ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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驟雨戦です。
そう簡単には仲間にならないのが、彼なんです。


第18話 二つの戦い

 驟雨との戦いが始まった。

 

「いくよー!」

 エリーがマリアンヌの銃身に光を纏わせる。

 驟雨は目にも留まらぬスピードでアエルスドロに突っ込むと、毒を塗った短剣を振り下ろした。

「おっと、させませんわよ。ライトショット!」

 マリアンヌは牽制の一発を放って驟雨の攻撃を阻止し、光を纏った銃弾を乱射した。

 銃弾は驟雨の防御が薄くなっている部分を的確に狙い、かなりのダメージを与える。

「ぐうぅぅっ!」

「あなたにはとっとと目覚めてほしいんですけどねぇ」

「いくぞ……トリプルスラッシュ!」

 驟雨は隠し持った毒を塗っている短剣をエリーとルドルフに連射した。

 二人は純魔導師タイプなので、まずは彼らから仕留めるつもりらしい。

「お前達は、私が守る!」

 アエルスドロは盾を構えてルドルフとエリーを庇った。

「ぐ……毒か! だが私には、そんなものは効かない!」

 しかし、ルドルフはダークエルフなので、毒に強い耐性を持っていた。

「大地の精霊よ、その拳を突き上げ給え! アースブラスト!」

 ルドルフは地の精霊の力を借りて驟雨に大量の石礫をぶつけ、のけぞらせた。

「炎よ……」

うぉりゃぁぁぁぁあ!

「がはぁっ!」

 ユミルの魔法の援護を受けたミロが、炎を纏った爪を驟雨目掛けて振り下ろし、服ごと燃やした。

「これで終わりだ! エンチャントスラッシュ!!」

うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 そして、アエルスドロが剣に魔力を付与した後、その勢いで驟雨を切り裂いた。

 

「……く……ぅっ」

 驟雨との戦いは、案外呆気なく終わった。

 彼は瀕死の状態のまま、アエルスドロの呪術で縛られていた。

「さぁ驟雨、わたくしの軍門に下りなさい。

 安心しなさい、降伏した相手を殺すほど、わたくしは鬼ではありませんわよ」

「こ……とわ……る……!」

 驟雨は拘束されていても、必死でマリアンヌの言葉を払っていた。

「貴様に仕えるくらいならば……俺は……!」

 そう言って、驟雨は懐から薬を取り出した。

「! 何をするつもりですの!」

「自ら命を絶つ……!」

 どうやら、驟雨は薬を飲んで自害するつもりのようだ。

「やめなさい!」

「やめろ!」

 アエルスドロとマリアンヌは二人がかりで驟雨を止めにかかった。

 驟雨はなおも抵抗しようとしたが、

 体力が減っているため抵抗する力を持たず、あっさりと組み付かれた。

「く……そ……!」

「さぁ、わたくしと共にナガル地方に行きましょうね~♪」

 マリアンヌが驟雨を背負い、洞窟を出ようとしたその時。

「……下がれ」

「えっ……きゃあ!」

 驟雨は何かに気づいたようで、全員に下がるように言った。

 すると突然、目の前に1体のデーモンと魔物の大群が出現した。

「魔族が来た!?」

「多分、あのデーモンがこの魔物の親玉だと思うけど……」

「ボク達が魔物を倒しますから、アエルスドロとマリアンヌは驟雨を守ってください!」

「ああ」

 ユミルはアエルスドロとマリアンヌに驟雨を任せ、ミロ達と共に魔物の軍団と向かい合った。

 

「薙ぎ払え!」

 ミロが手から光の弾を放ち、インプの群れをまとめて攻撃する。

「ラ・ロタ・ド・イグニ!」

キキィーーーー!

 ユミルが杖から火炎弾を撃って瀕死のインプを倒した。

「勇気の精霊よ、彼の者に勇気を与え給え! ファナティシズム!」

 エリーは精霊魔法を唱えてミロの身体能力を強化する。

 残った魔物がミロを集中攻撃するが、身体能力が強化されており、

 しかもエリーが的確に光の盾を使用したため致命傷にはならなかった。

「崩れなさい!」

 ミロがインプを蹴って浮かせた後、大きく飛び上がってインプを爪で引き裂く。

 そしてユミルの魔法の援護を受けた風の爪が、最後のインプを切り裂き、インプは全滅した。

 

