ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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魔族を撃退し、しばしの幸せの回となります。
アエルスドロもマリアンヌも、ここではみんな仲間なのですから。


第31話 祝賀会

 魔族との戦いに勝利したアエルスドロ達は、これから開催される祝賀会の準備をしていた。

 

「まずは料理を作ろうかね」

「ボクもお手伝いしましょうか」

「おや、手伝ってくれるのかい、お嬢ちゃん」

「いや、ボク男ですけど……」

 料理はファルナとユミルが担当する事にした。

 ナガル地方で一番料理が上手いファルナと、ミロの食事係を担当するユミル。

 二人が作った料理は素晴らしいものになるだろう。

「腕によりをかけたんだ、絶対に美味しい料理になるよ!」

「ははっ、ファルナはやる気満々ですねぇ」

「当たり前さ! あたしはナガル地方の食を担っているからね。

 ……そういえば、ユミルは料理が得意なのかい?」

「はい! ボク、料理は得意ですよ」

 ユミルは、得意げに料理上手な事を自慢した。

 ファルナはちょっと嫌味な風に聞こえたが、気にせずに彼の話を聞く。

「特に洋菓子を作るのが好きですね。よく、ミロさんにケーキを振る舞ってますよ」

「へぇー、今度食べてみたいよ」

「興味があるなら、いつか振る舞ってあげますよ」

 

 アエルスドロとミロは、テーブルや椅子など、家具運びを担当していた。

「よ~し、これでテーブルは終わったわね」

「まだだぞミロ、次は住民の分の椅子だ」

「う~、数は多いけどやるしかないわね」

 ナガル地方にはたくさんの住民がおり、

 その分の椅子まで担当しなければならないと知ったミロは、はぁ、と溜息をついた。

「それでも、お前の腕力は頼りになるな。あんなにあった椅子が、こっちにもう移動している」

「何よ腕力って、早く食事したいのに」

「食事の前に清潔にするのも、マナーだぞ」

「あぁもう、堅苦しいのは嫌なのよ!」

 矢鱈と真面目なアエルスドロに反発するミロ。

 彼女は「とっとと終わらせたいわ」と思いながら、椅子をテーブルの前に運んでいた。

 

 アエルスドロとミロの家具運びが終わった後、ディストとマリアンヌは飾り付けをした。

「流石はマリアンヌお嬢様、いい飾り付けができてますね」

「曲がりなりにもわたくしは貴族令嬢。飾り付けができなくては令嬢とは言えませんわ」

 マリアンヌは嬉しそうにテーブルなどの飾り付けをしていた。

 これから始まる祝賀会、

 良いものにしなければ領民は喜ばないと感じた領主マリアンヌは張り切っていた。

「そして曲がりなりにも貴女はナガル地方の領主だ。私達の事を考えているのですね」

「あったりまえですわよ! ここはわたくしのナガル地方ですのよ?」

 マリアンヌは笑顔でランチョンマットを敷いたり、食器を用意したりしていた。

 これも全ては領民のため……マリアンヌは一切、手を抜かなかった。

 

 ルドルフ、エリー、驟雨は、パフォーマンスのために武器や魔法の調整を行っていた。

「ふむ、これでいいか。いや、妥協はせんぞ」

 驟雨は、短剣や暗器を磨いていた。

 パフォーマンスには驟雨も参加する事となり、彼は危険な芸を担当するのだという。

「驟雨、あたし達は派手にやるから、キミは自分のやりたい事をやるんだよ!」

「ああ」

 エリーの言葉に軽く頷く驟雨。

「驟雨さんは、このナガル地方に馴染めますか?」

「賑やかだな。俺には合わない場所だ」

 驟雨は、賑やかな場所や明るい場所が苦手だ。

 ルドルフやエリーと共にいる時も、あまり嬉しそうな様子は見せない。

 しかし、アエルスドロやマリアンヌとの交流があって、

 ナガル地方を少しは気に入るようになった。

 戦う事しかできなかった彼にとって、かなりの変化と言えるだろう。

「では、僕達は準備をしますから、待っててくださいね」

 

