俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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 原作前として書いた物を修正・まとめたりしたものです。幾つかの話を統合したり、修正しただけですので最新話を読んでいる方は読まなくても問題ない様にします。

 過去の話の修正は最新話を書きながら少しずつ投稿します。

 今まで書いた話は全ての修正が終わり次第削除する予定です。


新話原作前
福佐 陽介


「ぐはぁっ!!!」

「テメェ、何すんだよ!」

 

 とある路地裏で争い、いや、蹂躙が起こっていた。

 そこには数人の男女、その内訳はボロボロの男達と自分の体を抱きしめる怯えた女性、そして無傷の学ランを来た少年。

 

「何するだァ?こんなとこで女を襲ってやがるバカを殴っただけだぞ?いや”個性”を使っている時点でヴィランか」

 

 そう、男たちは”個性”を使い女性に性的暴行を行おうとしていた。そんな中いきなり現れた学ランの少年が来たのだ。最初はすぐ倒せると思ったらいきなり姿を消し、気づいたらリーダー格以外の全員がやられていた。

 

(意味が分からねぇ!!!)

 

 そもそも、ここはリーダー格の個性『結界』で感知出来ないはずだ。この”個性”は事前に設定した領域を外部から認識出来なくするものだ。しかし設定するのに時間がかかり、有効範囲も10mが限界のため戦闘面で有効とは言えなかった。それでもその辺のヒーローでは認識できない領域を生成できる。にも関わらずただの少年が特定したのだ。その手の特殊な感知系”個性”だと思ったが成人男性数人を瞬殺する戦闘力も持つ存在。男は自分の不運を呪うしか出来ない。

 

「警察に通報しておいた。まぁ、ナイスタイミングって奴だな」

 

 そう、タイミングが良すぎた。自分たちが犯そうと手にかけた直後に現れた。まるで、分かっていたように・・・

 

 

 

 その後、到着した警察に男たちは引き渡された。それも少年が提出した犯罪の一部始終の動画と共に、だ。ここまでの証拠があれば実刑は免れないだろう。女性は何事もなくはないが、衣服の一部が破れただけなのでこの手の被害者としては軽い方だろう。そもそも助けを求めても認識されない”個性”を使われていたためヒーローの助けは来なかっただろう。

 

「にしてもまた君か。これで何度目だよ」

「あ~、5件か?」

「ここ数年で100件は超えてるよ。通報入れたらその数倍だよ。まぁ、そのおかげで助かっているのは事実だが…」

「気にするな、これも俺のクソ”個性”のせいだ」 

「早く君がヒーローになってくれると助かるよ」

 

 今は4月の上旬、何なら入学式の3日後だ。それでもう5件もの事件を解決し警察に犯人を引き渡していた。その中にはヒーローへの通報もあったのだが、この少年が1ヶ月前まで奨学生と聞いても信じないだろう。

 

「一応君も”個性”の無許可使用なのだけど、君の場合は常時発動だから仕方ない。でも出来るだけ通報で終わらせてね?何かあると私達も庇えないから」

「それじゃあ間に合わなかった。俺の”個性”がそう言っているよ。そもそも俺がお前らを庇ってるんだよ」

(本当にすごい”個性”だ。今回のヴィランはこちらでも捜索が難航していた相手。被害者数は50人を超える。それをこうも簡単に見つけるとは、ね)

 

 今回のヴィランはオールマイトの出現以降屈指の凶悪ヴィラン達でもあった。全員が何らかの認識阻害”個性”により探知・感知系統の”個性”でも発見が出来なかったのだ。この手の犯罪では被害者が事件を隠すこともあるので、実際にはそれ以上の被害者数がいると考えられる。そのため、ここで捕まえられたことは全国の女性や警察、ヒーローにとって嬉しい報告となる。

――――似たヴィランは他にもいるのだが。

 

「やはり君の”個性”はヒーロー向きの”個性”だな」

「そんなんじゃねぇ事はあんたも知ってんだろうがよ。俺は”クソ個性”ってだけだ」

 