「よし、残っているのは……」

「スライムとボスのデーモンだけ、ですね」

「デーモンは大丈夫だと思うけど、スライムの粘液には気をつけなくちゃね」

 スライムの身体は強い酸性を帯びており、その体液の前では防具による守りが意味を成さず、

 またその弾力性の身体で物理攻撃もほとんど通用しない。

 長期戦になると不利になるので、魔法などの援護で素早く倒す必要があるのだ。

「水の精霊よ、彼の者にその手を伸ばし沈めよ! スワンプ!」

 ルドルフは水の精霊の力を借りてスライムの足元に沼を呼び寄せ、

 スライムを沈めて動きを止める。

「当たれ当たれ!」

 ミロは二体のスライムの弱点を的確に光の弾で撃ち抜いた。

 その後に一体目のスライムを爪で切り裂き、

 二体目のスライムを渾身の力を込めた一撃で真っ二つにして倒し、

 デーモンにも衝撃波でダメージを与えた。

「ひっ……!」

「危ない、ミロさん! ド・ゲイト・デ・テラ・マ・ギ!」

 続けてスライムが腕を伸ばしてミロの腕を掴み、彼女を引きずり込もうとする。

 しかし、ユミルが魔法の矢をスライムの腕に放った事で彼女が飲み込まれる事はなかった。

「危なかったわ。うぅ、手がぬるぬるした……」

 スライムから腕を引っこ抜いて、ぬるぬるした手に不快になるミロ。

 ユミルは「後で何とかしますよ」と言いながらスライムに魔法の矢を放った。

「氷の精霊よ、矢となり貫け! アイスボルト!」

 ルドルフが呪文を詠唱して杖を振り下ろすと、無

 数の氷の矢がスライムを貫き、スライムを氷漬けにする。

「水の精霊よ、傷を癒せ! ヒールウォーター!」

「ありがと!」

 エリーがミロの傷を回復魔法で治すと、ミロは最後のスライムに突っ込んでいく。

「いっくわよー! ノーマーシー!」

 そして、スライムに突っ込むと爪で引き裂き、最後に巨大な雷を落としてスライムを撃破した。

 

「よし、あと一体!」

「グォォォォォォォォ……!」

 残る敵がボスデーモンのみとなったところで、

 ボスデーモンはレッサーデーモンの群れを呼び出した。

「ええっ、まだいるの!?」

「油断は大敵ですよ」

「あー、もう! 何とかしなくちゃいけないってのに!」

 ミロは苛々しながらレッサーデーモンの群れに光の弾を放つ。

「それだけ魔族の軍隊は強力だという事です。

 風の精霊よ、見えざる衝撃を! ウィンドブラスト!」

 ルドルフは風の精霊を呼び出してボスデーモンを攻撃した。

 すると、ボスデーモンが大剣を振り回してミロ達を薙ぎ払った。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!

ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!

 大剣の一撃を受け、四人は大きく吹き飛ばされる。

 四人がよろめいたのを確認したボスデーモンは驟雨を殺すべく、

 アエルスドロとマリアンヌに突っ込んでいった。

「くそ……驟雨は殺させない!」

 アエルスドロがボスデーモンの大剣を盾で受け止めた後、

 衝撃波を飛ばしてボスデーモンの動きを一瞬止める。

「今だ、回復を!」

「おーけー! 生命の上位精霊プリシラよ、その癒しの加護を我等に与え給え!

 エリクシールミスト!」

 エリーは生命の上位精霊プリシラの力を借りて、全員が負っていた傷を一気に全快した。

 これにより窮地を脱出したが、代償としてエリーの魔力が大きく減少し、

 回復魔法を使う力をほぼ失っていた。

 早めに決着をつけ、この洞窟を脱出しなければならない。

 レッサーデーモンは驟雨目掛けて闇魔法を放つが、

 ユミルとルドルフが魔法でバリアを作りそれを防ぐ。

「とにかく、ボスをやっつければいいわけでしょ。早く終わらせて、驟雨を連れていくわよ」

 ミロはボスデーモンの攻撃を回避した後、爪でボスデーモンを引き裂く。

 彼女の攻撃力は先ほどよりもかなり上昇しており、ボスデーモンの体力が一気に減少した。

「ミロさん……」

「……悪いけど死になさいよね。とどめよ」

 そして、ミロは冷たい表情で、ボスデーモンにとどめを刺した。

「後はレッサーデーモンだけ……といっても、ボスがいない今は安心して倒せますよね」

 ボスデーモンを倒した以上、残っているレッサーデーモンはただの雑魚である。

 ルドルフ達はいとも簡単にレッサーデーモンを全滅させた。

 

「これでもう大丈夫だ。今のうちに洞窟を出よう」

「あ……ああ……」

「今はわたくしに任せなさいな♪」

 マリアンヌが驟雨を負ぶった後、ルドルフは速度を上げる魔法で急いで洞窟を出ていった。




~モンスター図鑑~

インプ
下級悪魔。
体格は人間の子供程度で、人を騙す事が得意。

デーモン
中級悪魔。
皆が一般的に想像するような悪魔の姿をしている。
身体能力・魔力共に、人間の比ではない。

レッサーデーモン
下級悪魔。
皆が一般的に想像するような悪魔の姿をしている。
身体能力・魔力共に、人間の比ではない。
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