こういう、領主らしいところを見せなければ、と思っています。
その頃、マリアンヌ、ミロ、ユミルは、領地の開発を行っていた。
「そぉーれ!」
ミロは爪を振るって邪魔な木を切り倒す。
マリアンヌは、雑草を手で引き抜き、それを袋を持っているユミルに渡した。
「ざっと50人くらいは受け入れる事ができるようにすればいいですわね」
「そんなに入るのかしらね。ま、やり過ぎたらいつか報復が来るけどね~」
「報復? どうしてですの?」
「実はね……」
実はミロはかつて、自然災害で城を失った国王に復讐として「殺された」事がある。
結果、国から自然は失われ、滅んでしまったのだという。
「だから人間って、あまり信用できないのよね」
「で、そんな人間と付き合ってるのはどこの誰かしらね?
と、そう言っている間に、雑草を発見、と」
マリアンヌは目の前に広がる雑草を抜いて、ユミルの袋の中に入れる。
歩いていくと、分かれ道に着いた。
マリアンヌ達は右に行く事にしたが、念のために罠があるか調べてみた。
「……何もありませんわね」
「待ってください、マリアンヌ! ここに毒ガスの罠がありますよ!」
「ああ、言われてみれば!」
こんなところにも魔物の手が及んでいるなんて、
信じられないと思ったマリアンヌは毒ガスの罠を解除した。
「早く、ここをどうにかしないといけませんわね」
「そうねえ」
三人が改めて右に進むと、また分かれ道に入った。
左側の道が、入り口側だ。
マリアンヌが注意深く探索すると、魔法で隠された道が見つかった。
ユミルは魔法を解除し、三人はその道に進んだ。
「あら? 昼なのに、暗いのね」
そこは昼であるにも関わらず、まるで夜のように暗かった。
ランタンを用意しなければ、辺りを見渡す事ができない。
「よし、ボクが明かりをつけますね。ライト!」
ユミルは簡単な光魔法を唱え、明かりをつけた。
「これなら辺りを見渡せますわね」
マリアンヌは明かりを頼りにしつつ、雑草を抜いていた。
そして、木を切り倒そうとした時、ミロは何かを踏んでしまう。
「何、これ……あ!?」
ミロが慌てて足元を見ると、そこには死体が転がっていた。
「死体ですって!? でもこれ、一体なんですの?」
マリアンヌがミロの踏みつけた死体を見る。
彼女には何が何だか分からないようだが、ミロとユミルは死因を知っていた。
「うん、間違いありませんね」
「こいつは血を抜かれて死んでいる。……ここに屯しているのは、ユミルと同じ
「吸血鬼ですって!?」
まさか、高位の不死者がいるなんて……そう思ったマリアンヌはわなわなと身体を震わせた。
もちろん、恐怖からではなく、怒りからである。
三人は死体がある場所を後にし、左側の道を歩いていった。
この場所には二つの道があり、中央に魔物がいる。
どうやら、次の道に進むための瓦礫をどける作業をしているらしい。
「ギ?」
「ギギ?」
魔物はマリアンヌ達に気付くと、作業の手を止め、武器を取って襲いかかってきた。
「来ましたわ! ガトリングショット!」
マリアンヌは素早い動きで二丁拳銃を乱射し、魔物の身体に大量の穴を開けた。
オークウォリアーはハンマーを振り回してマリアンヌ達を薙ぎ払う。
マリアンヌは華麗な動きで攻撃をかわし、その攻撃はミロとユミルに命中した。
「ウガァァァァァァァァ!」
「「きゃぁぁ!」」
「うわぁぁ!」
オークウォリアーがハンマーを地面に叩きつけ、衝撃波で三人を攻撃した。
「生意気ね! まずはあんたから倒すわ! 破壊の爪よ……食らえ!」
ミロは爪を振りかざし、衝撃波となってオークウォリアーをずたずたに切り裂く。
その後、ユミルの魔法が命中し、オークウォリアーは唸り声を上げて戦闘不能になった。
「ウオォォォォォォォォ!」
「うわぁお!」
オークウォリアーはユミルに突っ込んでハンマーで殴る。
「受けなさい!」
マリアンヌは後方から二丁拳銃を乱射して魔物を足止めし、
ミロとユミルが戦いやすいようにサポートする。
再びオークウォリアーはハンマーでミロとユミルを殴りつけるが、
最早瀕死の状態だったため動きに切れがなくなった。
「炎よ!」
「食らえーーーーーっ!!」
そして、ミロとユミルが衝撃波と炎魔法を放つと、魔物は一掃されるのだった。
「こんなところにまで魔物がいるなんて……
やっぱりナガル地方は辺境なのにどこかおかしいですわね」
「そもそも、こんな場所に攻めてくる奴なんて、一体誰なのかしらね?」
「分かりません……でも、今は開発が先ですよ」
三人は道を引き返した後、奥の右側の道を通った。
道はやはり暗く、ユミルのライトの魔法がなければまともに歩けないだろう。
調べてみると、中には武器と防具が置かれていた。
ほとんどは粗末で、使い物にならないものばかりだが、
探してみれば使えるものがあるかもしれない。
「この辺に、何か使えるものはあるかしら……あら?」
マリアンヌがあちこちを調べてみると、マジックアイテムの鎧を見つけた。
それは、軽量の素材を使った、羽のように軽い鎧、フェザーアーマーだった。
「これ、マリアンヌにピッタリな鎧じゃない?」
「わたくしとしては、ごてごてしたものはあまり着たくないんですけどね……
でも、せっかく見つけたんだし、着てみましょうか」
そう言って、マリアンヌはフェザーアーマーを装着した。
試しに一歩歩いてみると、確かに鎧の重さは感じられなかった。
マリアンヌは喜んで飛び跳ねる。
「あら、まぁ! なんと軽いでしょう! まるで何も着ていないようですわ!
