ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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ついに8人のパーティーメンバーが揃います。
この時を待っていたんですよ。


第36話 これからの道

 茜を救出し、ナガル地方に到着した七人は、

 茜を小屋で休ませた後、これからについて話し合った。

 アエルスドロは、茜に現在の事情を全て説明した。

「大切な貴族の娘がさらわれてしまっては、お前達の気も休まらないな」

「べ、別にエマが大切ではありませんわよ」

 マリアンヌは赤面しながら否定する。

 当初は敵対していたが、魔族に騙されていたと知ってようやく和解しようとした。

 だが、エマが魔族に誘拐されたため、そのチャンスを失ってしまい、

 マリアンヌは半ば目的を失いかけていた。

「でも、ガルバ帝国内にはいるんだろう?」

「そうだといいんだがな」

 エマをさらった魔族が、ガルバ帝国内から逃げている可能性もある。

 その不確定な要素を確定させるためにも、まずは情報収集が必要だ。

「ロルフー! 新聞届いてましてー?」

 マリアンヌは、新聞記者ロルフを呼んだ。

 すると、ロルフが新聞を持ちながらパタパタとやってきた。

「マリアンヌ様、もちろん届いておりますよ」

 そう言って、ロルフはマリアンヌに新聞を渡した。

 その見出しには『倭国より夜叉天狗襲来 被害大』と書かれてあった。

「夜叉天狗だと?」

 普通、天狗は住処を荒らされない限り、人里に現れる事はない。

 そのため、誰かが夜叉天狗の住処に入って来たんだとアエルスドロは推測した。

「こんな神聖な場所に入ってくるのは魔族ぐらいですけどね」

「魔族というよりは悪い妖怪だけどね。で、その魔族の特徴は?」

「どうやら特徴を捉える前に逃げられてしまったようです」

「ちぇー」

 肝心の魔族の特徴が分からなかったため、ミロは残念がった。

「でも、遠い倭国に飛べるほどですから、力の強い魔族であるのは確かですよね」

「そいつなら夜叉天狗だけおびき寄せるのも簡単だしね」

 ナガル地方に夜叉天狗が来ない保証はない。

 もし同じような被害が来れば、マリアンヌは一文無しになってしまう。

 それを防ぐには、ナガル地方に夜叉天狗が来る前に追い払わなければならない。

「とりあえず、茜が治ったら考えますわね」

「……ありがとう」

 茜は、自らを気遣ってくれたマリアンヌの顔を見て僅かに微笑んだ。

 

 翌日。

 すっかり翼が良くなった茜は、それを使って羽ばたこうとしたが、天井に頭をぶつけてしまう。

「むぎゅっ」

「こんな狭いところで飛ぶなんて、なんとドジな天狗さん」

「何か言ったか?」

 鋭い目で睨む茜をマリアンヌは涼しい顔でスルーした。

「さ、朝食が待っておりますわよ!」

「私の口に合うのか?」

 倭国生まれ、しかも妖怪の茜は、西方の国の料理を口にした事が一度もない。

 もしも口に合わなければ、彼女の機嫌はかなり悪くなってしまう。

「安心なさい。ファルナにそれを言いましたら、茜のために倭国料理を作ってくれましたわ」

「おお、ありがとう、ファルナ。こんな私にもサービスしてくれるのか」

「こんな私にも、って……。ナガル地方は誰も差別しませんわよ?」

「そうか……」

 茜は、何もできなかったためか、自分を下に見ていた。

 マリアンヌは彼女の様子に少し呆れていた。

 

「おや、あんたは新入りの天狗かい?」

「……ファルナか。私は茜だ」

「茜ちゃんっていうのかい。ほら、ちゃんと朝食を食べないと、元気になれないよ」

 そう言って、ファルナはご飯、肉じゃが、沢庵、鯖の味噌煮を出した。

 これが、今日の皆の朝食らしい。

「いただきます」

 茜は箸で沢庵を挟み、口に入れて噛んだ。

「……美味い!」

 続けて、鯖の味噌煮や肉じゃが、ご飯を次々に食べていく。

 ファルナが作った朝食は、茜の口に合うものだったようで、

 すぐに自分の分の朝食を食べ終わった。

「まあ茜ちゃん、もう食べ終わったのかい?」

「ああ」

 ファルナは茜の早食いぶりに驚いていた。

 他の住民はまだ半分以下のペースであるが、茜の皿には何も残っていなかった。

「茜って早食いなのね」

「……お前は大食いだろ」

 茜がミロの茶碗をちらっと見る。

 そこに盛られたご飯は、通常の4倍程度の量があった。

「う~ん、あたし血を吸わないからこれくらいは食べないといけないし~」

「血を吸わない? もしやお前は……」

「その話はNGよ、でも舐めないでよね」

「分かった」

 ミロは、自身が吸血鬼である事に、あまり執着していないようだ。

 だが、それでもプライドはあるようで、ミロを舐めた者は皆、彼女に肉塊にされてしまう。

 そのため、ミロは茜にそうならないように念を押したのだ。

 

「ごちそうさま」

 全員が朝食を食べ終わり、皿を片付けていた頃。

 マリアンヌは、浮かない表情をしていた。

「……どうしたんだ、マリアンヌ」

「エマは、無事なのかしら」

「まだそれを心配していたのか」

 彼女は、未だにさらわれたエマを心配していた。

 アエルスドロはあの悪役令嬢が他人を心配するなんて信じられないという表情をしていた。

「エマが死んだら競い合う相手がいなくなるだけですわ」

 エマとマリアンヌはライバル同士だ(マリアンヌが一方的にライバル視しているのだが)。

 彼女こそが、今のマリアンヌの支えになっていると言っても過言ではない。

「安心しろ。彼女は必ず取り戻す。そして、必ず魔族の手からナガル地方を守って見せる」

「その言葉に偽りはありませんわね?」

「ああ」

 そう言ったアエルスドロの瞳には、強い光が宿っていた。

 それは、ダークエルフとは思えないほど、希望に満ち溢れていた。

 

「私は必ず、マリアンヌの好敵手(とも)を取り戻す。その日までに、強くなってみせる」




ここがターニングポイントとなります。
次回は、大きな敵との戦闘になります。
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