俺の個性がそう言っている   作:大紫蝶

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雄英体育祭2

side:雄英教師陣

 

 時は遡り、体育祭前日。雄英教師陣は

 

「これってどういう事ですか?」

「どうもこうもありません。お伝えした通りです。」

「そう言われても納得できないでしょう。」

「お伝えした通り、迅悠一を最終種目で敗退させて欲しい訳です。」

 

 公安委員からの”要請”を告げられていた。

 

「そんなこと言っても「当然、それなりの見返りはあります。」

 

 裏取引を仕掛ける公安に教師陣の誰もが顔をしかめる。ヒーローとして、教師として、そして1人の大人としてそのような取引には応じない。そのつもりだった。

 

冷水 暖(しすい だん)は知ってますよね?雄英高校OBであり、この中にも先輩や同期、教え子として関わった人も多いでしょう。」

「それがどうした。」

「彼のヒーロー復帰を考えています。」

「「「!!?」」」

 

 冷水 暖(しすい だん)、雄英高校出身の元ヒーロー。ミッドナイトやイレイザーヘッドの先輩でもある彼は『ヴィラン殺害』という罪でヒーローを引退させられた。その後に起きた事件も含めてこの場にいる誰もが助けようとし、結果として助けられなかった。イレイザーヘッドやエンデヴァーが筆頭となり署名活動や公安委員会への抗議活動を行っていたが、最終的に冷水から「もうやめてくれ」と言われ活動はやめることになった。この時の抗議活動には雄英高校やエンデヴァー事務所などが中心となったことで多くのヒーローが参加していたのだ。

 

「現在、冷水さんのヒーロー復帰条件は事実上”ボーダーの摘発”です。摘発に必要な情報を調査したり、摘発時に特別参加してもらい一定の活躍を見せれば復帰を許可する。今回の話を受けてくださるのなら、冷水さん以外に皆様の活躍も加えて復帰を検討します。現役ヒーローであり、ボーダーのトップと限りなく近い位置にいるあなた達だからこその特例です。上手くいけば今年度中にも冷水さんの復帰が出来るでしょう。」

 

 ふざけるな。あの時彼を切り捨てたのは公安(お前ら)だろうが。 

 そう思うも、冷水の事を考えれば公安の提案が次善の策であることは分かる。この提案をUSJ後に起きた説明会で了承した生徒が居たというのも大きかった。

 

「分かりました。出来る限りの事はしましょう。しかし、我々にも限界はあります。」

「その辺は理解してます。できるだけやっていただければ問題ありません。」

 

 こうして雄英教師陣はある種の八百長を受け入れた。かつての教え子を、友を、恩人を助けたいという思いから。

 

 しかし、彼らは知らない。冷水を助けられる唯一の存在がボーダーであることを。そのトップと敵対するという意味を。この選択が福佐とオールフォーワンの計画を実行させる後押しをしていることを。

 

 

―――――――――――――――

side:福佐

 

 決勝戦についてだが、俺ら3人は出場確定。それとレクリエーションで活躍した上位13人が決勝出場と決まった。そのため昼休み明けのレクリエーションは過去にないほど盛り上がるだろう。例年はヒーロー科以外の活躍の場だったが、今年はヒーロー科が本気で勝ちに行くため遊びではない。様々な競技で本気のヒーローの卵を見れるとのことで寧ろ好印象だった。

 ついでに、心操にとっては格上のヒーロー科がレクリエーションで体力消耗し、戦闘スタイルや”個性”を観察しながら休憩できる訳だ。

 

 そして、レクリエーションで女子がチアのコスプレをするというハプニングはあったが、最終的には決勝出場者が決まり、トーナメントの対戦相手が決まった。

 

―――――

 

第1試合  福佐VS麗日

 

第2試合  緑谷VS佐藤

 

第3試合  轟VS瀬呂

 

第4試合  飯田VS切島

 

第5試合  心操VS塩崎

 

第6試合  角取VS芦戸

 

第7試合  八百万VS常闇

 

第8試合  爆豪VS発目

―――――

 

 1回戦は麗日。”個性”から考えるに、俺との接近戦狙いだろうな。何せ俺のペナルティは増えた訳だし。

 

〇追加ペナルティ

・”気”を使った戦闘の不可(当然スコーピオンも)。

・武術を用いた攻撃の禁止。

・過剰な威力の攻撃禁止。

・威圧の禁止。

 

