そして、エマを救うための冒険でもあります。
祝賀会が終わった、次の日。
「さて、私達はこれからエマを取り戻すために何をすべきか考えよう」
アエルスドロ、マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、
驟雨が机に座って会議していた。
会議の内容は、魔族にさらわれたエマをどうやって取り戻すか、である。
「エマは確か、魔族が連れて行ったんだよね」
「そしてカルキュドリは彼女をアラネアに云々言っていたな」
「アラネア?」
その言葉は、エリーには聞いた事がないようだ。
アエルスドロは苦い顔をしながら彼女に説明する。
「ダークエルフが信仰している蜘蛛の女神だ。
裏切りや暗殺を美徳とする、人間から見れば邪神と言える神だ」
魔族はアラネアを現世に復活させようとしているらしい。
しかし、神がそのまま降臨しようとすると膨大なエネルギーを消費してしまう。
そこで、人の肉体を器とし、それに魂を宿せばエネルギーの消費を節約できる。
その器に、エマが選ばれたのだろうとアエルスドロは推測した。
「じゃ、じゃあ、エマは……!」
「このまま進めば邪神と化し、世界に災いをもたらすだろう」
エマがウンゴリアントとして目覚めるのも、時間の問題だ。
その前に、エマを助けなければならない。
「でも、どうやって彼女を助けるんですか?
彼女に関する情報が少ない以上、迂闊には動けません」
「だから、少しずつ情報を得るしかないんですよ。
僕が風の精霊を呼んで情報収集するから、待っててください」
そう言って、ルドルフは風の精霊シルフを召喚し、ナガル地方の情報を収集した。
一匹のシルフが空を飛んでいると、シルフはその途中で誰か二人が会話しているのを聞いた。
「それでね~」
「うんうん」
次に、エルフが魔法を使っているところや、ドワーフが銃を作っているところを見た。
こうして、シルフは情報を集めているようだ。
「戻ってきましたよ」
「ん?」
しばらくして、シルフが戻ってきた。
シルフはルドルフに近付き、テレパシーで彼に情報を話す。
「……ふむふむ……ほう? そこにあると……? 分かりました。帰ってよろしいですよ」
ルドルフがシルフを精霊界に送還した後、
羽根ペン、インク、羊皮紙を取り出して情報を羊皮紙に書いた。
「情報は集まったんですか?」
「はい。これがシルフの集めた情報です」
ルドルフが出した羊皮紙には、こう書かれていた。
・ナガル地方の南東に、トラップハウスがある。
・名前の通り、たくさんの罠が仕掛けられている。
・そこには、天狗の女性が捕まっている。
「天狗の女性、ですと?」
「この辺では見た事がありませんわね」
天狗は、倭国にのみ存在するとされる、バードマンやフェザリィ同様に翼を持った種族である。
そんな天狗がどうしてナガル地方にいるのか、アエルスドロは疑問に思った。
しかし、マリアンヌは彼と正反対に目を光らせていた。
「天狗ですって!?
もし捕まえたら、空を飛べる文官、もしくは武官として役に立ちますわね!」
「あのねぇ……」
マリアンヌは役に立つか立たないかで決める現実主義者である。
理想主義者なミロは、彼女の考えを理解できなかった。
「でも、仲間が増えるのはいい事だよ。このパーティで回復役はあたししかいないからねぇ」
「言われてみれば確かにそうですわね。回復役が増えれば安心しますわ。
その人材がわたくしの役に立てるかどうか、一度確かめてみる必要がありますけど」
マリアンヌの目がキラーンと光る。
彼女の目は、獲物を見ているかのようだ……とルドルフは心の中で思った。
その頃、問題のトラップハウスでは……。
「さて、天狗の娘よ。おまえはここにいてもらう」
魔物達に、銀のツインテールと茶色い瞳の天狗の女性が追い詰められていた。
彼女の周りには、嫌な目で彼女を見る人間と、
同じく彼女を狙うコボルドとゴブリン、そして彼らを率いるオーガがいた。
オーガの額には赤い宝石が埋まっており、流暢に話しているのもこの力のおかげだろう。
「私をどうするつもりだ?」
「そこでじっとしているんだな。もし動いたら……」
オーガがそう言うと、コボルドとゴブリンが女性にじりじりと近付いた。
体臭は酷く、女性は鼻をつまんで必死で耐えた。
「……殺すのであれば、いっそのこと、楽に殺すがいい……」
「……とりあえず、これでトラップハウスに行く準備はできましたわよね?」
マリアンヌは、アエルスドロ達の荷物を確認していた。
「ポーションは入っているぞ」
「魔力を回復するマジックウォーターや、気力を回復する栄養ドリンクもあるわ」
「念のため、状態異常を治す薬品も持っていこう」
薬品はバックパックにたくさん詰まっている。
冒険者セットはもちろん、予備の武器もいくらか入っている。
「ふむ……ナイフがたくさん入っているな」
「驟雨のためにたくさん買ったのよ」
「無闇に触るなよ、怪我をするからな」
驟雨はナイフを触らせないように慎重に管理する。
これも彼なりの仲間に対する気配りなのだろう。
「それじゃあディスト、留守は任せますわよ」
「はい、マリアンヌ様。ナガル地方はこの私が守りますね」
マリアンヌはディストに留守を任せ、仲間と共に南東にあるトラップハウスに行くのだった。
「……マリアンヌ様、私は祈ります。エマを無事に連れて帰ってくる事を」
~モンスター図鑑~
コボルド
犬のような姿をした魔族。
魔族の最下層に位置し、戦闘能力も低い。
オーガ
頭に角を生やした、まさしく「鬼」と言える魔族。
見た目通りの怪力を誇るが、知能はあまり高くない。