雄英体育祭。それは現代のオリンピックと呼べる一大イベント。故に相応の経済効果があるため、本場アメリカからチアリーダーを休憩や余興の為に連れて来る。ある意味、日本がバブル並みの好景気を保っている理由の1つ(最大の理由はヴィラン犯罪発生率の低さやクズ共の策略だが)。
近くで出す出店、近辺の宿泊施設、その周りの観光施設、人が集まれば金も集まる。当然移動のために交通機関などを使うためその経済効果は全国に広がる。しかも体育祭終了後に稼ぐ人間もいる訳だから、それを中止した場合の影響は予測も出来ない。中止すれば文字通り死人が出る。そういう意味ではヴィラン如きのせいで中止して良いものではないだろう。
―――ボーダーは直接的な関わりが殆どないのだが。
side:福佐
「皆、準備は出来ているか!?もうじき入場だ!!」
「コスチューム着たかったなー。」
「公平を期すために着用不可なんだよ。」
そろそろ開始か。まぁ、
「緑谷。」
「轟君・・・何?」
「っ!」
「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。」
「へ!?うっ、うん・・・」
「お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな。」
「!?」
「別にそこを詮索するつもりはねぇが・・・お前に勝つぞ。」
轟が緑谷に
「それと福佐。」
「うん?どうかした??」
「俺はお前より強い。」
「それで?」
「それを証明するためにお前にも勝つ。」
そう言われて控室を出ていく轟。
ふざけんなよ。俺に勝つ?つまり、戦争経験者相手にたかが高校生が勝てると言ってる訳だ。師匠と2人で、またはボーダーを率いて国を滅ぼしてきた俺に。いくら何でも節穴過ぎるぞ。
―――しかし、なにやら複雑な感情をしているな。何かあったのか?
『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!』
『どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!!?』
『
『ヒーロー科!!1年!!!A組だろ!!?』
「わあああ・・・人がすんごい・・・」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか・・・!これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな。」
「めっちゃ持ち上げられてんな・・・なんか緊張するな・・・!なァ爆豪。」
「しねぇよ。」
その後にB組や他科の生徒が入場するが・・・皆不満そうだな。B組は何か企んでいるし。
「選手宣誓!!」
「おぉ!今年の1年主審は18禁ヒーロー『ミッドナイト』か!」
「校長は?」
「校長は例年3年ステージだよ。」
「18禁なのに高校にいてもいいものか。」
「良い!」
「静かにしなさい!!選手代表!!1-A爆豪勝己!!」
例年はヒーロー科主席が選手宣誓をするが、今年は俺のため次席の爆豪になったらしい。
ちなみに、他科の試験は5教科筆記だけだからヒーロー科の筆記と同じものだ。ヒーロー科と普通科などで併願できるのもそのためである。今年の筆記成績は俺・爆豪が筆記主席・次席でもある。普通科の奴らが「ヒーロー科の入試では」と言っているのも間違いと言える。そもそも例年筆記の主席もヒーロー科ばかりだから選手宣誓もヒーロー科主席になった訳だ。
「せんせー。俺が1位になる。」
「「「絶対やると思った!!」」」
「せめて跳ねの良い踏み台になってくれ。」
「どんだけ自信過剰なんだよ!!」
「この俺が潰したるわ!!」
「ヴィランの仲間のくせに。」
流石爆豪だ。そして、それ以外に注目すべき人間はいないな。
しかし、やっぱり俺に敵意をむける奴らはいるな。さっきから体中が痛いわ。
「さーて、それじゃあ早速第1種目行きましょう。」
「雄英ってなんでも早速だね。」
「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が
「障害物競争・・・!」
「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!我が校は自由が売り文句!ウフフフ・・・コースさえ守れば
それなら事前にライバルに薬を盛ったり、障害事件レベルの攻撃も許可されるのか?言葉の捉え方によっては死人が出るぞ。
「さあさあ、位置につきまくりなさい・・・」
「(オールマイトから言われた『君が来たってことを世の中に知らしめて欲しい。』という言葉。以前の僕ならともかく、この1か月間で鍛えた今なら・・・!)」
「スタ―――――ト!!」
何でもあり・・・壊すか、会場ごと。
「(轟を殴ってから生徒を吹き飛ばす。そしてスタートゲートの天井全体に内部から衝撃を伝わせる!!)」
「(スタートゲートから出たら0Pロボを会場に吹き飛ばして、会場ごと破壊する。)」
これに懲りたら、二度と『何をしたって構わない』とか言うなよ?
