でも、マリアンヌはそんなに鬼ではありません。
馬鹿貴族の一人、メイベンを倒した一行は、次に誰をターゲットにしようか考えていた。
「まさか、エマが悪者だったとは……」
「多分、その推理は少しだけ間違っておりましてよ」
「というと?」
「確かにエマはヤな事ばかりしてますけど、それは本当に彼女の望みですの?」
マリアンヌ曰く、エマが本心で悪事をしているとは限らないらしい。
少なくとも、彼女に力を貸している者がいるのは確かだとマリアンヌは考えていた。
それを聞いたアエルスドロは、エマが連れている猿を怪しんでいた。
「後はケルミットのところに行けばいいんだな」
「どうして?」
「一番厄介なのは、こいつだと思いますもの。先に潰しておけば何とかなりますわ」
「それだけですか……」
マリアンヌの提案に反対意見はなかった。
一行は、ケルミットの館へと向かう事になった。
「おお、やってくれるな、ティファニー」
ティファニーのおかげで、ケルミットの館の裏口は開いていた。
彼女の仲間であるルシアによると、ケルミットは地下室に向かったそうだ。
「地下に向かうぞ。訓練場のようだが……」
アエルスドロ達が地下へ降りていくと、鍵がかかった鉄の扉を見つけた。
「罠は俺が解除しよう」
驟雨は扉に近付き、罠の解除を試みた。
念のため、鍵以外にも別の罠があるかどうかも調べてみた。
すると、心強き者に反応して攻撃を行う罠、クレリックバスターを発見した。
「まずいな……。エリー、お前が攻撃を食らってしまうかもしれない。
もう一つの罠も解除しておくぞ」
驟雨は、無事にクレリックバスターを解除し、奥に向かう扉が開いた。
「では、先を急ぎますわよ」
通路をさらに奥へと進んでいくと、部屋を見つけた。
どうやら、ここは訓練場のようだ。
床はねばねばしていて、それ以外に変わった特徴はなかった。
「この床のねばねば、何かあるのだろうか……」
「調べましょう」
驟雨とマリアンヌは部屋に入り、様子を見た。
「……ん?」
驟雨はこの部屋にあるトラップに気づいた。
床には罠が仕掛けられていて、スライムがびっしりと埋まっていた。
もし、彼が気付かなければ、アエルスドロ達はスライムの奇襲を受けていただろう。
「邪魔なスライムは、始末する」
そう言って、驟雨は二振りの短剣を構え、仲間と共にスライムと戦った。
しかし、奇襲を受けなかったため、スライムをあっさりと倒す事に成功した。
一行が訓練場を乗り越えると、新しい部屋が見えてきた。
奥からは、工場のような音が聞こえてくる。
「何か作ってますの?」
一行が部屋に入ってみると、そこには大きな機械があった。
不気味な青い肉塊がベルトコンベアで流れてきて、機械が動くと、
青いブローチが次々と作られていく。
「えええ、まさかこれがあのチャームブローチの原料だったの!?」
「気持ち悪いですね……」
ミロとユミルがチャームブローチの原料と製造工程を見て絶句する。
長く生きている二人も、これを見るのは初めてのようだ。
「間違いない、これは邪悪なアイテムだよ。あっ! あそこに誰かがいるよ!」
ふと、エリーが見ると、部屋の奥でケルミットがうっとりとその光景を眺めていた。
ケルミットの目は、狂気に満ちていた。
「美しい……」
マリアンヌは、彼から事情を聴くために、ケルミットを捕えようとした。
ケルミットは油断していたのか、簡単に捕まえる事ができた。
マリアンヌは縄でケルミットを縛った後、彼から安全にチャームブローチを外した。
すると、ケルミットの瞳が元に戻る。
どうやら、自我を取り戻したようだ。
「……! ここは……」
「あなたはエマの命令で、チャームブローチを作っていましたね?」
ルドルフの言葉を聞いたケルミットが頷く。
ケルミットはエマに言われるままに、
彼女に渡された肉塊をチャームブローチに変える機械を設置していたという。
「もしも、チャームブローチが広がったら、世界中の人がエマに惚れちゃうわね。
それこそ、男も女も関係なく」
「そんなの、嫌ですわ! とにかく、ケルミットはナガル地方に身を隠しなさい」
「うん。助けてくれてありがとう」
こうして、ケルミットはマリアンヌにより保護され、無事にナガル地方の住民となった。
「この宝石は、押収する必要がありますわね」
「ああ。ティファニーに頼んでおこう」
そして、この量産された宝石は、ティファニー達により押収された。
「では、私達は急いでヒーヴェルを確保しに行きましょう」
「分かった」
一行は、ヒーヴェルの家へ向かうのであった。
個人的に悪役令嬢って、ちょっと憎めない子なんですよね。
だから、マリアンヌにはこういう行動をさせました。
次回は最後のバカ貴族を逮捕しに行きます。