 そう言って少年は帰って行く。白い短めの髪につり上がった鋭い目。眉間に刻まれたシワ。オールマイトの様に、しかし恐怖を感じる笑み。猫背だが、その歩き方は一流の武人のそれだ。

 その少年、福佐 陽介(ふくさ ようすけ)はこの辺りの警察やヒーローでは知らないものはいない。去年、この街の事件解決の実に60%は彼の功績だ。彼が解決したか、通報したか、あるいは助言したか。

 とにかく、先日中学生になった少年の経歴ではない。

 

 世界でも希少な”個性”を持つ少年はヴィランではなくヒーローへの道を進む。それは人々にとって、これ以上ない幸運だろう。

 

―――――――――――――――

 

(休めばよかった)

 

 そう思っても休まないのは母さんが心配しているからだ。普通の親なら息子が小学校の出席数が6年間で2桁なのは心配するだろうが、俺らは普通じゃない。

 そんなことを考えていたのは、授業が未だに簡単なものが多いからだ。入学して2週間なのに小学校の復習をしている。

 俺は既に渡された単語帳なら全て覚えている。社会や理科なんかの暗記は凡そ終わりが見えてきた。そもそも、お世話になっている先生から勉強も見てもらっているため中学レベルなら問題ない。小学生前から高校レベルの問題は解けるし。まぁ、勉強の穴が開いている部分もあるため勉強はしている。しかし、授業で聞くより自習している方がましに思える。それもこれも

 

 

「いや~、俺が学生の頃はこんなこと―――――」

 

 

 この過去話の長いバカのせいだ。この教師はどうやら授業の進みが異常に遅く、試験前になると1日で10ページ以上進むらしい。これまでの授業では5ページしか進んでいない。どういう思考回路していればこんなことが起きるんだ。

 ちなみにこの教師は地雷四天王と呼ばれ、その中でも最弱らしい。俺のクラスはその四天王全員が担当だ。科目は数学・英語・家庭科・音楽だ。受験で使う5教科の内2教科しかいないのが不幸中の幸いか。過去話の数学。高学歴自慢の英語。メシマズ家庭科。意識高い系音楽。こいつらは俺らが卒業する辺りで定年となる。だが夏休み前に全員消えると俺の”個性”が言っている。ちなみに赴任して2年目の4人だという無駄な奇跡が起きている。

 

―――――――――――――――

 

 午前の授業が終われば昼休みだ。近年、少子化対策の重婚や少年法の廃止、個性差別反対運動など様々な変革があり学校給食なんかも存在しない。それぞれが買ってきているか弁当を持参して皆で食べている。そのせいでボッチ飯とか昔より盛んだ。俺は完全栄養食のドリンクを1本飲んで終了だがな。金がないわけではない。これだって1本1000円はするものだし、栄養価も高く、直ぐに栄養が吸収される優れ物だ。というより、普通の飯では栄養が足りない。”個性”の影響で常人の数倍以上の食事が必要なのだ。そもそも昼は寝るから飯に興味はないんだが。

 そんなことしていたら友人なんて出来ない。だが俺の周りに居たのは家族や部下以外だとゴミかクズばかりだった。なら最初からそんなもの必要ない。俺に近寄る人間の殆どはゴミクズだけ、どんな笑顔で近づいても俺には分かるのだ。

 

 だからこそ、今目の前にいる女が分からない。珍しく()()()()どころかぽわぽわしている感じがする。いやこれは園児の「なんでなんで???」と同じやつだ。一番理解できないのがこの女と会うなんて想定していない事だ。俺の”個性”がこの女と会うなんて言っていなかった。読み違えたのか?この俺が!?ありえない。こんな面倒そうで病みそうな奴となんて会いたくない。

 

「ねえねえ、君だよね?福佐君って。1度話してみたかったんだ~。知ってる?皆君の事ばっかり噂してるんだよ??」

 

 俺の”個性”よ、仕事しろ!!!

