ただ、簡単には相手にできないようです。
こういう展開もあった方がいいと思ったので。
「ふぅ~。やっと帰ってこれましたわ。あ~、疲れたからお休みなさ~い」
小屋に戻って来たマリアンヌは、疲れからかベッドに倒れ込み、そのままぐっすりと眠った。
「……マリアンヌさんらしいというか、らしくないというか……な、寝方だなぁ」
マリアンヌは貴族令嬢とは思えないような寝方をしていた。
アエルスドロは彼女にそれを言うと間違いなく撃たれると感じたが、
今は寝ていたため無事だった。
「まぁ、いいや。私もそろそろ寝よう」
そう言って、アエルスドロはマリアンヌの隣で眠った。
「……ああ、やっぱり……柔らかい……。強がっていても……ちゃんと女性なんだな……」
アエルスドロがマリアンヌのどこを触っていたのかは、ここでは明かさない。
というよりも、明かした場合は年齢制限がかかってしまうので……。
翌日。
「おはようございます。疲れは取れましたか?」
「あ、おっはよー」
「ああ、おはよう」
アエルスドロとマリアンヌがいる小屋に、ルドルフとエリーが起こしに入ってきた。
とっくにアエルスドロは起きているが、マリアンヌがまだ寝ていたためである。
「なんでこの時間でも起きないんだろー。もうとっくに朝食はできてるのにね」
「夜にぶっ通しで私と異変を解決したからだ。マリアンヌは人間だからかなり疲れている。
だから、もう少し寝かせてほしいな」
「分かりました、ファルナさんにそう言っておきますね」
「昨日はお疲れ様、アエルスドロちゃんはよく頑張ったねぇ」
ファルナは、今日の朝食であるジャーマンポテトを食べながらアエルスドロを褒めていた。
「私一人の力では、この異変は解決できなかった。マリアンヌも褒めてくれないか」
「ああ、今ずーっと寝てるんだろ?
それだけ頑張ったって証じゃないか、もちろん褒めてあげるよ」
「ありがとうございます」
そう言って、アエルスドロは野菜のバターソテーを口に入れた。
「アエルスドロ、ファルナ! ちゃんとわたくしの分は残してありますわよね!?」
「おや、マリアンヌちゃん。おはよう」
そこに、ようやく疲れが取れて起きたマリアンヌが食卓にやってくる。
「令嬢だから誰かに起こしてもらうのかと思ったけど、自分でちゃんと起きたみたいだな」
「……何かおっしゃりました?」
「銃を向けるのはやめろ、周りが傷つく」
マリアンヌが笑みを浮かべながら(目は笑っていない)アエルスドロに銃を向ける。
アエルスドロは冷や汗を掻きながらマリアンヌを止めた。
「……まぁ、腹が減っては戦ができぬと言いますし、この醜い争いはやめて食事しましょうか」
マリアンヌは銃をしまった後、ジャーマンポテトを食べた。
「二人ともお疲れ様だね。今日一日はゆっくり休んでいいよ。魔物退治は他の人に任せるから」
「ありがとうございます」
「ファルナ、あなたは本当に有能な人材ですわね!」
「ふふっ、ありがとよ」
アエルスドロとマリアンヌは、ファルナの言葉に甘えてゆっくり休む事にした。
ちなみに、ミロとユミルは、食事をしなくても生きていられるので、ここには来ていない。
その頃、ナガル地方の外の森では、
緑の髪と赤い瞳の、黒い衣を着た暗殺者が二振りの短剣で魔物と戦っていた。
暗殺者は猫の耳と尾を持っており、半獣人のフェルプールである事が分かる。
「切り裂いてやろう……ワイドアタック!」
暗殺者は前に鋭く突撃しながら二振りの短剣で魔物の群れを一閃した。
ホーネットは地に伏せたものの魔物はまだ全滅しておらず、暗殺者は舌打ちする。
「……遅い」
襲い掛かる魔物を暗殺者は華麗にかわし、再び短剣で一閃し、
これにより魔物はあっけなく全滅した。
「邪魔する者は、俺の前から消える運命だ」
そう言って暗殺者は短剣をしまい、ナガル地方へと向かっていった。
「さて、それではちょっと外の空気を吸いに向かいますね」
ルドルフは、外の空気を吸うためにナガル地方を出ていこうとした。
「あ、あたしもついてっていい?」
そこに、エリー、ミロ、ユミルがやってきて彼に同行しようとした。
ルドルフは当然承諾し、三人と共に外に向かうのだった。
「……おかしい。動物の気配がしませんね」
