ダークエルフと悪役令嬢   作:アヤ・ノア

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ボス戦となります。
かなり激しいバトルをイメージしました。


第37話 夜叉天狗を迎え撃て

 茜が仲間に入ってから、しばらくした後。

「ルドルフ。ナガル地方(ここ)に、夜叉天狗は来ると思う?」

「……まだ精霊は騒いでいませんね」

 エルフのルドルフは、精霊を感じ取る能力を持っている。

 特に風の精霊との繋がりが強く、風の力で情報を集める事に秀でている。

 物や言葉は騙せても、空気までは騙せない。

 そのため、メンバーの中で最も情報収集が得意なのはルドルフだ。

「んー、じゃあ安心していいって事?」

「気を抜いてはいけませんよ。いきなり襲撃してくる事もありますから」

「確かにアエルスドロの話だと、ここに魔族が来た事もあったからねー」

「だから、魔族が来る時間を予測して、罠を張ってみましょう。

 ……精霊よ、魔族が来るのはいつ頃ですか?」

 ルドルフは精霊語で風の精霊に語り掛けた。

 すると、ルドルフの周囲に風が吹き荒れ、エリーが吹き飛ばされそうになるが何とか踏ん張る。

 しばらくして風が止むと、ルドルフは静かにこう言った。

「夜叉天狗は今夜6時に来るそうです」

「そっか、ここに来るまでは時間がかかるしね」

 エリーは安心して、ルドルフの懐に潜って寝た。

 ルドルフは「まったく、げんきんなんだから」と言いながらエリーを撫でたとか。

 

 その日の夕方、驟雨は天狗を迎え撃つために罠を仕掛けていた。

「凄いわねえ、驟雨」

「伊達に罠の扱いに慣れていない」

 ミロは、驟雨が仕掛けている罠に感心していた。

 真祖の彼女にも得意不得意はあるようで、例えば、このような小細工は後者に入るのだ。

 反対に、驟雨は敵の妨害や無力化、暗殺や隠密行動などに秀でている。

 彼の助けがなければ、搦め手を得意とする者には勝てないだろう。

「言っておくが、住民に連絡はしておけよ? 間違えて罠を踏まないようにするためにな」

「はーい」

 

 そして、あっという間に夜になった。

 男達は武装し、アエルスドロ達も彼ら同様に武器を構える。

「夜叉天狗よ、死を恐れないならばかかってこい!」

「このナガル地方には触れさせない!」

「我々が敵視するのは我々に敵意を持つ亜人のみ!」

「この地の平和は、必ず守る!!」

おーーーーーーーっ!!

 男達は一斉に武器と松明を上げて叫んだ。

 何者をも恐れない、戦士そのもののようであった。

 

「す、凄まじいですね……」

「ああ……」

 そのただならぬ空気に、ユミルと茜は少しだけ引いた。

 アエルスドロ達も武器を構え、夜叉天狗の襲撃に備えていた。

「来ましたわ!」

 マリアンヌの号令により、夜叉天狗率いる魔族の軍勢がナガル地方に襲撃してきた。

 最初に現れたのは、両手曲刀を構えたゴブリンソードマン、

 巨大な盾を持ったゴブリンホプリタイ、

 そして彼らの司令塔であるゴブリンリーダーのゴブリン軍団だ。

「ギィ!」

「ギギギィィ!」

「……かかったな」

 ゴブリン達は驟雨が仕掛けた罠にかかり、傷を負った。

「いくぞ! トランス・スケイル!」

 アエルスドロは瘴気で鱗を生成し、自身の防御力を高めた。

 ゴブリンリーダーは負けるものかとゴブリン達を鼓舞して能力を高めた。

「絶氷刃」

 驟雨は短剣に圧縮した冷気を纏わせ、勢いよくゴブリンの群れに振り下ろした。

 ゴブリンは凍り付いて動きが鈍ったため、武器攻撃は驟雨達に届く事なく、

 ルドルフの風魔法であっさりとゴブリンリーダーは倒された。

「ギ!?」

「リーダー!?」

 ゴブリンリーダーが倒されたため、ゴブリン軍団の統率は一気に崩れた。

 今がチャンスだと思ったエリーは、アエルスドロの武器を魔法で強化する。

「ダークスラッシュ!」

 アエルスドロは瘴気を纏った剣でゴブリンホプリタイを一閃、

 続けて流れるように切り返し残ったゴブリンホプリタイを切り裂いた。

 

