ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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最後の仲間がいるダンジョンに入ります。
そして、エマを救うための冒険でもあります。


第32話 いざ、トラップハウスへ

 祝賀会が終わった、次の日。

 

「さて、私達はこれからエマを取り戻すために何をすべきか考えよう」

 アエルスドロ、マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、

 驟雨が机に座って会議していた。

 会議の内容は、魔族にさらわれたエマをどうやって取り戻すか、である。

「エマは確か、魔族が連れて行ったんだよね」

「そしてカルキュドリは彼女をアラネアに云々言っていたな」

「アラネア?」

 その言葉は、エリーには聞いた事がないようだ。

 アエルスドロは苦い顔をしながら彼女に説明する。

「ダークエルフが信仰している蜘蛛の女神だ。

 裏切りや暗殺を美徳とする、人間から見れば邪神と言える神だ」

 魔族はアラネアを現世に復活させようとしているらしい。

 しかし、神がそのまま降臨しようとすると膨大なエネルギーを消費してしまう。

 そこで、人の肉体を器とし、それに魂を宿せばエネルギーの消費を節約できる。

 その器に、エマが選ばれたのだろうとアエルスドロは推測した。

「じゃ、じゃあ、エマは……!」

「このまま進めば邪神と化し、世界に災いをもたらすだろう」

 エマがウンゴリアントとして目覚めるのも、時間の問題だ。

 その前に、エマを助けなければならない。

「でも、どうやって彼女を助けるんですか?

 彼女に関する情報が少ない以上、迂闊には動けません」

「だから、少しずつ情報を得るしかないんですよ。

 僕が風の精霊を呼んで情報収集するから、待っててください」

 そう言って、ルドルフは風の精霊シルフを召喚し、ナガル地方の情報を収集した。

 

 一匹のシルフが空を飛んでいると、シルフはその途中で誰か二人が会話しているのを聞いた。

「それでね~」

「うんうん」

 次に、エルフが魔法を使っているところや、ドワーフが銃を作っているところを見た。

 こうして、シルフは情報を集めているようだ。

 

「戻ってきましたよ」

「ん?」

 しばらくして、シルフが戻ってきた。

 シルフはルドルフに近付き、テレパシーで彼に情報を話す。

「……ふむふむ……ほう? そこにあると……? 分かりました。帰ってよろしいですよ」

 ルドルフがシルフを精霊界に送還した後、

 羽根ペン、インク、羊皮紙を取り出して情報を羊皮紙に書いた。

「情報は集まったんですか?」

「はい。これがシルフの集めた情報です」

 

 ルドルフが出した羊皮紙には、こう書かれていた。

 ・ナガル地方の南東に、トラップハウスがある。

 ・名前の通り、たくさんの罠が仕掛けられている。

 ・そこには、天狗の女性が捕まっている。

 

「天狗の女性、ですと?」

「この辺では見た事がありませんわね」

 天狗は、倭国にのみ存在するとされる、バードマンやフェザリィ同様に翼を持った種族である。

 そんな天狗がどうしてナガル地方にいるのか、アエルスドロは疑問に思った。

 しかし、マリアンヌは彼と正反対に目を光らせていた。

天狗ですって!?

 もし捕まえたら、空を飛べる文官、もしくは武官として役に立ちますわね!」

「あのねぇ……」

 マリアンヌは役に立つか立たないかで決める現実主義者である。

 理想主義者なミロは、彼女の考えを理解できなかった。

「でも、仲間が増えるのはいい事だよ。このパーティで回復役はあたししかいないからねぇ」

「言われてみれば確かにそうですわね。回復役が増えれば安心しますわ。

 その人材がわたくしの役に立てるかどうか、一度確かめてみる必要がありますけど」

 マリアンヌの目がキラーンと光る。

 彼女の目は、獲物を見ているかのようだ……とルドルフは心の中で思った。

 

 その頃、問題のトラップハウスでは……。

「さて、天狗の娘よ。おまえはここにいてもらう」

 魔物達に、銀のツインテールと茶色い瞳の天狗の女性が追い詰められていた。

 彼女の周りには、嫌な目で彼女を見る人間と、

 同じく彼女を狙うコボルドとゴブリン、そして彼らを率いるオーガがいた。

 オーガの額には赤い宝石が埋まっており、流暢に話しているのもこの力のおかげだろう。

「私をどうするつもりだ?」

「そこでじっとしているんだな。もし動いたら……」

 オーガがそう言うと、コボルドとゴブリンが女性にじりじりと近付いた。

 体臭は酷く、女性は鼻をつまんで必死で耐えた。

 

「……殺すのであれば、いっそのこと、楽に殺すがいい……」

 

「……とりあえず、これでトラップハウスに行く準備はできましたわよね?」

 マリアンヌは、アエルスドロ達の荷物を確認していた。

「ポーションは入っているぞ」

「魔力を回復するマジックウォーターや、気力を回復する栄養ドリンクもあるわ」

「念のため、状態異常を治す薬品も持っていこう」

 薬品はバックパックにたくさん詰まっている。

 冒険者セットはもちろん、予備の武器もいくらか入っている。

「ふむ……ナイフがたくさん入っているな」

「驟雨のためにたくさん買ったのよ」

「無闇に触るなよ、怪我をするからな」

 驟雨はナイフを触らせないように慎重に管理する。

 これも彼なりの仲間に対する気配りなのだろう。

 

「それじゃあディスト、留守は任せますわよ」

「はい、マリアンヌ様。ナガル地方はこの私が守りますね」

 マリアンヌはディストに留守を任せ、仲間と共に南東にあるトラップハウスに行くのだった。

 

「……マリアンヌ様、私は祈ります。エマを無事に連れて帰ってくる事を」




~モンスター図鑑~

コボルド
犬のような姿をした魔族。
魔族の最下層に位置し、戦闘能力も低い。

オーガ
頭に角を生やした、まさしく「鬼」と言える魔族。
見た目通りの怪力を誇るが、知能はあまり高くない。
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