ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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驟雨の処遇について、皆が考えます。
しかし、彼はというと……。


第16話 消えた驟雨

「……」

 ルドルフ達は、小屋の中で眠っている驟雨の様子を見ていた。

 現在、彼はルドルフがかけたスリープクラウドの影響で、寝息を立てながら横になっている。

「まったく、こんなのが来るなんてこの世界もどうにかしているわ。ねーアエルスドロー」

「はい?」

 ミロは驟雨の様子を見せるためにアエルスドロを呼んだ。

「ちょっと、こいつの様子を見てくれる?」

「ああ……」

 アエルスドロは、驟雨の顔をじっと見つめた。

 その顔は、穏やかに寝息を立てている。

 

「……寝ているな」

「でしょ? いきなり襲いかかってきたから、こうしたのよ。殺すのも惜しいしね」

「しかし、この後をどうするかが問題だな」

 もし、驟雨をここで起こせば、彼に逃げられる確率が非常に高い。

 眠らせたままでも、いつかは誰かが危険視して彼を殺してしまう可能性が高い。

 そのため、ミロは驟雨の処遇について、アエルスドロに聞こうと思ったのだ。

「私は新しい人材にするか、そのままにするかを選ぶ。

 前者ならマリアンヌが喜ぶと思うが、驟雨自身が喜ぶかは微妙だ。

 後者なら驟雨を縛ったりはしないが、お前の言う通り、惜しい人材をなくすようなものだ」

「う~ん……。優柔不断なのねぇ」

「優柔不断とは、誰の事でして?」

「あ、マリアンヌ」

 二人の話に入ってきたのは、領主のマリアンヌだった。

「この子、誰ですの?」

「驟雨っていう、氷雨に仕える暗殺者よ。

 そいつの命令であたしらを殺しに来たけど、今、眠っているわけよ」

「暗殺者? いい人材になりそうですわね。早速、うちで雇ってみましょうか」

 マリアンヌがにやりと口角を上げると、驟雨に向けて掌をかざし、そして大きく振り下ろした。

「……っ!」

 いきなり頬に衝撃を受けた驟雨が、不機嫌そうな表情で起き上がる。

 マリアンヌは相変わらず、腹に何か秘めている笑みを浮かべている。

「あら、おはよう」

「俺を起こして、どうするつもりだ……」

「決まっているでしょう? わたくしが雇って差し上げますのよ」

「人間のお前が俺を雇う、だと? 悪いが……」

 そう言うと、驟雨は小屋の中で煙玉を投げつけた。

 アエルスドロ達は咳き込んで驟雨の姿も見る事ができなかった。

 そして、煙が消えると同時に、驟雨の姿も消えた。

 

「キィィィィィィ! 逃げられてしまいましたわ!」

 有能な人材に逃げられてしまったため、マリアンヌは悔しがる。

「どうするんだ、マリアンヌ」

「決まっているでしょう? 探しますのよ!」

「でも今日は休むって……」

「いいえ、休日は返上しますわ! さあ皆さん、とっとと驟雨を探しますわよ!」

 そう言って、マリアンヌは二丁拳銃を持って小屋を出ていった。

 

「……マリアンヌは本当に強欲だね。これが悪役令嬢っていうものなのかな?」

 エリーは小屋を出たマリアンヌを見てそう呟いた。

「とにかく、私達も彼女を追わなければな」

 

「見つけましたよ」

「どうして私達を置いていったんだ……」

「わたくしについていかなかったのが悪い! んですのよ」

 マリアンヌは傲岸不遜な態度を崩さなかった。

 アエルスドロはマリアンヌを「良い面もあるがやはり悪役令嬢だな」と思った。

「……さて、どうすれば驟雨は見つかるのかしら」

 マリアンヌは驟雨を怒らせてしまったため、彼を探し出すのは骨が折れる作業だ。

 もし気付かれれば、逃げてしまう事もあるだろう。

 まずは、ナガル地方で情報を集め、有益なものだけを絞らなければならない。

「とりあえず、話を聞いてみましょうか」

 マリアンヌは住民達に驟雨がどこにいるのかを聞いてみた。

 

「驟雨の居場所、ですか?」

「ええ、彼がどこにいるのかを探しておりまして」

 マリアンヌは、早速聞き込みを開始した。

 まず、彼女は驟雨の特徴について住民に話し、彼がどこにいるのかを聞き出す。

「こっちはいい情報が集まりましたわ」

「ああ、僕もう彼に関する情報を集め終わりましたので」

「もうですの!?」

 ルドルフは意外にも勘が鋭かったため、すぐにたくさんの情報を集める事ができた。

 だが、全てが正しい情報であるわけではない。

 ここから、必要な情報だけを絞り出す必要がある。

「う~、どれが正しいのよ。全然分からないわ。えぇい、こうなったら気合で行くしかないわ!」

 ミロは気合で情報を絞り出そうとした。

 しかし、彼女の頭では上手くいかず、ユミルとアエルスドロが代わりに情報を絞り出した。

「驟雨は氷雨にそう命令されているから、あまり遠くには行かないでしょう」

「つまり、ナガル地方のどこかにいるのは確実だ。

 それに、相手は獣人。人工物が多く存在する場所には近付かないだろう」

「う~ん、だとしたら森か洞窟?」

「後者だろう。暗殺者は暗い場所を好むからな」

「そっか、じゃあ洞窟に行けばいいのね!」

 こうして一行は有力な情報を選別し、驟雨の居場所を絞り込んだ。

 まだ手掛かりというレベルなので、一度行って、そこにいるか探そうとした。

 ここから先は、多少の幸運が必要だ。

 

「……よし、目星はつけましたわ」

 一行はマリアンヌを先頭に、どこに驟雨がいるのかを探していた。

「わたくしの前から逃げた驟雨……必ず捕まえてみせますわ……!」

(そもそも逃がしたのはマリアンヌだろ)

「待ちなさいよ、驟雨……!」

 

 その頃、驟雨は、魔物を倒しながら洞窟の中を歩いていた。

 驟雨の周りには魔物の死骸が転がっており、彼の短剣には血もついている。

「……片付いたな。氷雨殿のところに戻らなければ」

 魔物を倒し、主のところに戻ろうとしたその時。

 彼の背後から、少女の声が聞こえてきた。

―あら、そこにいるのは?

「誰だ」

 驟雨がそう言って声のした方に短剣を突きつけると、

 そこには、黒髪を三つ編みにした少女が立っていた。




まだ驟雨は仲間になりませんので、ご了承ください。
次回は、悪役令嬢ものに欠かせない、あの人物が登場します。
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