俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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 今回でUSJ編は最後です。次回から体育祭編です。保須編をやりたいので、体育祭編は駆け足になるかと思います。


USJ襲撃事件7

side:福佐

 

 目の前に映る自宅、そこは俺が最も安らげる場所の1つだ。しかし・・・

 

『死ね』『人殺し』『死んで詫びろ!』『自首しろ!』『人殺し一家』『出ていけ』『生んだ責任』『存在が罪』『クズ』etc.

 

 一面に書かれた罵倒は何なのだろうか。いや、それよりも

 

「母さん!!!大丈夫か!!?」

「あ、陽介。大丈夫よ。ごめんね、迎えに行けなくて。」

 

 飄々としている母さん。しかし、俺の”個性”は誤魔化せない。その心に深い闇があることを。

 昔からそうだ。俺に気づかれないように自分を殺している。どんなに言っても「大丈夫」の一言で無理をする。確かに母さんの”個性”ならその無理は通る。

 

「母さん、何があった。一体何が・・・」

 

 それ以上、何も言えなかった。母さんの心が暗くなっていくのを見て察した。これほどの闇は政府や公安(ゴミクズ)から

 

『我々の”道具”として生きるか、死ぬかだ。』

父親の遺骨(これ)は君たちにとって重要な物だろ?』

 

 そんな地獄の日々を受けていた頃の以来だ。当時の公安の委員長はレディ・ナガンというヒーローが殺したらしい。彼女には礼を言わなければならないのでいつか出所させる予定だ。

 それ以来、先生達に守られていたので忘れていた。力を持っていたため忘れていた。奴らは人ではないことを。そして、正義に酔ったゴミはヒーローや警察、政府だけではない。

 

 

 

 

 

―――遡ることUSJ襲撃事件

 

 あの時の俺は必死だった。少しでもミスれば未来は変えられないがクラスメイトに心配をかけないように、安心できるようにオールフォーワン(世界一安心できる人)の真似をして、周囲のヴィランを牽制し続けていた。ぐちゃぐちゃの思考で動いていたら、未来が変わってオールマイトが来てくれた。まぁ、ほとんど変わりないが楽ができる。

 

『|クラスメイトの安全を確保してほしい《オールマイト、君は自分のすべきことをしてくれ》』

 

とオールマイトに頼んだ。しかし、彼は俺に攻撃をしており、「誰だ」とまで言ったのだ。流石にボケは早いと言っても聞いてくれず、他のヒーロー達の応援を待った。実際、俺はいつ倒れてもおかしくない状態だったので少しだけ休めていたが。

 

 重要なのはそこからだ。事情聴取のため雄英の一角に連れてこられた俺は拘束された。ただの拘束ではない。ベストジーニスト・セメントスを筆頭にパワーローダーの作った拘束装置を付けられ、ミッドナイトは”個性”でいつでも眠らせる体制を取った。他のヒーローも中遠距離から攻撃が出来るようにしており、エンデヴァーとオールマイトは必殺の一撃を俺に叩き込む直前で待機している。

 理解が追い付かず考えていると根津からの詰問を受けた。しかし、意味が分からず喋れない状態でいると頬をスナイプの銃撃が掠めた。これが”気付け”になった。そして周りを見て思い出した。こいつらの思考とよく似た奴らのことを。

 

 俺の実家を放火し、父親の遺骨を目の前で粉々に破壊した人間(ゴミ)の事を。俺と母さんから人権を奪い”道具”にしようとした公安(クズ)の事を。母さんに下卑た視線を向け欲望のままに暴力を振るってきたヒーロー(ゲス)の事を。俺の研究を当然のように奪った司法や八百万財閥の事を。

 

 そうだ、これはあの時の連中と同じだ。こいつらは自分の利益のために動く人間だ。

 俺は知っている。オールマイトの臓器は八百万財閥が俺から奪った技術であることを。

 俺は知っている。エンデヴァーの放熱サポートアイテムが俺から奪った技術で作られていることを。

 俺は知っている。警察やヒーローが使っている装備は俺の研究成果で作られていることを。

 

 俺から奪ったもので利益を得ている人間が目の前に居る。それは良いんだ。奪われるような対策も何もしなかったマヌケな俺が悪いんだ。でも、それでも思ってしまう。

 

お前らはそれでいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その後、俺は刑務所に勾留され良く分からない話を受けた。

 

 だって分からないんだ。

 世界大戦?そんなもの今すぐ起きても仕方ないくらい世界は荒れている。それに対抗するためには軍事力を上げるしかない。そのために動いているが、それの何がいけないんだ?”自衛”では意味がない。これからは”国防”ができる組織でないと意味がない。戦争を仕掛けられると威圧できる組織でないと人々を守れない。

 権力者の殺害?確かに殺ったさ。ボーダーで保護している人間を狙い、彼らで欲望を満たそうとしたゴミを掃除しただけだ。奴らは法を捻じ曲げて利益を貪る奴らであり、その家族も同じだった。こちらが把握しているだけでも被害者は数千人以上。冤罪で投獄された人間や冷水 暖(しみず だん)のように見捨てられた人間もいる。それを見逃して利益を得ている奴らを殺して何が悪いんだ?

