バカだけど一筋縄ではいかないのが彼です。
その夜、マリアンヌ達が乗る馬車の前に、大きな屋敷が見えてきた。
そこには大商人の息子ヒーヴェルがいるはずだったが……。
「ヒーヴェル! わたくしが来ましたわ!」
マリアンヌは、大きな屋敷に踏み込んだ。
しかし、その屋敷の中には誰もいなかった。
「誰もいないですって!?」
マリアンヌが驚くと、ヒーヴェルが馬に乗って逃げ出すところに出くわした。
どうやら、一行が踏み込んでくる事を読んでいたようだ。
「追いかけるぞ、マリアンヌ!」
「ええ!」
アエルスドロ達はヒーヴェルを追いかけていった。
「サモン・キャリッジ!」
ユミルは魔法で馬車を召喚し、運転しながらヒーヴェルの後を追った。
「うんせ、うんせ」
ミロは坂道で馬車を押して加速させる。
彼女の腕力によって、馬車はかなり動いた。
ある程度進むと、ヒーヴェルは馬から飛び降りて住宅街の中に走り去った。
住宅街は入り組んでいて、場所を確認してどこに逃げたかを把握する必要がある。
「エリー、手伝ってください」
「はーい!」
ルドルフはエリーと共に、ヒーヴェルが逃げ込んだ場所に走った。
すると、二人はヒーヴェルを見つける事ができた……ビンゴだ。
「見つけたぞ! 追うんだ!」
「やばい!」
もうすぐヒーヴェルに追いつくというところで、ヒーヴェルは袋の口から金貨をばら撒いた。
人々は金に群がり、アエルスドロの進路を妨害している。
「くそっ、こんな手を使うとは! 追うぞ、マリアンヌ!」
「いえ、少しは金貨を拾ってみては?」
「おい!」
金貨に目が眩んだマリアンヌは、落ちている金貨を次々と拾っていく。
いくらパーティの主軸と言っても、彼女は悪役令嬢、お金には目がなかった。
「仕方ないわね……あたしが運ぶわ」
「私も手伝うぞ」
アエルスドロとミロは仕方なく、馬車をその力で引っ張っていった。
しかし、金貨を貰ったマリアンヌの馬車に、住民がそれを奪おうと突っ込んできた。
これにより、全員はかなりのダメージを受けた。
「ぐぅぅ……」
「金に目が眩むからよ」
「とりあえず怪我は治しておくよ。ラ・ナチュ・ド・オヴァ・ラ・ホル・ド・テネブ!」
エリーは即座に広範囲の傷を癒す魔法を唱え、全員が負ったダメージを回復させる。
「後はボクがやりますよ! ラ・テネブ・デ・ハンズ・ド・ニイス!」
ユミルは精神を操る魔法、マインドコントロールを唱えた。
彼の魔法を受けた馬が足を止める。
「動け……動け、何故動かぁぁぁぁぁぁん!」
ヒーヴェルはパニック状態になり、
その隙にアエルスドロとマリアンヌがヒーヴェルを捕まえた。
そしてアエルスドロはヒーヴェルが身に着けていたブローチを外し、彼を正気に戻した。
「ようやく見つけたぞ、事情を話してもらおうか」
「……分かった」
ヒーヴェルは、アエルスドロ達に事情を話した。
「……操られていたとはいえ、こんな事をしたのは謝ろう。この計画書を持っていけ」
そう言って、ヒーヴェルはアエルスドロに計画書を渡した。
計画書には、このような事が書かれていた。
婚約パーティに出席した者達に、このチャームブローチを渡せ。
ゲスト達を皆、エマ様に忠誠を誓わせるのだ。
「あぁ、もう、もしも計画が実現したら、皆さんがエマを崇拝してしまう……!
そんな事、絶対にさせませんわ!」
マリアンヌはこの計画を阻止するために決意し、二丁拳銃を構えた。
「必ずこの計画は阻止してみせよう!」
「ルドルフ! 絶対にあたし達は負けないからね!」
「……はい」
「……やるしかないようだな」
「まったく、なんであたしが協力しなきゃいけないっての?」
「まあまあ……ボク達も一応、仲間ですから、ね」
アエルスドロ、エリー、ルドルフ、ミロ、ユミル、驟雨も、
計画を阻止するべくマリアンヌと共に決意した。
あちこちを飛び回っていたせいで、もう、パーティ会場まで時間がない。
エマの野望を阻止しなければ、この国の人間が、エマに魅入られてしまう。
悪役令嬢は、ヒロインの野望を阻止できるのか?
「……って本来とは役割が違うんだけどねー」
エマは本当に、本当の意味での悪い奴なのでしょうか。
次回は婚約関連と、ボス戦です。