走れテイオー   作:球磨猫

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メロス(要素)は死んだ!もういない!






走れグラス

 

 

グラスワンダーは激怒した。必ずやかの邪智暴食の魔王を討ち取らねばならぬと。

グラスにはゴルシがわからぬ。グラスは奥ゆかしきウマ娘である。質素倹約常在戦場日々これ精進と暮らしていた。けれども悪にだけは敏感であった。

 

きょう未明グラスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此のトレセンの市にやって来た。今のグラスには。旦那はいない。クラスメイトの、エルコンドルなパサーと2人暮らしだ。家族は亜米利加で隠居している。

このエルコンドルなパサーとグラスなワンダーは、近々、自らの主たる総大将に御呼ばれされる身であった。凱旋演舞(ウィニングライブ)も間近かなのである。

グラスは、それゆえ、武具の整備の為の道具やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。

 

 

先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。

グラスには竹バの友があった。タイキシャトルである。

今は此のトレセンの市で、射的屋を仕切っている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。

 

歩いているうちにグラスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。

もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。

 

普段はのんきなグラスも、だんだん不安になって来た。

路で逢った若いウオッカをつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が宴を開いて、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若いウオッカは、首を振って答えなかった。

なぜ答えないのか。グラスは更に語勢を強くして質問した。若いウオッカはそれでも答えなかった。

 

「この意気地なし!」

 

グラスは話にならないと、ウオッカを置いて行った。

 

 

しばらく歩いてハルウララに逢い、こんどはもっと、語勢を強く…できなかったので普通に質問した

ハルウララは答えなかった。グラスは両手でハルウララのからだをゆすぶって質問を重ねた。ハルウララは、あたりをはばかる低……いらしい声で、わずか答えた。

 

「えーっと、えーっと……。そーだいしょー様は、兵士(へーし)をお集めになっています。」

「なぜ、兵士を集めるのか。」

「ご飯が足りない、とおっしゃるのです。大変だー!?」

「しかし、この国には沢山の食材があったのではないのか?」

隣国(となりくに)の魔王が食材を奪って行ってしまわれたのです。なんで取っちゃったんだろ、皆で食べた方が美味しいのにね!」

「驚いた。それでは総大将様は戦を仕掛けるおつもりか。」

 

 

「呆れた魔王です。許して置けません。」

 

グラスは、単純な女であった。買い物を、背負ったままで、のそのそとトレセン学園にはいって行った。たちまち彼女は、学級委員長のバクシンオーに案内された。グラスは総大将の懐刀であった。

 

 

グラスは、総大将の前に引き出された。

 

「ここの民草を兵士として徴用し、何をするつもりでしたか。言ってください。総大将スペシャルウィークさん。」グラスワンダーは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。その総大将の顔は蒼白で、尻尾はしなだれ、母親にいたずらがバレた時の子供の様だった。

 

「食材をゴールドシップさんの手から救うんです!」とスペシャルウィークは悪びれず答えた。

「戦でですか?」グラスは、憫笑した。

「仕方の無いでしょう。グラスちゃんには、晩御飯の人参ハンバーグ定食ウマ娘用メガ盛りを目の前で取られた気持ちがわからないんです。」

「太りますよ?」

「言うな!」とスペシャルウィークは、いきり立って反駁した。

 

「人のご飯を目の前で平らげるのは、最も恥ずべき悪徳です。ゴールドシップさんは、私の心をさえ弄んだのです。」

「………だからといって戦での解決など「たんぽぽも全部持って行かれました。」わかりました、宣戦を布告いたしましょう。」

 

スぺの放った一言に、さしものグラスワンダーも怒髪天を突き磨かれた刃の如き怒りを見せた。

 

 

かくてスペシャルウィーク率いる軍勢と、ゴールドシップ率いる魔王軍による戦が始まった。

ゴールドシップは自らの手勢すべてをセイウンスカイとキングヘイローに預け自身はに引きこもった。

キングヘイローは中京、セイウンスカイは阪神に軍を展開し迎え撃つ構えを取っていた。

 

まず先に動いたのはグラスワンダーたちだった。小勢をぶつけは撤退させ、さもキングヘイローの軍勢が勝っているかのようにみせかけおびき寄せると、軍を退かせ様子見を重ねる。

完全に得意げになっていたキングは自らの固有結界(謎の力)で作り出した幻影の城で舞踏会を開きこう言った。

 

「このキングと共に踊る権利をあげるわ!」

 

テイエムオペラオーの、「僕作成の僕による僕の為の素晴らしい演劇」が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。舞踏会に列席していた兵士たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い城の中で、むんむん蒸し暑いのもこらえ、陽気に歌をうたい、手を拍った。キングも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、魔王とのあの約束をさえ忘れていた。

祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、兵士たちは、外の豪雨を全く気にしなくなった。

舞踏会も佳境になり、キングは昂る心の赴くままに、高らかに告げた。

 

「この雨の中ではまさか敵もこない筈よ!」

 