 公安の実働部隊の殺害?俺を殺すか誘拐しようとして返り討ちに遭っただけだろうが。

 危険な”個性”を集めている?”個性”関係で見捨てられる様な奴は”無個性”か”突然変異”か危険な”個性”持ちだよ。それを保護しているだけだ。

 

 

 

 

 勾留を解かれた俺が自宅で見たのが冒頭の光景がこれだ。自宅に書かれた罵倒の数々。そして自宅周辺で俺を待ち構えているマスゴミ共。奴らのせいでどれだけの人間が悲しむことになったか。

 

「(ちょうどよかった・・・)赤血、処理要員連れて来い。それと他の連中に伝えろ。」

 

 赤血に連絡を入れて、とりあえず掃除をすることにした。立つ鳥跡を濁さずと言うしな。

―――その後、福佐家周辺で張り込んでいたマスコミ関係者の行方を知る者はいなかった。

 

 

 

―――――――――――――――

side:公安

 

「それで何か証拠は出なかったの?」

「はい。ボーダー本部や支部への立ち入りは難しく、自宅を捜査しましたが特には。」

「いや、当然だろう。こんなことで証拠が出る訳がない。」

「しかし、早くしなければ!」

 

 彼らがボーダーを恐れている理由。それは「ボーダーが持っている証拠」だ。正確には、彼らが権力者などからの”依頼”の証拠品を消したいのだ。

 例えば有名な総合司会者が殺人の隠蔽を依頼した証拠。例えば警察が検挙率を上げるために自演した犯罪の証拠。例えば製薬会社が麻薬をバラまいて利益を上げている証拠。例えばヒーローがヴィランとつながっている証拠。その他、物的証拠はないもののボーダーは裏の真実を知っている。ボーダー加入前に関わっていた者達からだったり、自然と入ってきた情報だ。

 それ以外にも証拠の数は多い。仮にボーダーがマスコミの様に報道をすれば、毎日特ダネを報道できるだろう。故に潰さなければならない。この社会を維持するために。

 

「しかし、奴らをどうにかするのは至難の業だ。迅悠一の未来視もそうだが、ウィザやバングなどの戦力がいる。」

 

 そう、政府がボーダーを潰せない理由の1つが”未来視”と元トップ3ヒーロー達だ。どんな策略も見抜く頭脳、全てを薙ぎ払う武力、そして約5万の戦力(手札)はヒーロー社会を崩壊させることが可能だろう。そもそも公安の実働部隊が福佐に潰されたため戦力不足なのだ。オールマイトに頼れば戦力不足は解決するかもしれないが、今度はオールマイトを中心としたヒーロー達と戦うことになる。そうなれば結局社会は崩壊する。

 

「そのために雄英高校を使うと決めただろ!迅悠一の情報が手に入らずとも、彼らを害すればそれで捕まえられる!」

「そしてオールマイトや根津校長をこちらに引き込み、ボーダーを落とす。」

「ボーダーの持つ利権は我々が使ってこそ意味がある。」

「そもそもあれは我々の物だ。それを取り返すことに何の問題もないだろう。」

 

 公安が1年A組に依頼した「迅悠一の情報を手に入れろ」とは表向きのものだった。本当は”感情受信”などの能力を逆手に取って「迅悠一に問題を起こさせること」が重要だった。生徒に危害を加えさせ現行犯で捕まえ、オールマイトなどの戦力、根津校長の頭脳を武器にボーダーを潰すことが本来の目的だった。

 

「それに迅悠一は我々の完成品だ。あれを他の国や組織に奪われる訳にはいかない。」

「最悪、奴の母親に作らせるか。元々そのために生まれた道具だ。」

 

 彼らが迅悠一を、福佐陽介やその母親を求める理由は・・・知らない方が良いだろう。ただ1つ言えるのは、福佐陽介は()()()()()()()()()()という事だけだ。

 

―――――――――――――――

side:オールフォーワン

 

