俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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原作前
その少年の名は


「ぐはぁっ!!!」

「テメェ、何すんだよ!」

 

とある路地裏で争い、いや、蹂躙が起こっていた。

そこには数人の男女、その内訳はボロボロの男達と自分の体を抱きしめる怯えた女性、そして無傷の学ランを来た少年。

 

「何するだァ?こんなとこで女を襲ってやがるバカを殴っただけだぞ?

いや、個性を使っている時点でヴィランか。」

 

そう、男たちは個性を使い路地裏に連れ込んだ女を押さえつけ、いよいよお楽しみっと言ったところで、いきなり現れた学ランの少年が来た。最初はすぐに殴り倒せると思ったら、いきなり姿を消して、気づいたら自分以外の仲間がやられていた。

 

「(意味が分からない!)」

 

そもそも、ここは自分の個性”結界”で感知出来ないはずだ。この個性は事前に設定した範囲を外から認識出来なくするものだ。しかし、設定するのに時間がかかり、精々10mが限界だ。

それでも、その辺のトップヒーローでは認識できない。にも関わらず、ここを特定したのだ。そのため、その手の特殊な感知系個性だと思ったのだ。それなのにこの戦闘力。

男は自分の不運を呪った。

 

「一応、ここの事は警察に通報しておいた。にしても良かった。この女に何も無くてな。」

 

こいつは自分たちが犯ろうとしたタイミングで何故か現れた。まるで、分かっていたように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、到着した警察に男たちは引き渡された。それも少年が提出した一部始終の動画と共にだ。実刑は免れないだろう。女性は何事もなくはないが、この手の事件の被害者としては軽い方だろう。そもそも、助けを求めても認識されない個性で詰みだったのだ。それが未遂なのだから、運が良かった。

 

「にしても、また君かね。これで何度目だよ。」

「あ〜、5件か?」

「ここ数年で100件は超えてるよ。通報入れたら、その数倍だよ。まぁ、そのおかげで助かっているのは事実だが。」

「気にするな、これも俺のクソ”個性”のせいだ。」 

「早く君がヒーローになってくれると助かるよ。」

 

そう、この少年は今年度が始まった4月の上旬、何なら入学式の3日後だ。それでもう5件も事件を解決し、警察に犯人を引き渡していた。その中にはヒーローへの通報もあったが。

 

「一応、君も個性の無許可使用なのだけど、君の場合は常時発動だから、仕方ない。でも、出来るだけ通報で終わらせてね?こっちも何かあると問題だから。」

「それじゃあ、間に合わなかった。俺の”個性”がそう言っているよ。」

「(本当にすごい個性だ。今回のヴィランはこちらでも捜索が難航していた相手。被害者数は50人を超える。それをこうも簡単に見つけるとは。)」

 

今回のヴィランはオールマイトの出現以降屈指の凶悪ヴィラン達でもあった。全員が何らかの認識阻害個性により、探知・感知系統の個性でも発見が出来なかった。

この手の犯罪では被害者が事件を隠すこともあるので、実際にはそれ以上の被害者数だろう。

 

「(やはり、凄まじい。)やはり、君の”助けを求める声を感知できる個性”はヒーロー向きの個性だな。」

「そんなんじゃねぇ事はあんたも知ってんだろうがよ。俺は”クソ個性”ってだけだ。」

 

そう言って、少年は帰って行く。

白い短めの髪に、つり上がった鋭い目。眉間に刻まれたシワ。オールマイトの様に、しかし恐怖を感じる笑み。猫背だが、その歩き方は一流の武人のそれだ。

 

その少年、福佐 陽介(ふくさ ようすけ)はこの辺りの警察やヒーローでは知らないものはいない。去年、この街の事件解決の実に60%は彼の功績だ。彼が解決したか、通報したか、あるいは助言したか。

とにかく、先日中学生になった少年の経歴ではない。

 

世界でも希少な個性を持つ少年はヴィランではなく、ヒーローへの道を進む。それは人々にとって、これ以上ない幸運だろう。

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