 本当は細かいんだが、要はこれだ。正直厳しい。本気になれば少しの殺気で怯ませてしまう本気で戦えない。身体強化の”気”は使用禁止。身体強化で可能としたリミッター解除も反動で動けなくなるため使えない。気で具現化させたスコーピオンも禁止。素の身体能力で殴るしかないぞ。まぁ戦いようによっては勝てるが・・・ただの暴力だから後が面倒だ。

 

―――――――――――――――

side:麗日

 

「「麗日さん/君!」」

「デクくん!飯田くん!2人共私の試合のすぐ後でしょ、ここに居て大丈夫なの?」

「友人の試合前に黙っていることは出来ないさ。」

「僕はちょっと違くて・・・もちろん、応援に来たんだよ?でも、それだけじゃなくて・・・」

 

 そういってデクくんは1冊のノートを取り出した。

 

「僕は麗日さんにたくさん助けられた。だから、少しでも助けになればと思って・・・麗日さんの”個性”で福佐君に対抗する策を考えてきた!」

「(私が福佐君に勝つ策・・・)」

「おお!麗日君やったじゃないか!!」

「ありがとうデクくん・・・でも、いい。」

「え・・・」

「デクくんは凄い!どんどん凄いとこ見えてくる。入試から今日までで凄い成長してるし、私が入試で助けたなんて信じられないくらいだよ。」

 

 入試で1Pでも得ようと足掻いていた人と今のデクくんが同じとは思えなかった。USJ以降の授業でもクラスで上位に食い込むほどの実力があるし、それを使いこなしていると思う。

 

「私ね、騎馬戦の時・・・仲の良い人と組んだ方がやりやすいと思ってたけど、今思えばデクくんに頼ろうとしてたんかもしれない。」

「だから飯田くんが『挑戦する!』って言ってて、本当はちょっと恥ずかしくなった。」

「麗日さん・・・」

「だから、いい!皆将来に向けて頑張ってる!そんなら皆ライバルなんだよね・・・だから、2回戦で勝負しようぜ!」

 

 さぁ、覚悟は決めた。後はやるだけだ!

 

 

―――――――――――――――

side:福佐

 

『色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!』

『頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ!分かるよな!!』

『心・技・体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!』

 

 

「(不味いな。感情受信も使えなくなっているのか。)」

 

 昼休みに聞こえていた噂。『福佐陽介はヴィラン組織ボーダーの首領』という声。これに伴う感情で体中が痛い。それに会場中の人々の未来が視えて情報処理が追い付いていない。感覚的には風邪で高熱を出した時のような感じ。意識を保っているだけでキツイ。・・・師匠の訓練に比べればマシだが。

 不審な動きをしている奴らが情報を流してる訳だ。そいつらの正体には心当たりがある。俺が生きていると困る訳だからな。

 

「(確かに、俺が持つ不正や犯罪の証拠は国を崩壊させることができる。だけど、それで甘い蜜を吸ってきた奴らがさらに犯罪重ねて隠蔽・・・学習しないのかな。)」

 

 本当は様子を見て行う予定だったが、先生に言われたように『計画』を早めに実行するほうが良いのだろうか。いや、流石にあれは()()()()()よな。

 

 

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。後は「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!』

『ケガ上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してってから!!道徳倫理は一旦捨ておけ!!』

 

 

 なら俺のペナルティを解除してくれませんかね?

 

 

『だがまぁ勿論、命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローは(ヴィラン)()()()()()に拳を振るうのだ!』

 

 

「(俺への警告か)退くなら今退きなよ。”痛い”じゃ済まないと思うし、女子を殴るのは好きじゃないからさ。」

 

 

『レディィィィィイSTART!!

 

 

 

「先程言っていたが福佐君対策とは何だったんだい?」

「ん!本当たいしたことじゃないけど・・・福佐君は強い。公安からの情報だけじゃなくて、USJや最初の戦闘訓練で分かった通り戦い慣れている。オールレンジで空中戦闘すら可能としている。そのうえ”未来視”や”読心”でこっちの行動を把握するから作戦も意味をなさない。でも、今回はペナルティがある。お陰で空中移動や高速移動ができないから、とにかく浮かしちゃえば主導権は握れる。だから・・・速攻!!