ルドルフが辺りを見渡すが、朝とは思えないほど静寂に包まれていた。
いつもは動き回っている動物がおらず、妖精の姿すら見られない。
昨日、アエルスドロとマリアンヌの活躍により、森は平和になったはずなのに……。
「すっごい静かね。どうしてかしら」
「……まさか、悪魔がここにいるのでは?」
「悪魔……ですか。しかし、悪魔は滅多に来ないはずで……」
ルドルフがそう言いかけたその時、彼の頬を短剣が掠り、そこから血が出た。
「っ……! 誰です、そこにいるのは!」
ルドルフが短剣を投げた方向に叫ぶと、暗殺者が冷徹な目で彼らを射抜いていた。
暗殺者は素早い動きで短剣を回収すると、もう片方の短剣を握ってこちらに殺意を向ける。
「誰だ、お前達は」
「あ、あたしはエリーだよ! そういうキミも、なんでいきなりルドルフに攻撃したのさぁ!」
暗殺者がルドルフを攻撃した事にエリーは怒るが、暗殺者は表情を変えずに近付いていく。
「名を名乗っていなかったな。俺は
驟雨は冷たい表情で自己紹介する。
当然、氷雨が誰なのか知らないユミルはきょとんとする。
「その氷雨という人は、キミの主人なのですか?」
「そうだ。……速雨殿のためにも、お前達にはここで死んでもらう!」
そう言うと驟雨はいきなり襲い掛かってきた。
エリーは攻撃をかわそうとするが、あまりの速さに見切れず斬りつけられる。
「やめてよね、ファナティシズム!」
エリーは勇気の精霊の力を借りてミロの攻撃能力を上げる。
「マ・ギ・デ・ポプル!」
「風の精霊よ、見えざる衝撃を……ウィンドブラスト!」
「当たらないぞ」
ユミルがルドルフに強化魔法をかけた後、ルドルフは驟雨に向かって風の衝撃波を放つ。
驟雨は飛び上がって攻撃をかわすが、そこにミロが突っ込んで驟雨を爪で引き裂く。
「面倒だな……だが! 必ず殺す!」
驟雨は舞うような動きでミロ達を二振りの短剣で切り裂いた。
「「うわぁぁぁぁぁ!」」
「「きゃぁぁぁぁぁぁ!」」
あまりにも速い驟雨の動きに、なすすべもなくダメージを受け続けるルドルフ達。
ルドルフ達の身体から出た血が、驟雨の短剣につくと、驟雨はそれを拭う。
「まったくもう、速雨って奴の命令だったら関係ないのまで巻き込んでもいいわけ!?」
「一人でも多く、人間以外を殺せ……それが速雨殿の命令だからな」
「やっぱり、話は通用しないようですね……ならば討ち取るしかありません!」
そう言ってユミルは杖から火炎弾を放つが、驟雨は攻撃をかわしユミルに馬乗りになる。
「暗剣殺……!」
「が……ぁっ!」
そして、ユミルの首に短剣が刺さると、ユミルは倒れ、仮初の死を迎えた。
「ユミルっ!」
「次は誰かな?」
そう言って、驟雨はルドルフに襲い掛かった。
彼の首に短剣が刺さる直前、エリーが光の盾を出して攻撃を防ぐ。
「あたし達は死にたくないの。だからここから出ていって!」
エリーは光を放って驟雨を攻撃するが、大したダメージにはならなかった。
「俺の邪魔をする者は消す」
「なんて物騒な、だったらあんたもそうなるわよ!」
そう言ってミロは驟雨に飛びついた。
驟雨は彼女が掴みかかる寸前で回避したが、それこそがミロの狙いであった。
「今よ! あいつを無力化させて!」
「分かりました。水の精霊よ、見えざる霧となり彼の者に眠りをもたらせ……スリープミスト!」
ルドルフが呪文を唱えると、水色の霧が驟雨を包み込み、彼の意識を閉ざした。
「……さて、こいつをどうしようかしら」
ミロは、眠っている驟雨の処遇をどうしようかと考えていた。
「いきなり襲ってきたんだから悪い奴ってのは確実よね……。
でも、せっかく無力化したんだし、何かしようかしらね。あ、そうだ、ユミルー!」
「はーい」
戦闘が終了し、仮初の死から復活したユミルが、ミロのところに行って驟雨の顔を見る。
「ねえ、こいつをどうしようかしら?」
「そうですねぇ……とりあえず、小屋に運びましょうか」
「その方がよさそうね」
そう言って、ミロは眠っている驟雨を担ぎ上げると、小屋がある方向に向かっていくのだった。
「人は簡単に主人公の仲間にならない」という事を描写しました。
次回は彼の処遇について、アエルスドロ達が考えます。