ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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マリアンヌ達がナガル地方を開発します。
こういう、領主らしいところを見せなければ、と思っています。


第21話 領地開発

 その頃、マリアンヌ、ミロ、ユミルは、領地の開発を行っていた。

「そぉーれ!」

 ミロは爪を振るって邪魔な木を切り倒す。

 マリアンヌは、雑草を手で引き抜き、それを袋を持っているユミルに渡した。

「ざっと50人くらいは受け入れる事ができるようにすればいいですわね」

「そんなに入るのかしらね。ま、やり過ぎたらいつか報復が来るけどね~」

「報復? どうしてですの?」

「実はね……」

 実はミロはかつて、自然災害で城を失った国王に復讐として「殺された」事がある。

 結果、国から自然は失われ、滅んでしまったのだという。

「だから人間って、あまり信用できないのよね」

「で、そんな人間と付き合ってるのはどこの誰かしらね?

 と、そう言っている間に、雑草を発見、と」

 マリアンヌは目の前に広がる雑草を抜いて、ユミルの袋の中に入れる。

 歩いていくと、分かれ道に着いた。

 マリアンヌ達は右に行く事にしたが、念のために罠があるか調べてみた。

「……何もありませんわね」

「待ってください、マリアンヌ! ここに毒ガスの罠がありますよ!」

「ああ、言われてみれば!」

 こんなところにも魔物の手が及んでいるなんて、

 信じられないと思ったマリアンヌは毒ガスの罠を解除した。

「早く、ここをどうにかしないといけませんわね」

「そうねえ」

 三人が改めて右に進むと、また分かれ道に入った。

 左側の道が、入り口側だ。

 マリアンヌが注意深く探索すると、魔法で隠された道が見つかった。

 ユミルは魔法を解除し、三人はその道に進んだ。

 

「あら? 昼なのに、暗いのね」

 そこは昼であるにも関わらず、まるで夜のように暗かった。

 ランタンを用意しなければ、辺りを見渡す事ができない。

「よし、ボクが明かりをつけますね。ライト!」

 ユミルは簡単な光魔法を唱え、明かりをつけた。

「これなら辺りを見渡せますわね」

 マリアンヌは明かりを頼りにしつつ、雑草を抜いていた。

 そして、木を切り倒そうとした時、ミロは何かを踏んでしまう。

「何、これ……あ!?」

 ミロが慌てて足元を見ると、そこには死体が転がっていた。

「死体ですって!? でもこれ、一体なんですの?」

 マリアンヌがミロの踏みつけた死体を見る。

 彼女には何が何だか分からないようだが、ミロとユミルは死因を知っていた。

「うん、間違いありませんね」

「こいつは血を抜かれて死んでいる。……ここに屯しているのは、ユミルと同じ吸血鬼(ヴァンパイア)よ」

「吸血鬼ですって!?」

 まさか、高位の不死者がいるなんて……そう思ったマリアンヌはわなわなと身体を震わせた。

 もちろん、恐怖からではなく、怒りからである。

 

 三人は死体がある場所を後にし、左側の道を歩いていった。

 この場所には二つの道があり、中央に魔物がいる。

 どうやら、次の道に進むための瓦礫をどける作業をしているらしい。

「ギ?」

「ギギ?」

 魔物はマリアンヌ達に気付くと、作業の手を止め、武器を取って襲いかかってきた。

「来ましたわ! ガトリングショット!」

 マリアンヌは素早い動きで二丁拳銃を乱射し、魔物の身体に大量の穴を開けた。

 オークウォリアーはハンマーを振り回してマリアンヌ達を薙ぎ払う。

 マリアンヌは華麗な動きで攻撃をかわし、その攻撃はミロとユミルに命中した。

ウガァァァァァァァァ!

「「きゃぁぁ!」」

うわぁぁ!

 オークウォリアーがハンマーを地面に叩きつけ、衝撃波で三人を攻撃した。

「生意気ね! まずはあんたから倒すわ! 破壊の爪よ……食らえ!」

 ミロは爪を振りかざし、衝撃波となってオークウォリアーをずたずたに切り裂く。

 その後、ユミルの魔法が命中し、オークウォリアーは唸り声を上げて戦闘不能になった。

ウオォォォォォォォォ!

「うわぁお!」

 オークウォリアーはユミルに突っ込んでハンマーで殴る。

「受けなさい!」

 マリアンヌは後方から二丁拳銃を乱射して魔物を足止めし、

 ミロとユミルが戦いやすいようにサポートする。

 再びオークウォリアーはハンマーでミロとユミルを殴りつけるが、

 最早瀕死の状態だったため動きに切れがなくなった。

「炎よ!」

「食らえーーーーーっ!!」

 そして、ミロとユミルが衝撃波と炎魔法を放つと、魔物は一掃されるのだった。

 

