俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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 いつも誤字脱字の報告ありがとうございます。
 また、皆様のお陰で日間ランキング総合30位、二次22位になりました。

 原作本誌が遂に決戦に突入した記念で早めに投稿してみました。


USJ襲撃事件6

side:福佐

 

 気が付いたら、一塊になっていたヴィランを切り刻んでいた。

 

「(何故だろう、悲鳴が心地よい。)」

 

 ヴィランの慟哭が一流のオーケストラ以上の音色に感じる。俺の心が満たされる。こんな気持ちはいつ以来だろう。

 

「(力が溢れてくる。全身の痛みも消えてる。新たな能力にでも目覚めたか?)」

 

 ピンチの時に覚醒とか・・・正直好きじゃないけど有難いな。今なら戦える。せめて皆が本校舎まで逃げる時間を稼いでみせる。

―――本来の姿を見せながら、彼は独り歩き出す。その先の未来を知らずに。

 

 

―――――――――――――――

side:緑谷

 

「みんな!話した通りによろしく・・・どうしたの?」

「あ、あれ・・・デク君、あれ。」

「え?」

 

 それを僕らは認識できなかった。いや、本能が知ることを拒否した。

 白い髪と紅い眼、整った顔立ちは一流のモデルでも通用する。しかし、その全てを塗りつぶすような()()()。全身が恐怖で動かない!!その気迫はこちらに向けていないのに、自分たちが死ぬ未来が視える。見えるどころか”死”というものを本能が理解した。

 

「な、なんだよ。」

「なに、あれ・・・」

「う、あ・・・」

 

 誰もが恐怖で動けなくなる。オールマイトと同じようで真逆の存在。さっきまでのヴィランとは根本的に違う存在。

 

「まさか、福佐か?」

「「「え?」」」 

 

 相澤先生の言葉に耳を疑った。だって、あれは人間とかじゃない。ヴィランとも言えない存在だ。まるで悪の擬人化

 

『『『オールフォーワン』』』

 

 

―――――――――――――――

side:死柄木

 

 その姿を見た感情は”安心”だった。まるで親を見つけた子供のような、先生を見つけた生徒のような感情。

 

「先生?」

 

 しかし、その言葉を言って後悔した。それが目を向けた瞬間、恐怖から動けなくなった。

 

「あぁ、そうだ。君は殺さないといけない。これから先、”僕”の邪魔になるだろうからね。」

「(何だ、こいつ!先生と同じ声で同じ喋り方、それでヒーローだと?違う!!こいつはヒーローじゃない!!!)脳無ッ!!!!!」

 

 こちらの最高戦力、全盛期オールマイトと戦えるこいつなら!あれを倒したこいつなら!!

 

「邪魔だな、”復讐剣”」

 

 希望は消えた。あれが刀で脳無を切り裂いた瞬間、脳無が縦に裂けた。そして再生すらせずに骸と化した。

 

「は?え、何?」

「どうしたんだい?僕を前に呆けるとはね、観戦するだけなら消えてくれ。」

「死柄木弔!!!」

 

 

 周りのチンピラも同じように骸にしながらこちらへ向かってくる。

 自分に凶刃が迫る。頭によぎった”ゲームオーバー”の文字、でもそれが俺に人生に対して使われるとは思わなかった。

―――しかし、それ以上の衝撃が俺に起きる。

 

バアン!!!

 

「もう大丈夫、私が来た!!!」

 

 

―――――――――――――――

side:オールマイト

「嫌な予感がしてね・・・色々省略してやってきたよ。(まったく、己に腹が立つ。陽動に引っ掛かりこちらへの救援を忘れるなど・・・)」

「「「オールマイト!!!」」」

「状況は!!?」

 

 入り口に集まっていた相澤君から簡単に状況を聞き、広場に向かう。そこに居るのは倒れているヴィランと首謀者と思われるヴィラン。

 しかし、一瞬生徒の安否すら忘れる。そこに居た人物に、6年前に倒したはずの人物に、師匠を殺した人物に!!!