「そうか、公安はそんなバカなことをしているのか。」

『はい。いかがいたしましょうか。』

「いや、そのままで良い。他には?」

『はい。―――とのことです。』

「・・・そうか、救いようがないね。もういいよ。」

 

 僕は公安にいる部下から連絡を受けて衝撃を受けた。彼らが画策している方法など陽介には効かない。寧ろ、陽介が”証拠”を表に出していないのだから、自分たちで処理すればいいだろうに・・・まぁ、彼らもそれで甘い蜜を吸ってるのだからできない、か。

 僕が支配していた頃には、いや社会に個性が発現する前ではありえない程の腐敗。それはヤクザの衰退が原因だろう。彼らは最低限の仁義や掟でルールがあった。しかし、その利権を堅気が奪ってルールが無くなった。今では麻薬なんて製薬会社がばら撒いているか、”個性”を使って一般人が売買しているくらいだ。寧ろ、ヤクザが取り締まっているくらいなのだから世も末だ。

 

「だとしても、陽介やその家族に危害を加えるとはね。彼らは死にたいのかな?」

 

 陽介から連絡があり、彼らはボーダー本部で暮らすことにしたそうだ。幸い、母親は在宅仕事だし仕事に影響はないだろう。マスコミは陽介の研究材料になったと聞くし、後は情報を流した警察や公安を仕留めれば解決する。それにしても、よくも彼女に危害を加えようとしてくれたものだ・・・!

 

「しかし、公安も良く分からないことをするの~。」

「全くだ。陽介の成長に影響が出たらどうしてくれるんだ!特に彼女が怪我でもしたら・・・」

「先生も親バカじゃの。いや、爺バカか?あんな優秀な孫を持てて羨ましいわい。」

「当然だろ?なんたって僕の孫なんだ。お陰でオールマイトから受けた負傷も完治したしね。・・・”個性”までは取り戻せなかったが。」

 

 そう、()()()()()()()()()()()のお陰で僕の怪我は完治した。既に肉体は全盛期に匹敵する程だ。でもね、

 

「陽介はこのまま成長すればオールマイトを超えるだろう。しかし、それでは意味がない。彼の持つ本来の”個性”を発現させるには常に壁を用意して、それを求めさせなければならない。」

「大丈夫じゃろ。彼はUSJでその一端を扱っていたようじゃし、上手くいけば夏には自覚するかもしれんの。」

「僕らの求める”個性”は陽介しか持っていないモノだ。あれをつまらない欲望で失う訳にはいかない。」

「そのために過保護になるのもどうなのか・・・」

「彼の支えは僕とウィザ、そして母親だ。彼女に何かあれば陽介は暴走するだろう。かつてのガロウのように。」

 

 僕はドクターと話し合いながら陽介をことばかり考えていた。最初はオールマイトへの嫌がらせのために作った息子だった。息子は僕に反発し行方をくらませ、見つけた時には死んでいた。しかし、未来視と言う能力を持つ陽介()を作ったと聞いてうれしくなったよ。非常に使える駒を作った孝行息子だと。しかし、その孫は僕の上位互換だった。故にそれを作った息子も、それに協力した彼女も大切な存在だ。

 何より、オールマイトはどんな顔をするだろうか。志村菜奈(恩師)オールフォーワン(宿敵)の孫。平和のために、皆のために、オールマイトの理想のために様々な研究成果を上げ、活動してきた少年。宿敵の孫で、恩師の孫である存在。

 一体どんな顔をするのかな???宿敵の孫としてヴィランと復讐するか?恩師の孫として保護するか?ヴィラン組織の長として捕まえるか?自分の理想を叶えるために活動してきたと感謝するか?

―――どう転んでも楽しくて仕方がないよ、オールマイト。




 オールフォーワンならオールマイト曇らせ要因を自分で作ってましたよね?
 オールフォーワンが福佐陽介を大切に思っているのは実の孫であり、オールフォーワンの体を治した存在だからです。そのため、原作のオールマイトではオールフォーワンを倒すことは出来ません。

[人物紹介]
・福佐陽介の父親:志村菜奈の体から取り出された卵子とオールフォーワンの精子によって作られた、元祖オールマイト曇らせ要因。オールフォーワンに反発していたが、息子の存在によりオールフォーワンからは感謝されている。
・福佐陽介の母親:当時の公安の『強個性の量産研究』によって生み出された実験体の1人。オールフォーワンからは陽介を生んだこと、陽介の精神的な支えになっていることから大切に扱われている。
・オールフォーワン:福佐陽介の実の祖父。『オールマイトの恩師を宿敵が孕ませたら曇るよね?』くらいの感覚で陽介の父親を作った。
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