 

 

 

「(まぁそう来るよね。)でもね、これは戦闘だよ?」

 

 床のコンクリートを破壊して幾つかの小さい欠片を手にする。

 

「ほいッと!」

 

 軽く麗日へ向けて投げつける。麗日は”個性”の関係で『五指で触れるものを浮かす』という強みがある。逆に『五指で触れられないもの』に対しては弱い。コンクリート片はそこまでの威力はないが目などに入れば致命的だ。とっさにガードすれば視界が塞がる。そして俺の”気配遮断”に対抗できる唯一の視覚を失うことは敗北と同義だ。

 

「いない!?」

「(当然だろ。後は好きなタイミングで攻撃できる。)」

「(分からない!どこにもいない!!でも、福佐君が攻撃するときにカウンターを仕掛ければ!!!)」

「(カウンター狙いならやめた方が良いよ。そもそも気づいていないのか?)」

 

 麗日へゆっくりと近づくが、麗日は気づかない。俺の接近に、俺の手に大きなコンクリート片が握られていることに。

 

「(ヒーローは時に現場の設備や地形すら利用する必要がある。そして、そのことに気づかない時点でお前の負けだ。)」ゴスッ

 

 後頭部に鈍器を振り下ろされたことで血を流しながら麗日は倒れた。会場中がパニックになるがそこまで不思議ではないだろ。鉛筆すら凶器ととなるのだ。コンクリート片なんて十分な武器だよ。

 それにしても、まさにドラマのワンシーンだな。犯人が被害者を殺害するシーンそのものだ。

 

―――――――――――――――

side:A組

 

「「「「「麗日さん/君/ちゃん!!!」」」」」

「うるさいよ!そんなに騒ぐんじゃない。(気持ちは分かるけどね)」

「リカバリーガール!麗日さんの容態は!?」

「命に別状はないよ。致命傷は避けられていた。詳しく見るから早く帰りな!(完全に手慣れたやり方だ・・・流石はプロって所かね)」

「そ、そうですか。」

「それじゃあ帰りな。あんたらもこの後試合だろ。」

 

―――――――――――――――

side:福佐

 

 その後の試合は1試合を除いて観客の予想通りとなった。

 

 緑谷VS佐藤は純粋な力比べの結果、緑谷の勝利。まぁ、緑谷は佐藤の上位互換だからな。

 

 轟VS瀬呂は轟の大氷壁で決着。会場中がドンマイコールで瀬呂を慰めていた。

 

 飯田VS切島は、飯田が切島の服を掴んで場外に放り出して終了。そりゃ、切島を倒すより場外に出す方が飯田にとって簡単だろう。

 

 角取VS芦戸は終始遠距離から攻め続けた角取の勝利。芦戸は一度も射程距離に入れず負けていたが、角取の位置取りが上手かった。それでも飛んできた角を酸で溶かしていたため、それなりに健闘しただろう。全8試合の中で一番長かったし。

 

 八百万VS常闇はダークシャドウによる攻撃で瞬殺。・・・俺からすれば八百万がバカだから負けたと思うがな。アサルトライフルでも創って攻撃すれば話は変わったろうに。盾を創って様子見するより攻めの姿勢で威嚇し、創造の時間を1秒でも稼ぐ努力をしていれば勝てた試合だ。

 

 爆豪VS発目は瞬殺だった。爆豪が発目に何もさせずに場外にまで吹き飛ばしていた。・・・どうやら発目の「企業へのアピール作戦」は失敗したようだ。試合後、「ボーダー本部でプレゼンさせろ」とやって来たので血操の連絡先を教えてやった。奴なら上手くやるだろう。

 

 

 さて、では番狂わせが起きた心操VS塩崎の試合についてだ。正直、この試合の結果

 

『普通科にとんでもない化け物が居るぞ!』

『あれで普通科?雄英も見る目無いな。』

『あんなのが居たら仕事なくなるぞ!!』

『彼をサイドキックにできれば凄いぞ。』

 

と会場がパニックに陥った。まぁ、ネットでも俺の試合以上に荒れたようだが。

 塩崎は一般入試5位の実力者。同世代の中でも頭1つ抜け出している金の卵だ。その塩崎を完封した普通科の生徒という事で心操は注目を集めていた。

 

 その戦闘スタイルはオールマイト並みのチートに映っただろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんせ、『触れただけで相手を操る個性』なんだし。」




 
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