ここは何のひねりもなく書きました。
ルドルフとエリーを武官に加えたマリアンヌは、ナガル地方の領主として人々を導いていた。
悪役令嬢らしい悪辣さはあったが、
分け隔てなくそう接するため不思議と彼女の下を離れるものはいなかった。
「さぁ、講義をいたしますわよ!」
「「「はーい! マリアンヌ様!」」」
マリアンヌは、文官達に護身術の講義をしていた。
彼女曰く、文官でも己の身を守るくらいの武術は身に着けてほしい、との事。
アエルスドロ達は、それをそっと見ていた。
「マリアンヌさん、やる気満々だな。ちょっと内容がずれているが……」
「アエルスドロ、マリアンヌはこういう人なんですか?」
「ああ、彼女は悪役令嬢だからな。あ、マリアンヌさんには内緒だぞ」
「分かっております」
アエルスドロとルドルフは、マリアンヌに聞こえないようにそう会話していた。
こうしてマリアンヌの講義が終わり、畑の野菜を使って昼食を作る事になった。
しかし、アエルスドロが畑に行くと、農作物が少ない事に気が付いた。
「あれ? 野菜の数が馬鹿に少ないな……」
「本当ですわ。これは、もしかして、ゴブリンが荒らしたからでは?」
ゴブリンとは、世界中に分布する小柄な鬼人族の事である。
集団で村人の作物を盗んでは、冒険者に退治される、典型的なやられ役だ。
しかし繁殖力が極めて高いため、野放しにすれば被害は大きく広がってしまう。
「こんな辺境にもゴブリンがいたとはね」
「早めに退治しないとここの食材がいずれ無くなってしまうだろう」
「ゴブリンの討伐はわたくし達が行いますわ。あなた達はここで待ってなさい」
住人達は領主自らがゴブリン退治に向かう事を反対していたが、
マリアンヌが威圧感のある笑みを浮かべた事で全員黙った。
「では、わたくしが留守にしている間、ここを預かってくださいませ」
「はい、マリアンヌ様!」
こうして、アエルスドロ達は、ゴブリンを退治する事になった。
その夜……一行はナガル地方から近い洞窟に辿り着いた。
どうやら、ここをゴブリンがアジトにしているようだ。
洞窟の入り口には、一匹のゴブリンが見張りをしていた。
「どうするんだ?」
「僕に任せてください」
ルドルフは前に立つと、鬼人語による巧みな話術でゴブリンを誘い出した。
すると、ゴブリンがゆっくりとルドルフに近付いてきた。
ルドルフの言葉がゴブリンにとっては甘い声に聞こえたようで、ふらふらとルドルフに近付く。
「これで、安全にとどめを刺せますね。エリー」
「はーい」
エリーは懐から短剣を取り出すと、無防備なゴブリンの背中を突き刺した。
「これで大丈夫だな。さぁ、飛び込もう!」
「ええ!」
アエルスドロ達が洞窟に入ると、その中は崩れた部分が見受けられた。
比較的長い道が続いていて、左右と中央の道が開けている。
「う~ん、明かりはどうしよう」
「あたしに任せて!」
エリーが指を振ると、彼女の指に光が灯った。
「明かりが灯りましたわ」
「あたしは光の妖精だからね。さぁ、いっくよー!」
「待ちなさい! 敵の居場所を探しますわ」
マリアンヌはエリーを制止すると、右側に聞き耳を立ててみた。
「声が聞こえますわ。奥には敵がいるでしょう」
マリアンヌの助言を聞いた一行は、右の通路を選んだ。
通路に進んでみると、ゴブリン達が休んでいた。
「いたぞ、ゴブリンだ!」
アエルスドロがゴブリンを指差した。
そして、ゴブリン達はアエルスドロ達に気付いた後、声を上げた。