 

「何故貴様がここに居る、オールフォーワン!!」

「何のことかな?オールマイト、君は自分のすべきことを「DETROIT SMASH!」

「やめてくれよ。」

 

 何が起きた。今、私はオールフォーワンに向かって渾身の一撃を与えたはずだ。それをこいつは片手で受け止めた。いくら全盛期ほどの力がなかったとしても、活動限界まで時間は十分にある。その一撃を受けても倒れない。

 

「(いや、よく考えればそれだけじゃない。たしかに致命傷を与えたはずが一切の衰えを感じさせない。こいつは)貴様は誰だ。」

「やだな、僕を忘れてしまうとは・・・流石にボケが始まるのは早いんじゃないかな?」

 

 ここで衝突すれば生徒への被害は免れない。それに奴が負傷していないのなら、今の私では奴を倒せるかどうか・・・

 ヒーローや警察が来るまで、我々の緊張は途切れることが無かった。

―――後に、あの時のオールフォーワンが迅悠一と知った。そして、オールフォーワンが自身の後継を育てていたことを知り、私は緑谷少年に”OFA”の全てを明かすことを決意した。

 

―――――――――――――――

 

side:A組

 

 あれからUSJには警察などが到着して、A組の生徒は事情徴収を受けることになった。

 

「あの、13号先生と飯田君は?」

「あぁ、飯田君は不幸中の幸いと言うべきか、意識を失っただけでそれほど酷くない。リカバリーガールから明日にでも復帰できると聞いているよ。13号も2日もあれば復帰できるとのことだ。」

「よかった~」

「それなら安心だぜ。」

「あの、福佐君は?」

「「「っ!」」」

 

 A組全員、いやその場に居た全員に緊張が走る。およそ人間とは思えず、向かってきたヴィランとも一線を隔す存在。

 

「お前らが気になるのも無理はない。だが、それは後だ。」

「「「先生!」」」

「彼についてはこちらも把握しきれない。少し時間をくれ。」

「先生、僕らに隠してることが無いですか?」

「・・・何のことだ。」

「オールマイトが『オールフォーワン』と言っていました。それって何か知っているから口にした言葉ですよね?」

「・・・分かった。後日、こちらの持っている情報を開示する。今は全員の手当てが先だ。」

 

 納得はしないまま、A組生徒は本校舎へと戻っていく。

―――警察に逮捕された福佐を除いて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休校が明けてA組生徒は会議室に呼び出された。そこで福佐陽介の情報について説明される。

 

「え~、私はヒーロー公安委員会の目良 善見(めら よくみる)です。本日は皆さんに情報を開示するために来ました。」

「あの、何で公安が来るんですか?」

「まぁ、その前に伝えることがあります。今回開示する情報は()()()()と思っていただいて構いません。それほどの情報故に制約があります。」

 

 クラスメイトについての情報開示、それに対しての制約とはどういうことか。

 

「1つ、開示された情報を他の者に伝えることは禁忌とします。その場合、君たちだけでなく、家族や友人の安全も保障されません。これを守れないならB組や他のクラス、他校のヒーロー科への編入をしてもらいます。」

「「「はあ!!??」」」

「2つ、情報を聞いた後は我々に協力してもらいます。これができない場合は・・・まぁ言わずもがな。」

 

 唖然、それしか言えない。クラスメイトの情報1つでここまでの警告。しかも”禁忌”と言ったのだ。禁止や厳禁とはレベルが違う。

 それでも辞退する者は1人もおらず、福佐陽介の情報開示条件に同意した。

 

「それでは・・・皆さんはボーダーという組織を知っていますか?」

「ボーダー・・・たしか元暴力団で構成されている組織ですよね?」

「ええ、正確にはそこに元ヴィランなどもいますが、要は日本の裏社会の事実上トップの様な物です。しかし、重要なのはそれを作った人物。それが迅悠一、福佐陽介のビジネスネームです。」

「でも、暴力団って壊滅したんですよね?この前ヒーローや警察の働きで壊滅したって「してません」え?」

「所謂暴力団は壊滅などしてません。むしろ、悪化しています。何故なら、膿を切り捨て日本中の暴力団は”ボーダー”として集結したからです。」

 

 そこから伝えられた情報は想像を絶するものばかりだった。

・元暴力団は”ボーダー”という名前で活動をしていること。

・ボーダーが世界的に軍拡を行っていること。

・彼らが世界大戦を起こそうとしていること。

・迅悠一が行ったとされる事件は複数あり、世界各地で起きているカジノの閉鎖、武闘派マフィアの消滅、ヴィラン組織の壊滅、権力者の殺害など数えきれないこと。

・当時の議員37名、ヒーロー、警察関係者、裁判員などとその家族の合計300人以上の虐殺事件。被害者は十字架に張り付けされた状態で全身を大量の木の槍で貫通されていた事件の首謀者であること。

