俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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 前話が投稿してから24時間後に総合日刊ランキング17位、二次日刊ランキング12位になりました。投稿後1~3時間くらいがPVが多いのですが、翌日の方が良く見られていて驚きました。
 これからも応援よろしくお願いします。


USJ襲撃事件2

side:死柄木

 

「なるほどな。オールマイトの担当するのは1年A組。なら、最初から担当予定の13号・オールマイト以外に担任のイレイザーヘッドが来ると考えた方がよさそうだな。」

 

 俺は先生のアドバイスを聞きながら襲撃の作戦を立てていた。流石にチート×チートを相手に無策で飛び込む度胸はない。しかし、相手の情報が分かれば問題はない。ヒーローの情報は、一般には出回らないがヒーローネットワークで検索すれば詳細が見れる。意外と小遣い稼ぎで「1時間20万でアカウント貸します」とかがあった。俺はとりあえず3人のヒーローの情報を手に入れた。そこである作戦を思いついたのだ。

 

「良い作戦だね、弔。イレイザーヘッドに対して”重火器による戦闘”を選択するとは。それなら問題なく戦えるだろう。」

「だろ?相手が”個性”を消すなら”個性”以外で戦えばいいだけだ。重火器を持たせて一斉射撃すれば効果はある。何より近接戦闘が得意な相手には遠距離で攻めるのが定石。ゲームと一緒だ。」

「ですが、スモークグレネードを使う案には驚きましたよ。イレイザーヘッド以外に生徒への攻撃にも使うとは。確かに固まっている集団に銃を使うのは有効ですね。」

「昔から集団を効率的に虐殺する手段に銃は必須だからな。」

 

 そう、俺が考えた作戦はシンプル。イレイザーヘッドには重火器で囲んで殺す。そして、生徒に流れ弾が当たるようにすれば教師としても殺せる。生徒が苦痛の声を上げてイレイザーヘッドの注意を逸らせば、倒すのも難しくないだろう。後はイレイザーヘッドとの戦闘になるであろう広場に異形系の”個性”を集めておく。結局、”個性”を無効化できるのは発動系・変形系に限られるならそれ以外で攻めればいい。

 そして、異形系の身体能力でスモークグレネードを生徒と俺たちの間に投げる。疑似的な壁を作ることで生徒を一方的に銃撃で仕留める。混乱に乗じて生徒はそれぞれのフィールドに送り、冷静さを欠いた状態でチンピラと戦わせる。

 

「そして、オールマイトには()()()()()を、迅悠一には()()()()()()()と中位5体を当てる。残りの中位5体は予備で3体、俺達のフォローに2体連れていく。脳筋戦法だが、これで多分勝てる。何より、勝てなくても逃げることはできるはずだ。」

「そうだね。リスク管理もできているし問題はなさそうだ。それで、勝算はあるのかい?」

「チート2人にはないな。でも、ヒーローに対しては勝てると思うぜ。最悪生徒の1人でも殺すなり犯せばそれだけで襲撃成功だ。オールマイト有するヒーロー科トップ校が生徒を守れなかったんだ。それだけでいい。生徒を攫って売れば金になるし、女なら脳無の材料を作らせることもできるだろ。」

「まーのー。ヒーロー科にいる生徒なら”強個性”の母体じゃしな。」

「それに、そもそも雄英が襲撃されて犯人を取り逃がしただけでも大問題だ。勝つのは追々でもいいね。」

「あぁ。寧ろ、後々の楽しみが増えると考えるさ。今回は”あいさつ”しに行ってくるよ。」

 

 そう、オールマイトを殺せなくてもいい。ヒーローの信頼を壊せれば良いなら手段は幾らでもあるんだ。俺の勝利条件は”メインクエストのクリア”か”大量のサブクエストの内1つのクリア”なんだから。リラックスすればいい。チンピラにも指示を出してあるし、あいつらの誰かが目的達成できればいいな。

 

―――――――――――――――

 

side:福佐

「(ちっ!面倒な編隊だな!)」

 

 相手の編成を見た瞬間に分かった。分かりやすい異形系と重火器を持ったヴィラン。こんなのイレイザーヘッドへのメタだ。それに未来視でヤバすぎる未来が見えた。煙による視界不良と一斉射撃で攻撃、その後訳も分からず飛ばされる。冷静さを失った状態でヴィランと会敵なんて生徒には不可能だ。負傷して状態で戦える奴はわずかだろうし、そうじゃなくても動揺するだけでヴィランに嬲り殺されるな。

