俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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福佐陽介:オリジン

 夏休み、先輩の勉強に付き合った。最初は勉強だけだったが、息抜きに映画やカフェによく連れまわされ、1度海に行った。

 ちなみに先輩は当日バカなことしない限り雄英には合格する。俺の”個性”は確定した未来なら年単位で見ることも可能なのだが、先輩が雄英に合格することは夏休み初期に分かっていた。もし言ったら努力をやめて、未来が変わるかもしれないから言わないけど。その未来では主席合格だった。

 

 俺は時々、ヴィジランテとしてアホ共を捕縛したりしたが、この街は平和そのものだ。

 

 そして、今は先生とのカウンセリングをしている。俺の個性はどうしてもメンタル面での疲弊が大きいからだ。未来視はその情報の処理で脳に負荷がかかる。1番の負荷は感情受信能力と嘘発見器の能力だ。他にも”レーダー”という周囲2kmにおける探知能力などを常時発動しているのだ、負担は普通の個性の比ではない。

 そこで、”カウンセリング”の個性を持つ先生にメンタルケアをして貰っている。ついでに、俺の体の精密検査も知り合いのドクターにして貰っている。おかげでこの”個性”を持っていても普通に生活できるようになった。俺の武術は先生経由で必要な資料を取り寄せてもらって会得したものが殆どだ。

 大体60年前までヒーローには2つの派閥があった。異能を操り異能を制す”異能派ヒーロー”とヴィジランテ時代より進化してきた武術や剣術で敵を倒してきた”武術家ヒーロー”、そして、60年前のある事件までは後者が主流であった。とはいっても、派閥争いを考えていたのは”異能派”の上層部だけ、他は基本的に問題はなかった。それが、あることがきっかけで武術家は歴史から消され、現在のヒーローが誕生した。

 

 当時の武術家は多くが亡くなったが、細々と生きている人もいる。俺の師匠のように、プロヒーローとして活動をつづけた人もいた。他には剣聖会などといわれる組織を作り、弟子を育てている人もいるらしい。彼らの多くはヴィジランテや他国でのヒーロー活動をしているらしいが、師匠のようにプロヒーローとして活動している人もいる。それでも、彼らが武術家ヒーローと呼ばれる日は絶対に来ない。師匠も自分の師匠たちを復帰させようと奔走し、NO.1を維持したらしいがオールマイト登場後、あきらめたらしい。理由は知らないし、聞く気にもなれなかった。

 

 話が逸れたな。今はカウンセリング中だ。それと進路についての相談。先輩と関わって、かつての夢を思い出したからだ。

 

 俺はオールマイトが嫌いだった。ヒーローが嫌いだった。

 オールマイトのデビュー動画、あの中で誰一人オールマイトを心配する者はいなかった。危険な災害現場に、火の海に入るオールマイトを誰も心配しなかった。ただ、”凄い”としか言っていなかった。NO,1ヒーローではなく、無名の新人ヒーローに、だ。俺はその動画を見て恐怖を感じた。いや、それ以外のヒーローの動画を見てもそう思った。人の生死がかかっている現場で、目の前に自分の命を脅かす犯罪者がいるのに、まるで娯楽のように写真を撮り、間近で見ようと近くに寄る。

 

 最初、オールマイトの動画を見て思ったのは”可哀そう”だった。誰にも助けてもらえず、独りで現場にいる救助者を助けざる負えなかった。そして、笑顔でひと(ヴィラン)暴力を振るう(なぐる)姿で恐怖を覚えた。だって、笑いながら暴力を振るう人間なんて”悪い奴”じゃないのか?幼稚園の先生も両親からも「人に暴力を振るってはダメ」と言われてきた。じゃあ、オールマイトはいいのか、ヒーローはいいのかと質問をした。両親は「お前は優しいな」と言ったが、他の人からは「変な奴・おかしい奴・ヴィラン予備軍」と言われた。

 だから、俺がヒーローになってヒーローもヴィランも(みんな)を救おうと思った。この優しさを失った世界を。俺の”個性””は元々五感が人より()()優れているものだった。ヒーロー向けでなかったが、俺は鍛えればどんな個性でもその辺の増強系くらいの身体能力にはなれると知っていた。どんなにバカにされても鍛えてヒーローを目指していた。その後、父さんのことがあり、夢は義務になったし、今まで忘れていたが。

 

 先輩に会って、俺はかつての夢を思い出した。ヒーローもヴィランも(みんな)を救う人間になること。俺はどこかでその夢を諦めきれなかったらしい。無意識にその為の努力をしていた。

 だから、俺は先生にその夢を伝えた。案の定爆笑されて過呼吸になっていたが、その戯言を応援すると言ってくれた。そして、ヒーローではその夢を叶えられないことを教えてくれた。ヒーローでは足りない、もっと多くの事を学ぶ必要があった。その辺のことは今後、先生に習うことにした。

 その時、先生から質問された。

 

『その夢を叶えるのに、例えばどんな”個性”が必要かな?』

「そんなの優しい個性。例えば”個性を捨てられる”個性とか。」

『個性を捨てる?どうしてだい。』

「今の社会だと、”個性”に振り回される人が多いから。そんな物を無くせる”個性”はすごく優しいだろ?」

『...そうだね。』

「後は...”個性を与える”個性とか?ほら、そんな個性があれば”無個性”とか言って差別されなくなるからな。」 

 

 そう言うと、先生は黙ってしまった。しばらくして、そうかと言った。

 そして、今後は師匠の下で戦闘面を、先生の下で戦闘面以外を鍛えることにした。幸い、先輩が雄英に行けば、先輩も疲れてこちらにあまり関われなくなるだろう。そうすれば時間もできる。来年からは忙しくなる。

 

 

 

 これは俺がヒーローもヴィランも(みんな)を救う人間になる物語。そして、人々の優しさを取り戻す物語だ。




 一応、どんな個性でも無個性でも増強系並み~と言いましたが、基準は「ワールドトリガーのトリオン体の身体能力」と考えてください。才能があったり、効率的に鍛えたりするとサーナイトアイのハンコビームとかができる人もいます。
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