神は言っている。「あ、今フラグ立った」と。

 

 

「敵は桶狭間ポイントにあり。皆さん、キングちゃんを討ち取りましょう」

 

グラスワンダーは駆けた。降りしきる豪雨の中を(雨の日◎ 重バ場◎)

それに気づいた者たちは慌てて武具を揃え追いかけた。はじめはスペシャルウィーク(人参ハンバーグの恨み)が。それから、エルコンドルパサー(グラスにご飯抜きで脅された)が。それから、オグリキャップ師匠(ガルルルルルルルルル)が。それから、タイキシャトル(B.B.Q! B.B.Q!)が。それから、ファインモーション(ラーメン屋休業の恨みは深い)が。それから、何も知らないタマモクロス(なんでや!ウチ関係無いやろ!)が。

 

 

やがて兵も追いつき、先陣を駆けるグラスの元へと集まっていく。その勢いは凄まじく、濁流滔々と桶狭間ポイント*1に集り、猛勢一挙に敵兵を破壊し、どうどうと響きをあげる激流の如く、木葉微塵に舞踏会会場を跳ね飛ばしていた。キングヘイローは茫然と、立ちすくんだ。あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、味方の兵は残らずグラスたちに敗北して影なく、テイエムオペラオーの姿も見えない。流れはいよいよ、ふくれ上り、海のように迫っている。キングは陣の端にうずくまり、男泣きに泣きながらスペシャルウィークに手を挙げて哀願した。

 

「それもこれも全部魔王ゴルシムってやつのせいなのよ!」

「おのれゴルシム、ゆ"る"さ"ん"!!

 

キングヘイローは許され、大人しくトレセン学園でウララの追試勉強の面倒を見に戻った。

 

 

次に相対したのはセイウンスカイの軍勢だった。

何とか攻め込もうとするも、スカイの軍略(「今です」)と彼女の雷を操る力によって思うように攻め込めない。

そこでグラスは精兵70人を連れて険しい崖の上に密かに陣取ると、鹿が崖を駆け降りるのを見て

 

「鹿が崖を駆け降りれるのなら、ウマ娘たる私たちが駆け降りれないという道理はありません。」

「イヤイヤイヤイヤイヤ、無理やろ!うちらウマ娘やで!鹿と一緒にせんでや!」

「出来ますよね?」

「やからそんなことは無「出 来 ま す よ ね ?」アッハイ」

「ならば良し。さぁ、いざ、出陣!」

「イヤャァーー!!!シニタクナーイ、シニタクナァーイ!!」

 

かくてグラスワンダーは逆落としによってセイウンスカイの背後を強襲。

セイウンスカイは前後からの挟撃により敗走し、大人しく新宿のビルの上で猫転がる(寝転がる)ことになった。

 

 

こうして魔王城への道を阻むキングヘイローとセイウンスカイ(2人揃って四天王)を撃破したグラスワンダーたち。しかしセイウンスカイが去る間際、意味深長な言葉を残す。

 

「東大デモクラシー…じゃなかった。灯台下暗し、だよ2人とも~。果たして我らが魔王様はじっとしてるウマ娘だったかな~?」

 

そのすぐ後、サクラバクシンオーが伝令として現れた。

 

「大変です!ゴールドシップさんが現れて、また都の食料を奪って行きました!」

「「「「「「な、なんだってー!?(それは本当かい!?)」」」」」」

 

そう、ゴールドシップはスカイとキングに陣を敷かせることで目を引き、その間に一人で忍び込んでいたのだ。これもゴールドシップがゴルシワープを使えるからこその行動。敵ながらワザマエ!

 

「スぺちゃん、貴方は軍の再編成を。ゴルシ城を囲む部隊と引き返す部隊に分け、逃げ込めないようにしましょう。」

「グラスちゃんはどうするの!?」

「私は今から戻り、ゴールドシップさんを捕まえます。頼みましたよ。」

 

 

少数の手勢なら、今から戻れば補足することができる。

グラスは水筒から水を両手で掬って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

走れる。行こう。肉体の疲労恢復と共に、希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、ご飯を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。

私を、頼ってくれる人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。

 

走れ! グラス。

 

 

 

 

 

 

 

やめて!オグリキャップ師匠の胃袋で、都の食料を目の前で平らげられたら、魔王の力でゴルシ城と繋がってるグラスワンダーの精神まで燃え尽きちゃう!

 

お願い、負けないでエルコンドルパサー!

 

あなたが今ここで倒れたら、スぺさんやグラスとの約束はどうなっちゃうの?

 

ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、ゴルシに勝てるんだから!

 

 

次回「ゴールドシップ 死す」希望の未来へレディー・ゴー!

 

 

 

 

 

 

 

*1
中京競馬場の第3~4コーナーのこと(らしい) 下り坂であり、逆転のチャンスであるとか。




ここ最近こっちばかり書いてる気がする(´・ω・`)



デジたんのトレーナーになりたブライアン。




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