ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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ヒロインと悪役令嬢が出会います。
ですが、どこかきな臭いところがあるようで……。


第23話 エマとの再会

 一艘の船が、帝都ユーリエルの港へ入ってきた。

 今日は快晴なので、アエルスドロは日傘を差していた。

「わたくしは今、ユーリエルに帰ってきましたわ!」

 久々に故郷に帰還したマリアンヌは、感慨と共にタラップを降りて港を睥睨する。

 アエルスドロやルドルフも、港に着いて帝都を見つめた。

「ここが、マリアンヌの故郷か」

「なんか、重々しい場所だねー」

 軍事国家というだけあって、質実剛健がそのまま形となったかのような港だった。

「確か、ここは人間以外立ち入り禁止の帝国だっただろう?

 私達は、どうすれば帝都に入れるんだ」

「それならわたくしに任せなさい。帝国貴族として必ず入らせてもらいますわ」

 一行はマリアンヌを先頭に、帝都ユーリエルに行こうとした。

 すると、一行はマリアンヌの父とその隣の小動物を目撃した。

 小動物に囲まれているのは、黒髪の少女だった。

「エマ!?」

 マリアンヌが叫ぶと、小鳥達が飛び立ち、少女の前にいた小動物が少し距離を取る。

 小動物の中から、少女――エマが現れた。

「お久しぶりですわね、エマ・クレーシェル」

 マリアンヌはエマにそう挨拶すると、エマは華やかな笑顔を見せて頷く。

「ナガル地方での活躍は聞いていますよ」

「まったく、あんたのせいでこんな事になりましたのよ」

 マリアンヌはエマに聞こえないように小声で愚痴を吐いた。

 辺境の地に左遷されたのは自業自得だが、アエルスドロは口に出さなかった。

「とにかく、わたくしがここに来た理由は、あなたと決着をつけるためですわ」

 そう言ってマリアンヌはエマを勢いよく指差した。

 いきなりの敵対宣言にエマは困惑し、瞳をキラキラと輝かせて嘆く。

「どうしてそんな事をおっしゃるのです?」

「わたくしの婚約者を奪ったからですわ! 気に入らなくて、当然ですわ!」

 エマはマリアンヌにはっきりと敵対されたため、涙ぐんだ。

 子猿がハンカチを取り出して彼女の涙を拭う。

「……マリアンヌ。エマ様に失礼だぞ」

 マリアンヌの傲慢な態度に、彼女の父フロイデンシュタイン伯爵が苦言を呈す。

「来てましたのね、お父様」

「ああ、お前に久々に会えて嬉しいよ。……だが、帰ってこないでくれ」

 久々に娘と再会したフロイデンシュタイン伯爵。

 だが、フロイデンシュタイン伯爵は娘の帰還を良く思っていなかった。

「お前が今までに行ってきた悪事のツケだ。しかも後ろには、亜人がいるではないか」

「げ」

「人間至上主義の国家に汚い亜人を持ってくるとは、お前も汚くなったものよ。

 いや、元々汚いからそれは問題ない、か」

「ふんっ」

 つまり、マリアンヌは事実上、ガルバ帝国の帝都にはいられなくなったのだ。

 マリアンヌが拗ねていると、ロルフがやって来た。

「ロルフ?」

「ご安心ください。皆さんには、帝都ホテルのスイートルームを用意してあります」

「手回しが良くて助かりますわ。ではエマ、ごきげんよう」

 そう言って、マリアンヌ達はその場を去っていき、帝都ユーリエルのホテルに向かっていった。

 

 こうして、アエルスドロ達はロルフの案内で帝都ホテルに向かった。

 内装は豪奢で、見る者の目を楽しませ、サービスも行き届いているまさに一流のホテルだ。

 アエルスドロ達は、マリアンヌがいるという事で、最上階のスイートルームに泊まっていた。

「ふぅ~。色々ありましたけど、何とか故郷に帰る事ができましたわね」

 マリアンヌはソファーに広がるように座り、

 アエルスドロとルドルフはその隣で静かに腰掛ける。

 エリーはルドルフの頭上を飛び回っており、驟雨は一人で黙々と武器の手入れをしている。

 ミロとユミルは、ソファーで雑魚寝している。

「マリアンヌがいなかったら私達は連行されていただろうな」

「そして、最悪処刑でしょう」

「やだー、処刑いやー!」

 処刑、という言葉を聞いたエリーが震えてルドルフに抱き着く。

「僕がいるから、安心してください」

「ありがと、ルドルフ……」

 七人がそんな他愛のない会話をしていると、向こうから声が聞こえてきた。

「皆様、こちらに来てください」

 声の高さからして、どうやら女性のようだ。

 七人がその声のした方に行くと、

 待っていたのは赤のポニーテールと茶色い瞳を持つ重装備の女性だった。

「まずは、あなたの名前をお聞きしたい」

「私の名はティファニー。ギルド『太陽の矢』のマスターをしている」

 ティファニーは一礼してアエルスドロ達に話をする。

「へぇー、あなたギルドマスターでしたのね。良いコネクションにはなりそうですわ」

 マリアンヌは、腹に何かを溜めていそうな笑みを浮かべた。

 ティファニーはそれを気に留めずに話を続ける。

「……単刀直入に言う。私がこちらに来たのは、君達に依頼があったからだ」

「依頼?」

「エマの人気が素晴らしいのはご存知だろう?」

 ティファニーの言葉に頷くマリアンヌ。

 エマは老若男女だけでなく、動物にも好かれるほどの人気者だからだ。

「その中でも、三人の貴族が彼女に夢中であり、何やら良からぬ事を企んでいるようだ」

 ガルバ帝国では貴族の権力が強くなっている。

 ティファニーはそれも利用しているのだろう、と付け加えた。

「まさか、エマがその三人を唆して?」

「いや、まだ彼女が犯人と決まったわけではない。私は、この四人の調査をお願いしたい」

「?」

 何故ギルドマスター自身が行かないのか。

 疑問に思ったルドルフは、ティファニーに質問をした。

「何故、僕達が調査をするのです?」

「私も、ある程度この件について調査したのだが、ことごとく妨害に遭って失敗した」

「でも、そんなの、あたしには無理だよ!」

「エマもそこにいる女には気を許すだろう。パーティーにはあの貴族も出席する予定だ。

 君達も近付きやすいだろう」

「……」

 ティファニーはルドルフの質問にそう答えた。

 しかし、それでもアエルスドロ達が調査する理由が乏しい。

 アエルスドロは依頼を受ける気にはなれなかった。

 その時、ユミルが思い出すようにこう言った。

「ちょっと待ってください。確か、パーティーではマリアンヌとエマが対決するんですよね?」

「あら、ご存じで」

「その前に、エマが犯人だと分かればマリアンヌが勝ちますよ」

「……」

 ユミルの言葉に気づいたマリアンヌは、満面の笑みを浮かべてこう言った。

「その話、引き受けましたわ!」

「ありがとう。実は私も調査しすぎて皇室に睨まれていたのでな。本当に助かるよ」

「わたくしはエマさえ倒せば何でもよろしいですわ。さぁ、皆さん、行きますわよ!」

「はい(マリアンヌは分かりやすい人だなぁ)」

 

 こうしてアエルスドロ達は、ガルバ帝国の闇を暴くために、

 ティファニーに代わって調査する事にしたのだった。




次回はエマの動向をマリアンヌが調査します。
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