 何より、ただの銃撃や煙幕なら13号が吸い込んで対処できるが、この2つが合わさると生徒を巻き込む可能性から”個性”が使えない。しかも、態々届かないように投げるなら”ブラックホール”を使っても意味がない。いつどこから来るか分からない不可視の攻撃なんて防ぐことは不可能に近い。疑似的にそれを作るとは・・・単純ながら効果的な策だな。

 

「(だが、)”旋空弧月”!」

「なんだ!!?」「うわっ!」「何された!?」

 

 ”旋空弧月”は弧月を振るう瞬間にスコーピオンで長さを延長させる剣技だ。元々薄く纏わせている気、それを約15mまで拡張するシンプルな技だ。それゆえに防ぐことが難しく使い勝手が良い。受けた太刀は無理でも師匠の円刃(オルガノン)を弾く位はできる。

 その”旋空弧月”で攻撃して数人は無力化したが・・・ヤバいな。1割しか削れていない。

 

「福佐、そこまでだ。他の生徒と共に避難しろ。」

「いやいや、俺は仮免あるんで大丈夫ですよ。何せ実力派エリートですから。」

「(こいつ、どうやって仮免を取ったんだ・・・)それでもだ。」

「先生はあのモヤヴィランの”個性”を封じてください。あいつが例の”ワープ”ですから!

「お前ら、さっさと撃て!」

「へっへっへ。お前だろ”個性を消す個性”持ちって。でもな、俺らは対イレイザーヘッド用の部隊だ。勝てると思うなよ?」

「(異形系と重火器による部隊。分かりやすいな。)だがな、その辺の対策はしている。」ドガァ

 

「肉弾戦も強く、ゴーグルで誰の”個性”を消しているのか分からない。集団戦においては連携を取れなくなる戦術か。対策してなかったらきつかったかもな。(シンプルな作戦にしておいてよかった。チンピラたちが混乱しても影響は少ない。)」

「やはり有象無象では歯が立ちませんね。当初の銃撃作戦も防がれましたし。」

「それはいいさ。上手くいったら儲けものくらいの策だし。それより、黒霧!離れたぞ!!」

 

 相手のヴィランの言う通りだ。俺がいなければイレイザーヘッドに対する最悪の作戦だった。イレイザーヘッドは防御より回避を主とするので銃撃を防ぐ手段がない。そのため生徒への流れ弾は防げなかっただろう。下手な鉄砲も教師陣に対してはともかく、固まっている生徒には当たるだろう。切島なら防げるだろうが他の生徒に被弾する。轟の氷も動きを妨げるだけだし、連続で攻撃されればいつかは壊れる。他は時間・技術的に防ぐことは難しい。

 だからこそ、それを防ぐために動いたのだが・・・俺達は一番ヤバい奴を逃した!!

 

「クソッ!」

「させませんよ。」

「(っ、浮遊感!!)」

 

 この時、俺は想定外の連続で完全に視野狭窄に陥っていた。俺があの”ワープ”や脳無というヴィランを警戒しているように、相手もまた”未来視”を警戒していることに気づかなかったのだ。クラスの連中を助けようと向かうが、俺はモヤヴィランの中に飛び込んでしまう。

 次の瞬間、俺の視界は炎と大量の脳無に埋め尽くされた。

 

 

―――――――――――――――

side:緑谷

 

 僕たちが13号先生たちの話を聞き終えた直後、福佐君はいきなり大声を上げた。ヴィランが来たと言っているけど、そんな影は1つも見えない。索敵系の”個性”を持つ人が探ろうとする中、それは中央広場から現れた。

 

「何だアリャ?」

「また入試ん時みたいなもう始まってんぞパターン?」

「動くな。あれはヴィランだ!!!!

