からくり武者になった私は姫様に仕えます。   作:麗紫 水晶

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いや……突然にお邪魔します。
この物語の二次創作を書いてみたいと思いまして、始めた次第です。良かったらお付き合いください、物語のスタートです。



事の始まり……。

あの……突然ですけど私………死にました、たった今………。

あ、病気で入院中だったんですけど。難病とかで、現在の医学では治せなくて私の寿命が来てしまいました。

まあ、独り身でしたし両親も早くに亡くなり親戚らしい親戚もなく……。

 

で、天国!?地獄!?何処だここ!?いや、魂になって浮かんでる気もしないし、どゆこと!?

ゆっくり目を開けてみれば、畳が敷き詰められ、ふすまの戸と障子で仕切られた部屋の中に……。で、私って生きてるって言います!?いや、でも呼吸をしてる感がないんですけど。でも、意識はある……。どうなってる私……。

でもここ何処だろう?とりあえず、障子を開けて外がどうなっているのか確かめようと歩こうとしたとき、何か凄~く違和感が………。

ん、ナンだこれ!?私の身体って……これ何!?歯車が一杯大小に噛み合って動いてる……機械仕掛け……マジか………。でも精巧なのかそうじゃないのか、私のいた世界とも違うのか?ってか今改めて気付きましたけど、私ってロボットになっちゃった!?かの有名なター⚪ネー⚪ーとかって言います!?でも、全部中身は木や糸、クジラの髭で作られてるし。自分の身なりを見回すと、見たことのある日本の鎧と兜を身に付けている、いわゆる甲冑と言うやつですか。日本刀を2本脇差しに。これって日本の武者……しかもからくりってモノでは…………。

以前テレビでは、からくり人形を紹介している番組があって、ごく小さなお人形さんが、お盆に湯飲み茶碗を乗せてお客さんに接待する場面を見たことがありました。でも、こんなに武者人形とかって事はなかったですけど。ただその事があったので、これは日本の昔の時代かも……と自分なりの解釈でそう思ったんです。

 

 で、自己紹介遅れました。私は雅神 焔《まさかみ ほむら》と言います。おっさんサラリーマンでして、ごく普通に生活してたんですよ♪でも、不治の病ってモノにかかってしまい、現代でも治療薬が無いままに死んでしまいました。

 私の残りの人生は……と思ったらこれ!?からくりですか!?……。

転生とは聞いた事がありますが、まさかね。 ま、良い所は食事が要らない、飲み物要らない、トイレに行くことが無い、バッテリー交換が無い。悪い所は風呂に入れない、甲冑は洗濯必要、顔が怖いと嫌われる、腐食に弱い……。後、細かい事は色々と。そして、甲冑の色がまた奇抜……。全体に黒やたまに赤は見かける色ですが、私のは黄色……。目立つなこりゃ、まして背丈体格も大きい。目立つなと言われても無理な姿……。せめて忍者くらいにしてくれれば良かったものを……。と言ってもなったものはしょうがない。

 今はこの場を離れて一旦落ち着いて考え直さねば……。そこで、歩けるのか私……。まずは腕を上げてみようと思い、右腕を肘から持ち上げてみました。カラカラ、パキパキと小さく音を立てつつ顔の前まで拳を持ち上げられます。おおっ動いた!なら足も……。そう思って一歩前に踏み出すイメージをすると、なんと踏み出せたではないですか。一旦その場に立って反対の腕や足の動きを確認します。屈伸やストレッチをしてみると動く動く……。

 甲冑を着たままですがスムーズな動き、良いですね♪♪これなら走ってでも行けそうです。

 ん!?誰か来る……。マズイ……、一旦元の位置に……。

 

「誰か居るのかっ!」

 

 ガラリと障子の戸を勢いよく開けて中の様子を仁王立ちで見る者が……。髷結いをして甲冑ではなく薄着の着物を着た男性がいました。一応警戒してでしょうか、腰には刀を一本携えて……。

 

「殿っ!どうされましたか!」

 

 もう一人の男性が殿と呼ばれた者の傍に。

 

「いや、物音がした故狼藉が侵入したかと見に来たのじゃ。しかし、忍びの気配もせん。気のせいか……。」

 

「見張りを付けるようにいたしましょうか?」

 

「うむ、念のため2人ほど見張らせよ。何かあれば大声で知らせよとな。」

 

「は、早速……。」

 

 げ、マズイ……。見張りが着いたら逃げられなくなってしまう、どうする!?……ん、今2人とも離れた今しかない……よし動くぞ……。そうか、気配を悟られなくて良い。私はそろりと障子の戸まで行き、ゆっくりと障子を開けて顔だけを外に出してみました。