ゴブリンは個々の力は弱いが、群れた時の数の暴力は凄まじい。
だが、今はゴブリンリーダーがいないため、烏合の衆に過ぎなかった。
「行きますわよ! ワイドショット!」
マリアンヌが両手に拳銃を構えると、ゴブリンの群れに向かって乱射した。
その攻撃はゴブリンに回避されたが、マリアンヌは口角を上げていた。
何故なら、彼女が放った銃弾は洞窟の壁に当たって反射したからだ。
反射した銃弾がゴブリンの急所に命中すると、ゴブリン達は大きなダメージを受けた。
「流石ですね、マリアンヌ」
「あなたもぼーっとせず、攻撃に参加しなさい!」
「は、はい! 風の精霊よ、見えざる衝撃を! ウィンドブラスト!」
ルドルフは杖から風の衝撃波を放つと、ゴブリンを吹っ飛ばして壁に叩きつけ戦闘不能にした。
二体のゴブリンがマリアンヌ目掛けてピッケルを振り下ろしたが、
エリーがマリアンヌに光のバリアを張ったため大したダメージにはならなかった。
「はぁああぁ!」
アエルスドロが勢いよくゴブリンに剣を振り下ろし、ゴブリンを真っ二つに切り裂く。
続けてアエルスドロは飛び上がり、弓を持ったゴブリンを剣で貫いた。
「ゴブリンはこれだけか?」
アエルスドロが剣をしまおうとすると、後ろが騒がしくなったような気がした。
「まさか、ゴブリンリーダーが来たのか?」
「早めに片付けますわよ!」
「光よ!」
「ワイドショット!」
エリーがマリアンヌの銃身に光の力を与え、マリアンヌが光を纏った銃弾を乱射する。
ルドルフはノームの力を借りて石礫を発生させ、ゴブリンに飛ばして攻撃し倒す。
ゴブリンはルドルフにピッケルを振り下ろしたが、
先ほど受けた傷が響いたのかルドルフには当たらなかった。
「行くぞ、ダークスラッシュ!」
そして、アエルスドロの闇を纏った斬撃がゴブリンを真っ二つにすると同時に、
後ろから足音が聞こえてきた。
振り向くと、そこにはゴブリンが立っており、残りのゴブリンの士気が上昇した。
恐らくは、このゴブリンがゴブリンリーダーなのだろう。
アエルスドロは気を引き締めて剣を構え直した。
「来ましたわね! ゴブリンリーダーから仕留めますわよ! ポイズンバレット!」
マリアンヌは銃弾に毒を塗り、ゴブリンリーダーを拳銃で撃ち抜いた。
ゴブリンリーダーの顔が青ざめていき、体力が徐々に減少していく。
「おほほほほ、毒に苦しみなさい!」
その様子を見て高笑いするマリアンヌに、三人は「やはり悪役令嬢だな」と思った。
苦笑しながらもルドルフは風の魔法でゴブリンリーダーを攻撃する。
それでもゴブリンリーダーは毒を与えたマリアンヌに突っ込んで
ショートソードで彼女を切り裂く。
「きゃあぁ! 何するんですの!」
「マリアンヌが高笑いするから……」
「そんな事はどうでもいいですわ! 早く仕留めますわよ!」
「メテオアサルト!」
アエルスドロがゴブリンリーダーに突っ込んで剣で切り裂く。
弓を持ったゴブリンがマリアンヌに近付いて矢を射る。
マリアンヌはギリギリでそれを回避し、
アエルスドロが攻撃したゴブリンリーダーを撃って戦闘不能にした。
「よし! ゴブリンリーダーは仕留めましたわ!」
ゴブリンリーダーが倒されたため、残りのゴブリンは最早雑魚同然である。
エリーは光を散らして残りのゴブリンを倒し、
ルドルフがとどめの一撃を放つとゴブリンの群れは全滅した。
「勝った……!」
~モンスター図鑑~
ゴブリンリーダー
ゴブリンの群れを率いるリーダー。
指揮官としては有能だが、自身の能力はそれほど高くない。