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side:緑谷
何が起こった?それが、僕らが総意だった。
スタートと同時に人が舞った。落下の衝撃で意識を失う生徒も、保健室で手当てを受けた生徒もいた。
次にスタートゲートが崩壊した。ただ天井が落ちたのではなく、ゲートを完全にふさいだ。
そして、先生たちの音声から『入試の0Pヴィランがゲート前を塞ぎ、会場にぶつけられた』と知った。
会場が、観客席付近が攻撃されたことによりパニックが起きた。しかし、オールマイトやエンデヴァーなどが声をかけることによりパニックは治まった。
そのタイミングで福佐君が帰って来て
その言葉が出た時会場が静まり返った。当然だ。今回の出来事はそんなレベルじゃない。一歩間違えれば死人が出たかもしれない状況でこの発言。
その後に別の競技で予選を行ったが、福佐君は失格にならずそのまま予選通過となった。『ルール上の違反は行っておらず、また特に怪我人が出ていないこと』が理由らしい。本当はこれ以上の被害を出さないためと聞いたけど。
その結果、予選通過者はヒーロー科生徒(青山君以外)と普通科・サポート科から1人ずつとの事だった。
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side:福佐
ペナルティを受けた。
予選で行った行動が問題とされ、俺に幾つかのペナルティが課せられた。簡単にいうと『他者や会場に対して過度な攻撃を加えない』というものだ。これって定義が曖昧だから「いつでも失格にできる」と言われたようなものだぞ。ペナルティを受ける程か??入学初日で除籍の危機とかに比べればマシだと思うが・・・
「予選通過者は上位42名!!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!!」
「そして次からがいよいよ本番よ!!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!!!」
「さーて第2種目よ!!私はもう知っているけど~・・・何かしら!!?言ってるそばから
ルール説明を受けたが、要はチーム対抗ポイント争奪戦。ポイントは第1種目の順位で変動し、その合計がチームのポイントとしてスタートする。最後に持っているポイントの合計が多い4チームが決勝進出。まぁ、ポイントを失っても失格にならないとか特殊ルールは多いが。
「そして、
まぁ、未来視てたから競技の種類も、ギャグみたいなポイントについても分かっていた。
さて、この競技の勝利方法は簡単だ。問題は独りではクリアできないこと。純粋に2人以上じゃないと騎馬は作れないからな。
しかし俺はUSJの噂と1000万ポイントのせいで組んでくれる人はいない。なんなら入学して数日で逮捕・勾留された人間と仲良くしてくれる人はいないし、俺はクラスメイトすら良く知らない。仕方ない、脅すか。
「やぁ、普通科の君。俺と騎馬組まない?」
「はぁ?誰がお前「君、精神干渉系の”個性”だろ。」っ!!?」
「”個性”で相手を操ることができる。トリガーは『君との会話』だね。もし君が組んでくれないのなら
「てめぇ!!!」
「ありがとう、チームを組んでくれて。」
こいつの”個性”が精神干渉だとは分かったが、そのトリガーは未来視で視ても分からなかった。だからこいつに言ったのはブラフだったんだが・・・正解とはな。会話してたら虚ろになって操り人形になる未来が視えたから予測はしていたが・・・ヤバいな。会話しただけで制圧できるとか反則だろ。精々「特定のワードを言う」「一定以上会話する」とかあたりだと思ったんだが・・・師匠やオールマイト以上じゃないか?なんで普通科にいるのか理解できない。
「私と組みましょ1位の人!!!」
「えっ、君は?」
「私はサポート科の