・公安の実働部隊の半数を殺害、その家族も凄惨な方法で殺していること。

・多くの企業を傘下に従えていること。

・危険な”個性”持ちを集めていること。

・各国の裏社会に絶対的な影響力を持つこと。

 

 その他驚愕すべき情報は多くあったが、その中でも特筆すべき点は3つ。

1.複数の国家を滅ぼしたこと。

2.テクシア・メソン・アリステラという3つの国を建国したこと。

3.『トリオン』という新たなエネルギーを独占している。また、その燃料は生きた人間であること。

 

 反応すらできない。それほど、次元が違う存在。少なくともヒーローの卵として雄英高校に居て良い存在ではない。彼がタルタロスに収監されていないのは証拠不十分であり、司法にすら影響力を有しているため。

 世界中の各国が”ボーダー”を敵視しているが手を出せないと言う状況に学生である彼らは何も言えない。

 

「君たちへの協力というのは”迅悠一”の情報を引き出してほしいのです。」

「情報?しかし我々では・・・」

「分かっています。何も潜入調査や色仕掛けとは言いません。彼の弱点や能力、証拠、行動パターン・・・何でも良いのです。世界(我々)がボーダーに打ち勝つための()()()を頂きたいのです。」

 

 生徒は茫然としながら、これを拒否できないことを知る。その証拠に誓約書を書かされ、数千万の活動資金を各個人に渡される。

 これが雄英高校ヒーロー科1年A組が受けた情報開示及びヒーロー公安委員会からの依頼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――20日後

 

「という訳で雄英体育祭まであと1週間、各々気合い入れていけよ。」

「あの先生、福佐は?」

「あぁ、あいつなら「どーも」

「「「っ!!!!」」」

「やぁ、みんな久しぶり。実力派エリートが帰って来たぞ。いや~ちょっと警察とかからUSJの件で説教受けててね。やっぱりやりすぎはいけないね~。」

 

 突然入ってきた福佐にクラス中が驚く。無理もない。彼が登校するのはUSJ襲撃以降約1ヶ月ぶりだ。彼が世界的ヴィラン組織のトップであり、文字通り国を滅ぼした存在であり、人間を燃料に使って新たなエネルギーを生み出していると知っているのだ。

全員がヒーローの卵として気を引き締める。ここから先、1つでも間違えれば世界が滅ぶかもしれないのだから。

 

 

 これは正義の味方(ヒーロー)迅悠一(ヴィラン)を倒すまでの物語。

 もしくは福佐陽介がヒーロー社会(世界)を滅ぼすまでの物語。

 

 

 しかし、A組は知らない。彼らに与えられた情報が偏った情報だと。彼らを洗脳するための情報だと。

 ボーダーが”各国の核兵器を強奪している”という情報すら知らずに。

 

 

 

「ぼんち揚げ食う?」

 

 彼は笑顔で好物の菓子を差し出す。

 

 

 

―――――――――――――――

side:死柄木

 

 雄英に襲撃した時、俺は死ぬはずだった。しかし、オールマイトと殺り合っている間に逃げ帰ったのだ。つまり、それは、それは、お、れは、オール、まいとに助け・・・!!!!!

 

「クソが!!!!」

『何があった、黒霧。』

「それが―――という訳です。」

『なるほど。(何故そんなバカなことを、こちらは死柄木が逮捕された後に助け出す準備をしていたのに・・・)」

『それで脳無は回収したのかね?』

「すみません。緊急だったため1体も・・・」

『なんだと!!?』

『いや、問題ないよ。それより弔、君はまだまだ強くなれる。そのために僕がいる。』

 

 その後、俺はオールマイトから受けた屈辱が悪夢として残り続けた。

 そして、調べていくうちに迅悠一への評価が変わっていった。




 正直、保須市編からがやりたいので少し駆け足になると思います。
 今回、福佐は誰1人として殺していません。脳無は最初から死体を利用しているため、死体損壊が妥当です。また、原作と違い『イレイザーヘッドの弱体化』『緑谷の負傷』はありまあせん。そして、生徒たちは「巨悪と戦う俺/僕/私」状態です。
 次回で福佐視点の話を書いてようやくUSJ襲撃が終わります。



[福佐:フェンリルモードでの技・能力]
・復讐剣:自身の悪意を対象に叩き付けることで精神破壊を行う技。対象の心を破壊することで生きる意味を失わせ自殺に追い込む。強い精神力の持ち主でも廃人にさせる。
・身体強化:敵を苦しませることで自身の能力を強化できる。そのため殺すより苦しませることを重要視する。
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