 

 愚痴っていてもしょうがない。今はこの女についてだ。おそらくだが先輩だと思う。”個性”の影響でないのであればこの間まで小学生だった女の身長ではない。それに、こいつの反応は覚えがある。

―――()()だ。俺を観察する奴の感情だ。俺の”個性”でそれくらいは分かる。問題は観察する理由だ。正直、心当たりはある。

 ここで俺の”個性”を説明しよう。俺の個性は『超機能』。分かりやすく言えば「超ハイスペック」といったところだ。

 

 

個性『超機能』

 生物として持つあらゆる機能が強化される。

 

 

 相手が女子ならこの透視能力絡みが多い。自分の裸を見たとかうるさいがこっちだって見たいわけではない。()()()()()()のだ。

 俺は半径約2kmをレーダーのように常に認識している。千里眼と複眼と透視の合わせ技だ。2km圏内のあらゆる方向から見ている。これは視点もそうなのだが、今は関係ないだろう。他の五感も通常の何倍もの情報を俺に送ってくるので超強化された俺の処理能力でもキツイ。そのため興味のないことは無視をしている。そうすることで、必要な情報を問題なく扱えているわけだ。だから”個性”よりも”特異体質”に近い。

 話を戻すが、この透視関係で絡んでくる女は多い。これのせいで入学初日に教師に呼び出しを食らったほどだ。どうせ試験日と水泳の授業近くになったらまた呼び出される。カンニングやら女子更衣室の覗きがどうのと言うつもりだろう。

 あとは()()()()()あたりか。未来を見て宝くじの当選番号を教えろとか。あいつが何考えてるか教えろとか。そんなことで俺に近づく奴は多い。

 

「君ってさ、なんでそんなに怖い顔してるの?」

 

 なるほど、こいつは俺の読心の事で来たのか。俺の”個性”について教えてやってもいいが、わざわざ個人情報を他人に教えてやる必要はない。

 

「てめぇらが気持ち悪いからだ」

 

 これでいい、これで二度と関わらないだろう。

 

「なんで気持ち悪いの?どこが?どんなふうに?ねぇねぇ教えてよ??」

 

 えっ?何こいつどんなメンタルしてるんだ。初対面の人間に「気持ち悪い」と言われて不快や怒りなら分かるが、自分から具体的に聞く奴いる?

 

「そうやって、自分勝手なとこだ」

「それって、具体的には?」

(このまま歩いて撒こう)

「はっ!てめえみたいに自分勝手にそんなこと聞くからだろうが!」

「不思議。答えになってないよ??」

 

 そんなことを繰り返しているうちに屋上についた。俺は屋上の鍵をピッキング(開け)中に入る。後ろで喧しい女が騒いでいるが無視だ。

―――余談だが、数年前にここで女子生徒が飛び降り自殺をしたという。その後その女子生徒の幽霊が現れ、新たな仲間を作るために死亡事故やら自殺やらが起きているらしい。自殺未遂だけでも1ヶ月に10件以上も起きたため封鎖された場所だ。なお、俺が寝ていると悪夢を非常に高い確率(99%)で見ることとは関係ない。

 

「それでなんで着いてきてんだよ。ってか飯は食ったのか?食わねえと力出ないだろ」

「えっ?」

「っち、ならこれでも食ってろ、アホ女」

 

 そう言って、いざという時の非常食を女先輩に渡しておく。

 

(これ、エネルギー補給に最適って言われてるやつだ…)

「なんでくれたの?」

「あ?食ってないから勉強できなかったとかなったら馬鹿だろ?親の金と税金使わせてもらってんなら特にな!」

 

 この女は何をふざけてんのかと思ってたら、こいつからの感情がふわふわしてきた。違う、この感覚は…おばあちゃん?

 なぜこんなによくわからない感情を向けているんだ?

 

 まあ、この女がいつまでも俺に付きまとう未来が見える。1か月くらい付きまとわれる未来すら見える。これなら今話した方が精神衛生上良いいだろう。

 俺は「他の人に話さないこと」を条件に俺が常に怖い顔をしている理由、つまり俺の”個性”について説明した。

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