そのダンジョンは、一筋縄ではいきませんよ。
大きな扉を開けると、そこには水晶でできたゴーレム、クリスタルゴーレムが二体立っていた。
天狗が見つかると思ったマリアンヌは当然、落胆した。
「せっかく天狗が見つかると思いましたのに、どうしてクリスタルゴーレムがいますの?」
「魔族がここを守る者として生み出したんだろうな」
「……」
仕方ありませんわね、とマリアンヌは二丁拳銃を抜いた。
「皆様、陣形を組みなさい!」
マリアンヌの命令で、アエルスドロ達はすぐさま自身のポジションに移動する。
エリーはパーティで最も素早い驟雨に光の力を宿し、
クリスタルゴーレムに攻撃が通るようにした。
クリスタルゴーレムは手を砲台に変えると、マリアンヌに向けて光線を放った。
「きゃああああ!」
「光の精霊ウィスプよ、堅き守りを我等に! エーテルアーマー!」
マリアンヌは光速の攻撃を回避しきれず、大ダメージを受けてしまった。
何とかエリーが防御魔法を使ったおかげで戦闘不能にはならなかったが、
体力が大幅に減ってしまう。
さらにクリスタルゴーレムはエリーの魔法に反応したのか、彼女にも光線を放った。
「ひえっ!」
当然エリーに命中し、ダメージを受ける。
しかし、エリーは光属性なので、光線を吸収した。
「光の妖精に、光の攻撃は通用しないよ!」
「お前達もその光に飲まれろ。牙連光波刃!」
驟雨は素早い短剣捌きを連続で繰り出した後、
光の波動を広範囲に放ってクリスタルゴーレムを攻撃した。
「こちらこそ! ガトリングショット!」
マリアンヌは二丁拳銃でクリスタルゴーレム達に乱射した。
だが、クリスタルゴーレムに物理攻撃は通用せず、大したダメージは与えられなかった。
「やはり魔力がないと、ゴーレムにわたくしの攻撃が通りませんわね……」
「そうですね。だから、僕達がいるんじゃないでしょうか?
水と風の精霊よ、雷光となり敵を打ち砕け! ボールサンダー!」
「生命の精霊よ、この者の傷を癒し給え……ライフヒール!」
ルドルフは水と風の精霊を召喚し、
球体状の雷を飛ばしクリスタルゴーレムに大きなダメージを与えた。
エリーは大ダメージを受けているマリアンヌに近付いて回復魔法を唱える。
「デ・ゲイト・ド・イグニ!」
ユミルは火柱を呼び寄せてクリスタルゴーレム達を焼き払った。
「あたしの一撃、食らいなさい! ノーマーシー!」
ミロは爪でクリスタルゴーレムを引き裂いた後、能力で呼び出した雷で追撃を行い、
クリスタルゴーレムをバラバラにした。
二人の高位吸血鬼の攻撃は、クリスタルゴーレムを壊滅させるのに十分だった。
「ミアズマバスター」
アエルスドロは瘴気を腕力や反射能力に変換し、攻撃の威力を増幅した。
「ピアシングミアズマ、からのラッシュスラスト!」
そして、瘴気を剣に纏わせて強化する。
瘴気の影響であらゆる防御を無効化しているため、クリスタルゴーレムの装甲を易々と貫いた。
クリスタルゴーレムは体勢を整え直した後、近くにいるアエルスドロ達をパンチで薙ぎ払う。
「ぐうっ!」
後方ではルドルフが上位風魔法を詠唱していた。
「これを耐え切るんだ」
「ルドルフを守らなきゃ!」
クリスタルゴーレムがルドルフに襲い掛かる。
それを、アエルスドロとミロは必死で食い止めていた。
「私は助けたいんだ。一つの命を、仲間の命を!」
アエルスドロは、ダークエルフらしからぬ正義感を発揮し、クリスタルゴーレムを斬りつけた。
ダメージは微々たるものであったが、その気迫は実際のダメージ以上のものだった。
何度も、何度も、アエルスドロはクリスタルゴーレムを斬りつける。
クリスタルゴーレムの身体には、罅が入っていた。
「風の上位精霊アイオロスよ、旋風となり逆巻き、悠久なる眠りへと誘え! タービュランス!」
そして、ルドルフの詠唱が終わると、
クリスタルゴーレムを竜巻が包み込み、ずたずたに切り刻んだ。
竜巻が治まると、クリスタルゴーレムはバラバラの水晶となって散らばった。
「ったく、肝心の天狗はどこにいるんですの?」
マリアンヌは、部屋を探索してみたが、どこにも次の扉は見当たらなかった。
「もしかしたら、どこかに隠し通路がありそうだな」
「案外ここにあっt……きゃあ!」
マリアンヌが壁によりかかると、いきなり壁がくるっと回転した。
「ちょ、マリアンヌ!?」
「もしかしたら、そこが隠し通路かもしれませんね」
「行ってみましょう!」
アエルスドロ達は、マリアンヌが行った壁の中に入っていった。
壁の中には、ゴブリン、コボルド、額に赤い宝石が埋まったオーガがいた。
彼らの背後には、手足を拘束された白い翼の女性がいた。
「あれが、捕まっている天狗の女性なんだな」
アエルスドロが白い翼の女性を見る。
恐らく、彼女が魔物に捕らえられている天狗なのだろう。
「待ってて、今、助けてあげるから!」
エリーが女性に近付くと、彼女の道をオーガと取り巻きが塞いだ。
「おっと、ここは通さんぞ。返したかったら俺達を倒すんだな」
「むー。あなた達を倒さなきゃいけないの?」
エリーは不満そうに頬を膨らませる。
オーガは当然だ、と勝ち誇るように笑い、取り巻きの魔物も続けて笑った。
「……やはり、お前達を倒す必要がある、か」
アエルスドロは、オーガに剣を向けた。
その表情は、魔物を狩る戦士と言うに相応しいものであった。
「んん? お前、ダークエルフか?」
「そうだ。だが、私は邪悪なる種族ではない。私は今から、お前を討つ!」
「ケッケッケ! デキルカナ?」
天狗を助けるため、アエルスドロはオーガ、コボルド、ゴブリンの軍勢に戦いを挑んだ。
「さぁ、行きますわよ、アエルスドロ!」
「早めに彼女を返してくださいね」
「時空警察ミロ、いっきまーす!」
「時空警察ユミル・ハーシェル、いっきまーす!」
「……塵となるがいい」
マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨も、それぞれの武器を構えた。
~モンスター図鑑~
クリスタルゴーレム
魔力を付与した水晶でできたゴーレム。
かなりの重量だが、飛行能力を有している強敵である。