本当ならアエルスドロに着せたかったけど、彼、壁役ですからね……くすくす」
(あぁ~、やっぱりマリアンヌらしいわね)
(そうですね)
「こんなに魔物がいるのなら仕方ありませんわね。
今回はここまでにして、一旦、合流しましょう」
そう言って三人が入り口に戻ろうとすると、
そこには杖を持った少女と、彼女に付き従う青年が入り口に立ち塞がっていた。
少女と青年の口からは異常発達した犬歯が見えており、彼らが吸血鬼である事が分かる。
「あ、あなたが吸血鬼なのね!」
「そうよ。もう人間が入ってきたのね……早いわ。
こんな早くに奥の手なんて使いたくないんだけど、まあいいか」
「奥の手……?」
「ラ・カリ・ド・テネブ!」
少女が呪文を唱えると、周囲が暗闇に包まれた。
マリアンヌ達がいる場所から少しでも先に進むと暗闇になり、辺りが見えなくなってしまう。
「辺りが暗闇に……!? こうなったら、もう一度明かりをつけますよ!」
「その必要はないわ! 光よ!」
ミロは周囲にあるマナそのものに働きかけ、一瞬で暗闇を打ち払った。
「え、嘘、対策済み? ちょ、待っ……」
「問答無用ですわ! ガトリングショット!」
そう言って、マリアンヌは二丁拳銃を構えて吸血鬼を素早く撃ち抜いた。
「ふ、不意打ちとは卑怯な……」
「卑怯で結構、わたくしは悪役令嬢ですもの。
それよりも、魔物の方がよっぽど卑怯ではなくて?」
「くそ……ならば……! ラ・ロタ・ド・イグニ!」
開き直るマリアンヌに対し、ヴァンパイアメイジは逆上して周囲のマナを集束、
炎の弾と化してユミルに投射した。
ユミルは何とかかわそうとするが炎の弾は飛び散り、ユミルに全弾命中した。
「がはぁっ!」
「ユミル!」
「これは早めに倒さないとダメみたいですわね……。ミロ、ユミル、全力で行きますわよ」
「そのつもりです! ド・ポプル・デ・イグニ……」
「させるか!」
「させませんわ!」
ユミルの呪文詠唱をヴァンパイアが阻止しようとするが、
マリアンヌが拳銃で威嚇射撃したため阻止できた。
「デ・フラゴ!」
そして、ユミルが呪文を唱え終わると、ヴァンパイアが大爆発した。
不死系の魔物に、炎属性の魔法は効果が抜群なようだ。
大爆発が治まると、ヴァンパイアは灰となった。
「ふ……ふふ、残念ね! 我々吸血鬼は、灰からでも復活できるのよ……!
だから、燃やしても……」
「復活しなければいいんでしょう? ホーリーバレット!」
マリアンヌは聖なる弾丸を、灰になったヴァンパイア目掛けて撃つと、
その灰は跡形もなく消滅した。
「そ、そんな……」
「残ったのはあなただけよね。食らいなさい!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ミロの光を纏った拳が、ヴァンパイアメイジに命中し、吹き飛ぶ。
ヴァンパイアメイジは光速の拳に反応できず、大ダメージを受けてしまう。
「ホーリーバレット!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
マリアンヌの聖なる弾丸が、ヴァンパイアメイジを穿つ。
「よくも……よくも! デ・ゲイト・ラ・ロタ……」
「させませんわよ」
マリアンヌはヴァンパイアメイジの不意を突き、威嚇射撃で詠唱を中断する。
最早、三人にとってヴァンパイアメイジは脅威ではなかった。
「よし、後はあたしに任せて。炎よ、光よ、彼の者を焼き尽くせ!」
「あ……いやああああああああああああ!!」
そして、ミロが両手を掲げると、炎と光がヴァンパイアメイジを焼き尽くした。
「よし! わたくし達の勝利、ですわね!」
~モンスター図鑑~
オークウォリアー
オークの中でも戦士として優れた能力を持った者。
戦闘に慣れているので格段に強い。
ヴァンパイア
紅く輝く瞳と血の気がないような白い肌を持つモンスター。
総じてプライドが高いものが多い。日光が苦手。
ヴァンパイアメイジ
初級の魔法を使いこなすヴァンパイア。
ただし、初級と言っても威力は非常に強烈である。