プロローグでもあったけど、ここは結構、しんどい場所でもあります。
瘴気の元を取り除くため、アンダーダークに突入した八人。
「……」
驟雨が入り口を凝視すると、彼は奥へ続く穴に影を見る。
何かが、明らかに中で動いている。
「皆、誰かがいるようだ。気を付けて進め」
「ああ」
八人は静かにアンダーダークに近づいていく。
地下都市の内側で、二体のゴブリンが弓を持って見張りについている。
「奇襲をかけるか?」
「やってみましょう」
驟雨は、まだ気付いていない二体のゴブリンに近寄り、短剣を投げて仕留めた。
この地下都市は石でできており、興味を惹く物はない。
踏みしめられた道が、入り口から地下都市の奥へと続いている。
地下都市の奥の壁は実は削られた石のようで、加工された道は頑丈そうな扉へと続いている。
「ここも、誰かがいそうね。慎重に開けましょう」
そう言って、ミロはゆっくりと扉を開けた。
「……いたわ。やっぱりゴブリンがたくさんいる」
部屋の中には、ゴブリンが四体いた。
まだ、誰にも気が付いていない様子で、アエルスドロ達はこっそりと通り抜けようとする。
茜は翼が大きいので、どうしても目立ってしまい、隠密行動には向いていなかった。
―ガラッ
「しまった!」
うっかり、茜が物音を立ててしまう。
それに気づいたゴブリン達が、茜に襲い掛かってきた。
だが、所詮はゴブリンであり、硬い装甲の茜に攻撃は通用せず茜はハンマーで全員薙ぎ払った。
「こんな翼では目立ってしまうか」
「ここは狭いからな」
茜は自身が隠密行動を苦手とする事に嘆いていた。
アエルスドロは「人には得手不得手がある」と茜を励ました後、先頭になって進んだ。
八人が通路を通路を進み始めると、鎖が金属を滑っていく鈍い音が聞こえてくる。
その音は、通路を曲がったすぐ先からしている。
「何か、音がしているな」
「一体どんな音なのかしら。見てみましょう」
「ええ」
驟雨とマリアンヌがそっと近づいてみると、
そこには独創的な昇降機、つまりエレベーターがあった。
エレベーターは連なる滑車と軸心を使用する事で、
このアンダーダークの2階層下に行き来できるようにしている。
「このエレベーターを移動手段として使い、瘴気が湧き出ている場所を探そう」
エレベーターは階と階の間をゆっくりと移動する。
これを動かすには、力が強い人が滑車を動かす必要があるようだ。
「うっかり縄を切らないようにしなければいけませんわね」
「私が動かしてみよう」
「しくじるんじゃありませんわよ、アエルスドロ」
アエルスドロはまず、マリアンヌを乗せた後、滑車を回してエレベーターを動かした。
滑車はぼろく、縄が切れそうになったが、
アエルスドロは繊細な操作でマリアンヌを下の階に下ろした。
「マリアンヌ、いるか?」
「いますわよー」
「よし」
マリアンヌが下に降りたのを確認した後、アエルスドロはルドルフ、エリー、ミロ、ユミル、
驟雨、茜を下ろし、最後に自分もエレベーターに乗って下りた。
紐は相変わらずボロボロだったが、アエルスドロが下りる時も切れる事はなかった。
こうして、八人は発見している限りの最下層に辿り着いた。
頑丈そうな壁と比較的石の少ない床を誇り、
かつてこの洞窟にドワーフが暮らしていたのだと実感できる。
「どの辺に、瘴気を出しているものがありますの?」
マリアンヌは、瘴気の源を探してこの部屋を探索していた。
驟雨も、彼女と同様に、異変の原因を探していた。
「う……」
すると、茜が口を押さえて蹲り、苦しみ出した。
「どうした、茜」
「この部屋が……瘴気で満ちている……!」
「何……!?」
アエルスドロは、この空間を探知してみた。
すると、目に見えるほどの瘴気が、部屋中に満ちている事が分かった。
「近い、近いぞ」
瘴気に強いアエルスドロは、他のメンバーが瘴気の影響を受けないように魔法をかけて守った。
念入りに捜索しているアエルスドロに突然、武装したゴブリンとバグベアが襲いかかってきた。
「疾風の術!」
「ラ・ナチュ・ラ・オシ・ド・スカト!」
茜はユミルに行動を早くする術を唱え、ミロはゆっくりと呼吸を整え次の攻撃への準備を行う。
ユミルは杖を振り、この場にいる味方全員の能力を上げた。
「さあ、かかってきなさい!」
マリアンヌは二丁拳銃を回して、マスケット銃を持ったバグベアを挑発した。
「デ・イグニ・ド・オヴァ・ラ・ステラ!」
ユミルはゴブリンセイバー目掛けて無数の火炎弾を放った。
ゴブリンセイバーは一度攻撃をかわしたが、
火炎弾はゴブリンセイバーを追尾し、結果的に全員命中した。
「疾走斬」
驟雨は素早く駆け抜け、ゴブリンシールダーの群れを一閃した。
「あなた達の銃なんてわたくしには効かなくてよ! デスペラード・ポイズン!」
マリアンヌは銃に毒を塗った弾丸を込め、バグベアガンマンの群れに二丁拳銃を乱射した。
「大地の上位精霊タイタンよ、汝の力を以て巨大なる岩を切り裂け! アースクェイク!」
ルドルフは地の精霊を呼び出して地震を起こし、
地に足を着けているゴブリンソルジャーを一掃した。
ゴブリンセイバーは大剣を振り下ろしてアエルスドロとミロを斬りつける。
だが、攻撃は茜とエリーが防御術で防ぎ、大した被害にはならなかった。
「魔物め……私達をどこまで邪魔するんだ」
「ホント、やんなっちゃうわね。破壊の爪よ、あいつを切り裂きなさい!」
ミロは破壊の爪を呼び出し、ゴブリンセイバーをずたずたに引き裂いた。
アエルスドロは闇を纏った剣でゴブリンセイバーを斬り、
エリーはゴブリンセイバーの攻撃をかわしながら光で傷ついた味方を癒した。
茜はバグベアガンマンの攻撃を回避しながらハンマーを振り下ろし、
ゴブリンセイバーは地に伏した。
残ったバグベアガンマンはマスケット銃をマリアンヌに撃ってきたが、
マリアンヌは華麗なテクニックで攻撃をかわし、
二丁拳銃を打撃武器のように扱ってバグベアガンマンを気絶させ、戦闘は終わった。
こうして、魔物の群れを撃破した一行は、隠し扉を発見し、大きな扉に辿り着く。
「この辺に敵はいるはずだ。俺が前に出る」
驟雨は忍術を使って自身の姿を消した。
もし、敵がこちらに攻撃を仕掛けるのならば、驟雨が不意打ちをかけて仕留めるつもりだ。
アエルスドロ、マリアンヌ、ルドルフ、ミロ、ユミルは大きな扉を開けて中に入る。
その後を驟雨が忍び足で、エリーと茜は空を飛びながらついていった。
「……!!」
扉の先は、大広間になっていた。
そこで、アエルスドロは衝撃のものを目にした。
「アル……トン……!?」
それは――アンデッドと化した、自身の執事、アルトンの姿だった。
~モンスター図鑑~
バグベアガンマン
二丁拳銃を構えたバグベア。
精密さと、高い火力、そして嵐のような連射力を持つ。