ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

26 / 60
文字通りの回です。
エマとマリアンヌの対比も、表現してみました。


第25話 情報収集

 ガルバ帝国のホテルの一室に、一人の男が椅子に縛られていた。

 ルドルフは男を椅子に座らせ、両手をロープで縛って意識を取り戻させた。

「私に何をするつもりだ」

「何をしているのか、聞かせてもらうよ」

 じりじりとエリーは男に近付き、じっと見つめた。

 男も、エリーを見つめ返した。

 しばらく、沈黙の時が流れる。

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 10分後、ふと、男がぽつりと吐いた。

「ああ……こんなか弱い妖精に、何か言えないわけがないだろう……」

「? ? ?」

 か弱い妖精、と言われたエリーがキョトンとする。

 確かに肉体的にはそうであるが、精神的にはそうとは言えないからだ。

「情報を全て話すから、命までは取らないでくれ」

「分かりましたわ。全て話したらあなたを解放しましょう」

 ふふふ、とマリアンヌは微笑んだ。

 メイベンは身の安全の保証と引き換えに、知っている事をアエルスドロに全て話した。

 

 ・男の名はメイベンで、大神官の息子。

 ・あの計画を持ちかけたのはエマ。

 ・黒髪の男の名はヒーヴェルで、大商人の息子。

 ・金髪の男の名はケルミットで、大魔導師の息子。

 ・三人とも、親の権力を利用して、国家を揺るがすような事件を企んでいるらしい。

 

「……大体分かった。これを、ティファニーに報告すればいいのだな」

「分かったら、とっとと解放してくれ」

「かしこまりましたわ。では、あなたは帰ってよろしい」

 マリアンヌはメイベンを解放した後、依頼主のティファニーを呼びつけた。

 すると、赤い髪をポニーテールにした女性、アエルスドロ達の依頼主、ティファニーが現れた。

「ああ、こんにちは」

「お茶でもどうぞ。そこの人! お茶を!」

 マリアンヌは近くにいた従業員を呼び、ティファニーにお茶を出すように言った。

 従業員がティファニーにお茶を出した後、ティファニーは口を開いた。

「何か、新しい情報でも入ったか?」

「大神官、大商人、大魔導師の息子がエマと一緒に何かを企んでいるようですわよ」

「やはり、あの三人が動いていたんだな」

 ティファニーはどこか訝し気な表情になった。

 あの三人は権力を嵩に着て威張るだけの能無し貴族である。

 そんな彼らが何故、大きな事件を企んでいるのか、ティファニーはそれが引っかかっていた。

「……やはりおかしい。絶対に何か裏がある」

「なら、そいつらに直接聞くしかありませんわ」

 しかし、もしも三人が本当に能無しならば、彼らは囮の可能性がある。

 また、現在はマリアンヌよりもエマの方が人気だ。

 有力な証拠を掴まなければ、エマを捕まえる事はできない。

「それよりも、あの青い宝石は一体何だ?」

「私の方で調べたいから取ってきてくれ」

「よし、まずはケルミットを見つけるぞ。確か緑の大きな屋根に行ったな。皆、襲撃に行くぞ!」

「ええ!」

 そう言って、マリアンヌ達は緑の大きな屋根の家に向かった。

 

 ガルバ帝国の緑の大きな屋根がある家に、アエルスドロ達は忍び足で侵入していた。

 アエルスドロはこっそりと家に近づいて、ドアから覗き込んだ。

 中にはケルミットがいて、黒髪を三つ編みにした少女、エマに跪いていた。

「エマ様、我々は今、尾行されているようです」

「まぁ、そうですの? 子猿さん、ちょっと様子を見てくれないかしら」

「キキッ!」

 子猿はエマの下から離れ、飛び跳ねながらドアの場所へ駆けていった。

 そして、器用な手先でドアを開けると、アエルスドロ達の姿が見えた。

「しまっ……!」

「この猿、私達が尾行していた事を知っていたのか!?」

「ちっ、ばれては仕方ありませんわね……。

 エマ・クレーシェル! わたくしは、あなたに勝負を挑みますわ!」

 マリアンヌは堂々とドアを開けて、緑の大きな屋根の家の中に入った。

 アエルスドロ達も彼女についていき、子猿はエマの下へと戻った。

「マリアンヌ様、貴女に相談があります」

「何なりと」

「そこにいるダークエルフを、殺してください」

 そう言って、エマはアエルスドロを指差した。

「殺せ、ですって?」

「貴女もガルバ帝国民ならば、人間以外の種族は根絶やしにするべきでしょう?

 それなのに、こんなにたくさん亜人を連れてきて……」

 エマはアエルスドロ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨に対し憎しみの目を向けていた。

 やはり、彼女はただの「良い人」ではなかった。

「ですが、ここで貴女以外を手にかければ、私は究極のガルバ帝国貴族令嬢になれる。

 誰にでも優しい、完全無欠の令嬢に!」

「させませんわ!」

 マリアンヌはそう言って、エマに銃弾を飛ばした。

 もちろん、威嚇射撃であり、殺傷力はない。

「な、何故……?」

「本当の人間至上主義というのは、人間以外の種族を『排除』する事。

 『殺す』ことではありませんわ! あなたは間違っていますわ!」

「間違い?」

「ええ……。それに、わたくしはもう、ガルバ帝国の民ではなく、ナガル地方の民なのですわ!」

 ガルバ帝国における亜人達の安らぎの地たる、ナガル地方。

 それを、エマによって人間だけの地方にされる事を、マリアンヌは蛇蝎の如く嫌っているのだ。

「わたくしは悪役令嬢として、ヒロインであるあなたを倒しますわ!」

 マリアンヌはエマにそう毅然と言い切った。

 その言葉を聞いたエマは、くすっと微笑み、そして冷たい声でこう言った。

「……本当に残念です。あなたには……死んでもらいましょう。メイベンさん、お願いします」

「エ、エマ様のために!」

 メイベンが指を鳴らすと、精鋭兵達がアエルスドロ達を取り囲んだ。

「それでは、ごきげんよう」

「待ちなさい!」

 マリアンヌは急いでエマを追いかけるが、子猿はエマを抱え上げて、テレポートで姿を消した。

 残ったメイベン達が身構える。

「みんな、行きますわよ!」

「ああ……!」

「絶対に負けないんだから!」




どんな貴族であっても容赦しない、それがマリアンヌです。
次回はバカ貴族の一人との戦いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。