「こんなところにまで魔物がいるなんて……

 やっぱりナガル地方は辺境なのにどこかおかしいですわね」

「そもそも、こんな場所に攻めてくる奴なんて、一体誰なのかしらね?」

「分かりません……でも、今は開発が先ですよ」

 三人は道を引き返した後、奥の右側の道を通った。

 道はやはり暗く、ユミルのライトの魔法がなければまともに歩けないだろう。

 調べてみると、中には武器と防具が置かれていた。

 ほとんどは粗末で、使い物にならないものばかりだが、

 探してみれば使えるものがあるかもしれない。

「この辺に、何か使えるものはあるかしら……あら?」

 マリアンヌがあちこちを調べてみると、マジックアイテムの鎧を見つけた。

 それは、軽量の素材を使った、羽のように軽い鎧、フェザーアーマーだった。

「これ、マリアンヌにピッタリな鎧じゃない?」

「わたくしとしては、ごてごてしたものはあまり着たくないんですけどね……

 でも、せっかく見つけたんだし、着てみましょうか」

 そう言って、マリアンヌはフェザーアーマーを装着した。

 試しに一歩歩いてみると、確かに鎧の重さは感じられなかった。

 マリアンヌは喜んで飛び跳ねる。

「あら、まぁ! なんと軽いでしょう! まるで何も着ていないようですわ!

 本当ならアエルスドロに着せたかったけど、彼、壁役ですからね……くすくす」

(あぁ~、やっぱりマリアンヌらしいわね)

(そうですね)

 

「こんなに魔物がいるのなら仕方ありませんわね。

 今回はここまでにして、一旦、合流しましょう」

 そう言って三人が入り口に戻ろうとすると、

 そこには杖を持った少女と、彼女に付き従う青年が入り口に立ち塞がっていた。

 少女と青年の口からは異常発達した犬歯が見えており、彼らが吸血鬼である事が分かる。

「あ、あなたが吸血鬼なのね!」

「そうよ。もう人間が入ってきたのね……早いわ。

 こんな早くに奥の手なんて使いたくないんだけど、まあいいか」

「奥の手……?」

「ラ・カリ・ド・テネブ!」

 少女が呪文を唱えると、周囲が暗闇に包まれた。

 マリアンヌ達がいる場所から少しでも先に進むと暗闇になり、辺りが見えなくなってしまう。

「辺りが暗闇に……!? こうなったら、もう一度明かりをつけますよ!」

「その必要はないわ! 光よ!」

 ミロは周囲にあるマナそのものに働きかけ、一瞬で暗闇を打ち払った。

「え、嘘、対策済み? ちょ、待っ……」

「問答無用ですわ! ガトリングショット!」

 そう言って、マリアンヌは二丁拳銃を構えて吸血鬼を素早く撃ち抜いた。

「ふ、不意打ちとは卑怯な……」

「卑怯で結構、わたくしは悪役令嬢ですもの。

 それよりも、魔物の方がよっぽど卑怯ではなくて?」

「くそ……ならば……! ラ・ロタ・ド・イグニ!」

 開き直るマリアンヌに対し、ヴァンパイアメイジは逆上して周囲のマナを集束、

 炎の弾と化してユミルに投射した。

 ユミルは何とかかわそうとするが炎の弾は飛び散り、ユミルに全弾命中した。

「がはぁっ!」

「ユミル!」

「これは早めに倒さないとダメみたいですわね……。ミロ、ユミル、全力で行きますわよ」

「そのつもりです! ド・ポプル・デ・イグニ……」

「させるか!」

「させませんわ!」

 ユミルの呪文詠唱をヴァンパイアが阻止しようとするが、

 マリアンヌが拳銃で威嚇射撃したため阻止できた。

「デ・フラゴ!」

 そして、ユミルが呪文を唱え終わると、ヴァンパイアが大爆発した。

 不死系の魔物に、炎属性の魔法は効果が抜群なようだ。

 大爆発が治まると、ヴァンパイアは灰となった。

「ふ……ふふ、残念ね! 我々吸血鬼は、灰からでも復活できるのよ……!

 だから、燃やしても……」

「復活しなければいいんでしょう? ホーリーバレット!」

 マリアンヌは聖なる弾丸を、灰になったヴァンパイア目掛けて撃つと、

 その灰は跡形もなく消滅した。

「そ、そんな……」

「残ったのはあなただけよね。食らいなさい!」

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 ミロの光を纏った拳が、ヴァンパイアメイジに命中し、吹き飛ぶ。

 ヴァンパイアメイジは光速の拳に反応できず、大ダメージを受けてしまう。

「ホーリーバレット!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」

 マリアンヌの聖なる弾丸が、ヴァンパイアメイジを穿つ。

「よくも……よくも! デ・ゲイト・ラ・ロタ……」

「させませんわよ」

 マリアンヌはヴァンパイアメイジの不意を突き、威嚇射撃で詠唱を中断する。

 最早、三人にとってヴァンパイアメイジは脅威ではなかった。

「よし、後はあたしに任せて。炎よ、光よ、彼の者を焼き尽くせ!」

「あ……いやああああああああああああ!!

 そして、ミロが両手を掲げると、炎と光がヴァンパイアメイジを焼き尽くした。

 

「よし! わたくし達の勝利、ですわね!」




~モンスター図鑑~

オークウォリアー
オークの中でも戦士として優れた能力を持った者。
戦闘に慣れているので格段に強い。

ヴァンパイア
紅く輝く瞳と血の気がないような白い肌を持つモンスター。
総じてプライドが高いものが多い。日光が苦手。

ヴァンパイアメイジ
初級の魔法を使いこなすヴァンパイア。
ただし、初級と言っても威力は非常に強烈である。

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