 左右を見ると丁度、人が居ない……確かこっちに歩いて行ったから、反対の方に行ってみよう。

 でも足音を立てないように抜き足差し足、忍び足で廊下を歩いて行きます。見つからないように途中で左に曲がり右に曲がり……真っ直ぐ進んで二歩下がる……い、いや、二歩前に出ると……あ、あそこに裏の入り口が……。

 だ、誰も見てないよね……そっと裏口から出ようとした時です……。

 

「出会えぇぇっ!!何者かが人形を奪って逃げたぞぉぉぉっ!何としても取り戻すのじゃぁっ!秘密を知った輩は容赦せんっ!切り捨てぇぇいっ!!」

 

「「「「「はっ!!」」」」」

 

 うわっ、マジかっ!秘密を知った輩って言われたって、私しかいないんですけどもっ!しかも、自力で動いてるしっ!ってそんなこと言ってる場合じゃなかった、ひとまず逃げるっ!!

 私も足音なんてこの際、気にしてられません!ひたすら森の中、山奥へと道なき道を木や枝を振り払いながら進んで行きます。

 速い!最早追っ手が追い掛けて来ます!くそっ追い付かれる!ん!?あそこに道がっ!よし、出た、こっちだ!

私は道に出て、直ぐに方向転換し、左に向かって走り出しました!どすっどすっどすっと地面の土に足の跡を付けながら懸命に走ります!しかし追っ手は私より更に速い。しかもチラリと後ろを見ると、一人の男が真後ろから追い掛けて来ます。姿を見る限り軽装な感じで背中に斜めに刀を背負っている……。私の知る限りでは忍者と呼ばれる者達でしょう。その両脇を、尋常ではない程に飛び回りながら追い掛けてくる無数の影が……。そっちは全員同じ装束のようでした。

 私は土で固められたその道をひたすら走り続けます!くっ!追いつかれたっ!

その影の一人が尋常じゃない高さから刀を振り下ろしてきました!私も辛うじてそれを躱しますがバランスが取れずによろけます!踏ん張りながらそこに立ち止まり刀を抜きました!もう一人が斜め下から私に向かって突きを入れてきます!

私、剣術なんてど素人です!!いくらこの身体とは言え、刺されるのは嫌です!剣で弾いて振り払いましたが、もう一人が剣を振り下ろしてきました!

それも刀で弾きますが、よろめいて尻もちをついてしまった!マズイ……このままでは……。

 

「ふんっ!誰が操っているかは知らんが随分と操るのが下手と見える。その糸断ち切って術者を拝ませてもらおうぞ……掛かれっ!!」

 

 3人ほど、2m以上の高さにジャンプして刀を振り下ろし、2人ほど懐を目掛けて走り込んできましたっ!!かっ躱しきれないっ!!

 

「いざっ!!」

 

 わっ!私の周りから土煙が突然舞い上がります!

えっ!?何、今の声……!?わっ!か、身体が勝手に……。ちょ、ちょっとマジですか!?自由が利かない……。私は強制的に即座に立ち上がり、腰を落とし2本の刀を両手に構え、右手は下からの影の剣を……左手はジャンプしてきた3人の剣を……刀で同時に受け止めていたんです……。そして土煙が晴れていきます。

 

「なっなんだこれは!!にっ、二刀流だとっ!」

 

 私もビックリです!!何が起こったの私の身に!?ってからくりですけど。

で、何か引っ張られる感じがして後ろをチラリと見ると後ろの方で、黒髪のストレートヘアが背中まである、可愛い着物姿のお嬢さんが地面に座って両手・両足を使い、目の前にある四角く囲った板の中に無数の糸が張り巡らされた、指輪のような輪が20個ほど宙に浮かんでいますがそれに手足の指をはめ、それを引いたり戻したりすることで、私を動かしていました。

すごい…………。私をこれだけ動かせるなんて……しかも味方をしてくれそうです。ならば、ど素人の私よりもプロにお任せした方が勝算が上がる。ここは彼女に身を委ねますっ!両側の影の剣をまとめて弾き返し、両手首を回転させて2本の刀を振り回し、改めて二刀流の構えを取ります!

 影が1人突進して刀を振り下ろしてきます!片手の剣でそれを受けるともう一人が上から剣を振り下ろしてきます!それを突きで胸の中心を貫き、横に払って他の影にぶつけました!

