒めばスーパークリーク様にかけられて、バブらされます。きょうは、トレーナーウマ娘協力して、各自が用意するように。と。」

 

 聞いて、スペシャルウィークは激怒した。

「呆れた皇帝です。生かして置けません!!」

 

 

スペシャルウィークは、単純なウマ娘であった。お腹を、出したままで、のそのそ生徒会室にはいって行った。たちまち彼女は、副会長のエアグルーヴに捕縛された。調べられて、スペシャルウィークのお腹からは大きな音が鳴ったので、騒ぎが大きくなってしまった。

 

 

スペシャルウィークは、皇帝の前に引き出された。

「そのお腹で何をするつもりであったか。言え!」皇帝シンボリルドルフの代理、エアグルーヴは静かに、けれども恐れを以って問いつめた。その女帝の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。

 

「私たちはお腹いっぱい食べたいだけです。」とスペシャルウィークは悪びれずに答えた。

「おまえもか…」エアグルーヴは、青ざめた。

「仕方の無いやつだ。おまえには、トレセンの食費がわからぬ。」

「言うな!」とスペシャルウィークは、いきり立って反駁した。

 

 

「人の食事を邪魔するのは、最も恥ずべき悪徳ですよ。貴女たちは、私たちの命をさえ奪おうとしている(そんな事実はないったらない)。」

「でもウマ娘盛りの大盛りが好きなんでだろう?」女帝は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。

「わたしたちだって、食べさせてやりたいのだがな。」

「なんの為のトレセン学園ですか。犠牲者を増やすつもりですか。《現在3名だけである》」

こんどはスペシャルウィークが嘲笑した。「お腹いっぱい食べさせないだなんて、何が自由だ。」

「いやお前たちの量がおかしいのだが。」女帝は、さっと顔を挙げて報いた。

 

 

女帝とスペシャルウィーク、睨み合いが続いた。トレセン学園の経費は、今や膨れ上がり、理事長のポケットマネーで秘密裏に補っている部分もあるほどだった。ウマ娘を愛する理事長も、学園生全てに機会とチャンスをと考える生徒会も、苦渋の決断であった。

何より食堂スタッフが死に体である、

 

 

「打つ手が無いわけではない。」

 

双方譲らない平行線が続くなか、ゲンドウポーズでじっと流れを見つめていた皇帝、シンボリルドルフが重い口を開いた。

 

「もうじき開催されるJAPAN WORLD CUPに出場し、優勝するんだ」

 

 

「か、会長⁉︎ しかしそれは__」

「エアグルーヴ。」

 

「君の懸念はよくわかる。恥ずかしい話ではあるが、我々トレセン学園は未だにあのレースでの優勝者を輩出できていない。かくいう私も予選ですら突破できなかった。それだけハイレベルなレースだ。」

 

スペシャルウィークはその言葉に、思わず息をのんだ。

なにせ、()()皇帝が予選落ちしていると言うのだ。彼女は直接は戦ったことなどないが、それでも皇帝の走りを知っていた。

 

「もし君がそのレースに出て、優勝したのならば・・・その時は、学食の無料食べ放題中止を取り消そう。どうだろうか、スペシャルウィーク。」

「………でも、会長さんが勝てないほどのレースに私が出ても・・・」

「・・・『()()()が無いわけではない。』と言ったのはそういうことなんだ。トレセン学園の運営も人手も()()()()でね・・・。」

 

 

「だが私たちはウマ娘で、ここは走りたいウマ娘の為の学園だ。レースの()()()負けたで決めることはまさに()()()つけではないかな?」

 

「それは……でも・・・」

 

その時、突如脳内に溢れ出す記憶。

 

グラスワンダーを側溝にある秘密基地に引きずり込み、お腹の満足するまでお菓子をほおばったあの日。

オグリキャップ、タイキシャトルと共に、超巨大芋煮会へと挑戦したあの日。

スーパークリーク、タマモクロスたちと戦ったドーナツ大食い選手権。

メジロマックイーンと共にスイパラを荒らし回ったあの日___

 

 

「私、やります。必ず1位を取って、このトレセン学園を救って見せます!」

 

 

 

スペシャルウィークは決意した。

 

 

 

必ずやかのJAPAN WORLD CUPに出場し、優勝せねばならないと。

我より先に散っていた同輩、オグリキャップ師匠たちの仇を討ち、このトレセン学園を救わねばならぬと。

 

 

走れ!スペシャルウィーク。

 

 

 

「1番ギンシャリボーイ既にパドックから魅せるスシウォーク。2番ピンクフェロモンは今年も審議中しばらくお待ちください。3番チョクセンバンチョー愛車の整備はバッチリ。4番ハリウッドリムジンは2人組。5番バーニングビーフからはステーキの香り。6番サバンナストライプ今年の運勢は末吉でした。7番ジラフは首のストレッチを入念に。8番ハリボテエレジータキオン印の新素材。9番スペシャルウィークトレセン学園からの本線初出場。嵐を巻き起こせるか?」

 

 

「ふえぇ…お母ちゃん助けて…」

 

 

 

「スピン&ウォークッ‼︎ ギンシャリ回った、華麗な三回転半‼︎今ゴーーール‼︎ 確定しました。1着にはギンシャリボーイ、2着にはハリウッドリムジンが滑り込みました。ジャパンワールドカップ、またお会いしましょう。今日はザギンで回らない寿司を。」

 

 

 

 

 

 





この後オグスペタイキグラスの泣き落としと執念で食べ放題廃止は回避されましたとさ。
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