 

―――――奇しくも、命を救える訓練時間に僕らの前に現れた大量のヴィラン。プロが何と戦っているのか、何と向き合っているのか・・・それは途方もない悪意。僕らはそれを知ることになる。

 

「って、福佐!!?」

 

 僕たちがヴィランの出現に驚いていると福佐君がヴィランの集団に飛び込んでいった。

 

「ヴィラン!?バカだろ!?」

「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホ過ぎるぞ!」

「先生、侵入者用センサーは!」

「勿論ありますが・・・!(分かっていたが、この数は計算外だ!)」

「現れたのはここだけか学校全体か・・・何にせよセンサーが反応しねえぇなら、向こうにそういうこと出来る”個性”がいるってことだな。校舎と離れた隔離空間。そこに少人数が入る時間割・・・バカだがアホじゃねぇ。これは用意周到に画策された奇襲だ。」

「ってか、何で福佐は飛び込んでいったんだよ!!?」

「あいつの方がバカだろ!」

「13号避難開始!学校への連絡を試せ!電波系の”個性”が妨害している可能性が有る!上鳴も”個性”で連絡試せ。」

「っス!」

「先生は!?1人で戦うんですか!・・・それに福佐君は!!?」

 

 僕たちが話している中、福佐君は1人でヴィランと戦闘をしていた。すでに何人か倒しているようだけど、数が多すぎる。それに・・・

 

「イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の”個性”を消してからの捕縛だ。正面戦闘は・・・」

「緑谷覚えておけ、一芸だけじゃヒーローは務まらん。福佐はすぐに回収する。13号!任せたぞ。」

 

 相澤先生はヴィランを次々に倒していく。異形型のヴィランを素手で倒し、複数のヴィランを相手取る姿は僕の分析が間違っていることを意味していた。

 

「すごい!多対一こそ先生の得意分野だったんだ。」

「分析している場合じゃない!早く避難を「させませんよ。」

「「「!!」」」

 

 なんだ、このヴィラン!去年のヘドロとも先生たちが相手しているヴィランとも違う!その証拠にこっちに()()()()()福佐君を一瞬で消した!?

 

「初めまして我々はヴィラン連合。僭越ながら・・・この度”ヒーローの巣窟”雄英高校に入らせて頂いたのは”平和の象徴”オールマイトに息絶えて頂きたいを思ってのことでして。」

「(は!?)」

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ・・・ですが、何か変更があったのでしょうか?まぁ、それとは関係なく・・・私の役目はこれ。」

「その前に俺達にやられることを「考えていますよ」

 

 ヴィランに立ち向かったかっちゃんと切島君。でも、その2人が攻撃を当てようとした瞬間、福佐君と同じように消えた。一体、何が起きているんだ!?

 

()()()()()()()()()()はいますからね。ですから、散らして嬲り殺す。」

「皆!!」

 

 13号先生の声が聞こえる中、僕たちはヴィランに飲み込まれた。これが僕たちの戦いの合図となる。

 

―――――――――――――――

side:福佐

 

 ここは火災ゾーンか。それと

 

「いきなり脳無かよ!!」

 

 俺はワープヴィランに火災ゾーンに放り込まれ脳無15体と対峙した。それにしても15体も出てくるとは・・・千里眼でUSJ内を見渡したが特に問題になりそうなヴィランは相澤先生がいる広場くらい。他は油断しなければ大丈夫だろ。寧ろ、こいつらをどうするか考えるべきだ。

 

「(こいつら含めて未来視が発動しないヴィランが18人。これじゃあ未来の確定ができない。せめてこの15体を倒せれば!)」

 

 俺は脳無15体に戦いを挑むが正直厳しい。こいつらの持つ複数の”個性”や実力は問題ないのだが数が多い。俺の戦闘スタイルは基本的に防御寄りの持久戦。相手を疲れさせることや壊刃による体力消費で動きを封じることをメインにするため蹂躙は得意じゃない。タイマンなら”剛”の力押しで倒せるが、この数はキツイな。()()()()()()()()()()では勝つのは難しい。

 しかし、多少無茶すれば突破できる。斬撃による死の領域”明鏡止水”を使えば行けると思うが・・・こうも囲まれた状態で使える技じゃないしな。

 

 本来の作戦が使えない状況で俺は未来視による体制の立て直しを図る。大量の脳無と呼ばれるヴィランの出現、援軍の不在、何より()()()()()()()()()()()()()()()()という状況。

 想定外の事態に誰もが混乱する中、俺と脳無たちの戦いが始まった。




 ようやくUSJ片が本格的に始まりました。
 死柄木は「エリートを殺し放題・JK犯し放題」などと言って原作以上のヴィランをかき集めました。人は欲望を前にすると力発揮しますからね。
 戦力差は以下の通りです。
・ヒーロー側:生徒21名。プロ2名。
・ヴィラン側:チンピラ約100人。脳無20体(上位10体中位10体)。主犯2名。
 
 多分、今回か次回くらいでオールフォーワンの目的の1つが分かると思います。

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