外側だけでなく内側にも敵がいる事を、表現したかったのです。
「犯人はロルフですって!?」
アエルスドロ達は、犯人の姿をマリアンヌに報告した。
あの新聞記者が副官を撃つなんて、認めたくはないようだ。
「信じがたいですけど……本当に彼が犯人かどうか、証明する必要がありますわね」
本当にロルフがディストを撃ったのだろうか。
マリアンヌは、魔女狩りのように冤罪を起こしたくはないようで、慎重に動いている。
「アエルスドロ、今すぐロルフを呼びつけなさい!」
「……分かった」
マリアンヌは、アエルスドロが呼んだロルフを連れて行き、
彼を証人台に立たせて向かい合った。
「ロルフ。ディストを撃ったのはあなたですの?」
マリアンヌは凄い剣幕でロルフを見る。
ロルフは怖くなってマリアンヌから顔を逸らした。
「事実を認めたくないんですのね?」
「……マリアンヌ様。私は、ディストを撃ってはいません」
「ごまかしても無駄ですわよ! わたくしはホリンから話を聞きましたもの。
新聞記事を抱えた男が銃を撃ったって!」
マリアンヌは、ホリンの証言をディストに話した。
「う、ぐっ……」
「証拠は覆せなくてよ。
それに、ここで銃を使えるのは、わたくしと、消去法であなたしかおりませんわよ!」
マリアンヌはびしっとロルフを指差した。
彼女はロルフに弁解をさせるつもりなど、微塵もないようだ。
「……ふふふ」
すると突然、ロルフが含み笑いした。
「な、何がおかしいんですの?」
「……そんなに私を犯人と決めつけたいのならば、その姿を見せようではないか!」
「ま、まさか……!」
「そう! 私は……」
ロルフがいきなり空中に浮かぶと、彼を黒い煙が包み込んだ。
これから何が始まるのか、マリアンヌは呆然と見つめていた。
そして、煙が晴れると、そこにいたのは青い肌と金色の瞳、一対の角と、
大きな竜の尻尾が生えた、ライフルを持つ魔族の姿だった。
「その“まさか”だ!」
「あ……!」
そう、ロルフの正体は、魔族だったのだ――
「マリアンヌ……!」
「ア……アエルスドロ……」
アエルスドロは呆然としているマリアンヌのところにやってきた。
「どうした、マリアンヌ」
「ア……ア……アエルスドロ……ロルフが……ロルフが……」
マリアンヌは震えながらアエルスドロに事情を話した。
「何だと!? 新聞記者のロルフは、魔族だったのか!」
「そうですの……。このわたくしが怖気づくなんて、本当に
「気にするな、それが普通の人間なんだ」
「アエルスドロ……。ありがとうございますわ……」
マリアンヌはアエルスドロに励まされ、何とか落ち着きを取り戻した。
そして、マリアンヌは魔族ロルフを倒すため、急いで戦える者達を呼び出した。
「皆様! このナガル地方で新聞を渡してくれた新聞記者ロルフの正体は、魔族だったのです!」
マリアンヌは、魔法を使って自身の声をナガル地方の住民達に届けていた。
ロルフが魔族だと知った以上、この情報を届けなければ、
ナガル地方が魔族のものになってしまうからだ。
人族と魔族は基本的に不倶戴天の敵であり、魔族が人族を害するのは「当然」だ。
そのため、このナガル地方のためにも、ロルフは倒さなければならないのだ。
「なんでボクの魔法に頼るんですかね?」
「まあ、緊急事態だからねぇ」
その魔法を使っているユミルは、勝手に頼った事に少し不快になっていた。
ミロも、ユミルの言葉を聞いて頷いた。
そして、魔族ロルフを倒すため、住民達は動いた。
「ひゃっはーーーーーーーーー!!」
「どけよクソジジイ!!」
「どけよクソババア!!」
ショユ、トコツ、ミッソのラメン三兄弟は、
そう言いながら老人や老婆を安全な場所に避難させていた。
「おやまあ、ありがとよ」
「今はバタバタと大変だからねぇ……」
「我らはこの地方を、必ず守ってみせる!」
「さあ、来るなら来い!」
男達は、魔族からナガル地方を守るため、武器を取って前線に出ていた。
補給係や救護担当の人材も、彼らに付き添っていた。
その中には、己の実力を魔族に見せつけるために剣を持つホリンの姿もあった。
「この剣がここでどこまで通用するのか、試してみよう」
「おう、あんちゃん、やる気は十分だな」
「剣闘士の力、見せてやる」
そして、アエルスドロ、マリアンヌ、ルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、驟雨、茜は、
魔族ロルフと彼の護衛兵と対峙していた。
「ふ……やはり、倒しに来たか」
「ロルフ……。あなた、一体何が目的ですの?」
マリアンヌは魔族ロルフに二丁拳銃を向けながら強く言った。
魔族ロルフは、笑いを崩さない。
「お前の失脚だ」
「なんですって!?」
「人間だけのガルバ帝国の癖に、ここには人間以外の種族が多くいる。
もちろん、私も含めてだ。そんなのが国中に知れ渡ればお前は裏切り者だ。
そこにいる、汚いダークエルフも含めてな!」
魔族ロルフはそう言って、アエルスドロを指差した。
彼はアエルスドロに衝撃を与える目的で言ったのだろう。
だが、アエルスドロは臆せず、魔族ロルフに剣を向けてこう言った。
「私も裏切り者だと言うのか?
元からそれは承知の上で、人間至上主義であるこの国に住ませてもらっている。
その汚名はとっくに着ている。だから、お前の戯れ言など、私には無意味だ!」
アエルスドロは、故郷アンダーダークでは裏切り者とされていた。
その仕打ちに既に慣れているアエルスドロは、どこで裏切り者と呼ばれようと動じないのだ。
魔族ロルフは、アエルスドロが自身の思い通りにならない事に苛立ち、怒号した。
「ダークエルフ風情が、この私を怒らせるとは、大した度胸だな。いいだろう!
私の怒りを貴様らに思い知らせてやる!!」
そう言って、魔族ロルフはライフルを構え、射撃姿勢を取った。
護衛兵もハルバードと盾を構え、魔族ロルフの前に立って彼を守った。
「このナガル地方は、お前だけのものではない!」
「わたくしを騙したあなたこそ、本当の裏切り者ですわ! 覚悟なさい!!」
アエルスドロとマリアンヌ、そして六人の仲間は、魔族ロルフとの戦いに臨んだ。
アエルスドロの決意を自分なりに表現しました。
次回は魔族との戦闘です。