「こいつ言い切ったぞ!?」
「言うね~。」
ここまで言うとはな。どうやら大企業の注目を集めたいから一番注目されそうな俺を選んだらしい。まぁ、いいよ?でもね・・・日本サポートアイテム業界の半分を傘下にしたボーダーのトップですよ?名前を変えただけで写真はそのままだから気づきそうだが。
「じゃあ、この3人で終わりだな。」
「ちょっと待て!最大4人まで良いんだろ!?だったら他にヒーロー科の誰かを!!」
「もうチーム決めは終わったし、俺にヒーロー科の伝手はないよ。」
心操は絶望した表情でこちらを見て来る。安心しろ、ヒーローが無理でも就職先は確保してやる。治崎辺りが新人を欲していたしな。ジェントルとかも楽しいぞ、動画編集とかで。
発目はサポート会社への伝手で納得してくれた。
「15分経ったわ。それじゃあ、いよいよ始めるわよ。」
『さァ上げてけ鬨の声!!』
『血で血を洗う雄英の合戦が今!!』
『狼煙を上げる!!!!』
いよいよ開始の合図だ。といってもこの競技も簡単に勝てる。
「心操!」
「負けたら承知しねぇ・・・!」
「発目!」
「ちゃんと大企業への口利きしてくださいよ!!!」
利益目的で仲間になった発目さん。
「行こうか!」
そういいながら師匠直伝の殺気を選手全員に当てる。15~16歳の子供が明確な殺意に当てられれば、当然気絶する。
後は倒れた奴らからハチマキ盗って時間までいれば終了だ。
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side:観客
何が起こった?前回と同じことを皆が思っていた。違うことは選手が倒れていること、そして何をしたのか誰にも分からないことだった。
先ほどは理解できる。会場を破壊することで他の選手を妨害したのだ。しかし、今回は本当に分からない。『相手を気絶させる個性』ならば分かるが、それなら解説で説明されるはずだ。それがない以上理解できない。
それはヒーローや雄英教師陣にも同じことが言えた。だがそれも仕方ないことだった。何故なら警備役のベストジーニストや公安からの依頼で来たホークスすら分からなかった。No.3とNo.4すら分からないことを知る方法はない。
―――例外を除けば。
中継で見ていたボーダー関係者やウィザを知る者は何となく理解していた。強烈な殺気で気絶させるのは彼の十八番であり、そこから派生する技も知る者は16歳の少年がそれと同じことをしていることに驚愕する。
そして、そのことを経験から理解した者が会場にいた。
「バカな・・・焦凍と同じ年で、殺気だけで狙った相手を気絶させられるのか!!」
No.2エンデヴァーはその事実に驚愕する。そして、彼を倒すために情報を得ようと気を引き締める。自身の弟子のためにも。
「この感覚は・・・やはりオールフォーワンか!」
No.1オールマイトは事前の予測から福佐の正体を掴んでいた。そして、福佐から宿敵の居場所を掴もうと考えを巡らせる。同時に、
こうして第2種目は福佐チームの出場で終わり、競技終了まで他選手が目覚めることがなかった。
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side:オールフォーワン
「まったく、陽介にも困ったものだ。」
中継で孫の活躍を見ながら苦笑する。過去にも圧倒的な活躍を見せた生徒は存在するが、ここまで競技を滅茶苦茶にした人物はいなかった。波動ねじれは2年連続で優勝し、その圧倒的な実力で他の追随を許さなかった。それでも一応競技としては楽しめた。2位争いも面白かったしね。
しかし、陽介は違う。自分が完全な勝利を収め、2位以下は事実上の敗者復活戦。No.1とNo.2の後継者も、ヒーローの名家出身者もいるはずなのにこれとは・・・流石の僕も次代のヒーローについて心配になるよ。
―――ボーダーがいる以上、ヒーローの役割なんて数年でなくなると思うけど。