同時に最初の影も剣を弾いて真横に一閃!その影が上下に真っ二つに!血しぶきが……と思っていたら飛び散らない……それどころか切られた中から私と同じ大小さまざまな歯車が壊れて飛び出す始末……。同じからくり人形……私の世界で言うなら軍用みたいなものですか。ま、私のこの姿もそうでしょうけどね……恐らく戦うため……という事でしょう。

 そう、色々考えているうちに次々とその影たちを簡単に薙ぎ払っていきます!私には出来ない芸当……一体誰なんでしょう。

 

「な、なんて事だ……、ここまでやられるとは……。」

 

「すきありぃっ!」

 

 そう叫んで、相手の忍びに上から剣を振り下ろす者が……。しかし、相手も忍び。それを剣で弾いて後方にジャンプしていました。

 

「ちいぃっ!下忍までとはっ!一先ず殿にご報告だっ!お前達、次は必ず打ち取ろうぞっ!!」

 

 林の中に溶け込むように消えて行きました。一先ず危険は去った……。でも、凄い太刀裁き……で、めちゃくちゃ可愛いし。

 あ、その忍びさんが糸を切ってくれました。眉毛の長い、優男と言った感じです。お嬢さんが操る為の板の四角い枠をパタパタと折りたたんでいきます。

 

「おい、お前……。自分で動けるのか!?」

 

 その忍さんが横から声を掛けてきたので振り向いて頷きました。

 

「ほおぅぅ。上様、こやつ自分で動けると申しております。いかがしましょうか?って、お、おいっ!」

 

 私はそのお嬢さんの傍まで行き、片膝をついて片手を地面につけ、頭を垂れます。お嬢さんはきょとんとして私を見つめていました。言葉が通じるだろうか?だが喋る事が出来ない……どうすれば……。でも、私は決めた!この人達と一緒に行きたい!それがどんな旅路になろうとも……。

 

(どうか、お供をさせてはもらえませんか?)

 

「「!?!?」」

 

 2人が驚いて目を見開いてます。心で喋ったのが通じた!?意思疎通ってやつですか!?口が動かないんで声に出してはいないんですが。

 

「あ、あなたには……魂が宿っているのですか?」

 

 あ、確かにそうなりますか。そうですよね、こうして意思があるんですし。かと言って人間の身体ではないですが。

 私が頷くと2人で顔を見合わせてビックリしていました。

 

「で、今どうやって喋った?声にはなってないという事は心で喋ったという事か?」

 

 私もそれには即頷いてました。話が通じるという事で納得はしてくれたようで。

 

「あの……では、お名前は……?あ、私は乱菊と申します。こちらは……。」

 

「まなじり 弥三郎じゃ。」

 

(むなじり……さんですか?)

 

「まなじりじゃっ!」

 

「あなたは!?」

 

 あ、名前ですか……。バタバタしててすっかり忘れてました。うう~んと、下の名前で良いかな。

 

(焔 《ほむら》と言います。)

 

「ほむら……さん。」

 

(はい、そうです。よろしくお願いします。)

 

「ほうっ、まったく人形繋がりとは何か意味があるのかねぇ、ま、これも何かの縁だ、よろしく頼むわ。で、早速このこおりを背負ってもらおうか。」

 

 おうっ!随分と大きな細長い縦長のこおりですね。よいしょ、あ、重さはそんなに感じませんね。元々重量感知なんて無いんでしょうけど。でも、むなじりさんが楽だと言うのなら……。

 

「わしゃ、まなじりじゃ!」

 

 (わっビックリした!スイマセンね、む……いや、めなじりさん。)

 

「お前……わざと言ってないか……。」

 

(い、いえ、とんでもない!めじりさん。)

 

「わしゃ、まなじりじゃ~~!!」

 

(ヒーッ!乱菊さま、助けてくださいっ!)

 

「クスクスクス……。仲が良いんですね♪♪」

 

「どこがっ!」(どこがっ!)

 

 追いかけられる私に追いかけるまなじりさん、その後ろから笑いながら良い笑顔で歩いて来る乱菊様……。

 私の第二の人生珍道中はここからスタートしたのです…………。

 

…………時は日本、戦国の世……。有名な武将達が天下を取るべく、戦が各地で起こっていた時代……。

とある里の1つに、少々名の知れたるある物を造る一族がおりました。その一族はカラクリと呼ばれる人形を造るに秀でた一族で、城主は人形造りにハマりすぎて、人形に執り憑かれ、あろうことか人形に人の皮までも使うと言う悲劇がありました。

そしてその国を滅ぼし自力で動く人形を手にしたのは狩俣 貞義《かりまた さだよし》、その人形から技術を奪い、死なん兵団(からくりの忍者兵)を造るに至り、更に戦が激戦と化していたのであります……。

その仇討ち!?をしたのが正に乱菊様とまなじりさん、そうしてお二人は君主と家臣として、旅をされておりました。

その渦中に私がお会いしたのです。しかし、どこから情報が漏れたのか逃げ出した城だけではなく、他の国々も私の事を狙って来る事に。

私の命運や如何にっ。って、からくりですけどね………………。

 




読了ありがとうございます。からくりの君のアニメは私が若いときに(いや、あったかなそんな時って!?)見たのが凄く印象的で、最近になって思いだして動画で探したらUPされていて、嬉しくて何度も見た次第です。で、思いついたのがこの物語……。よろしかったら、この物語にお付き合いくださいね。紅龍騎神でした……♪♪

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