「ふ、弱いな」

「ギギィーーーー!!」

 アエルスドロに弱いと言われたゴブリンは、一斉にアエルスドロ達に襲い掛かった。

 だが所詮はゴブリンであり、アエルスドロ達の敵ではなく、

 驟雨の連撃とルドルフの風魔法によって全滅した。

 

「次は誰が来ますの?」

 マリアンヌが身構えていると、今度はトロールウォリアー達が襲い掛かってきた。

 すると、全員が毒の沼に嵌り、毒を浴びると共に身動きが取れなくなった。

「毒の沼! やりますわね驟雨!」

「……魔物よ、苦しむがいい」

 驟雨が冷徹な声で言う。

 それに乗ったのか、トロールウォリアー達は筋肉を強化した。

「筋肉だけの奴なんてわたくしの敵ではございませんわ。ガトリングショット!」

 マリアンヌは二丁拳銃を乱射し、トロールウォリアー達を攻撃する。

「砕け散れ!」

 ミロは魔力を込めた拳をトロールウォリアーにぶちかまし、怯ませる。

「ド・フェル・ド・トニト・ド・ヴェン!」

 ユミルは眩い電撃を発生させ、トロールウォリアーにまとめて大ダメージを与えていく。

「食らえ! ディバインブレイカー!」

グギャアアアアアアア!!

 茜は空高く飛び上がり、

 聖なる力を纏ったメイスを振り下ろしてトロールウォリアーを一撃で倒した。

「ぐっ……これで防げるか!? du gaz benediction!」

「きゃあぁ!」

 トロールウォリアーは斧を思いっきり振り回した。

 斧はミロと茜に命中し、二人は転倒する。

 茜が何とか防御魔法で攻撃を防ぐが、筋力が強化されているためダメージは大きかった。

 だが、トロールウォリアーは毒で弱ってきており、まだこちら側が有利な状況だった。

「grand vie double!」

 茜は回復魔法を唱えて自身の傷を癒す。

 回復役が倒されれば、こちら側が不利になってしまうからだ。

「エリアルレイザー!」

 マリアンヌはトロールウォリアーに近付き、蹴りで浮かせた後に二丁拳銃で攻撃した。

 トロールウォリアーは毒を浴びていて、体力が僅かだったためあっさりと撃破された。

「後はあたしがやるわ! 吹き飛ばす! ブルーストーム!」

ギャアアアアアアアアアア!!

 トロールウォリアーが全員瀕死になったのを確認したミロは前に出た後、

 自身の能力で嵐を呼び起こし、トロールウォリアー達を巻き込んだ。

 嵐が消えた後、トロールウォリアーの群れも同時に消えた。

 

「……これで、魔物は全滅したか?」

 魔物が来ない事を確認した茜は、メイスをしまおうとした。

 すると、突然強風が吹いてきて、アエルスドロは吹き飛ばされそうになるが必死で耐える。

 マリアンヌは、スカートを押さえながら誰が来たのかをその目で捉えた。

 

「……来ましたわね、夜叉天狗……!」

 マリアンヌ達の前に現れたのは、黒い翼を生やした天狗、夜叉天狗だった。




~モンスター図鑑~

ゴブリンソードマン
剣で武装したゴブリン。
普通のゴブリンより強いが、所詮はゴブリン。

ゴブリンホプリタイ
ゴブリンの重装歩兵。
攻防一体の強力な陣形を使いこなす。

トロールウォリアー
斧で敵をなぎ倒すトロウルの戦士。
細かい事は考えず、只管力押しで戦う。
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