 そして、祝賀会は開催された。

 ファルナとユミルが作った料理は、薄切りトマトと卵の前菜、コーンポタージュ、

 鮭のムニエル、牛ミニッツステーキ、サラダ、スモークチーズ、

 苺とチョコのプティフール、ミルクティーだった。

「おいしぃ~!」

「本当ですね。ファルナさんはともかく、ユミルさんもこれをお作りに?」

「ミロさんの従者として、これくらいできなければ」

 そう言って、ユミルは自分が作った料理を食べる。

「美味い! 流石はボクの作った料理ですね」

「ダークエルフの口にも合うな」

「おぉ、喜んでくれましたかアエルスドロ!」

「アンダーダークのものよりも美味しいよ、これからもたくさん作ってくれ」

「はい!」

 

 そして、食事が終わった後、ルドルフ、エリー、驟雨のマジックパフォーマンスが始まった。

 三人が観客に、恭しくお辞儀した。

「ようこそ、ナガル地方の皆様」

「これより、マジックパフォーマンスを開催します! ……うー、堅苦しい口調はやだなー」

「……」

「では、まずは僕からやりましょう」

 ルドルフは、どこからともなくボールを4個取り出した。

 輪の形を描きながら、そのボールを投げたり、キャッチしたりしている――ジャグリングだ。

「おおー!」

「ルドルフ、魔導を使わずにこんな演技をするとは流石だ……!」

 サーカスを見た事がなかったアエルスドロとディストは、純粋に感動し、拍手した。

 ルドルフは深々とお辞儀する。

「それじゃあ、いっくよー!」

 エリーが前に出て呪文を唱えると、大きなボールが現れた。

 驟雨はその上に飛び乗り、グラグラ揺れながらもジャグリングを始めた。

「凄い、凄いよ!」

「お見事……!」

 観客の拍手が大きくなる。

 ジャグリングの速度が増していき、そして、ボールが光り出す。

「あ! ボールがナイフに変わった!」

「魔法かな?」

 小さなボールは1つずつナイフに変わっていった。

 これから、さらに難易度の高いジャグリングをするのだ。

 観客は感服した。

「……いくぞ」

 驟雨は4本のナイフを掲げ、光らせた。

「四段撃!」

 剣先が伸びたナイフが、観客に襲いかかる。

「危なっ……」

 そのナイフが観客に当たりそうになる。

 観客のほとんどはとっさに防御したが、自分が怪我一つない事を不思議に思った。

「……無事だったのか?」

 4本のナイフは、観客の周りに散らばっている。

 驟雨が投げたナイフを、ルドルフが全て風の刃で落としたのだ。

「危なかった。僕がいなかったら、貴方達は死んでいたところでしたよ」

「……ふ」

 元とはいえ、驟雨は暗殺者である。

 彼の危険な性格を知る事になる一行だった。

 

 その後。

「楽しかったですか?」

「とても楽しかった。ファルナとユミルの料理も美味かったぞ」

 ルドルフ達のマジックパフォーマンスは好評だったようだ。

 料理も、アエルスドロ達に高評価だった。

「アエルスドロさん」

「なんだ?」

 そんなアエルスドロのところに、マリアンヌがやってくる。

「わたくしは……あなたと共にいて、本当によかったですわ。

 最初はただの武官としか思っておりませんでしたけど、今ではわたくしの大切な仲間ですわ」

「マリアンヌ……」

「これからも、わたくしは領主として、懸命に働きますわ。

 だからアエルスドロ、共に仕事をしましょう」

「……もちろんだ、マリアンヌ!」

 

 この二人の絆は、さらに強まった。




戦ってばかりのアエルスドロ達ですが、平和な日もあるのです。
しかし、次回では……。
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